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■夏の日の想い出・RPL補間計画(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2013-05-17
 
2009年5月15日、私と政子は以前ローズ+リリーのライブをしたことのある都内スターホールで、友人たちだけを招いた観客30人ほどのシークレットライブを行った。このライブは、私の母と姉、政子の母と伯母も観覧してたくさん手を叩いてくれた。
 
「冬と一緒に、新しくローズ+リリーを作った時は観客0人だったから、30人なんて凄い進化だね」
などと政子は昂揚した顔で語った。物凄く気持ち良さそうな顔をしていた。私たちは楽屋でステージ衣装から学校の制服に着替えているところであった。
 
「そうだね。次は3000人くらいの所で歌えるといいね」
と私は答えて、政子に熱いキスをした。
 

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ライブが終わってから、町添さんが「ちょっとご相談があるのですが」と言い、私と政子、町添さん、それにうちの母と姉、政子の母と伯母の7人だけで近くの洋食屋さんに入った。予約してあったようで個室に案内される。
 
政子が
「料理注文していいですか?」
 
と言った時、一瞬町添さんがビクッとした顔をしたが、すぐに
「いいよ。好きなの頼んで」
と笑顔で言ったので、政子は
 
「わーい」
と言って、ロースステーキ 800g などという恐ろしいオーダーをした。お店の人が
 
「80gですか?」
と訊き直したが政子は
「いえ、800g」
と確認した。
 
「一度にだと冷めちゃうから、200gくらいずつ持って来てもらえます?」
などと言う。
 
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「かしこまりました!」
 
「冬は1000gくらい食べる?」
などと政子は訊く。ウェイターさんがビクッとしたが、
「私はそんなに入らないよお」
 
と言い、100gのステーキに温野菜・パスタ添えというので頼んだ。普通なら60gくらいで充分なのだが、政子のオーダーに引きずられて100gも頼んでしまった。
 
町添さんはチキングラタン、姉はポークカツレツ、うちの母と政子の母は
「一緒につまみましょうか」
と言ってシーザーサラダ、政子の伯母はビーフシチューを頼んでいた。
 
ある程度食事も進み、なごやかなムードになってきた所で町添さんは用件を切り出す。
 
「先月、みなさんに制作を承認して頂きましたベストアルバムもだいたい編集が終わりまして、さきほどのライブの前に、ケイさん、マリさんにも現時点での編集版を聴いていただきました。特に問題が無いということでしたので、これでリリースしようと思います。発売日は6月10日の水曜日を考えています」
 
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と町添さんは説明する。
 
「水曜日発売というのは、ランキング上位を狙うのに一番良かったんですよね?」
と私はわざと質問した。
 
「そうです。お店が商品を並べるタイミングとランキングの集計のサイクルとの兼ね合いで、水曜日発売というか、実際にはお店はその前日の火曜日から店頭に並べるのですが、これがいちばん有利になるんですよ」
 
「だから、人気アーティストの作品は水曜日発売が多いですね」
と私。
 
「ええ。ローズ+リリーは、★★レコードにとって第一級の人気アーティストですから、水曜日に発売日を設定します」
と町添さんは言う。
 
うちの母も政子の母も「へー」という顔をしながらも頷いている。レコード会社が私たちをVIP扱いしてくれていることを再認識してもらうためにこういう話をした。
 
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実際このアルバムは初動が10万来て、週間アルバムランキング1位を獲得する。
 

「それでですね、今回のアルバムに入れていない曲で、ちょっと気になるものがありまして」
と町添さんは本題に入る。
 
「実はマリさん、ケイさんがデビューする以前に、おふたりでデモ音源を作ってあちこちに売り込んでおられまして」
 
「あんたたち、そんなことしてたんだっけ?」
 
私は主として政子の母の方を向いて説明する。
「あれはですね、私がこんな感じで女の子の声が出ることが、政子さんにバレてしまいまして、政子さんが面白がって『女の子ふたりのデュエットしようよ』と言って、それでふたりで作った曲はたくさんあったので、その中で特にデュエットで映える曲を2曲選んで、スタジオを借りて吹き込んだんですよ」
 
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「ああ、なるほど。冬ちゃんって、1年生の頃は男の子の声で話していたけど、最近はそんな感じでいつも女の子の声ですね」
と政子の母。
 
「ええ。私みたいな人を両声類、両方の声が出る類なんて言うんですけどね」
「へー!」
 
「あんた、どっちの声が本当の声なの?」
と姉から尋ねられる。
 
「どちらも本当の私の声だよ、お姉ちゃん。どちらもストレス無く出せるから。右手と左手とどちらも使える人なんかと同じようなものだよ。私、声変わりが始まった小学5年生頃から練習してどちらの声も出るようにしてたんだ」
「ふーん」
 
私はまた政子の母に向いて語る。
 
「それで私と政子さんとのデュエットの音源を作ってみたら凄く良い出来で、何人かに聴かせたら、これ売れるよ〜なんて言われまして。それで私も民謡関係とか、スタジオ関係とかで多数のレコード会社やプロダクションにコネがあったので、結構あちこちにバラまいてみたんです」
 
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「あ、じゃ元々歌手を志していたんですか?」
 
私はその点について説明する。
 
「当時、歌手というのは『なれたらいいな』という半分夢のようなものでしたが、もしデビューできた場合は、私は政子さんと、学業に本当に負担が掛からない程度の範囲、土日限定くらいで活動することを考えていましたし、そういう契約をするつもりでいました。もちろん事前に政子さんの御両親にも承諾を得られるようにきちんと説明させて頂くつもりでした。それが昨年は私自身もよく分からない内に、契約もまだ結ぶ前の段階で、何だか物凄いことになってしまって、政子さんには本当に申し訳無かったと思っています」
 
と私はあらためて政子の母に謝った。政子の母は優しく頷いている。
 
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「それでその時に音源をばらまいていた中で、知人に配った音源のコピーのひとつが、加藤課長まで流れていき、町添部長も聴いてくださって。そもそも私たちのデビューって、それを聴いた町添部長が『この子たち良い!』と言ってくださって決まったらしいんですよ」
 
「あら、そうだったんだ!」
 
その点について町添さんが説明する。
 
「そうなんです。世間ではローズ+リリーは8月に唐突に結成されたユニットだとか代役で適当に作られたユニットなどと思われていますが、★★レコードではおふたりが作った音源の出来が素晴らしかったので、実際は7月から既におふたりをメジャーデビューさせようというプロジェクトが進行していました」
 
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「へー!」
と、うちの母・姉も政子の母・伯母もその件は初耳だったので驚いている。
 
「実際勧誘する前に身元調査も実は実施させて頂いて」
「あらあら」
「おふたりとも、とてもまじめな女子高生だという報告をもらいました」
「うんうん。興信所の人、私を女子高生としか思ってなかったらしい」
 
「まあ、冬は女の子にしか見えないよね」と政子。
 
「あと、大量にデモCDばらまいてたから、実は、私たちが★★レコードからデビューした後で、あちこちのレコード会社10社くらいから、その音源のことで照会があったんですよ」
と私が言うと
 
「えー!?」
とみんな驚いている。
 
「まあ、こんなのは早い者勝ちですね」
 
と町添さんは笑いながら言う。しかし★★レコードが私たちを独占できたのは上島フォンのおかげであっという間にCDを出したからだろうなと私は思った。
 
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そして更に町添さんは説明する。
 
「ですから、私たちはケイさんとマリさんを本当に評価して、そしておふたりの歌を広めることがたくさんの人々を喜ばせ、元気付けることになると思ってこの世界に迎え入れたのだということだけは、お母様たちにも知っていてもらいたいと思います」
 
母たちは感心したように頷いている。こんな話は例の騒動の直後にはとてもできなかった話である。
 
「それでですね、その時のデモ音源はケイさんの友人知人の間、レコード会社などにはかなり出回ったようなのですが、これも既存音源だし、リリースできないかなという話が先日出てきまして」
 
「その音源をそのまま発売するんですか?」
と私の母が尋ねる。
 
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「発売するとしたら、おふたりの声だけそのまま使い、楽器演奏部分は生の演奏に差し替えようと思います。今回のベストアルバムと同じ方式です」
 
「なるほど。うちの娘や政子さんに負担が掛からなければいいと思います」
と、私の母は私の女子制服姿を見つめながら言った。
 
私はドキっとした。さんざん他人からは「お嬢さん」とか「娘さん」とか言われていたが、母が自分で私のことを「娘」と言ってくれたのはこの時が初めてであったと思う。
 
「こちらも、娘や冬ちゃんの時間が取られないのなら問題ないです」
と政子の母も言う。
 
「ただ、新しいCDの発売に関しては、マリさん・ケイさんのお父様との約束で6月19日までということになっていたのですが、今から制作を進めてもこれに間に合わないのですよね」
「ああ」
 
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「それでケイさんと少し相談したのですが、元々デモ音源として作ったものだし、売るのではなく無料でネットに公開しちゃったらという話になりまして」
 
「あら、でも新たに伴奏を入れる費用が掛かるのでは?」
「その費用は私とマリが共同で負担するつもり。だから★★レコードさんには迷惑掛けないよ」
と私は言った。
 
「私たちはどうせ印税でたくさんお金もらうからね。もらったお金から経費を除いた額の半分が税金で取られること考えたら、むしろどんどん費用は発生させたいくらい。あの大騒動でファンの人たちにも心配掛けたから、少しその印税を還元してファンサービスかなと思っているんだけどね」
 
「そうだね、そのくらいサービスしてもいいかもね」
 
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「あの騒動以来、私にもマリにもたくさん励ましのお手紙もらったから、それにも少しだけ応えようかなと思って」
 
「うん、いいんじゃない?」
と私の母は言い、政子の母も
「そうだね。随分プレゼントでおやつとかももらったしね」
と言った。
 
そういうことで『雪の恋人たち/坂道』の「無料配布」が決まったのであった。
 
その間に政子はステーキ800gをペロリと食べ、とても満足そうな顔をしていた。ちなみに私は100gのステーキを半分残してしまったので、それも政子が食べた。
 

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その翌日土曜日。
 
私が自宅で受験勉強をしていたら、居間にいた母が「冬〜、ちょっと来て」と言う。
 
何事だろうと思って出て行くと
「ねえ、この人あんたたちの曲を書いてた人じゃない?」
と言う。
「え?」
 
テレビの画面を見ると、誰かの訃報のようで、私は母の言葉から一瞬、上島先生が亡くなったのかと思ったのだが、亡くなったのは鍋島康平さんであった。『明るい水』の作者だ。
 
「大変だ!」
 
私はすぐに津田社長に連絡を取り、このニュースに気付いてなかった政子にも連絡を取って、取り敢えず通夜に駆けつけることにした。
 
「お姉ちゃん、喪服貸してくれない?」
「あんた学生なんだから、制服でもいいんじゃないの?」
「学生服では行きたくないよ」
「あんた、こないだ女子制服着てたじゃん」
「あれは友だちから借りたんだもん」
「ふーん。やはりこういう時のためにちゃんと自分用の女子制服作っておきなよ」
「うん、今度ね」
 
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ということで姉が喪服を貸してくれたので、それを着て母から借りた真珠のネックレスを付け数珠を持ち、私は津田社長・政子と某所で落ち合い、一緒に通夜の行われる場所に向かった。政子も喪服を着て真珠のネックレスを付けていた。お母さんのを借りたらしい。香典は私たちは幾ら包めば良いのか全く見当が付かなかったので、津田さんに取り敢えず立て替えておいてもらい、後で精算することになっていた。
 
(後で私も政子も100万ずつ払ったが津田さんから「まだ君たちは若いからこのくらいでいい」などと言われた。ホントにこの業界の冠婚葬祭相場は恐ろしい)
 
かれこれ50年以上作曲家として活動してきた人なので、物凄い数の弔問客が来ていた。マスコミも大量に居る。私たちが会場に入っていくとパチパチとフラッシュが焚かれ写真を撮られるが、実際問題として会場入りする人は全員撮られている感じであった。
 
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受付で「△△社代表取締役社長・津田邦弘」「ローズ+リリー・ケイ」
「ローズ+リリー・マリ」名義の香典(重かった!)を出し、記帳もする。そして会場内の椅子に並んで着席した。
 
しばらく読経の声など聞いていたら、肩をトントンと叩かれた。
「おはようございます、丸井さん」
と私は顔がほころぶ。
 
それは上島先生の奥さんのお友だち、丸井ほのかさんだった。11月に上島先生の御自宅を訪問した時、上島先生の手がすくまで、ずっと私たちのおしゃべりの相手をしてくださっていた。
 
「おはよう、ケイちゃん、マリちゃん。あ、そちらは津田さんでしたっけ?」
「はい。おはようございます、丸井さん。ご無沙汰しておりました」
と津田社長も微笑んで挨拶する。
 
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「私、こういう場って苦手だわあ、あ、その列に行こう」
と言って、椅子を動かすと私たちの列に来て、マリの隣に座った。巨体なので座るだけで風圧を感じる。
 
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