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■夏の日の想い出・仮面男子伝説(11)

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その後、慎也のお母さん(この人はバラエティ番組で何度か出たことがある)が登場して事務所の社長から
 
「慎也さんが性転換手術を受けて女性になりました」
と告げられる。
 
「えーー!?」
とお母さんはびっくりしたものの
 
「あの子が女の子になりたいのなら、仕方ないですね」
と答える。
 
「慎也さん、女の子になったらきっといいお嫁さんになりますよ」
「いっそ相方の鉄也さんがお嫁さんにしてくれないかしら」
「ああ、それは交渉してみる価値ありますね」
 
「夫婦漫才って結構ありますよね」
「あります、あります。そういう企画で彼女は今後売りましょうかね」
 
などと社長は言っている。
 
「そうだ。お母さん、慎也さんが女の子になったら名前はどうしますか?」
「うーん。じゃ可愛く桜ちゃんとか」
 
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「あ、いいですね。可愛いですよ」
「あの子、桜の咲く頃に生まれたんですよ。女の子だったら桜にするつもりだったんです」
「でしたら、そういう名前になるのは親孝行ですね」
「ええ」
 

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更にテレビは慎也の妹さんにインタビューする。
 
「え?お兄ちゃん、女の子になっちゃったんですか?」
「これからはお姉ちゃんと呼んであげてくださいね」
 
「うっそー。お兄ちゃんにそんな趣味があるなんて知らなかった」
と妹さんも驚いている。
 
「名前は桜になるから」
とそばからお母さんが言っている。
 
「へー。桜か。可愛いじゃん。でも可愛い女の子になるんだっけ?けっこう不細工な顔なのに」
 
と妹さんは無茶苦茶言ってる。
 
「でも女性的な顔かどうかと、本人の性的な指向は無関係ですから」
「確かにそうかもね〜。男の子にも美少年からそうでない人まで、女の子にも可愛い女の子から私みたいに顔が不自由な子までいるから」
 
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「妹さん、可愛いですよ」
「お世辞はやめてください。私、生まれてこの方、親からでさえ可愛いなんて言われたことないですから」
 
しかしこの妹さんの発言に対しては「可愛いのに!」というコメントが多数ツイッターや2chの実況スレに入っていた。
 

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場面は変わって病院の手術室。「手術中」のランプが消える。
 
「手術が終わったようです。ここに入ったのが朝5時でした。現在8時で、3時間ほどの手術だったようです」
と古屋さんが小さな声でレポートする。
 
それで手術室からベッドが運び出されてくる。慎也は麻酔がまだ効いているのか眠っているようである。病室に戻るが、その時、ベッドの枕元にあった「川近慎也」というネームプレートが「川近桜」という名前の物に交換された。
 

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やがて慎也あらため桜が目を覚ます。
 
そこに古屋さんが入ってくる。
 
「おはようございます。桜さん」
「おはようございます。えっと桜って誰?」
 
「慎也さんが性転換手術を受けて女の子になると聞いたら、お母さんがだったら名前は桜にしてと言ったんですよ。ネームプレートもその通り変更しました」
 
と言って古屋さんが枕元を指し示すので振り返ってみてびっくりしている。
 
「お袋の所までわざわざ行ったの?」
と桜は呆れた顔である。
 
「お母さんも妹さんも、桜さんが女の子になるのを歓迎してくれるそうですよ」
「もう、その冗談やめて欲しいんだけど」
 
「手術も無事終わりましたし」
「へ?」
 
「性転換手術は桜さんが寝ている間に朝5時から始めて、さきほど8時頃終了しました」
 
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「嘘!?」
 
と言って桜は布団をめくって、病院用寝間着の裾をめくる。そこは包帯でぐるぐる巻きにされていて、多数のチューブが出ている。
 
「何これ〜!?」
 

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そこにお医者さんが入って来た。
 
「手術は無事終わりました。あなたはもう立派な女性ですよ」
と医師は言う。
 
「これは手術証明書です」
と言って書類を渡される。カメラがその書類を写す。
 
「手術証明書。川近桜。当病院は上記の者に下記の治療を施した。陰茎切断・睾丸除去、膣形成・陰核形成・大陰唇形成・小陰唇形成・乳房隆起。この結果患者はもはや男性ではなく完全な女性であり、全ての男性の義務から解放されるとともに、全ての女性の権利を獲得した。公的私的な書類上の性別も女性に変更されるべきである》
 
「嘘!? 俺手術されちゃったの!?」
「まだ麻酔が切れていないので感覚が無いと思いますが、切れると結構痛くなると思いますので、その時は言ってください。痛み止めを処方します。ちょっと患部を診察しますね」
 
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と言って、医師は桜の寝間着を脱がせる。
 
「嘘!俺女の下着付けてる」
 
「女性になったのですから当然です」
 
上半身に着ていたキャミソールを脱がせると、ブラジャーを付けており、その中には豊かなバストがある。
 
「ひぇー、おっぱいがこんなに出来てる!」
「鉄也さんにお伺いしてDカップのバストにしました」
「なんであいつが決めるんだよ!?」
「鉄也さんは桜さんが女性になったら恋人になってもいいとおっしゃってます」
と古屋さん。
 
「あいつと恋人〜? 俺ホモじゃねーし」
「ホモというのは男性と男性の恋愛ですから。桜さん、もう女性になったから、男性と恋愛するのがストレートですよ」
 
「うっそー!」
 
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それで股間に巻かれている包帯が取られる。息を呑むような声。そして包帯が取られたところには男性器は何もなく、きれいな縦の筋が1本できていた。
 
テレビカメラではその筋の部分だけぼかしが入っていたものの、ペニスや陰嚢が存在していないのは、明白に分かるような映像であった。昼間の番組ではこんな映像も流せないだろうが、さすが深夜の番組である。
 
そしてこの瞬間、ツイッターも2ch実況スレも凄い数の書き込みがあった。
 
「そんな。チンコ無くなってる。玉も無い!」
と桜が衝撃を受けているような声で言う。
 
「ちゃんと手術して女性の形にしましたから」
と医師。
 
「ひどいよぉ。これじゃ俺、結婚できないじゃん」
「男性としては結婚できませんが、女性としてなら結婚できますよ。戸籍上の性別も変更できますから」
 
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「いやだぁ。元に戻してよ」
「女性器を作るのに、男性器を材料として使用しているので無理です。しっかり女性として生きてください」
 
「そんなあ。女になっちゃったら、俺母ちゃんに叱られる」
「ですからお母さんは認めてくれて桜という名前をくれたんですよ。
 

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その時、病室のドアを開けてプラカードを持った、桜の相棒・鉄也が入ってくる。プラカードには「元祖ドッキリ・レポート」という文字が入っている。
 
「え!? これドッキリなの?」
 
お医者さんが笑っている。看護婦さんも笑っている。
 
古屋さんが笑いながら説明する。
 
「これボディスキンを装着したんだよ」
「これ作り物なの?」
「おっぱいからお股まで一続きになってるんだよね。ほら、ここがスキンの端」
 
といって古屋さんは説明する。これは中国製のコスプレ用?ボディスキンである。バスト部分から股間の女性器部分までが一体となった女体偽装スーツで、装着したまま排尿も可能なようになっている。価格も15万円ほどする品だ。
 
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「ほんとだ! 良かった! でもおっぱいはあってもいいような気がしたよ、俺」
と桜。
 
「じゃ、あらためて豊胸手術してもらう?」
「3年くらい考えさせて。でもこれチンコは?」
 
「この中に収納されてるんだけどね」
「今やっと気づいたけど、これすげー締め付けられてる」
「そりゃ男の身体を女の皮膚の中に閉じ込めるから、結構無理してる。長時間付けておくのはよくない」
 
「これ付けられてからどのくらい?」
「3時間経ってるから、そろそろやばいかもね。チンコが圧迫されて壊死してるかも」
「ちょっとぉ!」
 

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ドッキリのプラカードが入って来た所、そしてネタバレした所で
 
「なーんだ」
「やはりフェイクか」
「だと思ったよ」
「でもあのボディスキン、俺も欲しい」
 
と言った書き込みが大量にツイッターなどに出回った。さっそく番組で紹介したボディスキンを売っているオンラインショップのURLを調べ上げて書き込む人もかなりあった。
 
「しかしネタでこの値段の商品はさすがに買えん」
 
という声も多い。
 
「これ買う人は性転換したい男じゃないの?」
「いや本当に性転換したい人は本気で身体を改造するから、やはり女装レイヤーさん向けだよ」
「でも長時間付けてて、マジでチンコが壊死したりして」
「まあ、その時は潔く諦めてチンコ切り落とせばいいよ」
 
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「ちみなにこのお医者さんは役者さん」
「なーんだ」
 
「4月から放送される『ときめき病院物語』で新人医師を演じさせて頂きます倉橋礼次郎です。失礼しました」
 
と医師の格好をした男性が言う。
 
「この病院自体が撮影用のセットなんだよ」
「マジ?」
「実際には廃院になった病院を撮影期間中借りることになってて、今ずっと内装とかも整えているんだけどね」
「だから本物っぽいのか」
 
白衣を着た女性も挨拶して
 
「私は同じく『ときめき病院物語』で新人看護師を演じさせて頂きます沢田峰子です。よろしくお願いします」
と言う。
 
そしてカメラはもうひとりの白衣を着た女性に向く。その女性が恥ずかしがってる!?
 
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「あれ?君は?」
と桜が言う。
 
「すみません。4月から放送される『ときめき病院物語』で院長の息子を演じさせて頂きますアクアです」
 
この看護婦姿のアクアの映像が映った瞬間、凄まじい数のツイートが発生した。
 
「アクアちゃーん!」
「可愛い!」
「やはり女の子役で出るの?」
 
それで桜もアクアに尋ねる。
 
「結局あんた女の子役になったの?」
「違います。僕は息子役なんですけど、プロデューサーさんがこれ着ろこれ着ろって言って、ナースの衣装着せられちゃったんです。スカート恥ずかしい」
 
と言って俯くので、またまた「かゎいい!!」というツイートが大量発生していた。
 

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「ところでこれもう脱いでいい? なんかきついよ、これ」
と桜は言うが、締め付けが凄まじく強くて、ひとりでは脱げないようである。相棒の鉄也が協力して、脱がせる。
 
そして慎也はボディスキンを脱いだ裸の状態でこちらを向いた。
 
その時、テレビでこの番組を見ていた多くの視聴者が衝撃を受けた。
 
「あ、えっと。桜さ。ボディスキンを脱いでも、おっぱいあるんだけど」
と鉄也が言う。
 
カメラはしっかりと桜のバストを映している。これも深夜番組だから容認されるショットだ。
 
「あれ?そうかな」
などと本人は言っている。
 
「ちょっと測ってみよう」
と言って、鉄也がメジャーを出して桜のバストのサイズを測る。
 
「トップバスト89, アンダーバスト75かな」
 
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すると看護婦役の沢田さんがさっとブラサイズ表を取り出す。
 
「これC75のバストなんだけど」
と鉄也。
 
「あれ〜、じゃ俺ほんとに豊胸手術されちゃったの?」
と桜は言っているが、何だか平然とした口調だ。
 
「それからお股にもチンコ無くて、割れ目ちゃんがあるんだけど」
 
カメラの映像にはさすがにボカシが入っているのだが、それでもぶらぶらするものが股間に存在しないことだけは確認できた。
 
「やっぱり俺のチンコ取られちゃったのかなあ」
と本人がやはり平気そうな声で言う。
 
「お前、実は元々女だったのでは?」
と鉄也。
 
こういったやりとりの間、ネットには混乱したような書き込みが多数発生していた。
 

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夏の日の想い出・仮面男子伝説(11)

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