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■黄金の流星(14)

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振袖姿の語り手(元原マミ)が出て解説する。
 
「グリーンランドは世界最大の島です。大陸ではないかという意見もあります。グリーンランドという名前は10世紀に活躍した“赤毛のエリク”(Erik the Red) が付けたものです。彼は元々はノルウェー人ですが、故あってアイスランドに住んでいました。982年頃、アイスランドの西に大きな島か大陸があるという噂を聞き航海してこの島に辿り着きました。彼は3年ほど島の周囲を探検して回った末、人を集めてここを開拓しようと考えました」
 
「アイスランドが、その名前からしていかにも寒そうなので、新しい土地には人がたくさん来てくれるようにと、グリーンランド、緑の島と名付けたと言われます。結構な入植者が集まり、町も作られて400-500年にわたり栄えました。しかし、この入植地の人々は後に絶滅してしまいました。原因は寒冷化などによる栄養失調という説が有力です」
 
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「13世紀頃に今度はカナダ方面から移住してきた人たちがあり、彼らが現在のグリーンランド人、別名カラーリットの祖先となりました。ノルウェー出身の移民たちの絶滅原因は、彼らとの争いに敗れたためという説もあります」
 
「17世紀になってから今度はデンマークとノルウェーが共同で開発をおこない、カラーリットたちを軍事力で屈服させました。その後、ノルウェーは撤退。第二次世界世界大戦中はアメリカが一時的に保護しましたが、戦後デンマークに戻されました。1979年に自治政府の設立が認められ、自治権を獲得しました」
 
「この小説が書かれた時期はデンマーク単独管理時代ですが、ヴェルヌの小説では、グリーンランドは数年前にデンマークから独立したことになっています。彼がこの小説を書いた1901年の時点では、多分数年後に独立が認められるだろうと考えていたのかも知れませんが、実際の独立にはそれから100年以上かかることになりそうです」
 
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「ちなみにこの小説の中ではアメリカ国旗の星の数が51個になっています。51番目の州はどこになると思っていたのでしょうか?」
 

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映像はどこかの港町に移る。
 
字幕:1908年7月27日(月) チャールストン港。
 
語り手「フォーサイス・ハデルスン天体がグリーンランドに落下するというニュースに、多くの人がそれを見に行こうとしました。旅行会社が仕立てた蒸気船モジーク(Mozik) がこの日、サウスカロライナ州のチャールストン港を出発しようとしていました。これ以外にも世界各地から多数の客船がデービス海峡を越えてバフィン湾に行こうとしていました」
 

 
「ちなみに、デービス海峡やバフィン湾は冬になると氷山が多数漂うので航行不能になります。短い夏の時期のみ航行できます。タイタニックが氷山と衝突して沈没したのは、デービス海峡の南側、ラブラドール海の南端より更に1000kmほど南方です。あれは1912年4月のことでした。この物語の4年後です」
 
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まだ充分自分を取り戻していない風のフォーサイスと、彼の忠実なしもべであるトム、そして付き添いのフランシスが乗り込む所が映される。彼らが乗り込んだ後に、今度はやはり同様にまだ自分を取り戻してない風のハデルスンと付き添いにジェニーが乗り込む所が映される。
 
語り手「フォーサイスは黒いフロックコートを着ており、トムは乗り込む段階では、夏なのでワイシャツ姿ですが、航行中に緯度が上がって気温が下がれば防寒着を着るのでしょう。フランシスはグレイのスーツを着ています」
 
「またハデルスンは黒のフロックコートで、ジェニーは白いドレスですが、彼女も航海中に緯度が上がっていけばズボンを穿き、防寒着を着る予定です。グリーンランドでスカートを穿くのは無理なので、少し、はしたない気はしたのですが、フランシスの勧めでズボンを穿くことにしています」
 
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「フランシスとジェニーはフローラ・ルーも含めた話し合いで、2人でフォーサイスとハデルスンに付き添うことを決めました。ただ、顔を合わせるとまた喧嘩するかも知れないということで、両者の船室は離れた場所に確保しました。ミッツ、フローラ、ルーはお留守番です」
 

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語り手「この船にはグリーンランドの資源大臣・エヴァルト・デ・シュナク (Ewald de Schnack) も乗っていました。彼はアメリカで開かれていた天体の帰属に関する国際会議に出席していたのですが、会議は行き詰まっている中、天体がグリーンランドに落ちるという予報が出たので、独断で帰国して天体の落下に立ち会うことにしました」
 
映像はフロックコートを着たシュナク(演:揚浜フラフラ)が映る。
 
語り手「当時はまだグリーンランドには海底通信ケーブルが来ていないので、アメリカからグリーンランドへは手紙以外の通信手段がありません。その手紙も船で運ばれるので、ほんの一週間では首相の意向を確認できませんでした。しかし国際会議もしばらく親睦会が開かれるだけで実質的な審議が停止した状態(会議は踊る?)だったので多分帰国してもよいだろうと判断したのです。一応首相への手紙では、自分は帰国するという件に加え、大量に人が行くと思うので補給の体勢を整えて欲しいと書いておきました。旅行会社各社もグリーンランド政府に協力を求める要請書を手紙で出しているようです」
 
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「天体が陸地に落ちるか海に落ちてしまうかは全く分かりません。しかしシュナクは島の地面の上に落ちるものと考え、その莫大な金(きん)をどう使うか、捕らぬ狸の皮算用をしていました。航海中、彼は様々な国の政治家と会話を交わしました。どこの国もグリーンランドと仲良くしようと熱心です」
 
「一方、フランシスとジェニーは、天体が海に落ちてくれるよう祈っていました」
 

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映像は船のレストランで、フォーサイスたちと、ハデルスンたちが近い席に座っている所を映す。
 
フランシス(鈴本信彦)はハデルスン博士(チャンネル)に挨拶に行きます。
 
「ご無沙汰しております、博士。お元気でしたか」
「ああ、元気だよ」
と博士は、あらぬ方向を見たまま答えました。
 
語り手「ハデルスン博士はフランシスを全く認識していない雰囲気です!フォーサイスとハデルスンは近くの席に座っているのに、お互いの存在に全く気付きませんでした」
 
(こういう演技は下手な役者にはできない。ケンネルもチャンネルも美事だった)
 
ジェニーが少し離れた所でフランシスと話す。
 
「お父ちゃんも、フォーサイスさんも、魂が抜けたままだね」
「あれから2ヶ月半。ずっとこの状態」
「こちらも。今ならフランシスが私のドレス着てお父ちゃんに話しかけたらきっと私が話しかけてると思うよ」
「さすがにぼくにジェニーのドレスは入らない」
「コルセットで締め付けたら何とかなるかもよ」
「窒息しそう」
 
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(公開時には、鈴本君、細いからビンゴアキちゃんのドレス着れるかもという意見多数)
 

字幕:7月30日(木)ボストン港。
 
語り手「モジーク号はチャールストンを出た3日後の7月30日、ボストン港に寄港しました。食料・水・石炭の補給が目的ですが、ここで数十人の客が旅を中断して下船しました。彼らはここまでの航海で船酔いしてしまいました。大西洋やグリーンランドの海はこんなものじゃないと聞き、とても耐えられそうにないというので中断することにしたのです。モジークはここで元々ここから乗ることを予約していた人に加え、下船した乗客の船室が空いた分、キャンセル待ちの客を乗せました」
 
映像は、白いスーツを着た、セス(七浜宇菜)が船に乗り込む所を映す。
 
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「セス・スタンフォートもそのキャンセル待ちで乗ってきたひとりでした。彼は日本行きをサンフランシスコで中断した後、中華街で日本の忍者が使っていたという手裏剣(本当か?)をゲットしますが、実はアルケイディアとの連絡方法がありませんでした。お互い旅行好きで、いつも旅をしているので、各々の本来の家には、めったに帰らないのです」
 
「彼は5月13日に離婚した時は女性になっていましたが、アルケイディアのことを考えながら、中華街で“シーホース”という、オスが子供を産むらしい、小さなドラゴンのような形をした金色の干し魚を食べたら、また男になってしまいました」
 

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セスの心の声「おぉ、またちんちんできちゃった!これいいなあ。もうぼくはこのままずっと男で良い気がする。男の服持ってきてないから、取り敢えず2枚くらい買ってこなくちゃ。それに男に戻れたら、アルカと再度結婚できるかも。彼女どこに居るのかなあ」
 
(宇菜の本音では?という声多数。宇菜様が男になったら結婚したいという女性ファンの声多数)
 
語り手「セスは来た時とは別の鉄道会社の大陸横断特急でニューヨークまで戻り、更に地元のボストンに戻って、市民登録の性別を男に変更しました。その後、女の服は家に置き、男の服を持ってしばらくカナダ旅行をしていました。トロントに滞在していた時、ボストン天文台が、フォーサイス・ハデルスン天体がグリーンランドに落ちると予測したニュースを聞きます。興味を感じ、いったんボストンまで戻って天体落下見学ツアーを予約しようとしましたが、既に予約満杯でキャンセル待ちを登録しました」
 
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セスの心の声「アルカはどうしてるかなあ。あの子もグリーンランドに行くだろうけど、チケットは確保できたかな?」
 

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語り手「モジーク号は8月1日ボストンを出港した後、ポーツマス、ポートランド、ハリファックス沖を通過し、セントローレンス湾に入ります。ベルアイル海峡を通ってラブラドル海に出ます。ここから先は氷山によくよく注意しなければならない領域です」
 
「氷山の回避は、充分な距離を取っておこなう必要があります。氷山で海の上に出ているのは、ほんの11%で、水面下にその8倍の塊があります。そこまで余裕を見た回避が必要なのです。タイタニックの場合、水面上の氷山を避けたつもりが、水面下の部分に激突してしまいました」
 
「モジーク号は事故も無くラブラドール海を北上。デイビス海峡の南側を横断してグリーンランド沿岸に到達します。モジーク号は8月7日朝にコンフォート岬 (cap Confort) (*81) の沖合を通過しました」
 
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語り手「やがてモジーク号はグリーンランドの首都ゴットホープ、現在のヌークに到着。ここで若干の補給をおこないました。新鮮な魚が手に入り、料理人が喜びます。そしてここから北上し、ホルスタインボルク (Holsteinborg) とクリスチャンシャープ (Christianshaab) (*82) を通り、8月9日の早朝、ディスコ島 (Disko island) (*83) に到着しました」
 
「そして8月10日の夕方6時、ウペルニヴィク島から20kmほど離れた有人島ナヴィク島に到着(*84)。西側の港に停泊しました」
 
↓再掲

 

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(*81) 英訳本では Cape Comfort と書かれている。ConfortかComfortか不明だが、とっちみちそれらしき岬を見付けきれない。おそらく名前が変わったものと思われる。グリーンランドでは、17世紀以降にヨーロッパ人が勝手に付けた名前を、自治政府成立後次々と本来の名前に戻している。ゴットホープ→ヌークなどは分かるが、変更履歴を追えない名前も多い。
 
(*82) いづれも自治政府樹立後、グリーンランド語の名前に戻されている。Holsteinborg→Sisimiut, Christianshaab→Qasigiannguit.
 
(*83) ↑の地図で見るディスコ島の上に見えるもうひとつの大きな島のようなものは島では無く半島で、ヌースアク(Nuussuaq)半島 である。この半島の上に小さな島が2つ並んでいるが、その右側が実はリアルのウペルニヴィク島。位置は 71°16′N 52°45′W で、小説本文に書かれた位置とあまりに違いすぎる。それで今回の翻案ではこの島を採用せず、小説に書かれた緯度経度にある島のほうをモデルに、小説の記述に沿う架空の島を想定した。
 
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(*84) 原作ではウペルニヴィク島に停泊したことになっているが、それでは天体落下の際の激烈な熱風と津波で大量の死者が出てしまう(全滅するかも)。それで観光船は近くの別の島に停泊したことにした。この映画における“ナヴィク島”はリアルのウペルナヴィク島をモデルにした架空の島である。
 
ウペルナヴィク島は18世紀にデンマーク人により開発された古い島である。イルカやアザラシ、北極熊の狩猟などが主たる産業である。ウペルナヴィクは「春の島」という意味だが、別名の“女の島”というのは、もしかしたら昔は女性はこの島に留まり、男たちが内陸に入って狩猟をしたりしていたのだろうか?
 
ここは人口も多く、現在は空港もある。実は空港ができたことで一般の人も来られるようになった。ウペルナヴィクと周辺の島々の間はヘリコプターで結ばれている。この付近の海は氷山が多くて危険なので、フェリーは運行される時より欠航する時のほうが多い。
 
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ウペルナヴィクは、かなりとんでもない場所にある米軍のチューレ空軍基地を除けば、ほぼ北限に近い町である。
 
現代では、ウペルナヴィクにはホテルや塔を持つ教会もあるし、大学の分校に、体育館とか“世界で最も北にある美術館”まで存在していて、実は結構観光客が来る。小説に描写されている“ウペルニヴィク”の様子は、実はむしろウペルナヴィクの実情に似ている。
 

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黄金の流星(14)

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