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■黄金の流星(4)

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「これで離婚は成立しました」
と判事は宣言する。
 
2人は各々500ドル紙幣(650万円×2)を出した。
「手数料を取った後は恵まれない人々のために」
「分かりました」
 
それで2人は仲良さそうに手をつないで!判事公邸を出て行った。
 
ケイトは2人を見送って言った。
 
「プロスさん、あの2人、その内、仲直りする気がします」
「そんな気がしたから、取り敢えず離婚は認めた」
と判事も答えた。
 
「でも男同士では、そもそもセックスするのに困りません?」
「男と男、女と女でもセックスする方法はあるらしいよ」
「女同士でもできるんですか!」
「僕は詳しくは知らないけどね」
「うーん・・・勉強してみよう」
 
(女子中学生にこんなセリフ言わせていいのか!?)
 
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(*17) Little endian と Big Endian である。『ガリバー旅行記』では、この論争で戦争が起きた。現在この言葉はコンピュータ用語になっている。
 
数値をコンピュータ内で記録する時に2通りの考え方がある。例えば 03070405h という数を記録する際、ビッグエンディアンとは、アラビア数字を書く時のように、位(くらい)の大きな数字を左側に記録すべきと考えるので例えば1000:3 1001:7 1000:4 1000:5 のように記録する。
 
これに対してリトルエンディアンとは、下位の数を下位アドレスに書くべきと考えるので、例えば 1000:5 1001:4 1002:7 1003:3 のように記録する。
 

 
ビッグエンディアンはデータダンプを人間の目で読みやすい。リトルエンディアンは計算回路が簡単になるので非力なCPuでも高い性能が出せる。
 
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コンピュータ黎明期の頃から2つの考え方には各々支持者が居て決着が付かないのでソフトウェアを移植したりデータ交換をする時は常に注意が必要である。1980年代までの大型計算機はビッグエンディアン、ミニコンはリトルエンディアンを採用するものが多かった。モトローラはビッグエンディアン、インテルはリトルエンディアンで1990年代には、Windows と Macointosh のデータ交換の際に注意が必要だった。最近モバイル機器のCPUとして中心的地位を築いている ARM はバイエンディアンと言って、どちらのモードにも切り替えることができる。
 

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4月22日(水)午後。
 
ある日、ミッツ(内野音子)はフォーサイス(ケンネル)に苦言を言う。
 
「フォーサイスさん、あなたはフランシス・ゴードンという甥がいることをお忘れではないですよね?」
 
「おお、愛しいわがフランシス。彼は私の生きる希望だよ」
「ありがとうございます」
「でもしばらく会ってない気がするなあ、元気かな」
「お昼御飯で、ご一緒だったじゃありませんか!」
「あれ?そうだっけ!?」
 
最近、天体のことしか頭に無いので周りが全く見えていないのである。
 
フォーサイスはミッツと会話しながらもずっと望遠鏡を覗いている。
 
「それで旦那様の目は、ずっと天体に向いているのでしょうか」
とミッツが言うので、フォーサイスは、ミッツの雰囲気にただならぬものを感じ、望遠鏡から目を離してミッツを見た。
 
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「ずっとそういう訳ではないのだけど、今は空から目が離せないんだよ」
とフォーサイスは言った。
 
それでフォーサイスはトムに留守番を頼み、観測台から降りてきた。
 

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「旦那様は、空に夢中になって、大事なことをお忘れになっておられるのではないかと」
「大事なことって・・・何だっけ?」
「大事な甥っ子がご結婚なさることです」
「結婚・・・結婚・・・」
「結婚相手は誰だっけ?とか私にお聞きになったりしませんよね?」
「それを聞いたりはしないけど、なんで君はぼくにそんなこと訊くの?」
「それは明確ですね。質問が答えだからです」
「何の答えだっけ」
「さて、モリス通りにはハデルスン博士の家があります。ここには、博士の奧さんのフローラ・ハデルスンさん、娘のルー・ハデルスン、ジェニー・ハデルスンが住んでいます。あなたの甥が結婚するのはこの4人のうち誰でしょう?」
 
ミッツはわざわざ“ハデルスン”という単語を何度も発音した。フォーサイスはその言葉を聞く度に不快そうな顔をして、自分の拳を、胸・脇腹・頭に当てた。そして彼は質問には答えなかった。
 
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「聞こえてますか?」
「もちろん聞こえてるよ、ミッツ」
と言ってからフォーサイスは、ついにこう発言してしまった。
 
「フランシスはまだ、この結婚のことを考えているのか?」
 

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「彼はもちろん結婚しますし、周囲の私たちもみんなそう思っています。旦那様ももちろん祝福しますよね」
「私の甥がハデルスン博士の娘と結婚するなんて!」
「ジェニー様です。フランシス様が彼女と結婚することに、旦那様は最後の1ドルを賭けてもいいですよ。彼がそれ以上素敵な女性を見付けることなんてありませんから」
 
「彼女がもし素敵な女性であったとしても、あの***の、あの***の、その私が名前を発音できない男の娘が・・・」
 
するとミッツは怒ったように言った。
 
「もうたくさんです」
「待ってくれ。ミッツ。待ってくれ」
とフォーサイスは、うめくように声を出した。
 
(原文 Voyons... Mitz... voyons. 英訳本では Come...Mitz...come)
 
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フォーサイスは懇願するようにミッツを見詰めたが、ミッツは自分のエプロンを脱ぐと、畳んで目の前に置いた。
 
「もう、おいとまします、フォーサイス様に10年仕えましたが(*18)、自分の血肉を間違った使い方をする人に仕えているより、野良犬のように野垂れ死んだ方がマシです」
 
(*18) 原文は「50年仕えてきましたが (Apres cinquante annees de service)」。この映画ではミッツを若いキャラに置換しているのでセリフも「10年」に変えた。
 

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「だって彼が何をしたか分かるかい?」
とフォーサイスは苦悩するように言う。
 
「何をしたんですか?」
とミッツは平然と言う。
 
「彼は盗んだんだ」
「盗んだんですか?」
「そうだ。酷いやりかたで盗んだ」
「へー。彼は何を盗んだんです?あなたの時計ですか?あなたの財布ですか?あなたのハンカチですか?」
「私の天体を盗んだんだ」
 
「天体ですか!それはまた凄いものを盗みますね。天体なんて遙か空の上にあるのに。よくそんなものを盗めるものです。でも、フォーサイスさんは、それが自分のものであると分かるようにちゃんと名前書いてました?名前が書いてないと、道に落ちている石ころのように、誰の物でもないと思って持ち去ったかもしれませんよ。それにフォーサイスさんのものだとしたら、それはお金を出して買ったものですか?あるいは相続したものですか?」
 
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「ミッツ!」
とフォーサイスは自分を見失って彼女に声を荒げた。しかしミッツのほうもここまで抑えていたものが噴き出して応える。
 

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「ここにはミッツなんて居ません、旦那様は悪魔に欺されているんですよ。古い親友と、たかが汚い石ころのことで争うなんて」
「黙れ!」
「黙りませんとも。私を停めたかったら、あなたのお馬鹿な道化師さんでも呼びますか?」
「トムか?」
「もっともトムも私を停められないでしょうね。この国の大統領が大天使ミカエルが来て『この世の終末が到来した』と告げるのを停めきれないくらいに」
とミッツ(内野音子)は言う。
 
フォーサイス(ケンネル)は怒りに震えていたが、といってこの口やかましいものの真剣に自分のことを考えてくれている使用人をクビにすることはできないと思った。
 
フォーサイスは自分の負けを悟った。
 
でも今は負けを認めたくなかった。何とかこの場を逃れる方法がないかと考えた。
 
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上記シーンは1発撮りで、しかも1発でOKが出た。そしてケンネルも内野音子も疲れた表情で「こんな演技2度としたくない」と言った。この2人でなければ成立しないシーンであった。
 

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その時、突然日の光が射したのである。
 
「太陽だ!」
フォーサイスは、一瞬で怒りを忘れ、観測台に登ろうとしたが、その通り道にミッツが居る。押しのけようとしたら、ミッツが崩れるように座り込んでしまった。ミッツも、物凄い精神力を使って、力尽きたのである。
 
(この倒れるシーンが真に迫っていると映画を見た人には言われたが、実はマジで、内野音子は立っていられなくなった)
 
フォーサイスは
「ミッツ!」
と声を挙げて彼女を介抱した。
 
「すみません。少し腹痛がするかも」
「少し休んでいたほうがいい」
と言っていた時、トムの声がする、
 
「旦那様、天体がみえます!」
 
フォーサイスは迷ったもののミッツに
「ここで休んでて」
と言った。そして
「辞職することは許さないからな」
と言うと、観測台への階段を駆け上った。
 
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ミッツはまだ立ち上がれなかったものの、少しだけ笑みを浮かべた。
 
そしてこの日、フォーサイスは天体の3度目の観測に成功したのである。
 
(3度目とは、3/16の観測、ボストン天文台の4/17の観測に次いで3度目)
 

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振袖姿の元原マミが登場して経過を語る。
 
「この時、天体を観測していたのはフォーサイスだけではありませんでした。ハデルスンも同様に天体が現れてから見えなくなるまで追随していました。またピッツヴァーグ天文台やボストン天文台もこれを観測していました」
 
「3度も観測されたことから、この天体が地球を周回する軌道にあるのは確実とみられました。つまり地球の衛星になっていると考えられました。48時間ほど掛けて、この衛星の軌道要素が計算されました。それによると、この衛星は高度400kmの所にあり、公転周期は1時間41分41.93秒と計算されました(*19)」
 

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(*19) 公転周期が1:41:41.93 の衛星の軌道長半径を計算すると、7217.17km となり、地球半径6378kmを引くと地上からの高さは839.17kmになる。しかしヴェルヌは400kmと言っているので、この高度は近地点での高さと思われる。
 
高さ400kmは地球の中心からは 6778km ということになる。すると軌道の離心率は、1-(6778/7217.17) = 0.06085 ということになる。遠地点距離を計算すると、a(1+e) = 7217.17×1.06085 = 7656.34 となり、地球半径 6378を引くと遠地点での地上からの高度は 1278.34km である。
 
距離が3倍になれば明るさはその二乗で9分の1暗くなる。星の等級でいうと2.4等暗くなる。
 

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さて、ここでこの天体のそもそもの等級はどのくらいだろうか?
 
太陽が出ていてもみえるのだから、金星(-3等)より明るいことは確実である。1970年のベネット彗星は-3等程度で昼間でも見えたらしい。
 
この天体の直径は後で出てくるが110mということである。
 
ISS(国際宇宙ステーション)はちょうど地上からの高度400kmの所を周回しており、この天体と比較しやすい。サイズは108.5m×72.8m = 7898.8m2である。一方フォーサイス・ハデルスン天体は直径110mなら投影表面積はπr2= 3.1416×55×55 = 9503m2である。だいたい似たようなサイズと思っていい。
 
ISSは実際には夜空で -1等程度である。これでは太陽が出ている間は(肉眼では)見えないし、初期の段階で火球(-4等以上)と呼ばれたという記述とも一致しない。最初の発見が朝太陽が昇り高度14度に達した中で行われたということから考えてももっと明るいと考えられる。だからこの天体はISSより遙かに反射率が高いと考えたほうがいい。
 
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イリジウム衛星は太陽との位置関係が良いと最高 -9.5等程度の明るさになる(イリジウムフレアと呼ばれる)。この衛星のアンテナ(MMA - Main Mission Antenna)は、図解で見るとだいたい8m×2mくらいのサイズと思われる。イリジウム衛星の高度は780km である。
 
8x2=16, πx(110/2)2=9503
 
と考えると、フォーサイス・ハデルスン天体がイリジウム衛星のアンテナ並みの反射率を持っていた場合は、面積が600倍で距離が半分だから、距離が半分になると明るさは4倍になるので2400倍明るいことが考えられる。等級に直すと8.45等明るくなるので -9.5-8.34 = -18等の明るさとなる。満月が-12.6等なので月の100倍明るい。これはさすがに明るすぎである。こんな明るい天体が地球の引力に捉えられたら、全世界の人が一瞬で気がつく。
 
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となると“火球”という表現が使われていることを考えると、-6等、つまり金星の16倍くらい明るい天体と考えると、物語との記述と結構合う気がする。その場合、遠地点では2.4等落ちて-3.6等と、金星程度の明るさになる。
 
(等級は1等上がるごとに 1000.2= 2.5倍明るくなる)
 
 
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