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■夏の日の想い出・仮面男子伝説(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-05-03
 
「女装コンテストですか?」
 
私はΛΛテレビのプロデューサーの話を聞いて、戸惑うように答えた。
 
「12月29日放送なんですよ。ローズ+リリーのライブツアーの日程を確認したのですが、この日はライブは無いですよね」
「ライブは無いですけど、準備などで時間が取れないです」
「番組自体はそれ以前に録画しますので。この手の番組は放送事故が起きやすいもので」
「ああ、確かに」
 
この手の番組では、映してはまずいようなショットが出る可能性、流してはまずいような発言が飛び出す可能性などがある。
 
「2時間のスペシャル番組で収録はたぶん4-5時間になると思います。リハーサルは局のスタッフだけでやりますのでそれ以上のお時間は取らせません。今が旬の男性芸能人20人に出演してもらって美しさを5人の審査員に採点してもらおうという趣旨なんですが、その審査員になって頂けないかと思いまして」
とプロデューサーさん。
 
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「あ、ケイが女装するわけじゃないんだ?」
と横から政子が言う。
 
「私は女装のしようがないよ」
と私は答えておく。
 
「だよね〜。女の子が女装しても仕方ない」
と政子。
「ケイさんは名誉チャンピオンということでもいいですが」
とプロデューサーさん。
「遠慮しておきます」
と私。
 
プロデューサーさんは熱心に私を口説いたものの、私は多忙でもあるしケイのイメージ戦略に反するからということでお断りした。
 
「そうですか。残念です」
とプロデューサーさんは、ほんとに口惜しそうに言ったのだが、その時政子が唐突に言った。
 
「ケイが出ないなら私が審査員で出ようか?」
「ほんとですか? ぜひぜひお願いします」
とプロデューサーさんが嬉しそうに言った。
 
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私は頭を抱えた。
 

「性転換って、どの時点をもって性転換したんだと思う?」
 
唐突に、あきらが訊いた。
 
その日、私と政子は、春から制作を進めていた『雪月花』の音源収録作業がやっと片付き、たまたま連絡がとれた、あきら・小夜子夫妻と遅いディナーを一緒にしていた。
 
「世間的にはさ、やはり性転換手術って凄くインパクトが強いし、日本の法律も性転換手術を受けていることを戸籍上の性別変更の要件にしてるけどさ」
 
とあきらは言うが、私はその後を引き取って言った。
 
「性転換手術ってのは、最終ステップだよね。その前に既に性転換は完了している」
 
「うん、私もそう思うんだ」
「あきらさんは、身体はまだ男かも知れないけど、誰も男だと思ってないでしょう?」
「そうなんだよね〜。私は自分では男のつもりでいるのに」
 
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とあきらが言うと
 
「嘘つくのはよくない」
と小夜子。
 
「自分で男と思っている人が女子トイレを使ったら痴漢だと思うけど」
「いや、男子トイレ使うと騒ぎになるから、世界の平和のために女子トイレを使っている」
「トイレ事情に関してはFTMさんの方が大変かもね」
 
「あ、それは思ったことある」
 
「MTFの場合は初期の段階では女装で出歩いていても、なかなか女子トイレを使う勇気がない。そういう人が男子トイレにいても、女子トイレが混んでいるのでこちらに侵入してきたかと思ってもらえる。でもFTMさんは男装して外を歩く以上、男子トイレを使う以外の選択肢が無い」
 
「最初怖いだろうけどね」
 

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「結局、性転換って、本人が社会的に周囲から女性とみなされる状態で生活するようになった時点が、性転換した時点なんじゃないかなあ」
 
とあきら。
 
「そういう意味では、あきらは高校を出てひとり暮らしするようになった時にもう性転換していたんだろうね」
と小夜子。
 
「最近、そんな気もしてきたんだよ」
「じゃ、仕上げに性転換手術しちゃう?」
「それは待って」
「早く手術したいと思っているくせに」
「うーん・・・」
 
その時、私は唐突に夏のサマフェスの後の打ち上げの時、千里が音羽にこの場にMTF性転換者が5人居ると言ったという話を思い出した。結局その5人って誰だったのだろうか。
 
自分、千里、近藤うさぎ、チェリーツインの桃川さんの4人は間違い無い。しかし5人ということはまだ誰かあの中に私の知らないMTFが居たのだろうか。
 
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「だけど逆にさ」
とあきらは言う。
 
「性転換手術を終えているのに、世間的にはまだ元の性別のまま暮らしている人ってのもたまにいるよね」
「うん。それは社会的な性別の変更が物凄く大変だからだよ。そもそも仕事の問題がある」
 
「古い友人でね。19歳で性転換手術しちゃったんだけど、女として就職することができずに、結局男装してバスの運転手さんをしているという人がいたよ」
とあきら。
 
「それは大変だね」
「仕事は男装でして自宅に戻ると女装。泊まりになる時とか宿舎で女装しているから同僚とかにはバレてるらしいけどね。バスガイドさんと一緒に女湯に入っているらしいし」
「それでも女として仕事させてもらえないんだ?」
 
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「会社って割とそういう組織だよ」
 
と言ってからあきらは付け加えた。
 
「そういう人の場合、確かに性転換手術は済んでいるかも知れないけど、まだ性転換したとは言えないと思うんだよね」
 
私は少し考えてから頷いた。
 
「確かにそうかも知れないね」
 
そんなことを言いながら、私は政子の前に皿が20枚ほど積み上げられているのを眺めていた。
 

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そのあきら夫妻との会食の翌日、2014年11月29日。私は水戸市を訪れた。ここの青柳公園市民体育館でバスケットボールの関東総合選手権大会というのが行われるのだが、私はこの大会に出場する千葉のローキューツというクラブバスケットチームのオーナーになったのである。
 
このチームは2007年に数人の女子大生によって設立されたチームで、初期のメンバーにはU19やU24の日本代表経験者が数人いたものの、すぐに休眠状態に近くなっていた。しかし2009年に千里や友人の麻依子などが参加して、全国大会まで行くチームになった。その後千里たちの世代は辞めたものの、チームの運営費用は経済力のある千里が引き続き負担していた。
 
しかし2013年に千里は別のチーム40minutesを結成して自らはそちらで活動するようになり、そちらも結構強いチームに成長してきた。そこで両者が大会でぶつかる可能性も出てきたので、ローキューツの方は私がオーナーになってくれないかと千里から要請され、快諾したのである。
 
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この日は、どうせ水戸に行くのなら選手を乗っけて行ってと言われたので、私のフィールダーで西船橋駅前で3人拾って乗せて会場に向かった。それ以外に千里が自分のインプレッサに3人、監督の西原さんがフリードスパイクに2人、キャプテンの薫がヴィッツに2人(薫自身も含めて3人)乗せている。
 
千葉ローキューツの選手は現在18人で、それに西原監督・谷地コーチを入れて20人の陣容だが、この日は選手18人のうち11人だけそろうということだった。みんな仕事を持っていたり学生でもバイトがあったりして、なかなか全員そろわないらしい。
 
「ひどい時は6−7人で試合に出る時もあるんですよ」
と私が乗せた選手のひとり、原口揚羽さんが言っていた。
 
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「それ交代ができないじゃないですか」
「そうなんですよ。マジで40分間走り回らないといけないことあります。中学の頃はけっこうあったけど、高校時代はそういうの経験してないですね」
と揚羽さん。
 
「特に原口さんたちの高校は強豪だから交代要員が充分いたでしょうね」
「いや、むしろ私自身がその交代要員だったというか」
「え?でも旭川N高校のキャプテンだったんですよね?」
「だけど、あまりスターターになってないです」
「あらら」
「1つ上に花和(留実子)さん、1つ下には中井(耶麻都)ちゃんって180cm代の選手がいたから、そちら優先で。私はベンチに座るキャプテン」
と揚羽は自嘲気味に語っている。
 
「たいへんですねー」
「スラムダンクの藤真さんみたいな感じかな」
と妹の紫さんが言っている。
「私は監督はしてないけどねー」
 
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この日私が乗せたのは原口姉妹ともうひとり水嶋ソフィアという子であった。3人とも千里の高校の時の後輩らしい。千葉ローキューツの選手には千里の旭川N高校、溝口さんの旭川L女子高など旭川出身の選手が多いということであった。
 
「だけど3人とも結構背が高いのに」
と私は言う。
「私が176cm, 妹が177cmかな。ソフィアは175cm」
と揚羽が言う。
 
「まあ女子トイレに入ってしばしば悲鳴をあげられる」
「あぁぁ」
「女物の服でなかなか安いのが買えないから、結構男物を着てるしね」
「それでますます男と間違えられる」
「大変ですね!」
「まあ子供の頃からのことだから慣れっこですけどね〜」
「結局、背の高い子がたくさん集まっているバスケットチームというのが私たちにとっては安住の場所なんですよ」
 
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私は頷いた。そういう場所があるというのは本当に良いことだ。
 

「みなさん大学生でしたっけ?」
「ソフィアが大学4年、妹が3年で、私は不良OLです」
などと揚羽。
 
「ソフィアさん、就職は?」
「一応内定もらってます。東京都内の会社なんで、私は大学卒業したらこのチーム辞めて、40minutesの方に移籍しようかと思っているんですよ」
とソフィア。
 
「ああ、なるほどね」
「あちらはうちや東京の江戸娘とか茨城のTS大学とかのOGのたまり場になってるから」
「元々あのチームは、うちの千里さんと、TS大学出身の中嶋(橘花)さんが共同で設立して、その後、すぐに江戸娘出身の秋葉(夕子)さんが合流したんですよ」
 
そのあたりの詳しい経緯は聞いていなかったので私は「へー」などと言いながら聞いていた。
 
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「千葉だとローキューツと、茨城だとTS大学と競合するからというので東京で登録したんですが、結果的に江戸娘とは競合して江戸娘の現役・OG対決が結構起きてるんですけどね」
「なるほど」
 

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「それに学校を卒業するとともに所属する都道府県を移籍した場合は、国体にそのまま出られるし」
 
国体ではしばしば「ジプシー選手」が問題になったので、現在、1度国体に出た選手は、学校の卒業や結婚、また18歳未満で親の転勤による引越しなどのやむを得ない理由がない限り、他の都道府県に移動しても移動後2年間は国体に出場することができないことになっている。
 
「私はそのタイミングを逸してしまった」
と揚羽は言っている。
 
「結婚する時に移動できるし、それがうまく行かなかったら子供産む時にはどうせ中断するから、そのタイミングで移動すればいいよ」
と妹さんの紫の方は言っているが
 
「結婚するにしても相手がね〜」
とお姉さんは言っていた。
 
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やがて会場に到着する。千里・薫は到着していたが、まだ監督の車が到着していなかった。
 
ローキューツのメンバーはこの夏のローズ+リリーの苗場ロックフェスティバルと大宮アリーナの公演にも出てもらっていたので、その場に居る全員の顔に見覚えがあった。
 
千里が
「私が40minutesと両方所有していたらまずいだろうということでオーナーを変わってもらうことになったから」
と言って私を紹介すると
 
「よろしくお願いしまーす」
とみんなの声。
 
「まあ、村山ちゃんがしてたのと同様に、大会の参加費とか交通費・宿泊費・食費を出す程度で。給料までは出せないけどごめんね」
と私は言うが
 
「いや、今の仕事もやめたくないから、現状通りアマの立場の方がいいです」
という声があがる。
 
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「プロ志向の人は実業団とか行くしね」
「あるいは大学のバスケ部に入るか」
 

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夏の日の想い出・仮面男子伝説(1)

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