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■夏の日の想い出・仮面男子伝説(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-05-04
 
春のツアーでは、大量のバラとユリの花でステージを埋めたのだが、今回はアルバム・テーマの『雪月花』にちなんで、雪景色のステージが組んであり、そこに大きな満月があって、12ヶ月を象徴する12種類の花(造花)も並んでいるという趣向である。
 
花は1月水仙、2月梅、3月桃、4月桜、5月ツツジ、6月ユリ、7月朝顔、8月ヒマワリ、9月彼岸花、10月金木犀、11月菊、12月バラとしている。12月はバラの季節とは少しずれるのだが、6月にユリを置いたので対称位置の12月にバラを置いたのである。
 
このステージの写真はパンプレットの裏表紙に印刷したほか、入場の際に渡す座席番号券の裏面にも印刷しておいたが、あとでネットで見ると、かなり好評だったようである。(転売防止策の一環で前売券に座席番号は印刷していない。またチケットレスで入場する人もある)
 
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ステージのセットの配置としては、私たちが最前面に立ち、紗幕で遮ることが可能な位置より後ろにスターキッズが陣取っている。ステージ上に屋根に雪が積もった家(割と前面の下手側)、雪の積もったモミの木(ステージ各所5本)、のセットがあり、最奥には冠雪している山の書き割りが上手側にある。また、最奥には金属フレームで組んだ斜面が作られ、そこに12ヶ月の花が植えられたプランターが並べられている。この最奥には投影用のスクリーン(多くの会場ではステージにホリゾント幕があるのでそれを使用する。無い場合は取り付ける)があり、ここに裏から満月や雪の降る様を投影している。
 

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なお私とマリの衣装も前半は雪の妖精をイメージした白いドレスである。但しスカートの形が、マリのはユリをイメージしたマーメイドスカート、私のはバラをイメージしたティアードスカートになっている。
 
しかしめったに雪が降ることのない沖縄で雪景色で始めるというのはちょっと不思議な感じでもあった(沖縄では1977年に1度みぞれが観測されているが、観測記録に残るものではこれが唯一の降雪らしい)。沖縄の観客はちょっと異世界にトリップしたような感覚を味わってくれたかも知れない。
 
なお、ステージの月は最初は左側にあって、ライブが進行するのに合わせて少しずつ右へと動いていくようになっていた。途中でこの仕組みに気づいた人が隣同士「ねぇねぇ」とか「見て見て」とかいった感じで話し合っている姿がライブ中にけっこう見られた。
 
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『サーターアンダギー』の演奏中は後ろの投影幕にはサーターアンダギーを作っている所の動画も投影されていた(公演後にロビーで売っていたサーターアンダギーがかなり売れたらしい)。
 
その演奏の後、挨拶をしてから、そのまま三線の演奏者さんに残ってもらい、『花の里』を演奏する。今度は映像は花が咲き乱れている様子で、この映像は今年の夏にこの曲が生まれた場所、佐賀県で撮影しておいたものである。
 
更に沖縄の楽器・締め太鼓(シメデークー)・ファンソウ(明笛:みんてき)の人に入ってもらい『花の祈り』の沖縄バージョンを演奏する。映像は能登半島の冬季に見られる「波の花」の映像を流したが、この南国の地では想像できないような映像に後で反響が結構あったようである。
 
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演奏してくれた三線・締め太鼓・ファンソウの演奏者を紹介して拍手をもらう。その人たちが上手に下がったところで下手から銀色のオープンカーが入ってくる。音も無く入って来たのでセットか何かと思った人もあったようだが、本物である(パンフレットで紹介している)。
 
京都の自動車製作所トミーカイラが制作した電気自動車のオープンカー、トミーカイラZZ-EV だ。カーマニアの丸花社長の友人が所有しているものを借りたのだが、今回のツアー全部に持っていく予定である。運転していたのは近藤うさぎ、助手席に乗っているのが魚みちるで、ふたりはサラファンを着ている。ふたりがドアを開けて車から降りたところで『雪を割る鈴』を演奏する。
 
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最初は静かに始める。ふたりのダンスもゆっくりしたモーションである。背景には雪がしんしんと降る様が映される。満月も雲のまにまに見える感じである。
 
Aメロ・Bメロを2回演奏した所で、オープンカーの中から、ひとりの少女(と多くの人が思ったようである)が飛び出してくる。実は魚みちるが車を降りた時にドアを開けっ放しにしていたので、密かに忍び寄って、車内に入ってタイミングをはかっていたのである。
 
ステージの上から大きな鈴が降りてくる。《少女》はRPGにでも出てきそうな大きな剣を持ち「えい!」という可愛いかけ声とともに鈴を割る。
 
たちまち小さな鈴がたくさん飛び出してきて、チャラララララララという凄い音がする。そして演奏は突然アップテンポになる。映像はたいまつを囲んで躍る人達の映像に変わる。お月様も夜空に復活する。
 
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私たちの歌も速いリズムに変化する。鈴を割ってくれた《少女》は近藤・魚ペアの横に行き踊り出す。しかしダンスが上手い! ダンサーとしての訓練をしっかり受けている近藤・魚ペアにまけないくらいしっかり踊っている。
 
やがて終曲。
 
大きな拍手があるので、私は
「ダンサー、近藤うさぎ・魚みちる、そして鈴を割ってくれた人は、アクア君です。彼は4月からΛΛテレビで放送される連続ドラマ『ときめき病院物語』に出演する予定です」
 
と紹介する。
 
この私の紹介に何だか会場がざわついている。
 
「えーっと、念のため言っておきますが、アクア君は間違いなく男の子です。女の子ではありません」
と私が言うと
 
「えーーー!?」
という観客の声。
 
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「でも女の子みたいに可愛いですね。実は私の知人の息子さんなんです。多分女の子になりたい男の子とか仮面男子ではないと思います。だよね?」
 
と言うと、アクアは
「女の子になったら?と言われたことはあるし、なんだかたくさんスカートももらったけど、僕自身はその趣味は無いです」
とハイトーンの声で答える。
 
「可愛い!」
と観客の主として女性から声があがっていた。
 

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アクアが退場した後、前半はアルバム『雪月花』や7月に出したシングル『Heart of Orpheus』の中の曲を中心に演奏していった。近藤・魚ペアは前半ずっとダンスをしてくれた。
 
まずはアコスティックな曲で『眠れる愛』『月を回って』『時を戻せるなら』
と演奏する。『時を戻せるなら』にフィーチャーしたオルガンは山森さんに弾いてもらう。
 
最近KARIONのライブでは私の友人のオルガニスト川原夢美に出てもらっているので、山森さんが気にして
「私が弾いていいの?」
と訊かれたものの
「川原はKARIONのスタッフということで。山森さんはスターキッズ&フレンズだから」
と笑顔で答えておいた。
 
「じゃ私もあの娘(こ)に負けないよう頑張る」
と言っていた。充分実力が評価されている山森さんでも、新鋭オルガニストの夢美をおそらく脅威に感じているのだろう。
 
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7月に発売された夢美のCDはクラシック系『四季』がクラシックとしては異例の5万枚、ポップス系『Rose+Lily Karaoke』は12万枚も売れている。ローズ+リリーのオルガン版のヒットに引きずられて『四季』まで売れた感もあり、このあたりは両者を同時発売するというレコード会社の戦略がうまく行った感もある。
 

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なお、今回のライブでアコスティック系の曲に必要なヴァイオリンは今回も私の従姉で音楽大学の准教授をしている蘭若アスカに4〜5人推薦してもらえないかと打診したら彼女の友人でドイツ在住のロッテ・シュタッドラーさんがプライベートに来日中で話を聞き「あ、私にやらせて」などというのでお願いすることにした。
 
彼女はヨーロッパ方面でコンクールを多数制覇しており、若手注目株のヴァイオリニストである。まともにギャラを払うとなると1公演あたり40-50万円払わなければいけないかと思い、アスカに相談したのだが「本人は日本で名前を売りたいと思っているだけだから、友情出演ということで、アゴアシマクラ(食費・交通費・宿泊費)だけ負担すればいい」と言ってくれたので、そういうことにした。むろん各公演場所での最高級ホテルの最高級の部屋を用意し、飛行機はプレミアムクラス、新幹線はグリーン車である。
 
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他には、アルバム制作に協力してくれた伊藤ソナタ・桂城由佳菜、そして私にとっては姉弟子になる高校生の鈴木真知子ちゃんが出てくれることになった。この4人と松村さん、スターキッズの鷹野さんとでヴァイオリンを六重奏する。ストリングセクションのアレンジは風花に頼んだのだが、ロッテさんにしても真知子ちゃんにしても超絶巧いので「こんな凄い人にあまり簡単な譜面は渡せない」と言って、結構悩んでいたようである。
 
私が演奏者を紹介する時「**コンクールで優勝しているロッテ・シュタッドラーさん。彼女のヴァイオリンはグァルネリ・デル・ジェスの作品。1731年作Robintree。購入価格は約4億円だったそうです」と言うと、客席に物凄いざわめきが起きていた。
 
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その後一転して元気な曲を演奏する。ドリームボーイズのダンサー仲間でもあった鮎川ゆまからもらった『ファイト!白雪姫』でまずは会場を盛り上げる。
 
映像も白雪姫が魔法使いのリンゴを食べて倒れるものの王子のキスで目覚め、剣を持って魔法使いである自分の母親に挑んでいくというストーリーになっている。今回のライブで使用している映像はPVを元々制作しているものや過去のライブで流したものはそれを編集して使用し、無いものは新たに撮影している。実際の演奏時間に合わせ付けるのは、★★レコード技術部の雪豊さんという女性の技術者さんが現場で調整してくれている。
 
やや幻想的な『Heart of Orpheus』、明るい恋歌『月下会話:ムーンライト・トーク』と続け、前半最後の曲は『苗場行進曲』である。映像は今年の苗場ロックフェスティバルの映像を使用している。この日は地元の高校の吹奏楽部に出演してもらい、彼女たちのマーチングしながらの演奏に合わせて私たちは歌い、前半の幕を下ろした。
 
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今回のツアーでは各地の高校生バンドあるいは市民バンドなどに出演してもらうことになっている。
 

私たちが休憩している間に、最初前半のヴァイオリンを弾いてくれたロッテさんがステージに出て行き『ツィゴイネルワイゼン』第一楽章を演奏してくれた。
 
クラシックをあまり聴かない人にも抜群の知名度がある曲だし、彼女の演奏技術の高さをアピールするにも絶好の曲である。
 
一流のヴァイオリニストである彼女の演奏のピアノ伴奏はふつうのピアニストという訳にはいかないので、美野里にお願いした。彼女も今回のツアーでは友情出演扱いであるが、実際にはかなり雑用なども引き受けてもらっている。ローズ+リリーの事実上のマネージャーと化している風花にとっても気軽に使いやすい相手だ。美野里についてはホテルは普通の部屋にさせてもらったが、飛行機はプレミアム、新幹線はグリーン車にしたので「極楽・極楽」と喜んでいた。
 
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ロッテさんの演奏の後は、この日は小野寺イルザが今年大ヒットさせた曲『夜紀行』を入れて3曲歌ってくれた。今回のローズ+リリーの幕間ゲストは日替わりでいろいろな人に出てもらうことになっている。イルザは自身のツアーもしている最中なのだが、うまく日程の空いたこの日、沖縄ライブに出演してくれた。
 

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楽屋でイルザの歌を聴きながら着替えていた政子が
 
「イルザちゃん、ほんとに歌が上手くなったね」
と言う。
 
「富士宮ノエル・坂井真紅・山村星歌あたりがアイドルとして人気絶頂な中で小野寺イルザはデビューしたのは彼女たちより後だけど年齢が高かったから、早くアイドルからポップス歌手に進化することが求められた。それで事務所もかなりサポートしてたんだけど、なかなか成果が出なかったんだよね。それが今回の再ブレイクで、やっと認められたという感じかな」
 
と私は言う。
 
「あの子、最初から歌は上手かったですよね」
と氷川さんは言う。
 
「ええ。でも年々進化してます。ほんとに練習頑張ってるんですね。忙しいのに」
と私。
 
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「忙しい子はたくさんステージをこなすから、それが練習代わりになるんじゃないの?」
と政子が言うが
 
「それは違う」
「それは違います」
 
と私も氷川さんも言った。
 
「練習で歌うのとお客さんの前で歌うのとは全く違う。練習では色々なことが試せるし、失敗したなと思ったり、今のところ怪しかったと思ったら、戻ってやり直すことができる。それで納得行くまで繰り返し練習できる。でも本番では失敗が許されないから無難な歌い方になりがちだし、戻ってやり直すこともできない。間違ったら間違ったまま何とか整合性を付ける必要がある。だから本番をたくさんこなしていても練習をあまりしてない歌手は結局、ごまかし方だけは上達するけど、小さくまとまった歌手になってしまう。実際デビューした時は上手かったのに、年々下手になっていく歌手って結構いるでしょ?」
 
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「確かに」
 
「逆に本番をあまり経験していない歌手は本番独特の雰囲気に呑まれてあがってしまいがちだし、トラブルがあった時の対処も下手」
 
「スタジオではいい歌を歌うのにステージがダメって人、割といるよね」
「トラブルの対処が凄く下手な、機転の利かない歌手も結構いますね」
 
「そういう人はスタジオミュージシャンにはなれるけど、人前で演奏する音楽家にもなれないし、ツアーミュージシャンにもなれないね」
 
「つまり練習も本番もどちらもたくさん経験する必要があるのか」
 
「まあ本番を月に1〜2回以上経験して、練習は毎日最低5−6時間やっていれば上達するよ」
と私。
 
「私、2−3時間しか練習してないかも」
と政子。
 
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「車を買ったら、ドライブしながら歌うといいよ。睡眠防止にもなるよ」
「よし。毎日2時間ドライブしよう」
「それで歌の練習と運転の練習の両方ができるね」
 
氷川さんが頷いていた。
 

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