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■夏の日の想い出・3年生の秋(2)

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そこで次の作品は、ファンの反応を探る意味もこめて、前々から関わりのあるスイート・ヴァニラズとマリ&ケイに1曲ずつ書いてもらい両A面で出したいということで打診があった。スイート・ヴァニラズにロック系の曲を書いてもらい、マリ&ケイにポップス系の曲を書いてもらおうという趣旨である。私もEliseもこれまでの彼女との交友があるので、受諾した。
 
「男の子だったなんて、全然気付かなかったぞ」とEliseは言っていた。
「ごめんなさーい」
「ちなみにその胸は本物?」
「本物です」
「ホルモン?シリコン?」
「ホルモンですよ」
 
「おちんちんあるの?」
「まだあります」
「たまたまは?」
「中学生の時にこっそり取っちゃいました。親にバレて泣かれたけど」
「ああ。泣かれると辛いね。いっそ怒られたり殴られた方がいいよね」
とLonda。
 
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「私一応きょうだいの中で唯一の男の子だったから。でもお前がそうしたかったんだったら、仕方ないねって言ってもらえた」
「いいお母さんだね」
 
「学校にはどっちの制服で行ってたの?」
「男子の制服で中高6年間通いました。ケイさんみたいに女子制服で通いたかったなあ」
 
「私は女子制服で通ってないけど」
「え?そうなんですか? マリさんから女子制服着たケイさんの写真何枚も見せてもらいましたが」
「マリはそういう写真集めるのが好きなんだよ」
と私は言った。政子は笑っている。
 
「ああ、確かに『通学』はしなかったかもね、高校の時は。中学の時はどうだか分からないけど」と政子は言う。
「なんか意味深な言い回しだな」とElise。
 
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「冬は多重偽装してたみたいだからなあ。実態を知ってそうな唯一の古い友達は凄い口が硬いし。でも冬は中学・高校ともに女子制服の夏服・冬服を持ってますよ。まだクローゼットの中に取ってあるしね」
「ほほお」
「あまり深く考えないでください」
 
「冬は唯香が男の子って知ってたの?」とElise。
「最初博多で会った時は気付かなかったですよ。去年の12月にロシアフェアで再度会った時に気付きました」
「へー。同類の冬にもすぐには分からないって、かなり凄いんじゃない?」
「ええ。唯香ちゃんは完璧な女の子ですよ。だから、私も普通に女の子と思って付き合ってますよ」
 
「よし。私もそうしよう。で、唯香、今夜セックスしない?」
と言ってEliseはLondaからどつかれていた。
 
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そして5月、新譜『灼熱の嵐/言いかけてやめないで』が発売された。前作性別カムアウトで話題になり2万枚売れた『私のパラソル/恋愛帰宅倶楽部』
からは完璧な路線転換である。この新譜は7万枚売れて路線転換の正しさを裏付けた。
 
問題は個別ダウンロードの比率だったのだが、ロック調の『灼熱の嵐』6割、ポップス調の『言いかけてやめないで』4割で、完全に票が割れた。レコード会社もプロダクションも悩んでしまったのだが、とりあえず次の作品もまたスイート・ヴァニラズとマリ&ケイ1曲ずつで出してみようということになってしまったのであった。
 

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今回の曲『ラブ・レールガン』(スイート・ヴァニラズの作品)『私は誘惑人形』
(マリ&ケイの作品)は、Elise, Londa, 私、政子の4人が同席して制作を進めた。前回は★★レコードの北川さんが全体のまとめをしたのだが、Eliseからの申し入れでこの4人でまとめさせて欲しいということにした。ミクシングも私が行う。伴奏はスタジオミュージシャンの人たちだが、前作と同じメンバーが揃った。
 
「なあ、冬、この子の作品、当面はスイート・ヴァニラズとマリ&ケイで書いてあげない?」とEliseは言った。
 
「私もそれがいいんじゃないかって気がするんですよね。唯香って、元気な女の子って感じで、けっこうスイート・ヴァニラズやローズ+リリーと世界観が近いような気がするんですよね」と私。
 
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「町添さんは私たちの負荷を心配してる感じだけど、時間的な余裕がある中での制作なら何とかなりそうな気もするんだよね」
「ええ。こちらも多分何とかなります」
 
「しかし前作が7万枚だけど、前回は結構手探りの部分もあったからね。今度は私も冬も唯香の『使い方』が分かってきたから、ゴールドディスク狙いたいね」
とElise。
「ゴールド狙える素材だと思いますよ、唯香は」と私。
 

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「ところで、マリ&ケイの作品って、作詞作曲マリ&ケイとクレジットされるけど、実際にはマリ作詞・ケイ作曲だよね」
「そうですね。でも精神的にはやはり共作してるんです。政子が詩を書く時には私がいないといけないし、私が曲を書くときも政子がいないといけないんです」
「なるほどね」
「実際は詩と曲は一緒にできていて、その詩の部分が政子から、曲の部分が私から別れて紡ぎ出されてくる感じなんですよね。テレビの電波が音声信号と映像信号に別れて伝搬して、端末でひとつにまとめられるのに似てます」
「ああ」
「でもたまに私が詩まで書いてることもあるし、政子が曲まで書いてることもありますよ」
「へー!」
 
「スイート・ヴァニラズも作詞作曲スイート・ヴァニラズだけど、実際には大抵Elise作詞 Londa作曲ですよね」
「そうそう。でも曲を仕上げる過程では5人でかなり議論するからね。だからこれは5人みんなの作品だよねといって全部スイート・ヴァニラズでクレジットすることにした。印税も山分け。で実はこちらもたまに他のメンバーが詩や曲を書いている場合もある」
 
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「『祭り』はたぶんCarolさんでしょ、曲を書いたの?」
「なんで、そんなどこにも公表してないこと分かるのさ?」
 

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「しかし今度の曲がヒットしたら、唯香ちゃんも性転換手術代、ゲットできるね」
「ええ。売り上げの1%もらえる契約だから。こないだのでも、通帳見てびっくり」
と唯香。
 
「だけど売れちゃうと、性転換手術受ける時間が取れないね」
「そうなんです。ケイさんは手術受けて1ヶ月後にライブツアーやったんでしょ?私、さすがにそんな体力の自信無いです。最低半年は休みたい」
「なかなか半年も休ませてくれないよね、人気歌手は」
 
「それでも春奈は手術してから来月のツアーまで2ヶ月半休むけどね」
「それも充分超人的です!」
 

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10月から私たちはテレビに出演することになった。前々から私たちを口説いていた◇◇テレビの響原部長のお誘いに乗ることにした。バラエティ番組のエンディングテーマを歌うのだが、番組の収録がそもそも2週分ずつまとめて行われるので、私たちも月に2回の収録である。
 
番組の収録が行われたスタジオの片隅で、ふつうの格好でふたりで並んで歌を歌うだけであるが、番組に出ていたタレントさんたちが、まじめに歌っている私たちの周りで、おかしなポーズをしたりして笑わせようとするので、それを黙殺して歌ってくださいという指定だった。私はつい笑みが漏れたりすることもあったが、政子は全く笑わずに無表情で歌っていた。
 
「だって別に面白くないもん」などと政子は言っていたが、「それ、あの人達の前で言わないようにね。傷つくから」と私は言っておいた。
 
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このエンディングテーマ曲『愛の中心』は、中堅の歌手・支香さんが歌うオープニングテーマ『単純な朝』とカップリングされて、10月5日に発売された。どちらもマリ&ケイの作品である。
 
「でも支香さんって凄く背が高いね」と放送局のカフェで政子は言った。
「175cmくらいあるよね。高校時代はお姉さんと一緒にモデルやってたらしいよ」
「あの事故で亡くなった人ね?」
「そうそう。ワンティスのリーダー、高岡さんと一緒に」
 
「・・・・あれ?まさか春の時の騒動の上島先生の浮気相手って」
「しっ!」
と私は言ってあたりを見回した。幸いにも近くには記者っぽい人はいない。しかしここはその手の話をするにはヤバすぎる場所だ。
 
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「冬、知ってたの?」と政子は小声で訊く。
「あの写真のシルエットの身長見てわかったよ。ふたりが友人以上の関係っぽいのは、ちょっとした偶然で知ってたから。たぶん響原さんも分かってたと思う。だから支香さんも今回の仕事は謹慎明けなんだよ。この半年、どこの局にも出てなかったし、CDも出してなかったでしょ?」
 
「うーん。。。大人の世界って怖い」
と政子はマジな顔で言った。
 

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10月19日金曜日。ローズ+リリーの新譜『出会い/宇宙恋愛伝説』が発売になった。ローズ+リリーの9枚目のシングルである。
(1:明るい水 2:その時 3:甘い蜜(*) 4:涙のピアス(*) 5:可愛くなろう 6:天使に逢えたら(*) 7:神様お願い(*) 8:夢舞空 *はミリオンヒット)
 
『出会い』は今年のお正月に私の実家で政子が書いたもので、通作歌曲形式という珍しい形式の歌である。シューベルトの『魔王』などがこの形式で書かれているが、「1番」「2番」とか「Aメロ」「Bメロ」「サビ」などの概念が無く、最初から最後まで、全て異なるメロディラインで歌が進行する。別の見方をすると「Aメロ」から「Zメロ」くらいまであるが、「Aメロ」が2度3度出てきたりはしないのである。(正確には28個のメロディから出来ていて、前奏・間奏・終奏も含めて260小節の曲である)
 
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偶然の出会いから恋が始まりふたりが結ばれていく過程が歌われているが、詩の進行にあわせてずっとオリジナルのメロディが付けられ、曲の盛り上がりは転調などで表現されている。
 
『宇宙恋愛伝説』は8月に金沢のホテルで書いたもので、こちらは普通の繰り返しのある歌(有節歌曲形式)だが、異様に長い歌詞で、32小節(ABCA型)の歌が10番まであり演奏時間は12分ほどに及ぶ。内容はスペースオペラ的な恋愛ロマンスである。女戦士と王子のせつない恋を描いている。
 
前回の「夢舞空」も実験色の強いシングルだったが、今回のは全くセールスを考えていない、実験そのものという感じのシングルであった。
 
町添さんが「まあ、こういうのも面白いけど、次は売れるようなの作ってね」
と言ったほどであった。
 
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しかしこんな実験的な曲であるにも関わらず、このシングルはCD/DL合わせて30万枚も売れたのである。ファンは本当にありがたい。
 

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発売当日。私たちは札幌にあるJFN系の放送局AIR-Gに来た。全国のFM局に流す番組の中で10分ほどの枠を取ってもらっていた。
 
「こんにちは〜、ローズ+リリーの出しゃばり屋ケイです」
「こんにちは〜、ローズ+リリーの影の実力者マリです」
「今日はちょっと事情があって、札幌に来ております」
「札幌は蟹にポテトにイカにトウモロコシに牛肉にと美味しいものばかりですね」
「マリは新千歳に着くなりラーメン食べてたね」
 
「美味しかったよお。ケイにも少し分けてあげたじゃん」
「さて、クイズ。マリはラーメンを何杯食べたでしょう?答えを #roselily でツイートした方の中で早くタイムラインに表示された正解の方、先着3名に素敵なプレゼントがあります。2回以上ツイートした人は最初のツイートのみ有効とさせていただきます」
 
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「ところで今日、私たちの新しいシングルが発売になりました。全国のFM局さんには、事前にたくさん曲の一部を流して頂いて、本当にありがたいです」
「でも、今回のシングルの曲はどちらも凄く長い曲ですね」
「おかげで、普通のシングルCDの収録時間に納まらなかったので今回は12cmCD、マキシシングルのサイズで発売させていただいておりますが、お値段は普通のシングルのお値段800円ですので」
 
「『出会い』は8分ほど、『宇宙恋愛伝説』は12分ほどの曲ですね」
「しかしよくそんなに長い詩を書きますね、マリさん」
「ケイさんも、よくこんなに長い曲を書きましたね」
「ええ。『宇宙恋愛伝説』の方はふつうの形式だからまだいいのですが、『出会い』
の方は繰り返しの無い、通作歌曲形式という形式で書いたので、これだけで普通の曲を10個くらい書くエネルギー使いました」
「あらあら、お疲れ様です」
 
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「はい。ラーメン当てクイズは終了します。正解は5杯でした。よく食べますね。正解で早くツイートした先着3名は**** さん、****さん、****さんでした。プレゼントの内容はこのあと説明します」
 
「ところで年末に私たちのライブがありますね」
「はい。12月23日に大分県別府市のアイコンプラザです」
「チケットはソールドアウトしてしまいましたね」
「ええ。申し込みが殺到して抽選になりましたが競争率が5倍だったそうです」
 
「落選した方、ごめんなさいねー」
「来年はもう少し頑張ってライブしますからね〜」
「全国ツアーとかしないの?」
「それは私が大学在学中は辛いなあ。私、ケイと違って勉強と歌手の両立はあまり自信無いから、在学中は単発ライブで勘弁してくださいです」
 
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