広告:まりあ†ほりっく 第4巻 [DVD]
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■夏の日の想い出・夏のセイテン(2)

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その時、「こんにちは」と言って入ってくる人がいる。なんと千里であった。
 
「ああ、居た居た。失礼します。病室に押しかけてすみません」
とベッドに寝ているヒナに挨拶するが、千里はそのベッドのそばに立っている薫を見て、驚いたような顔をする。
 
「あれ〜。薫だ」
「なぜ千里がここに来る?」
 
「知り合い?」
と私が訊くと
 
「今言っていた高校のバスケ部の同輩です」
と薫。
 
「薫、ケイさんの知り合い?」
と千里が訊く。
 
「私の知り合いはそこに寝ているヒナさんで、薫さんはそのお友達」
と私は説明する。
 
「ちょっと待て。何だか訳が分からなくなって来た」
と和泉が言って、状況を整理し始める。
 
「そもそも、千里さんは、なぜここに?」
「さっき★★レコードに寄ったら、加藤さんから冬に書類を頼まれたのよね。政子に連絡したらこの病院に照橋ヒナさんという人のお見舞いに行ってると聞いたから、だったら近くだし持って行くかと思って持って来た。冬も忙しいから所在確認できた時に捕まえないと、なかなか捕まらないから」
 
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と言って、千里は書類の封筒を私に渡した。
 
和泉は少し考えている。
 
「ヒナさんは2012年のKARIONツアーで隠れてキーボードを弾いている蘭子の代りにステージに立って弾いている振りをしてくれたキーボード奏者で、先日のローズクォーツのアルバムのアレンジャー」
 
「薫さんはヒナさんと高校の時の同級生・・・で良かったんだっけ?」
 
「私が東京の高校に通っていた時の同学年です。同じMTFという立場からお互いいろいろ相談相手などになっていました」
と薫。
 
「それで私が北海道の高校に転校して、そこで知り合ったのが千里なんです」
 
「で、ふたりとも女子バスケット部だった?」
「そうそう」
 
「そうか、千里は女子バスケット部に居て、インターハイとかウィンターカップとか出たんだよね?」
と私は質問をはさむ。
 
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「うん、そんなもの」
と千里。
 
「でも私は女子バスケット部には入れてもらえたけど、性別の問題でインターハイとかには行けなかったんですよ」
と薫。
 
「千里、だけどケイさんと知り合いだったんだ?」
と薫が尋ねる。
 
「クロスロードという集まりがあるんだよ。MTFの人やその理解者の。今度薫も連れて行ってあげるよ」
と千里が言う。
 
「それで、さっき言っていたヒーラーさんというのは千里さんの妹さんなんだけどね」
と和泉が言う。
 
「あれ?千里の妹さんって、あの子、元男の子だったの?」
と薫が訊く。
「ああ。玲羅じゃなくて、もうひとり青葉って子がいるんだよ。玲羅は天然女子」
と千里。
 
「妹さん2人居たんだっけ?」
「ちょっと複雑な事情があってね」
 
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結局この場では、お互い誰と誰がどうつながっているのか、混沌としてしまい全員訳が分からなくなっていたので、私は後で和泉・千里と3人で図に描いてみて、やっと理解した。
 
ただ、薫を富山の青葉の所に連れて行ってヒーリングを受けさせることについては、千里がその病室から青葉に電話して承認を得た。
 
「ついでにもし良かったら、私の女性器のヒーリングも」
とヒナが言うので
 
「じゃ一緒に行きましょう。一度ヒーリングしているクライアントは問題無いはず」
と千里は笑顔で言った。
 

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「だけど、これで千里さんも冬も高校時代に性転換していたことが確定したな」
と和泉が言う。
 
「私が性転換したのは大学2年の時だって」と私。
「却下」と和泉。
「私が性転換したのは大学4年の時だけど」と千里。
「全くもって却下」と薫。
 
「ところでこの病室に今居る5人の内4人が性転換女性なんだね。これって何だか凄いね」
と薫が言う。
 
「和泉も実は性転換した元男の子ってことは?」
と私は訊いてみる。
 
「おまえ男だろ?というのは小学生の頃、よく言われた。私、喧嘩しても男の子にめったに負けなかったから」
と和泉。
 
「ふむふむ」
「あと小学1年生の時は同級生に、字まで同じ和泉という名前の男の子がいたんだよ」
「ほほぉ!」
 
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「1年2組の男の子でいずみちゃん、などと言われると本来彼のはずが、私がなぜか呼ばれることが何度かあった」
「それって当然、女の子でいずみちゃんと言われて、向こうが呼ばれていたりして」
 
「萌えシチュエーションっぽい」
 
「運動会の行進で、私が男の子の列に並んで、彼がスカート穿かされて女の子の列に並んだこともあったよ」
 
「やはり女の子っぽい男の子だったんだ!」
「あまり良くは覚えてないけど、おとなしい子だった気はする」
 

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2014年7月25-27日に恒例の苗場ロックフェスティバルが開かれる。私はKARIONでは2009年以来毎年このフェスに参加していたが、今年はローズ+リリーも初参加で、結果的にKARIONとローズ+リリーの双方で参加することになった。KARIONは26(土)、ローズ+リリーは27(日)で、私が両者を掛け持ちしやすいように日程を分けてくれたようである。
 
準備作業などもあるし、私自身他のアーティストのステージも見たかったので、私は政子と一緒に24日(木)の夕方の新幹線で越後湯沢に入り、25日の朝から会場内を見て回った。しかしふたりで一緒に歩いていると結構目立つので、呼び止められてサインを書くというのを10回以上やった。
 
「だけど今日は暑いね」
「凄い晴天だね」
「歩いているだけで消耗する」
「さすがに少し疲れた」
 
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ということで、出演者控室の方に入ってコーヒーなど飲んでいる。するとそこに、最近までAYAのマネージャーをしていた高崎充子が来る。
 
私は軽く会釈をしたのだが
「1人みっけ」
などと充子は言う。
 
「何?何?」
「冬、今日はステージ無いよね?」
「ええ。明日Kで明後日Rです」
 
「じゃちょっと来て」
「何ですか〜?」
「政子ちゃん、冬を数時間貸して」
と充子は政子に言う。
「借り賃は?」
「じゃ東京リッチホテルの御食事券」
と言って、バッグからチケットを取り出して政子に渡す。
 
「おお、素晴らしい。じゃ貸し出します」
「ちょっとちょっと」
「じゃ冬行ってきてね〜」
 

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ということで私は充子に連れられて奥の方のVIPルームに行く。何だか嫌な予感がする。部屋に入ると、懐かしい顔が揃っている。
 
Red Blossom の鮎川ゆま、プリマヴェーラの諏訪ハルカ(花崎レイナ)、ソロ歌手の夢原礼子(松野凛子)および竹下ビビ。
 
「やはり、そういうことか」
と私が言うと
「おお。リーダーが来た」
とレイナが言う。
 
「リーダー?」
「樹梨菜さん、妊娠中だから踊れないんだって」
とゆまが言う。
 
「だから今日は冬がダンスチームのリーダーだよ」
と充子は言った。
 

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「ドリームボーイズ出演するんですか?」
「昨日発表された」
「知らなかった!」
 
「どうもメンバーの中に、こういう活動に消極的な人もいるみたい。それで調整に時間が掛かって直前発表になったみたい。追加で今日のチケット発売したら1時間で売り切れたらしい」
「ドリームボーイズって、いまだにそんなに人気なんですね」
 
「これを機に再結成しないか?とかも言われたらしいけど、メンバー間に温度差があるみたいよ」
「それは仕方ないですね」
 

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蔵田さんや大守さんなど、ドリームボーイズのメンバーがやがて入ってくる。演奏曲目を言われるので振り付けの確認をすることにした。
 
私が左端、それから、レイナ、ヒビ、ゆま、充子、そして右端に凛子が立つ。CD音源に合わせて6人で踊ったが、ブランクはあってもみんな身体が振り付けを覚えている感じである。ほぼ迷ったりすることなく、踊ることができた。
 
「君たち、さすがさすが」
と大守さんが褒めてくれる。
 
「で君たちの今日の素敵な衣装を用意した」
 
みんな大きくため息をつく。全くドリームボーイズのダンサーの衣装というのは毎回ほんとにひどい。ビキニの水着とか浴衣とかチュチュくらいはまだいいのだが、バナナとか大根とかトウモロコシなどの植物系、マウス・携帯電話・メモリースティックなどの電子機器系、書道の筆・定規・コンパスなどの文具系など、随分色々な格好をさせられた。
 
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ドリームボーイズのコンセプトは「格好いいこと・可愛いことはしない!」というもののようである。
 
但し、う○この格好させられたのと、おちんちんの格好をさせられたのは、さすがに没になって世間には出なかった。事務所も最低限の常識があるようである。
 
それでこの日大守さんが出して来たのは、トイレ掃除用の吸盤の形の衣装だ。みんな頭の上に吸盤が付くようになっている。
 
「これはちょっとNGじゃないですか?」
「運営からお叱りをうけますよ」
と私たちは抗議するが
 
「このくらい大丈夫だって」
と大守さんは乗り気である。
 

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ステージは夕方6時からなので、15分前にステージ脇に行くように部屋を出た。私たちの衣装は、上にポンチョみたいなのを羽織り、頭に付ける吸盤は外して手に持って近くまで行った。
 
出番5分前にポンチョを脱ぎ、吸盤を取り付けるが、大守さんが寄ってきて「両端の洋子と凛子はこれ持って」と言われて、白い便座まで持たされた!
 
ともかくもそれで出て行き、ステージが始まる。
 
ここは苗場で最も広い4万人収容のGステージである。
 
「ひっでぇー!」
という声が客席からあがる。衣装の酷さに対してこの声を掛けるのはお客さんの側もお約束なのだが、みんな今日は本気で「酷い」と思ったのではと私は思った。
 
放置して逃げたい気分だが、仕事だし頑張る。
 
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ドリームボーイズのふざけたタイトルだが中身はおしゃれな曲に対してミスマッチな、掃除用吸盤のダンスが続く。
 

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ライブは盛り上がった。私の頭の中にこのバンドと一緒に駆け抜けた11年間が走馬燈のように駆け抜ける。いや、走馬燈なら臨死体験?
 
そんなことをチラリと考えた、最後の1曲の演奏中だった。
 
ひとりの女がステージの端に飛びつき、そのまま上によじ登った。
 
警備員が慌てて駆け寄るが、やはり問題行動を起こしたのが女であったことから、一瞬、警備員の対応が遅れたようだ。何と言っても男の暴漢に警戒している。
 
蔵田さんは目の前の女の動きにもめげず歌を歌い続ける。大守さんがベースの演奏を中止して寄ってきて、蔵田さんをかばうようにしたが、蔵田さんは逆に大守さんをかばうようにその前に出る。蔵田さんはまだマイクを持って歌を歌い続けている。
 
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女が近づいてくる。警備員が2人、やっと自分たちもステージに登った。観客が騒ぐ。
 
私はダンスを中止して、便座を手に持ったまま前面にダッシュした。その時、女がバッグの中から拳銃を取り出す。腕をいっぱい伸ばす。
 
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夏の日の想い出・夏のセイテン(2)

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