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■黄金の流星(7)

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やがて、アールヌーボー風の服を着たこの銀行の頭取、ミレイユ・ルクール(演:アクア)(*41)(*46) が入ってきて、
「お待たせ〜、ゼフ」
と言い、向いの席に座る(*39).
 
(*39) 向かい合って座るのがミソである。それで葉月をボディダブルに使って撮影すると面倒な合成の必要が無い。。。。。という建前で本当はアクアMとアクアFで撮影している。
 
なお、会話シーンで、ゼフィランを演じているアクアは男声、ミレイユを演じているアクアは女声で話している。
 

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ここで映像に割り込む形で振袖姿の元原マミが登場し、人物の関係を解説する、
 
語り手「ラフな格好の男性はゼフィラン・ジルダル (Zephyrin Xirdal), アールヌーボー風の服を着ている女性はミレイユ・ルクール (Mireille Lecoeur) で、この銀行の頭取です。彼女はゼフィランの母の兄の娘、つまり従姉に当たります」
 
「ゼフィランが幼い頃に両親は亡くなり、彼の母は『財産は年金の形で息子に渡して欲しい』と兄のロベール・ルクールに遺言しました。それでロベールは、ゼフィランにとっては伯父ですが、彼が毎年15,000フラン、現在の日本円でいうと3750万円ずつ受け取れるように手続きをしたのです。その後、そのロベールも亡くなり、銀行は娘のミレイユが継承。ゼフィランの資産管理も彼女が引き継いでいます。ミレイユの父は亡くなる時に『間違ってもゼフィランとだけは結婚するな。ビジネス的な才能はゼロだし、絶対人に欺されて銀行を潰すから』と言い残しました」
 
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女性銀行員(夕波もえこ)が入ってきて、ミレイユにもカフェとお菓子を出す。またゼフィランにはお代わりのカフェを出して、空いているカップは下げた。
 
「だけどゼフも少し何とかして欲しいよ」
とミレイユは言う。
 
「何が?」
「あんたの口座には毎年1万5千フランが振り込まれるんだけど、あんた全く使わないから、もう残高が少なくとも15万フラン(3億7500万円)程度(*42)は越えてるよ」
 
「余ってどうしようもなくなったら、どこかに寄付しちゃえばいいんじゃない?」
「どこに寄付するのさ?」
「よく分からないなあ」
 
「それで今日はいくら降ろしていく?いつものように200フラン(50万円)?」
「1万フラン(2500万円)欲しい」
「へー」
と言ってミレイユはドアを開け、ロビーにいる副店長を呼び寄せ、ゼフィランの口座から1万フラン引き出して現金を適当なカバンに入れて持ってくるよう指示した。
 
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「いい傾向だね。本当は顧客のプライバシーを訊いてはいけないけど、私と君の間柄だから教えてよ。1万フランも使って何するのさ?」
 
「旅行に行って来ようかなと」
「へー。どこに?」
「まだ決めてない。それとさ、こういうの僕はよく分からないから、ミルちゃんに頼みたいんだけど、土地を買ってくれない?」
 
「いいけど、結婚でもするの?」
「そういうんじゃないけどね」
「ふーん。広さは?」
「2-3km2
「それはまた大邸宅だね」
「家は30m2(9坪)もあればいい」
「それはまたこぢんまりとしてるね。場所は?」
「それも今から決めるけど、およそ周囲10kmくらいには誰も住んでないような場所がいい」
「ああ、誰にも邪魔されずに彼女または彼と夜を楽しみたいのね」
 
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「さすがに男と結婚する趣味は無い」
「そう?女の子に興味無いみたいだから怪しい気がしてるんだけど」(*43)
 
「恋愛が面倒くさいだけだよ。つまらない用事で作業を中断されたくないし。該当する土地はたぶんフランス国内には無いと思う。外国でいいから、きちんとした法治国家で、公式にその土地を買うことができて、その所有権を国家が保証してくれるような国」
 
「となると、ヨーロッパ圏内か、アメリカ・カナダ、あとはインド・日本あたりだな。その範囲ならうちの銀行の支店があるから買わせるよ」
 
「日本もいいね。たくさん小さな島がありそうだし」
「ああ。島を丸ごと買ったら?」
「それもいいかも知れない気はする」
 

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「で、結婚するんじゃなかったら何するのさ?そこでこっそり女装する?」
「別に女装の趣味は無いよ。ちょっとお金を儲けようかと思って」
 
「へー。いい傾向だね。まあ、ゼフなら失敗して1万フラン+土地代程度失っても平気だろうから、思いっきりやってみるといいよ。どのくらい稼ぐつもり?」
 
「6兆フランくらい」
とゼフィランが言うと、ミレイユは腕を組んで、椅子の背もたれに自分の身体を預けた。そして少し考えてから言った。
 
「ゼフ、セックスしてなくて頭おかしくなってない?誰か可愛い女の子紹介するから結婚しなよ。男の子でも男の娘でもいいけど」
 
「結婚は面倒臭いから、しない。でも頭はおかしくないよ」
「だいたい、6兆フランのお金(かね)を発行するために必要な金(きん)の量の100分の1も、この地球上には存在しないんだけど」
 
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ここで場面が切り替わって振袖姿の元原マミが登場し解説する。
 
「第一次世界大戦前には、どこの国でも“金本位制”と言って、紙幣は金(きん)と交換できる引換券として発行されていました。ですから6兆フランの紙幣を発行するためにはそれに相当する量の金(きん)が必要です。当時の交換レートは1フラン=9/31 (31分の9)グラム = 0.2903g なので、6兆フランの紙幣発行には174万トンの金塊が必要です」
 
といって、下のような計算式を書いたフロップを掲げる。
 
6,000,000,000,000 F × (9/31) g/F = 1,741,935,483,871 g
 
(桁が大きすぎて分からんという声多数)
 
「2022年現在、人類がこれまでに採掘した金の総量は20万トンくらいと言われます。100年経ってもゼフィランが言っている量の10分の1くらいですね。でもミレイユは100分の1と言っているので、きっと当時はまだ1500トン程度だったのでしょう。つまりゼフィランは地上に存在する金(きん)総量の100倍の金(きん)を持って来ようとしているのです」
 
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と元原マミは言った。
 

場面が戻る。
 
ゼフィランは言った。
「地上には無くても400km上空にはあるさ」
 
ミレイユは考えてから言った。
「例の天体か!だけど400km上空からどうやって持ってくるのさ?」
「落とす。だからその落とすための土地か欲しい。僕の土地に落ちたら僕のものになるよね?」
 
ミレイユは腕を組んで目を瞑り、5分くらい考えていたが、やがて目を開けて言った。
 
「落とせるの?」
「僕が作った装置で、天体の軌道を変更する。そうすれば落とせる。だからその落とす場所周辺の土地を買って欲しいんだよ」
 
「面白いね。その話乗った」
とミレイユは笑顔で言った。この時、ミレイユの頭の中には最後までのシナリオができていたのであった。
 
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アパルトマンに戻ったゼフィランは地図帳を広げてあちこち見ていた。そしてある場所に印を付けると、何やら多数の数式を書き、それを解いているようであった(*44).
 
ドアをノックする音がある。
「ナタリー?」
と言いながらゼフィランがドアを開けると、可愛いドレスを着た美人の女性(演:木下宏紀)が立っている。
 
「えっと、どなたでしたっけ?」
と尋ねると
 
「ジルダルさんですか?今夜のお供を頼まれてきました」
と可愛い声で言って彼女は、いきなりゼフィランに抱きついてキスした。
 
(悲鳴多数!)(*45)
 
「待って、待って。僕女の子には興味無いから」
と言ってアクアは、もとい、ジルダルは彼女の腕を振り払おうとする。
 
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「あら?だったら男の子の方がいい?」
と彼女は唐突に男声に切り替えて言った。
 

「へ!?」
とジルダルは驚いて、その拍子に彼女(彼?)に押し倒されてしまう。
 
「ぼくは男の子役も女の子役もできるよ。好きな方で逝かせてあげる」
と彼女は男声で言って、ゼフィランのズボンを脱がせようとする。
 
「アレー!」(*40)
とゼフィランは叫びながら何とか彼女の身体を押しのける。
 
「お金はあげるから帰って」
と言って、5フラン硬貨を2枚押しつけると追い出してドアを閉め鍵を掛けた!
 
そして大きく息をしながら呟いた。
 
「ミレイユの馬鹿ぁ!ぼく別に女の子にも男の娘にも興味無いのに」
 
(*40) 腰元が帯を引っ張られて回転しながら叫ぶ声ではなく、きっと arrete (アレットゥ:「やめて」)の言いかけ。
 
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ゼフィランはその後も一晩掛けて計算をしていた。そして軌道変更機に少し改造を加えて窓際にセットする。一晩寝て翌日に望遠鏡でフォーサイス・ハデルスン天体の位置を確認した。
 
そして「これで行ける」と呟くと、買って欲しい土地の場所、正確な緯度経度まで手紙に書く。ルクール銀行に行くと
「これミルに渡して」
と副店長さんに預けた。
 
ゼフィランは銀行からの帰り、部材屋さんでいくつかの部品を買い求めて帰宅する。そして装置の更なる改造に取りかかった。そして手作業で機械の方角を変更しなくても、毎日適切な方向にアンテナが向くようにする方角自動変更システムを取り付けた。
 
「これで放置していてもいいな」
と彼は呟いた。
 
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(*41) 原作では銀行でゼフィランと話すのは伯父(母の兄)のロベール・ルクール (Robert Lecoeur) であるが、後述の理由(*46) により、娘のミレイユが登場することになり、原作のロベールは亡くなっていることにされた。
 
今回の映画ではゼフィランの関係者がほぼ全員設定変更されている。
 
Robert Lecoeur (叔父)→Mireille Lecoeur(従姉)
Vve Thibaut (女やもめ)→Natalie Thibaut (若い娘)
Marcel Leroux (友人)→Marie Leroux [後述]
 
原作ではゼフィランの両親が亡くなったのは彼が18歳の時とされ、ゼフィランの年齢は31歳と記述されているが、それでは演じているアクアの年齢と違いすぎるため、亡くなったのはゼフィランが幼い頃だったことにした。彼は両親が亡くなってから、原作と同じく13年間にわたって年金を受け取っているという設定である。なお彼は天才すぎて学校には行かず独学で様々な学問を修めたと原作には書かれている。実際、エジソンと同じで、こんな天才に教えられる教師なんてほぼ存在しない。
 
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電算機の無い時代に天体計算をしていた人には、しばしば7-8桁の計算を暗算でできる人たちがいた。古い天文学者のノートなどを見ると、10桁以上の連分数を暗算で計算しているとしか思えないメモが残っていたりする。恐らくゼフィランもその類いと思うが、そういう子が筆算とかもせずに答えを出したら、凡人の教師はカンニングしたと思うだろう。
 
ローズ+リリーのマリもこういう才能を持っているという設定である。
 
筆者は昔塾の講師をしていた時、3桁の掛け算を一瞬で答える小学生を見たことがある。「どうして解いた?」と訊いたら「そうだと思いました」と彼は答えた。私は、この子、スポイルされずにこの才能を伸ばせたらいいけどと祈った。
 
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(*42) 原文では残高が10万フランを越えたと書かれている、彼が13年間に受け取った年金総額は1500×13=195,000フランのはずで、10万フランしか残高が残っていなかったら半分も使ったことになり、ルクールが文句を言うとは思えない。彼の生活環境を見るとたぶん生活費で年間200万円程度、書籍や工作材料の購入費で300万円程度、合計500万円、当時のフランて言うと2000フラン程度しか使ってない気がする。実際、ルクールは「いつものように200フラン?」と言っている。これが1ヶ月の費用と考えると年間2400フラン。すると口座残高は (15000-2400)×13 = 163,800 つまり16万フラン程度のはず。それでセリフは“15万フラン”に書き直した。
 
(*43) フランスではわりと最近まで、30歳までに女性と結婚しなかった男は恐らく同性愛者なのだろうと周囲から思われて誰も縁談を持って来なくなっていたらしい。原作のゼフィランは31歳である。但しこの映画ではゼフィランは23-24歳くらいの設定である。
 
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(*44)この数式は、天文学の専門家に頼んで、衛星の軌道を計算する計算式を書いてもらったものを元に、それをアクアが書き写している。
 
(*45) 女の子(男の娘?)がジルダルに抱きつくシーンは例によって悲鳴多数であった!でも「みのりちゃんならいいか」と言われた。羽柴みのりは木下宏紀の芸名だが、彼はこの芸名を現在使用していない。
 
このシーンの外国版での吹き替えは、女性俳優と男性俳優が2人で行った。但し日本国内で制作した英語版については本人が両声で吹き替えた。
 

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(*46) ■重要コメント■
 
ゼフィラン・ジルダル役には当初、松田理史が予定されていた。また“ロベール”・ルクール役にはキャスティングは未定だったが、50代の俳優さんを当てる予定だった。
 
ところが制作にモンド・ブルーメ社が関わって来て世界配信されることになった時点で問題が生じた。
 
この映画では、アクアと宇菜が演じるカップルが何度も結婚・離婚を繰り返す。これが、世界配信した時に、宗教規律の厳しい国では宗教指導者の怒りを買うことが容易に予想された。
 
そこで、モンド・ブルーメのジールマン社長と§§ミュージックのコスモス社長の直接の電話会談(コスモスはドイツ語が話せる)で、そういう規律の厳しい国に配信するバージョンでは、アクアと宇菜の結婚・離婚シーンを(最後の結婚式を除いて)全てカットすることが決まった。判事とケイトだけの会話部分は残す。また2人が馬に乗っているシーンやN型フォードを走らせているシーンは残るが多分意味が分からないかも。
 
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しかしそうなると、アクアと宇菜の出番は極端に減ってしまう。
 
主役なのに!!
 
そこで急遽、アクアにジルダルも演じさせることにしたのである。すると、“アクアちゃんが出るなら当然アクオ君も出るよね?”と期待する海外の“アクオ・ファン”の期待を裏切らないよう、男女のアクアを出す必要が出てくる。それで、ルクールの娘を登場させることになり、ジルダルとルクールの2人をアクアが演じることになった。従姉弟の顔が似ているのは自然である。結果的にロベールはお亡くなりになったことにされてしまった。
 
結局今回の映画ではアクアは1人3役することになる。
 
ちょっと顔出すだけだからと言われて、オファーを受けたのに!
 
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ジルダルの予定だった松田理史は、アトランティスの船長ダカールの役に回った。彼にフランシスを演じさせる案もあったが美高助監督が反対した。
 
「アクアちゃんの映画なのに、彼に他の女性と結婚する役を演じさせるのは可哀想だよ」
 
アクアと松田理史の関係は“河村班”の主なスタッフや俳優たちにはほぼ知れ渡っている。
 
彼がフランシスを演じる場合は、アクアにジェニーを演じさせてはという意見もあったのだが、これは河村監督が反対した。
 
「親を説得できず、駆け落ちとかもせず、単に運命に流されてしまうジェニーは、アクアの“路線”とは相容れない」
 
アクアが演じる女性は、シンデレラにしても白雪姫にしてもジュリエットにしても“次の映画”のヒロインにしても、自ら状況を打破していく強い女性である。そういう女性を演じるからこそ、アクアは同性たちにも人気が高い。
 
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だから実は大銀行の女性総帥という役柄こそアクアにふさわしいのである。
 
(↑の“同性”はむろん“女性”という意味。アクアがひょっとして男の子かもという話はほぼ忘れられている)
 

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黄金の流星(7)

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