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■夏の日の想い出・夏のセイテン(7)

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サトが持って来たのは《ケイ》の下半身である!
 
サトがそれをケイの上半身が浮かんでいる所の下に置くと、ジョイント金具を取り出して金槌で釘を打って、上半身と下半身をつないで固定してしまった。
 
「これでOK」
とサト。
 
「やった! 私の下半身があった」
と私の声。
 
「この下半身、女の子かな?男の子かな?」
 
などと言ってジュリアがケイの下半身に触っちゃう。
 
「おちんちん付いてないみたいだから、女の子だね」
「ケイ良かったね、女の子になれて」
とミキ。
 
「タカも女の子にしてあげようか?」
とジュリア。
 
「嫌だ」
とタカ。
 
それでやっと演奏が始まった。
 

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モニターを見て、声を出す訳にはいかない美空と政子が笑い転げていた。
 
私は通信設備のスイッチを切り、防音ボックスから出る。ボックスの外で待機していた和泉・小風と一緒にステージに上がる。
 
「こんにちは、KARIONです」
と4人で言って私たちは歌い始めた。
 
今日のステージはアレンジは先日の苗場のものをそのまま流用している。参加しているミュージシャンもほぼ同じである。曲目もほぼ同じだが、MCはほとんどアドリブなので若干違った展開になる場合もある。曲順も多少入れ替わる。
 
『四つの鐘』『雪うさぎたち』『海を渡りて君の元へ』『アメノウズメ』
『魔法のマーマレード』『ビートルズのように』『恋のソニックブーム』
『コーヒーブレイク』『夕映えの街』と演奏して行く。
 
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この『夕映えの街』では苗場と同様に千里が巫女衣装を着けて舞を舞ってくれた。その後フルート三重奏をフィーチャーした『雪のフーガ』を演奏するが、千里は巫女衣装を脱ぎ、その下に着たドレスでこの曲のフルートを吹く。あと2人の演奏者は今日は風花と、もう一人は千里の友人で、都内の音楽大学の大学院生である水野さんという人である。実は「醍醐春海の一部」なのだそうである。
 

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この曲が終わって和泉がMCをしている間に、例によってバスケットのゴールが運び込まれてくる。すると千里は自分のフルートを水野さんに預けてドレスを脱ぐ。ドレスの下にはバスケットのユニフォームを着ている。
 
この巫女→ドレス→ユニフォームという、バックパフォーマーの衣装チェンジには、あれれ?という感じの観客が結構居たようである。
 
ボールが投げ込まれて千里がドリブルを始める。それに合わせてDAIがドラムスを打ち『恋のブザービーター』の演奏が始まる。この演奏の間、千里はずっとボールをドリブルしていて、時々ボールを背中側に回してみたり、あるいは足をくぐらせてみたりなど、芸術的?な動きをするので、客席からそれで歓声があがったりもしていたようである。
 
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そして最後は例によって美空がピーっと笛を吹き、千里はその笛が鳴っている間にシュートし、ボールはダイレクトにゴールネットに飛び込む。7000人ほど居そうな観衆がどよめく。
 
拍手の中、千里はボールをドリブルしながら退場した。
 

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美空が千里を紹介する。
 
「今、『夕映えの街』で巫女舞を披露し、『雪のフーガ』でフルートを吹き、『恋のブザービーター』で素敵なバスケットパフォーマンスをしてくれたのは実はKARIONの曲をいつも書いて下さっている作曲家のひとり醍醐春海さんでした」
 
醍醐春海が公衆の前で紹介されたのはこれが初めてだったので観客はかなりどよめいた。
 
「彼女は中学の時からずっと神社で巫女さんをしていて、以前市民オーケストラでフルートを吹いていましたし、高校時代に日本代表になったこともあるバスケット選手なんですよね。お正月の皇后杯にも2度出場しているそうです。それで曲も書けるって凄いですね。天は彼女に二物どころか四物を与えてますね」
 
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それで拍手が起きるので、千里は龍笛を片手に再登場すると挨拶代わりに短い曲を吹いた。
 
PAを使わずに生の音で7000人入った会場の隅まで音を届ける。そのパワフルな演奏に観客は息を呑むようにしていた。2分ほどの演奏が終わった所で物凄い拍手である。千里は深くお辞儀をして退場した。
 
千里と入れ替わりに、さっきフルートを吹いてくれた風花と水野さんが登場し、トラベリングベルズのメンバーは下がる。そして風花がグロッケン、水野さんがピアノを弾いて、私たちは最後の曲『Crystal Tunes』を歌った。
 

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演奏が終わると暖かい拍手が会場に満ちる。私たちは全員手をつないで斜め上に挙げて。その拍手に答えた。
 
ステージから降りる。機器の入れ替えが始まる。
 
次の出番の南藤由梨奈がこちらを見てお辞儀をする。一緒に居るバックバンドの鮎川ゆまがこちらに手を振る。
 
「あんたたち、ほんとに美しく締めるなあ」
とゆまが笑顔で言う。
 
「取り敢えずここに★★レコードの売上の半分が集中しているね」
と加藤さんが笑いながら言う。
 
「そんなに集まってますかね?」
と隣に居る鷲尾さんが言う。彼女は本来は遠上笑美子の担当のはずだが、何かで徴用されてここに来ているのだろう。また彼女は実はKARIONの初代担当でもある。
 
「KARION、ローズ+リリー、南藤由梨奈、マリ&ケイ、醍醐春海、そしてケイちゃんや醍醐さんがこっそり書いている多数の曲を入れると絶対うちの売り上げの50%越えてる」
 
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こっそり書いてる? 何だそれ?と私は思ったのだが
 
「加藤さん、そのこっそり書いてるというのはやめてください。私もケイちゃんもまるで悪いことしてるみたい」
などと千里は笑って言う。
 
「じゃその件は内密ということで」
と加藤さんが言うので、この話はそこまでとなった。
 
しかし、マリ&ケイが鈴蘭杏梨・秋穂夢久などのペンネームでも書いているように、千里も醍醐春海・鴨乃清見以外のペンネームを持っているのだろうかと私はその時は漠然と考えた。
 
美空の表情を見ると、どうも美空はその一部に関わっている雰囲気だ!
 

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南藤由梨奈(12:30-13:10), Rainbow Flute Bands(13:20-14:00), チェリーツイン(14:10-14:50), XANFUS(15:00-16:00), 遠上笑美子(16:10-16:50), AYA(17:00-18:00), スカイロード(18:10-18:50)を経て19:00からローズ+リリーの出番になる。Bステージのラストである。
 
私たちはそれまで控え室で他のアーティストたちと色々おしゃべりしていた(政子はほとんど寝ていた)が、その中で、ローズクォーツのステージでは、ジュリアがまたまた《ケイ》のフィギュアにぶつかり、今度は首が取れてしまったというのが伝わってきて、私も苦笑した。
 
『ケイ再び死亡!』というのがツイッターで多数ツイートされていたようである。
 

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そして19時。私とマリは今日のBステージの締めくくり役としてステージに上がっていった。
 
「みなさん、こんばんは!ローズ+リリーです!」
と私たちが言うと、観客も
「こんばんは!」
と答えてくれる。
 
「今日は楽しめましたか?」
「楽しめたよ!」
「じゃこれから最後の1時間、マリとケイと一緒に駆け抜けよう!」
「おぉ!」
 
と観客のノリは十分である。
 
それでノリの良い『疾走』から演奏を始める。バックに全力疾走するマラソンランナーの姿が映し出される。これは絵里香さんの高校の時の後輩の選手で、現在宮崎県の企業チームに入って2016年のリオデジャネイロ五輪を目指している人である。
 
この曲の作詞者である高岡さんと夕香さんは愛車のポルシェでハイウェイを疾走するイメージで歌詞を書いたふしがあり、実際この詩を書き上げた直後にそのポルシェで中央道を走っていて激突死してしまったのだが、作曲者の上島先生、当時の★★レコードの担当者であった加藤課長との話し合いで、人間の足で疾走するイメージに「イメージの上書き」をしようという提案がなされ、高岡さんのお父さんおよび夕香さんの妹の支香さんの承諾を得て、こういうビデオを制作したのである。
 
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更にリズミカルな曲を『愛のデュエット』『女神の丘』『Spell on You』
『影たちの夜』と演奏して行く。『女神の丘』では巫女衣装を着けた2人の女性が扇を持って舞ってくれたが、これは近藤うさぎ・魚みちるの2人である。
 
魚みちるは実は1日お稽古を受けただけなのだが、近藤うさぎは高校時代に日本舞踊部に所属していて、男子生徒なのに女物の着物を着て、女踊りや女舞を習っていたらしい。
 
「男なのに女舞が巧いって褒められたんですよ」
などと彼女は笑って言っていた。
 
その曲の後は、ヴァイオリン六重奏の『花園の君』に始まり『花の女王』
『あなたがいない部屋』『雪の恋人たち』と静かな曲を演奏する。
 
そして『雪を割る鈴』を演奏するが、また近藤・魚のペアにダンスで入ってもらい前半は静かな音楽と踊りが続く。しかし今日はKARIONの小風と美空が大きな鈴を運んできて剣道の経験者である小風が美しいフォームで剣を振ると、鈴が割れて多数の小鈴が賑やかな音を立てる。
 
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曲はアップテンポになり、私たちは衣装を一枚脱いでキャミソールとミニスカの衣装になり、曲の後半を歌った。ダンスの2人も激しいダンスに転じ、そのまま終曲へと走り抜ける。
 
続いてMCも無しに曲は『キュピパラ・ペポリカ』『夜間飛行』と続く。夜間飛行には実際のジェット機のエンジン音を録音したものを音源で流した。
 
「それでは最後の歌になりました。元気に行きましょう。『夜宴』」
 
拍手とともに伴奏が始まる。月丘さんのグロッケンが美しく夜空に響く。私たちは5年前にこの曲を書いた時のことを思い出しながら、思いっきり歌った。
 

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演奏が終わって拍手が起きる。私たちは深くお辞儀をする。スターキッズやサポートの演奏者、ダンサーが退場する。
 
拍手がアンコールの拍手に変わる。私たちはステージに立ったままその拍手を受け止めた。スタッフがステージ中央にキーボードを1台運び込んでくる。私はその椅子に座る。政子が私の左側に立つ。
 
「アンコールありがとうございます。『ずっとふたり』」
 
拍手が収まり、私は前奏から弾き始める。そして一緒に歌い出す。昨年KARIONの音源製作をしていた時に、押しかけてきた政子がスタジオで書いた詩に私が曲を付けたのだが、その後、その曲を聞いて政子は全く新たな詩を書いた。可愛らしく、そして暖かい愛の歌である。観衆は静かに聴いてくれている。
 
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やがて歌が終わる。また凄い拍手。私たちは深くお辞儀をして退場する。
 
拍手がまたアンコールを求める拍手になる。
 
スターキッズがステージに戻る。拍手がひときわ強くなる。私とマリもステージに戻る。
 
『ピンザンティン』の前奏が始まると大きな歓声が起きる。観客の一部が早速お玉を振り始める。近藤うさぎ・魚みちるが入って来て、私とマリにお玉を渡す。彼女たちもお玉を振って踊り始める。
 
「サラダを〜作ろう、ピンザンティン、素敵なサラダを」
「サラダを〜食べよう、ピンザンティン、美味しいサラダを」
 
マリのお気に入りの曲のひとつ。食の讃歌である。
 
私たちは元気にこの歌を歌い、この夏の日のステージを終えた。
 
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夏の日の想い出・夏のセイテン(7)

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