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■夏の日の想い出・二足のわらじ(8)

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「だけどこの時期もう願書締め切りした所も多いんじゃないかなあ。ちょっと確認してみよう」
と言って、宏紀は自分のパソコンを寮内のLANにつなぎ私立高校の入試日程を確認した。
 
「ありゃあ、大抵のところがもう締め切ってるよ」
「え?そうですか?」
「参ったなあ。ぼくも昨日まで舞音の音源制作やってたから」
「済みません、お忙しい所」
 
実は昨日まで 舞音のシングル『ダリのまねをしたのはだり?』(3/16発売予定)の制作をしていたのである。今日は舞音がCMの撮影に行っているので、今日だけ時間が取れて男子寮に来た。
 
「一葉ちゃん、最後に受けた模試の成績見せて」
「はい」
 

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なかなか出てこなかったが何とか見付けた。
 
「うーん・・・・」
と宏紀が声をあげる。
 
「やばいですか?」
「この成績なら、希望したらほぼ全員入れるような高校しか無理」
「すみませーん」
 
それで、募集締め切りが“今日”以降で、裕紀の成績でも入れるかもという学校は3つしかないことが判明した。それが下記である。
 
S学園(世田谷区・男子寮のすぐ近く・但し女子高!今井葉月や立花紀子の母校)
L高校(葛飾区・入試は面接のみ・単位制・直江ヒカルが通学中)
F学園(多摩市・割と芸能人か多い。WindFly20とか富士川32の子で入っている子がいる)
 

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「この3校、全部今日が締め切りだよ。明日以降の締め切りの学校は、帰国子女枠と、都外受験生枠と、障碍者枠だよ」
「どれにも該当しませんね」
「ぼくの母校のM高校が使えたら寮から歩いて行けるし良かったんだけど、もう願書受付が終わってる」
「ああ」
 
柴田数紀(水森ビーナ)の場合は5月にM高校に編入されたが、彼の場合は北海道で入った高校から編入された形になったので、入れたものである。
 
また広瀬みづほは葛飾区のE学園で2/14に特例の面接をしてもらったが、これも宮崎から引っ越してくるということから例外的に受けさせてもらえたものである。都内に在住している人にそのような特例は適用されない。
 
「これ直接行って願書出そうよ」
「はい」
「女子制服着て」
「え?」
「女子高に男子制服とか着て行ったら門前払いされる」
「それはそうですけど」
 
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でもその場合、ぼく女子として通学するの〜?
 
と裕紀は思った。(←女子高に入ること自体はいいのか?だいたい入れてくれるのか?)
 

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でも裕紀は今通っている中学の女子制服(この制服で通っている訳ではない)を着て、一応怪我防止のためスカートの下にジャージの長ズボンを穿き、木下宏紀のバイクの後ろに乗り、3つの高校を巡った。それでとにかく願書の用紙をもらい、その場で願書を書いて提出したのであった。受験料は取り敢えず宏紀が払っておいた。あとで精算することにする。行った順序は
 
世田谷区S学園→葛飾区L高校→多摩市F学園
 
である。S学園では何も言われなかったがL高校では、性別の所で「男」にOをしたら
「君、性別間違ってるよ」
と言われてしまう。
 
「あ、すみません」
「直しておくね」
と言われて、女のほうにOを付けられてしまった!
 
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うーん・・・と思ったがいいことにして次の学校に向かう。S学園では性別のこと言われなかったのに、と思って考えていたら、S学園の願書には性別欄が無かった!ということに気付く。
 
(↑女子校の願書にわざわざ性別欄は設けない)
 
本人はなんで性別欄無かったんだろう?などと考えている。
 
「しかし多摩市は遠いね」
などとバイクを運転している宏紀が言う。
 
「はい。これ寮からでも結構ある気がします」
「F学園に入った場合、通学が大変かも知れないなあ」
 
やがて到着して願書の用紙をもらい書いて提出する。この時、あれ〜。この高校の願書にも性別欄が無い、最近は生徒の性別は特に管理しないのかなあなどと裕紀は思った。
 
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提出したのが16:58で、17時で受付終了だったので、ギリギリだった。
 

「でもうまい具合に試験の日付がずれてるね。とにかく3つとも受けよう」
と帰り道、宏紀は言っていた。
 
「はい。頑張ります」
と裕紀も答えた。
 

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裕紀は翌日2月21日(月)、まずは寮から歩いて行けるS学園の試験を受けに行った。女子高だから女子制服で行きなよ、と言われていたのでちゃんと女子制服を着て行ったが、別に恥ずかしいとは思わなかった。
 
筆記試験は英数国の3科目で半分くらいしか分からなかったが、宏紀からはここに落ちる人は居ないと言われていた。筆記試験が終わってからお昼(お弁当)を窓を開放した体育館で食べる。そのあと体育館付属のトイレに行く。男子トイレに入ろうとしたら
「あんた、そっちは男子トイレ」
と言われる。あっそうか。ぼく今日は女子制服着てるんだったと思い、
「すみません。間違いました」
と言って女子トイレに入った。女子トイレに入るのは慣れているので別に何とも思わなかった。
 
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午後からの面接では好きな作家とか好きなタレントとか訊かれたので、好きな作家は池井戸潤、好きなタレントはアクアと答えておいた。
 

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2月22日(火)は多摩市のF学園の試験を受ける。ここは別に学生服でもいいんじゃないかなあと思ったものの、昨日女子制服で受験したのに“味をしめた”ので、この日も女子制服で出ていった。SCCのドライバーさんに送迎してもらったが、ドライバーさんは裕紀が女子制服を着ていても特に何も言わなかった、
 
筆記試験は昨日のより難しかった。2割くらいしか分からなかった。筆記試験のあとお弁当を食べるが、今日は空いている教室がお昼を食べる場所として指定されていた。
「あれ〜。この教室にいるの女子ばかりだ」
などと思う。
 
男女を分けたのかな?ぼく願書出す時女子制服で来ちゃったから女子のグループに入れられたのかも、などと思った。
 
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食べた後トイレに行くが、トイレマークが付いている所にドアがひとつしか無いので戸惑う。でもみんなそこに入っているようなので裕紀もそこに入った。中にいるのは女子ばかりだが、ぼくも今日は女子制服だし、と思った。
 
面接では好きなクラシック作曲家、好きな画家を尋ねられたので、好きな作曲家はモーツァルト、好きな画家はデルヴォーと答えておいた。
 
この日、昨日のS学園の試験結果が発表されていた。裕紀は合格していたのでホッとした。これでとにかくどこかには行けることが確定した、と思った。
 
(↑ホントに女子校が裕紀を入れてくれるのか?)
 

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2月23日(水)は葛飾区のL高校の試験に出ていった。やはり女子制服に味をしめていたので、女子制服を着て、SCCのドライバーさんに送ってもらい受けに行った。多摩市が遠いと思ってたけど、ここも(四輪で行くと)結構時間がかかるなと思った。
 
どうも都心部が渋滞するのでよけい時間が掛かるようである。宏紀に送ってもらった時はバイクだったから渋滞と無関係に行けたのかもという気もした。
 
ここは筆記試験が無い。面接だけである。面接では「朝型ですか夜型ですか?」とか「恋愛の経験は?」とか訊かれる。「どちらかというと夜型」「恋愛経験は無し」と答えておいた。
 
帰宅すると昨日のF学園の結果が発表されていた。裕紀の受験番号は無かったのでガーン!と思う。女子制服着ていったのまずかったかなあ、などと思った。
 
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(↑筆記試験の成績が悪すぎたのだと思うぞ)
 

この日の夕方、今日受けたL高校の試験結果が発表された。裕紀は合格していた。ホッとする。これでS学園かL高校かどちらかには行けることになった。
 
結果を見てホッとしてたら、母から電話が掛かって来た。
 
「あんた、SY女子高校の入学手続き期限が明日までなんだけど、どうする?」
「え?そんなの受けてないけど」
「姉妹推薦で無試験で合格になってるから。通うんなら明日朝一番に私の口座に24万4千円振り込んでくれない?それ持ってって手続きしてくるから」
 
自分も知らないうちに合格していたとは意外だ。これで都内のS学園、L高校と、埼玉県のSY女子高校と3つの中から進学先を選べばいいわけだ。でも女子高校がぼくを入れてくれるんだっけ?」
 
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(↑何を今更?)
 
でも裕紀は言った。
 
「ごめーん。ぼく信濃町ガールズ続けることにしたから。都内の高校に進学するよ」
「あ、そうなんだ?何て所に行くの?」
「2つ合格してるから、その内どちらに行くと思う。決まったら連絡するよ」
「うん。分かった」
 

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それで電話を切ったのだが、その直後今度は何とコスモス社長から電話がかかってきた。
 
「おはようございます。花園裕紀です」
「今寮まできてるんだけど、1階まで降りてこない?」
「はい」
 
(実はコスモスやゆりこのidカードでは男子寮の2階以上には入れない、1階の共用スペースまでである。花ちゃんは特権が設定されているので入れる)
 
それで裕紀は1階まで降りていき、キュアルームに入る。
 
「こっちで話そう」
と言って、面談室に入る。篠田姉妹のどちらか!が紅茶とケーキを持って来てくれる。
 

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「一葉ちゃんの進学先がまだ決まってないみたいと聞いて心配して来てみた。君からは3月末で退団したいという意向は聞いてたけど、高校に行けなかったら御両親に申し訳無いから」
とコスモス社長は言っている。
 
「あれ・・・退団は撤回したの・・・まだ伝わってませんでした?」
「あ、そうなんだ?良かった。君は歌もダンスもうまいし、演技が凄くうまいからもったいないと思ってた」
とコスモスは言っている。
 
実は今伝達途中である。木下宏紀は花園裕紀が『お気に召すまま』の端役を引き受けたことをまず映画の管理をしている川崎ゆりこにメールし、また彼が退団を撤回したこと、まだ願書締め切りが来ていなかった3つの高校に願書を出したことを佐々木春夏にメールした。
 
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しかしゆりこも佐々木春夏もメールが滞留しているので、それを読んでコスモスに伝えるところまで到達していないのである。
 
これがアクアのこととかであれば、緊急用アドレスを使うので伝達は速いのだが、信濃町ガールズのことだとどうしも時間が掛かる。
 

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「それで高校は?」
とコスモスは尋ねた。
 
「木下宏紀ちゃんが世話を焼いてくれて、まだ応募締め切りが来てなかった3つの高校に願書出して受験して2つに通りました。どちらかに行くつもりです。入学金を月末までに納入しないといけないので、早急に決めるつもりですが」
 
「どことどこ?」
「ひとつはこの男子寮のすぐ近くのS学園で、もうひとつは葛飾区のL高校です」
 
コスモスは腕を組んだ。
 
「L高校は直江ヒカルちゃんが通ってるけど、あの子男子寮からは時間がかかりすぎるから女子寮に引っ越した」
 
「あ、はい」
 
「一方のS学園は女子高」
「ええ」
 
「つまり君は女子高に通うか、女子寮に引っ越すか、どちらかを選ばないといけないわけだ」
 
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「え?」
と言ってから
「え〜〜〜、どうしよう?」
と裕紀は今気付いたように言った。
 
 
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