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■夏の日の想い出・モラトリウム(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2019-02-10
 
 
2019年夏。
 
龍虎(アクア)は高校3年生で、あと半年ちょっとすると卒業である。卒業後は大学などに進学したりはせずに、芸能生活に専念するつもりである。
 
もっとも現在は亡き父(高岡猛獅)の友人である上島雷太さんが設定してくれた「学業絶対優先」条項が契約書にあるので、15時に6時間目が終わるまでは学校にいることができて、その後、教室の掃除をして15時半くらいに学校の職員玄関前まで迎えに来てくれている緑川志穂か高村友香(時には本来は西湖担当のはずの桜木ワルツ)の車に乗って、仕事の現場に入る毎日である。
 
これが卒業すると毎日朝から晩まで仕事づくめになるのでは?と戦々恐々の思いである。
 
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もっとも・・・今みたいに自分が3人いたら何とかなるかも知れないけど、3人いることが、随分バレてきつつあるから、3人分働かされたら全員ダウンするぞ、とそちらも不安である。
 
明確に3人いることを知っているのは今の所、山村マネージャー、千里さん、ケイ先生、くらいだけど、コスモス社長も薄々知っているのではという気がする。コスモス社長、うまいもんなあ。ちょっときつーい、と思っていても、うまくボクを乗せてお仕事引き受けさせちゃうんだもん。
 

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青葉さんからは
「龍ちゃん、そろそろ男になりたいか女になりたいか決めようよ」
と言われている。
 
「男になりたいなら男性ホルモンを活性化させて男らしい身体に変えてあげるし、睾丸も陰茎もずっと大きくなるようにするし、女になりたいなら女性ホルモンを活性化させておっぱいも大きくなるようにして、女らしい身体を発達させて、睾丸は機能停止させるし」
 
「そうですね。20歳までには決めますから、もう少しモラトリウム下さい」
 
「まあ今の状態は性的未分化のまま、腰の骨とかは女性的に発達させちゃってるけどね。女になりたい場合はそういう形に発達させないと赤ちゃん産めないけど、女みたいな腰の骨で男になるのは機能上差し支えないからね」
 
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赤ちゃん?ボク赤ちゃん産めるんだっけ??
 
「今のボクの身体の線って女の子的ですよね?」
「うん。おっぱいを除いてはほぼ女の子だと思うよ。ただ」
「ただ?」
「少しだけおっぱい膨らんでるでしょ?」
「はい。実は」
「女性ホルモンの影響が胸に行かないようにブロックはしているけど、防波堤を越えて漏れてしまう分はどうしてもあるから、この状態をあと2年続けたら多分AAカップくらいの胸は出来てしまうと思う。もっともその後男性ホルモン優位に変更すれば、胸は縮んでいくだろうけどね」
 
「ああ、縮んじゃいます?」
と龍虎が残念そうに言うので、青葉は尋ねた。
 
「おちんちんを大きくする一方でおっぱいも大きくする?」
「いえ、いいです。おっぱいだけ大きくするので構いません」
「え?やはりおっぱい大きくして、ちんちんは小さくする?あるいはいっそ取っちゃう?」
 
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「あ、間違えた。逆です。おちんちんは11-12cmまで大きくして、おっぱいは小さくする方向で」
 
「少し小さくない?普通の男の子だと14-18cmくらいなんだけど」
「そんなに大きくなくてもいいかな」
 
と言いつつ龍虎は『Mはこないだおちんちんの長さ測って13cmだと言ってたけど、あんなに長いと持て余しそう』と思っていた。
 

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龍虎たちは高校3年生なので、同級生たちの中には大学進学に向けて受験勉強に頑張っている人、就職活動をしている人などもいる。就職に向けてたくさん資格試験を受けている人もあるし、夏休みは運転免許を取りに行く人もあるようである。
 
龍虎はこの春にバイクの免許を取ったが、普通免許は卒業式の後、合宿で取りに行こうかという話をコスモス社長とは、している所である。
 
普通免許取れたら・・・・父ゆかりのポルシェが運転出来るなと、それは少し楽しみにしている。千里さんか誰かに同乗してもらえば運転のお許しも出そうだし。
 

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「武野君は卒業した後は進学?」
「うん。ここのC学園は短大しかないから、芸大も受けるけど、通らなかったら♪♪大学の音楽科に行こうかと思っている」
と武野君が答えると
「落ちたら♪♪大学に行こうかと思っている、というのが凄い」
と田中成美が言う。
 
「私絶対♪♪大学に落ちる自信がある」
「田中さん、優秀なのに!」
 
C高校3年男子は、田代龍虎、武野昭徳、田中成美の3人なのだが、この3人の中での呼び方は
 
武野→田代君、田中さん
龍虎→武野君、成美ちゃん
成美→龍ちゃん、武野君
 
である。つまり武野は龍虎を男子、成美を事実上女子として扱っている。成美は龍虎は同性(女性)、武野は異性(男性)とみなしている。龍虎は武野君は男子、成美は女子とみなしている。
 
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別の言い方をすると、武野君は他の2人から男子とみなされ、成美は他の2人から女子とみなされ、龍虎は武野君からは男子、成美からは女子とみなされている。龍虎は武野君・成美の双方から同性とみなされているという考え方もできる。
 
成美は、男子生徒として在籍してはいるものの、事実上ほぼ純粋な女子である。
 
「成美ちゃん、ヴァイオリンはロッカだったよね?」
「ファニョーラ作のロッカね」
 
Giuseppe Rocca (1807-1865), Annibale Fagnola (1866-1939) はいづれもヴァイオリンの名工だが、ファニョーラは他人名義で売ったヴァイオリンが異様に多い。要するにコピー品(早い話が偽物)を作るのが巧い作者だった。そのためロッカの銘が入ったファニョーラ作のヴァイオリンはたくさん出回っている。
 
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「もっともあれは私が所有しているんじゃなくて、ある音楽家の所有物でそれをずっと借りているんだよ」
「へー!そうだったのか」
 
「だけど田中さん、たくさんヴァイオリンコンテストで入賞しているのに」
「一流のコンテストでは優勝経験が無いんだよね〜」
「あぁ」
 
「♪♪大学のヴァイオリン科なんて天才の集まりだもん。私には無理。だから##大学受けるつもり」
「いや。##大学も充分レベルが高い」
 
「それに実は性別問題もある。##大学は性別は自己申告でいいと言ってくれた」
 

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「ねぇ、ここだけの話さ」
と武野君が小さい声で言った。
 
「田中さんって、もう女の子の身体なんでしょ?」
「秘密、と言いたい所だけど、もう3年生だし、この2人にはバラしてもいいかな。実は小学6年生の時に性転換手術を受けたんだよ」
「凄い!小学生の内に受けたのか」
「20歳になるまでは戸籍を変更できないんだよね」
「それ大変だよね」
「中学は理解のある学校で3年間女子制服で通ったけど、高校で音楽できる所で私を女子生徒として受け入れてくれる所が見つからなくてさ」
「ああ」
「そんな時、C学園に“男子枠”ができるという話を聞いたから、そこに入れないかと、そして女子制服で通学できないかと照会したら、男子は第1期生になるから制服が定められていないので、高校生らしい服装ならよいということだったから、女子制服で通うことにしたんだよね」
 
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「確かに女子制服は高校生らしい服装だ」
 
「でも龍ちゃんも性転換手術済みでしょ?ここだけの話」
「えっと・・・」
「だって龍ちゃんからは女の子の香りがするもん」
 
「そうだっけ?」
と武野君が訊いている。
 
「これは本物の女の子であるか、私みたいに男性器が存在しなくて女性ホルモンを摂取している人にしかあり得ないんだよね」
 
「そうか。やはり性転換していたのか」
「ボク性転換はしてないけど」
 
「まあ世間的には隠しておかないといけないんだろうから、誰にも言わないよ」
 
うーん。困った。何と言い訳しようと龍虎Fは焦っていた。
 

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「ちなみに妹2人も性転換手術済み」
と成美は言った。
 
「・・・妹って、それ妹から弟になったの?弟から妹になったの?」
「ふたりとも弟から妹になった。だから息子3人から娘3人になった」
 
「うっそー!?」
「一番下の慶子から見たら、最初上のお兄ちゃんがお姉ちゃんになって、次に下のお兄ちゃんもお姉ちゃんになって、最後は自分も2人の妹になったというところかな」
 
「うーん・・・」
 
「お姉ちゃんたちいいなあ。私も早くおちんちん取りたいと言ってたから、手術が終わったときは凄く喜んでいたよ」
 
「まあ本人が望むのならそれでいいのかな」
 
「私から見たら最初自分がお兄ちゃんと呼ばれる立場からお姉ちゃんと呼ばれる立場になって、その時点では弟2人だったけど、その内妹と弟になって、最後は2人とも妹になった」
 
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「うーん。。。。こういうのって結構遺伝という話は聞くけど」
「ああ。うちの両親はともに怪しい」
「なるほど」
 
「他に兄弟は?」
「今小学2年生の妹がいる」
「その子はえっと・・・」
「生まれた時から女。別に男になりたいというような兆候は見えない」
 
「だったら、その子が子供を産んでくれる可能性があるんだ!」
 
「私が去勢した年に生まれた。その時点で息子3人が全員性転換してしまいそうということで、あらためて子供を作ったんだと思う」
 
「確かに子供3人も作ったのに孫の顔は見られないというのではね」
 
「3人とも小学4年生で精子を採取・冷凍保存した上で去勢して、6年生で性転換手術を受けた。だから将来自分を父親とする子供は作ることができる。私は父親なんかになりたくないけどね」
と成美は言った。
 
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私は宮古島から帰った後、とりあえず停滞していたKARIONの活動を再開させるため、次のアルバムの企画を進めた。昨年は『1024』という変則的なアルバムを出したのたが、今回は『天体観測』というのにしようという話がまとまる。
 
私が休んでいてKARIONの制作は滞っているし、夏休みはアクアが映画制作に入るので和泉も比較的時間が取れる、というので和泉は南米まで皆既日食を見に行ってきた。青葉と前後して現地に入り、前後して帰ってきたのだが、向こうではお互いに遭遇しなかったらしい。かなりの人数がラ・セレナやブエノスアイレス近郊の町などに行っているので、知り合いでも予め連絡を取り合っておかないと会うものでもないかも知れない。
 
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(筆者も2009年奄美での皆既日食に出かけた時、同じ場所に行ったはずの友人と結局会わなかった。向こうは早い時期に申し込んだのでまともな場所に宿泊したからかも知れない。私は体育館に並べられた簡易ベッドで寝た)
 

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楽曲のラインナップはこのようになった。
 
『星降る朝』(泉月)
『太陽の休日』(泉月)
『満月の隠れんぼ』(泉月)
『あなたと私の天体観測』(泉月)
『ねこの人間観測』(泉月)
『惑星X探査日記』(大宮万葉)
『スケーターズ輪っか』(湘南)
『赤い星・青い星』(広花)
『白夜』(照海)
『オーロラ』(照海)
『草むらに寝転がったら広い空があった』(福留彰)
『雨夜の月食』(櫛紀香・黒木信司)
 
4月くらいの段階で、和泉と黒木さん、畠山社長が会談し、昨年は企画物っぽいアルバムで乗り切ったけど、今年はもう少し本格的なアルバムを作りたいが、楽曲が揃わないという話をしたらしい。
 
その時点で私はまだ本調子に程遠かったし、醍醐春海(千里1)も2017年夏以来の不調から抜け出せずにいた。それで私も醍醐も書けない状態ではKARIONの楽曲が全く揃えられないのである。和泉は私の調子が戻るまでモラトリアムにして活動休止もやむを得ないと言ったらしい。品質を下げたアルバムなど出したら、ファンがみんな見捨てる。それよりは1年間休もうと言っていたという。
 
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取り敢えず楽曲を書いてくれそうな人に照会して、しばらくKARIONから離れていた福留彰さんも時間は掛かるかも知れないけどと言って楽曲の提供を約束してくれたという。
 
しかし5月に醍醐春海が復活、7月に私が復活して、やっとアルバム制作のメドが立ったのである。
 

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