【夏の日の想い出・無茶言うなよ】(3)

前頁次頁時間索引目次

1  2  3  4  5  6 
 
4月6日(水)、水谷姉妹名義の2枚目のシングル
『狼が1匹狼が2匹/ダリのまねをしたのはだり?』
が発売された。
 
彼女たちのファーストシングルは昨年9月に発売されており(売上枚数は7万枚でまあまあ売れた部類)、約半年ぶりの自分たち名義のシングルとなった。
 
「ふだん舞音ちゃんと一緒に仕事してるらねー」
「実際その分だけでほとんどの時間が潰れてるよねー」
「ギャラが美味しいからいいけどね」
 
しかし今回は久しぶりの水谷姉妹メインの仕事だった。
 
前回のシングルも、通販サイトのCM曲と森永のお菓子“ダれたチョコシュー”のCM曲であったが、今回も同じ組合せである。『ダリのまねをしたのはだり?』は常滑舞音の曲のカバーである。
 
今回の伴奏は下記のメンツである。
 
Gt.水谷雪花、B.水谷康恵、Dr.長浜夢夜、KB.薬王みなみ
 
キーボードだけが交替した。前回キーボードを弾いた夕波もえこが、あけぼのテレビの仕事で忙しいので(この時期はまだ時間があった)薬王みなみに交替したものである。
 
「でもみなみちゃんの歌売れてるから次回は無理かも」
「というか私たちの“次のシングル”って、あるのだろうか」
「人数が増えてるから忘れられてる人もあるよね」
 
(例えばエーヨとか・・・・)
 

世間の評価
 
「舞音ちゃんの歌が凄くうまいというのがよく分かった」!!
 

4月6日(水).
 
世田谷区M高校の入学式があり、末次一葉(花園裕紀)は、“男子制服”を着て登校し、受付でピンク桜模様のリボンを付けてもらい、入学式に出席した。コロナの折、入学者の氏名読み上げは省略されて「○○○名の入学を許可する」と校長は言った。来賓もPTA会長だけで、式は短時間で終わる。
 
式が終わってから教室に入る。何人か中学でも一緒だった子がいるので視線が合ったら手を振っておいた。しかし何か自分を見る視線が多数あるのは何だろうと思った。テレビとかには出てるけどそんなに売れてる訳でもないしと思う。
 
やがて担任が入ってきて挨拶をする。先生は生徒たちにひとりずつ自己紹介をするよう言った。ここは混合名簿なので性別関係無く単純50音順である。やがて一葉の順番が回ってくる。
 
「F中学から来ました末次一葉です。一枚の葉っぱと書いて一葉(かずは)ですが、この漢字で“いちよう”と読む、お札(さつ)にもなっている有名人が居るので、ぼくの名前もよく“いちよう”とか更に短くして“いちよ”とか読まれてしまいます。個人的には気にしませんので、どう読んでもらっても構いません。生まれた所は埼玉県の大宮。好きな作曲家はモーツァルト、好きな画家はデルヴォー、好きな作家は池井戸潤、好きなタレントはアクアです」
 
と言って座る。
 
質問が出る。
「末次さん、どうして男子制服っぽい服を着てるの?」
「えーっとぼくは男子ですけど」
「また冗談を」
 
「だってピンクのリボン付けてるし」
「え?」
 
それで教室を見回すと、ピンクのリボンを付けているのはみんな女子で、男子はライトブルーのリボンを付けているようだ。
 
なんで、ぼくピンクのリボンもらったの〜〜?
 

ホームルームは取り敢えず先に進む。全員の自己紹介が終わり、委員の指名などをしてホームルームが終わったが、その後で中学で一緒だった元代ちゃんが言った。
 
「一葉(いちよ)ちゃんは、戸籍上男子らしいんですけど、実際はほぼ女子なんですよ。なんか病気で男性器取っちゃったらしくて。だから男子トイレの小便器も使えないし、男子と一緒には着替えられないから別室で着替えてましたね」
 
「へー。病気で取っちゃったんだ?」
「取っちゃったから、おしっこの出方は女の子と同じ。ただ性転換手術したわけじゃないから、割れ目ちゃんとかは作ってないんだって。でもほぼ女の子だから、声も女の子みたいな声だし、体型も女の子の体型だし、バストはCカップあるし、生理もあるみたいだし」
 
どうも自分の性別のことで凄い噂ができあがっていたようだと一葉は思った。
 
「生理もあるのなら本当に女の子なのでは?」
「でも本人は男の子という意識、なんだよね?」
「うん、まあ・・・」
 
ということで、裕紀は半陰陽で男性器を除去してるからほぼ女子。でも意識は男子という形で“理解”されてしまった!
 

「それで女子用男子制服着てるのか」
「声は女の子の声だもんね」
「喉仏も無いし」
「バストもけっこうあるし」
「それCカップ?Dカップありそうだけど」
 
「更衣室はどうするの?」
「中学の時は別室で着替えていたけど女子更衣室でもいいと思うなあ」
「だったらそれで」
 
「トイレも女子トイレ使ったら?」
「うん。ちんちん無いんだったら男子トイレに入ってもしょうがないよ」
 
「だから授業で男女に分かれて何かするような時、たとえば男子は校庭の掃除で女子は体育館の掃除だとか、男子チームと女子チームに別れてサッカーするとか、そんな時は男子に入ってもらって、トイレとか更衣室とかは女子のほうを使ってもらえばいいんじゃない?」
 
「うん、まあそれでもいいかに」
と一葉は同意してしまった(なぜ同意する?)
 
という訳で、一葉(花園裕紀)はほぼ男装女子生徒扱いになってしまった!!
 
(多分ほぼ問題無い)
 

2時間目は身体測定があった。先に女子が呼び出される。
 
一葉は座って居たのだが、気付いた元代ちゃんが誘ってくれた。
 
「一葉ちゃん行こう」
「え?でも」
「だって一葉ちゃん女子に入れられてるから、書類も女子のほうにあるはず」
「確かにそうかも」
 
でもいいのかなあ?などと思いながらも、手をつないでくれた彼女と一緒に保健室に行く。
 
それで保健室に行くが、みんな着衣で並んでいる。あれ〜。脱がなくていいのかな?と思ってたらひとりの子が言った。
 
「身体測定が着衣っていいね」
「ほんとほんと。下着だけになる意味ってほとんど無いもんね」
 
ということでこの学校は着衣測定なので一葉は偽装しているバストをクラスメイトたちに曝さなくて済んだのであった!
 

よかったぁと思ったら、体重と身長を測られた後、カーテンの向こうへと言われる。何?と思ったらひとりずつ内科検診をしまますと言われる。
 
え〜〜〜!?
 
一難去ってまた一難、と思ったが、裕紀はお医者さんが一葉が着けているブレストフォームに気付かない、というのに賭けた。
 
それで制服を脱ぎ下着姿になって、脱いだ服は渡されたビニール袋に入れて持ち、カーテンの向こうに行く。脱衣するカーテン内には1人ずつしか入(い)れない。お医者さんの前の椅子に座る。年配の女性の先生である。ブラジャーの上から聴診器を当てられる。
 
「後ろ向いて」
「はい」
 
それで背中に聴診器を当てられる。そしてまた向き直る。
 
「どこか体調の悪い所はありませんか」
「特に無いです」
「生理は乱れてませんか」
「特に乱れてません」
「はい、いいですよ。ではそのままレントゲンに行ってください」
「あ、はい」
 
ということでブレストフォームを着けていることに先生は気付かなかった!
 

着替えを持ったままカーテンの向こうに行くと出入口そばにレントゲン車が駐まっている。目隠しの衝立が左右に立っている。ここは多少順番待ちが生じるようで、前の順番の佐藤絵美が下着姿のまま待っていた。下着姿の一葉を見てニコッと微笑むのでこちらも微笑んで軽く会釈してからソーシャル・ディスタンスを空けて立った。
 
絵美はすぐにレントゲン車に入っていく。一葉は彼女が立っていた付近に進む。次の順番の元代が下着姿で入ってくるので一葉は笑顔で手を振る。向こうも笑顔で手を振る。一葉はすぐに呼ばれてレントゲン車に入る。絵美が服を着ている最中である。一葉は名前を確認される。
 
掲示を見てくださいと言われる。このように書いてある。
 
「中に入ってから。もし妊娠している場合、妊娠の可能性がある場合、たとえばセックスをした後、まだ最初の生理が来ていない場合は、手をあげてください。そしたら撮影はしません」
 
一葉は妊娠した覚えは無いので、手は挙げず普通に撮影された。
 
セックスした覚えも無いし、などと思う。
 
でもセックスっていまいちよく分からないよね。
 
一葉は可愛い女の子に抱きしめられてキスされて「してもいい?」と訊かれて「うん」と返事する自分を妄想した。その先がよく分からないけど多分何か気持ちいいことするのかな?
 
(↑もしかしてレスビアン願望?)
 
ぼくその内セックスとかするのかなあ。できるかどうか不安だなあ。
 

退出して服を着ていると元代が入ってくる。また手を振る。そして一葉は服を着終わると元代を待ってから一緒に教室に戻った。
 
こうして一葉は、身体測定・内科検診・レントゲンを普通に“女子生徒として”無難に乗り切ったのであった。
 
(女子校に進学しても何とかなってたりして)
 

さて一方、長岡飛鳥は転入初日を女生徒として過ごしてしまったのだが、その日の夜、明日の準備をしていてブリントを見、ギョッとする。
 
「4月7日は身体測定と、3年生は内科検診がありますので、脱ぎにくいシャツやブラウスの着用は避けてください」
 
身体測定・・・
内科検診・・・・・
 
ぼくお股に余計な物があるのはタックで誤魔化せるけど、おっぱいが無いのは誤魔化せないよう。
 
プールの更衣室程度ならじろじろ他人を見たりしないからパッドで何とかなるけど、身体測定で下着姿で並んでたらクラスメイトには胸が無いのバレる。それに内科検診の時ってブラジャーも取るよね?
 
飛鳥は小学校の修学旅行の時、みんなと時間帯をずらしてお風呂に行き、女湯に入っちゃったけど
 
「何年生?」
と聞かれて
「小学4年生でーす」
と答えて、
「4年生ならまだ胸が無いよね」
などと言われた。
 
でも中学3年生で胸が無いのは絶対不審に思われる。
 
どうしよう?
 
と思いながら、いつの間にか眠っていた。
 

飛鳥は身体測定を受けていた。
 
この日はパッドが分かりにくいフルカップのシームレスカップ・ブラジャーを着けていたのでクラスメイトたちには胸が無いことが何とかバレずに済んだ。クラスメイトがふざけて胸に触ったりしたものの、カップの中にシリコンパッドを入れていたので本物みたいな感触があり怪しまれなかった。
 
身長と体重を計られ内科検診を受ける。
 
ここでブラジャーを外さなければならない。
 
それで覚悟を決めてブラを外し、お医者さんの前に座った。
 
「あれ?君胸が無いね。君生理来てるよね?」
「いえ、生理も来てません」
「それはおかしい。ちょっとこちらに来て」
と言って別室に入れられて先生に精密検査?を受けさせられる。
 
「ちょっとお股を見せて」
「はい」
 

それで仕方ないので、飛鳥はパンティを脱いでお股を見せた。
 
「ああ、君クリトリスが大きすぎるね。少し切って小さくしてあげよう」
 
切っちゃうの?
 
と思う間もなく、お医者さんは“クリトリス”の根元にハサミを当てると
 
チョキン
 
と切っちゃった!
 
きゃー!?
 
根元から切った“クリトリス”はゴミ箱に捨てられる。
 
「生理が出てくる穴も空いてないし。ちゃんと穴を作ろうね」
と言ってお医者さんは杭(くい)のようなものをお股の後の方に当てると金鎚で数回叩いた。
 
ひぃー。
 

「うん。これでちゃんと穴ができたね。あと陰唇も癒合しちゃってるから分離しておくね」
 
と言って癒着している陰唇の皮膚を中央でハサミで切り、左右を各々降りたんでちゃんと普通の陰唇の形にした。この時、皮膚の下にあった卵形の物体は
 
「なんか腫瘍ができてるから取っておくね」
と言って切除してゴミ箱に捨てた。
 
それで飛鳥のお股の方は普通の女の子と同じ形になった。
 
「あと胸も大きくしておこうね」
と言って胸に注射をされた。するとバストはみるみる内に大きくなった。Aカップくらいだろうか。
 
「この後は卵巣の働きでもっと成長するよ」
と言われた。
 

そこで目が覚めた。
 
おそるおそるお股に座って溜息をつく。胸にも触ってみたが、特に変わりはない。
 
スマホを見ると5時だ。そろそろ起きてもいいかなと思い、布団から出てトイレに行った。今日の身体測定どうしよう?男の身体で女の子と一緒に身体測定受けるのは無茶だよなあ。やはり正直に性別を申告して謝罪すべきか(←それがよいと思うぞ)などと考えて、ぼーっとしておしっこしていたら、唐突に目の前に髪の長い10歳くらいの女の子が現れた。
 
え?誰?
 
「ぼくは男の娘の味方、魔女っ子・千里ちゃんだよ。君可愛い男の娘だね。中学生?」
「中3ですけど」
と言いながら飛鳥は急いであの付近を拭いてからショーツを上げる。
 
「君ちんちん小さいね。小学3〜4年サイズだよね。それ大きくしてあげようか。そんなに小さかったらあまり遊べないでしょう?」
 
「大きくしたくないです。頑張ってこれ大きくならないようにしてきたんです」
「そうなの?大きいほうが遊び甲斐があるのに。それとも逆に小さくしてあげようか」
「・・・小さくなるものなら小さくしたいなあ」
 
「じゃこれあげる」
と言って、“魔女っ子・千里ちゃん”は飛鳥に赤いチューブと青いチューブを渡した。
 
「赤いチューブの薬をちんちんに塗るとちんちんは小さくなりマス。でも小さくしすぎたと思ったら青いチューブの薬を塗ると大きくなりマス。お勧めは青い薬で大きくしてたくさん遊んだ後、赤い薬で小さくすることネ」
 
それちょっと興味あるかも。
 

「やはり可愛いスカート穿いてちんちんで遊ぶのが男の娘の楽しみだよね。でも薬を塗る時はビニール手袋填めてやってね。手袋着けてなかったら指まで大きくなったり小さくなったりするから」
 
「ちゃんと着けます!」
「取り敢えずビニール手袋何枚かあげるね」
「ありがとうございます」
「薬を塗ってから1分も経てばもう素手で触っても大丈夫になるから」
「分かりました」
 
「赤いおくすり、青いおくすり、知ってるかい?♪赤いので小さく、青いので大きく♪」
などと少女は歌っている。何の歌だろう?
 
「赤と青とどちらがどちらか分からなくなったら“赤ちゃんは小さい”と思い出して」
「あ、それは分かりやすい」
 
「青い薬の効力はだいたい12時間程度だから気をつけてネ」
「分かりました」
 
「じゃ、性転換しちゃおうという気持ちになるまで、男の娘の楽しみを満喫してね。中高生の間は男の娘を満喫して18歳になったら女の子になっちゃえばいいんだよ」
 
それは自分も少し考えていた。18歳すぎたら性転換手術受けたいなって。
 

「あまり小さい内にちんちん取っちゃったら、性に目覚めた頃にちんちん取っちゃったこと後悔することもあるから。まあそんなの気の迷いで、その内ちんちんの無い自分を受け入れて行き女としての自覚が出てくるんだけどね」
 
そのあたりはちんちん無くなったことが無いからよく分からないなあと飛鳥は思った。
 
「多くの女の子も自分にちんちんがあったら良かったのにと思う時期があるけどその内ちんちんの無い自分を受け入れていくから」
 
確かに女の子の心理ってそうかもという気がした。
 
「充分男の娘を満喫して、もう思い残すことは無いから性転換したいなと思ったら、またぼくを呼んでね。可愛い女の子に変えてあげるから。じゃね」
 
と言って女の子は姿を消した。
 

“魔女っ子千里ちゃん”が可愛い男の娘に赤いおくすり・青いおくすりを渡して帰ろうとしていたら
「こらちょっと待て」
と言って、抱きしめられてキャッチされる。
 
「きゃっ。なんだグレースか」
 
千里5である。
 
5番は、こちらを5番と見抜くのは凄いなと思った。さすが千里だ!
 
「寮生を勝手に性転換したりしてないよね?」
「え?今日はまだ誰も性転換してないよ」
「あんた暇そうだからちょっと作曲してよ」
「作曲とかしたことないよー」
「あんたも千里なんだから出来るって。短い歌なんだよ。ほらこれ」
 
と言って、5番(グレース)は『愛しのオリバー』という短い歌の歌詞を渡した。
 
O sweet Oliver,
O brave Oliver,
Leave me not behind thee
 
Wind away,
Begone, I say,
I will not to wedding with thee.
 
「これもしかして1番と2番?」
「そそ。1番では女がオリバーに言い寄る。2番ではオリバーが女を邪険にする」
「オリバー(Oliver)を性転換してオリーブ(Olive)ちゃんにしちゃおう」
「後で個人的にやって。今千里たちがみんな忙しくてさ、手が回らないんだよ。2〜3日中でいいから。曲ができたら、私かヴィクトリア(6番)に渡して」
「分かった。頑張ってみる」
「じゃよろしく」
 
「ねえ、そろそろアクアも今年中くらいには完全な女の子に変えちゃわない?」
「その前に彪志君を女の子にしてあげて」
「彪志を女に変えてもオカマにしか見えないと思うけど」
 

飛鳥はトイレに座ったまましばらくぼーっとしていた。
 
ハッとしたように立ち上がり、手を洗ってスカートの乱れを直す。
 
トイレを出る。
 
スマホを見ると5時半である。トイレの中に30分くらい居たようだ。飛鳥はケトルに水を入れてスイッチを入れた。マグカップにカップスープの素を入れる。
 
夢かな??
 
でも赤いチューブと青いチューブは手元にある。
 
飛鳥はコーンスープを飲みながら考えた。
 
試しにちんちんに赤い薬を塗ってみようかな?
 
万一これが変な薬でちんちんに損傷ができてもそれはそれでいい。どうせその内取るつもりのものだし。
 
スープを飲み終えてから、もらったビニール手袋を填める。赤いチューブのふたを開けて少し出す。それをちんちん全体にすり込むように塗る。薬は皮膚に浸透していき、すぐに塗ったのが分からなくなる。芯まで染みていく感覚があるが、痛みなどは無い。
 
少し待ったが、特に変化は無い気もする。
 
まいっか。
 
でもこれ中身は何だったんだろう?化粧水の類いかなあ。ヒアルロン酸とか塗った時の感覚に近いけど。
 

取り敢えず手袋はひっくり返すようにして外し、ちんちんはパンティーの中にしまう。スマホでラインを見る。何件か返信してからゲームをしていた。
 
またトイレに行く。その後拭こうとして「あれ?」と思った。
 
トイレを出てから、あらためて確認する。
 
「すごーい!小さくなってる!」
 
定規を当て測ってみると3.6cmだった。今までは4.5cmくらいだったから1cmくらい小さくなっている。これ重ねて塗ったらもっと小さくならないかなと思った。試してみようと思って新しい手袋を填める。ちゃんと手袋着けてないと指まで小さくなったら大変・・・・
 
と思った瞬間、飛鳥は思いついた。
 
青い薬を胸に塗ったらどうなるのだろう?
 

7時頃。
 
朝食を運んできた篠田さんに飛鳥は聞いてみた。
 
「篠田さん、下着の替えが足りなかったら言ってねと言われてましたけど、ブラジャーの予備とかありませんよね?」
「標準的なものならあるよ。飛鳥ちゃんサイズは?」
「これBカップくらいかなあ・・・」
 
(↑なぜ男子寮に女子下着の予備が常備されているのか?)
 
「測ってあげようか?ちょっとドア開けて」
「はい、お願いします」
 

4月7日(木).
 
葛飾区E学園の入学式があり、下記のメンツが同学園の(女子)制服を着て式に出席した、
 
新里好永“恋珠ルビー”
平良百合“花貝パール”
藤真理奈“広瀬みづほ”
溝口千歌“水谷康恵”
 
みづほは許可をもらっているので下はスラックスを着用した。彼女は更衣室も個室で着替える許可をもらっている。また身体測定なども個別にしてもらえることになっている。でもそのことで
 
「彼女、実は男の子らしい」
という噂が立つことになる!
 

4月7日(木).
 
葛飾区のL高校でも入学式があり、下記のメンツが同学園の(女子用)標準服を着て式に出席した、
 
立川心桜“松島ふうか”
横山朋菜“箱崎マイコ”
佐藤晴恵“鹿野カリナ”
 
「受け狙いで詰め襟とか着てこようかとも思ったんだけど」
「やめなさい。マジで性別誤解されるから」
「だいたい身体検査の時、男子と一緒に検査されたらどうすんのさ?」
「ちょっと無茶かな」
「大きく無茶だという気がする」
 

4月7日(木).
 
隅田可愛(春野わかな)は足立区E中学の入学式に、E中学の(女子)制服で臨んだ。新入生の中に知り合いは誰も居ないが、信濃町ガールズの先輩たちが2〜3年生に多数居る。新しい環境で頑張るぞ、と心に誓った。
 

4月7日(木).
 
杉本ひかりは世田谷区F中学の入学式に、詰め襟の(男子用)学生服を着て臨んだ。クラス分け表で1年2組になっていたので「1年2組」と書かれたプラカードが立てられている所に並ぶ。
 
「男子と女子と各々1列に」
という指示があったので、男子のところに並んだ。
 
ひかりは関西(兵庫県丹波市)育ちなので、校長先生のお話を聞きながら、ぼく東京のことば分かるかなあなどと不安感は感じたが、まあ何とかなるだろうと思った。
 

ちなみにひかりは制服の件で佐々木春夏とは直接会って話したが、話しても佐々木さんはよく分かってないようだったので、いいことにした!なお、仕事で放送局などに入る時は、先に信濃町ガールズのユ二フォームに着替えてから局に入り女性用控室に入ってねと言われた。信濃町ガールズのユニフォームは第一礼装とみなされる(*39)。男のぼくが女性用控室に入っていいのかなあと思ったものの信濃町ガールズのみんなが女性用控室に入るからそこに居てくれないと連絡事項とかで困るのだそうだ。
 
「痴漢とかと思われませんかね」
「大丈夫。君は女の子にしか見えないから」
 
まあいいけどね。
 
(篠原君や西宮ネオン、夢島きららなどは、女性用控室前の廊下で待機していた。ひかりも廊下待機でいいと思うのだが)
 
信濃町ガールズのユニフォームのボトムはスカートでもキュロットでもショートパンツでもどれでもいいと言われた。スカートやキュロットにも関心はあったし、仙台のライブではみんなに乗せられてスカート穿いちゃったけど、その後テレビ局とかではショートパンツを穿いている。でも他の団員から
 
「ひかりちゃん堂々とスカート穿いてもいいんだよ」
「スカート穿きたいでしょ?」
などと言われて心が揺らいだ。
 

(*39) 花園裕紀はこういう話を聞いていなかったので女子制服+スラックスで放送局に入っていた。セレンとクロムはユニフォームに着替えてから入っていたが、裕紀が女子制服を着ているのは、女の子になりたいから、そうしているのだろうと思っていた。
 

入学式が終わった後、1年2組の教室に入る。黒板の所に張り出されている座席表を見て着席した。
 
机はコロナの折だからだろうが、独立して1個ずつ列が作られている。しかも隣の列とはずれている。いわゆる千鳥状配置である。ひかりの前も後ろも女子だった。左右は前後とも男子である。机の上に教科書が置かれているので、ひとつひとつ見ながら教科書を持ち帰るために持って来ていたリュックに入れる。
 
プリント類も一緒に置かれている。時間割、行事予定表、生活上の注意事項、ネットのやりすぎに関する注意事項、ネットをするにあたっての注意事項、男女交際に関する注意事項、生理の時の過ごし方、性被害に遭わないために気を付けること、などが書かれていた。これらも一緒にリュックに入れる。
 
(↑「生理の時の過ごし方」はひかりには不要な気がする。でも「性被害に遭わないために」は必要。ひかりみたいな可愛い子は痴漢に狙われる危険がある)
 

ところでF中学はF小学校に通っていた子とS小学校に通っていた子が合同されてここに来ている(S小学校に通っていた子で住所によっては別の中学に行った子もいる。小学校の学区と中学校の学区がずれているため泣き別れが生じる)。
 
それでひかりのことをみんな知らないものの、F小学から来た子はS小学出身の子だろうと思い、S小学から来た子はF小学出身の子だろうと思ってひかりは何も訊かれず座っていた。
 
やがて担任の先生が入ってくる。若い男性で、岸田紀明と名乗った。緊張してる感じなので、大学出たての先生かな?と思う。出席を取る。先生は名簿を見ながら名前を呼び返事が返ってきたら次に行く。混合名簿なので男女関係無く名前順である。やがて「杉本ひかり」と呼ばれてひかりが「はい」と返事した時、「え?」という顔をしてひかりを見た生徒が何人もいた。
 
ひかりが学生服を着ているのに声が女の子の声だったからである。でも先生は生徒のほうを見てないので気付かない。ひかりは何でぼくを見る子がいるんだろう?などと思う。
 

先生は出席を取り終えると、そのまま新入学に当たっての心得とか、休む時などの連絡についてなど話していく。その上で
 
「委員を決めますが最初は分からないと思うのでこちらから指名します」
と言った。
 
「最初にクラス委員。**さん、**さん、いいですか?」
「はい」
と指名された生徒(男女1名ずつ)は戸惑うような顔をしながらも承諾した。多分事前連絡とかもせずに指名したのだろうが、ふたりとも恐らく小学校の時のクラス委員経験者かな?。ここでも先生は生徒は見ずに名前だけ呼んだ。
 
生活委員、体育委員、保健委員と各々男女1名ずつ指名されて
「次に美化委員。**さん、杉本さん、いいですか?」
 
ひかりはびっくりしたものの「はい」と答えた。ひかりは小学生時代美化委員の経験は無いが、図書委員と放送委員の経験がある。
 
実は放送委員を経験しているので、ひかりは標準語をきれいに話せる。
 
この時、ひかりと一緒にもうひとり返事をした子は男子だった!ひかりはなぜここは男子2人指名されたのだろう?と思った。このクラス男子が多いのかな??
 
先生は返事が返ってきたのでその後、図書委員と放送委員をやはり男女1名ずつ指名して委員の指名を終えた。
 
委員の指名を終えた後は、先生は注意事項を色々述べて最初のホームルームを終え、退出した。
 

生徒たち(主として女子)がひかりの周囲に集まってくる。
 
「杉本さん女子だよね?」
「え?ぼく男子ですけど」
「杉本さん、S小?」
「ぼく兵庫県から転校してきたぁ」
「転校生か!」
 
「でも声が女の子だよね?」
「ぼく声変わりまだなんですー」
「女子の列に並んでるし」
「え?女子の列とかあるの?」
「この教室、男子の列と女子の列が交互に作られている。杉本さんの席は女子の列になってる」
「え?そうなの?気付かなかった」
 
「先生が美化委員に**君と杉本さんを指名した。委員は本来男子と女子から1名ずつのはず」
「じゃぼく、女子と間違えられて登録されてるのかなあ」
「確かに“ひかり”って男子も女子もある名前だもんね。間違われたのかも」
 
「先生に言って誰か他の女子に変えてもらったほうがいいよ。美化委員がトイレに入れないと困るし」
「私やろうか」
と金野美加という子が名のり出る。
「じゃ美加ちゃんと杉本さんとで後で先生の所に行って来なよ」
 
「美化委員ってトイレで何か仕事するの?」
「週交替で色々な作業をして、花壇の花に水をやったりとかもあるけど、トイレのアルコール液やトイレットペーパーの補充とかもするんだよ。掃除の時間にも掃除の担当班が確認するけど、美化委員は当番で昼休みにチェックする。男子の美化委員が男子トイレ、女子の美化委員が女子トイレ」
 
「じゃ女子でないとできないね」
とひかりは言ったのだが、別の女子が言い出した。
 

「でも杉本さんが女子トイレにいても違和感無いかも」
「あ、思った。女の子っぽい顔してるもん」
「でも詰め襟着てるのに」
 
「コスプレしてるかもしれない」
「杉本さん、本当は女子ということないよね?」
「そんなことないよー」
「実は男の子になりたい女の子とか?」
 
「ちょっと立ってみてよ」
と言われるので立ってみる。
 
女子たちが顔を見合わせている。
 
「ね、学蘭脱いでみない?」
「いいけど」
 
それでひかりは詰め襟を脱いで、ワイシャツ?姿になる。
 
「ウェストが凄いくびれてる」
「うらやましい」
「ヒップがわりとある」
「バストが少しある気がする」
 

「だいたいそのスラックス、女子用だよね?」
「ぼく男物のスラックスが入らないんだよねー。だから女子用穿いてる。そもそもW57の男子用スラックスとか売ってないし」
「W57!?」
「うらやましー」
「そのスラックス、前開きがダミーだ」
「おしっこ困らない?」
「ぼく個室しか使わないから特に前の開きは必要無いよ」
「というか、前の開きから出すべきものが無いということは?」
 
「だいたいトップに着てるのブラウスだし」
「え?これは普通のワイシャツだよ」
「左ボタンのワイシャツなんてあるわけない」
「衿とか袖とかも曲線遣いだよ」
 
「でもワイシャツだよ。売場のお姉さんにぼくの身体に合うサイズのワイシャツくださいと言って買ったんだから」
「杉本さんの身体に合うものというのがブラウスになった気がする」
 
「杉本さん、手を握らせて」
「いいけど」
「何だ。全部ジョークだったのね。これは女の子の手の感触だもん」
「どれどれ」
といって握手会になる!
 
「やはり杉本さん女の子だったのね」
「男の子だけど」
「まだ言い張っている」
 

「ねえ、ちょっと胸触らせて」
「・・・いいけど」
 
それでひとりの女子がひかりの胸に触る。
「バストがある。これは立派なAカップ」
「どれどれ」
といって、みんなひかりの胸に触る!!
 
「やはり女の子じゃん」
「きついジョークだなあ」
 
「杉本さん、この後1組が終わって呼ばれたら生徒手帳用の写真撮りに行くからさ。詰め襟はまずいよ。女子制服は持って来てないの?」
 
「・・・持ってるけど」
「だったらちょっと着替えておいでよ。身分証明は女子制服で写っておかないとまずいよ」
「そうかなあ」
 
それでひかりは、教室の隣にある資料室で女子制服を着ちゃった。
 
「普通に女子だ」
「やはり女の子だったのね」
 
それで他の女子と一緒に写真撮影をする本棟1階職員会議室に向かった。
 

写真撮影の後、身体測定もあるということで男女に分かれる。
 
女子は本棟1階の職員会議室で写真撮影し、その後保健室で身体測定する。男子は体育館で写真撮影し、そのまま体育館で身体測定する(微妙に女男差別っぽい)。
 
でもぼく写真撮影とか、男子の方のリストに入ってるんじゃないかなあと思ったが、職員会議室に行ってみると、こちらの名簿に名前は入っていて
 
「杉本ひかりさん」
と呼ばれ
「はい」
と言って笑顔を作ってから座ると即撮影された。
 
(この辺の写されテクは地方ガールズ時代にだいぶ鍛えられた)
 

その後、保健室に行く。
 
女子と一緒に身体測定になるけど特に緊張はしない!
 
「でもひかりちゃん、関西訛りが無い」
「関西弁でも話せるよ」
「あ、今関西っぽくなった」
「まあ標準語も使える。でも東京弁は分からないかも」
 
「東京弁ってどんなんだっけ?」
 
「美術館(びじゅつかん)を“びじつかん”と言ったり、ネクタイを“ネKタイ”と言ったりするのは東京方言」
とクラス委員の鈴木浩美が言う。
 
「え?今分からなかった」
という声多数。
 
「布団をひくってのも東京弁だっけ?」
「それは関西弁たと思う」
とひかり。
 
「そうだったのか!?」
「関西で“ひ”と発音するものを関東では“し”と発音する傾向が強いんだよ。でもこれは本来“ひ”だったかもと思って逆に“し”のものを“ひ”と言ってしまう間違いも多発する。“八百屋おひち”とか」
と鈴木浩美。
 
「え?あれ“おひち”じゃないの?」
「あぁ、ことばが分からなくなった!!」
 

そんなことを言っている間に保健室に到着する。
 
みんな制服・ブラウスを脱ぐが、ひかりは関西の信濃町ガールズのレッスンの時に女子と一緒に着替えていたので、特に緊張もせずに脱いで下着姿になった。
 
それで並ぶが、
「こうして見ると杉本さん、間違い無く女の子だね」
「男の子がここに並んでたら大変だね」
 
すみません。男の子なのに女子と一緒に下着姿で並んでます!
 
「全く酷い冗談だよ。最初みんなきれいに欺された」
 
それでひかりは身長と体重を測定された。その後ブラウスと女子制服上下を着て教室に戻った。つまり、この後はすっと女子制服で過ごした!
 
トイレも他の子と一緒に女子トイレに行ったが、ぼく女子トイレ使っていいのかなぁと少し悩んだ。でも女子トイレ自体には慣れているので恥ずかしくはない。また列に並ぶのも普通にやっているので緊張はしない。
 

4時間目は体育で、みんなでバスケットをした。男子19人、女子(ひかりを含む)17人を各々2チームに分け、女子は8人対9人の試合になった。バスケットなので試合中たくさん身体接触が発生するが気にしない。ひかりはゴールを3つ決めることができて
 
「ひかりちゃんうまいじゃん」
と言われた。
 
体育が終わった後は、女子更衣室で着替えたが、汗を掻いたので下着も交換する。パンティを交換する時に
「確かにちんちん付いてなかった」
と言われ、ブラジャーを外したところで
「確かに男のように小さな胸だ」
と言われて、生胸に触られた!
 
「すんませーん。パッドで誤魔化してます」
「なるほどー。実際はまだAAサイズか」
「でも**ちゃんよりは大きい」
「なんで私を引き合いに出すのよー?」
 
「ひかりちゃんのは正確に言うと『男のような胸だ』とからかいたくなる程度に小さい胸だ」
「でもそれ言うと、また明日も男子制服を着て来かねない」
などと金野美加が言っている。
 

「明日からはちゃんと朝から女子制服を着ておくように」
と終わりのホームルームの後でクラス委員の鈴木浩美からも言われたが、
 
ひかりは
 
「どうしよう?女子制服で登校なんて恥ずかしいよー」
と思った。
 
(↑一体いつ恥ずかしがったのか真剣に訊きたい)
 

学校が終わった後、職員玄関の所に行き、同じ中学に通うセレン・クロム・鈴原さくら・長岡飛鳥と5人でSCCのドライバーさんが運転するエスティマに乗って女子寮に向かう。レッスンを受けるためである。
 
車にはこのように乗った。
 
助手席:飛鳥(3年)
2列目:さくら(2年)ひかり(1年)
3列目:セレン(3年)クロム(3年)
 
ここで飛鳥・さくらは女子制服を着ている。セレンとクロムは男子制服だが、移動中に信濃町ガールズの練習用ユニフォーム(スカートタイプだが本番用と違って膝丈スカート)に着替えるつもりである。
 
ひかりが女子制服で車に乗ってきたので、車が出発してからセレンに尋ねられた。
 
「ひかりちゃん、女子制服に着替えたのね?」
 
「朝のホームルームの後で、クラスのみんなに『君女子でしょ?ちゃんと女子制服着なよ』と言われて、女子制服着ちゃったんです。それで生徒手帳の写真とかも撮っちゃった。明日からはちゃんと女子制服着て来なよとか言われちゃったけど、女子制服で登校するなんて恥ずかしいー。どうしよう?」
 
「・・・」
 
「女子制服で生徒手帳の写真撮ったのはまずいよ」
とさくら。
「そうですか?」
「そのまま女子生徒として処理されてしまうと思う」
とクロム。
「先生にちゃんと説明して写真は撮り直してもらった方がいい」
とセレン。
 

「やはりまずかったですかね」
 
「だいたい女子生徒ということになったら体育の着替えとか身体測定とかどうするのさ?」
とさくらから訊かれる。
 
(飛鳥はドキドキしている)(*40)
 
でもひかりは答えた。
 
「今日身体測定があって体育もありましたけど」
 
「・・・・・」
 
「それ男子と一緒に身体測定したの?」
「女子と一緒に身体測定しましたよ。ぼくの書類女子のほうに入ってたし」
 
「体育の着替えの時は男子と着替えたんだよね?」
「女子と一緒に着替えましたけど。ガールズ関西のレッスンの時も女子と一緒に着替えてたし」
 
「女子と一緒に着替えられるの〜〜!?」
 
「汗掻いたからパンティとブラジャーも交換したんですけど、生胸触られちゃって『男みたいに小さな胸だね』とか言われちゃった」
 
「・・・・・」
 
「ね。君女の子の身体なんだっけ?」
 
「ぼく男の子ですけど」
「嘘つけ!」
 

なおこの日、19時からテレビ局で白鳥リズムちゃんのバックで踊ったが、ひかりがショートパンツのユニフォームを着けてるのを見て、さくらから
「女子制服着てる子がショートパンツは無い」
と言われ、スカートに穿き換えさせられた。
 
「スカートとか恥ずかしい」
「見え透いた嘘を」
 

(*40) 今日は飛鳥も女子として身体測定・内科検診を受けたが、心配した同じクラスのクロムに「大丈夫?」と訊かれて「何とかなると思います」と答えておいた。
 
実際飛鳥は、保健室で下着姿になり女子たちと並んで、少しドキドキしたものの(*41)“今日はおっぱいが大きくなっているので”全く不審がられなかった。内科検診も、聴診はブラジャーの上からだったので
「なーんだ、ブラジャー外さなくて良かったのか」
と拍子抜けした。
 
クロムは、飛鳥が女性ホルモンをしていて既にバストがあるものと思ったようである。
 
1年生の内科検診は後日行われる。
 
(*41) 性別未分化?な、ひかりの場合、女子と一緒に下着姿で並んでいても、それで何か感じることもなくドキドキすることもない。飛鳥は身体を何とか中性に近い状態に維持していても、心は男の子(男の娘?)に進化しつつある。
 

4月9日(土) 0時過ぎ。
 
松山貴昭の妻、露子さんが亡くなった。
 
私は政子に、こちらから妃美貴と佐野君に行ってもらうから両親たちが来る前に戻ってくるよう言った。佐野君は結局麻央も連れて妃美貴を乗せて夜通し車を運転して大阪に行ってくれた。そして妃美貴が政子と風花を車に乗せて9日の内に東京に戻った。
 
佐野君夫妻は貴昭の友人として葬儀にまで出席してから戻った。その間、誰も面倒を見てくれず放置されていた紗緒里(4)・安貴穂(2)の面倒は麻央が見てくれた。
 
麻央は2人から「お兄ちゃん」と呼ばれていたらしい!
 
本人も「お兄ちゃんと一緒に居ようね」などと言って子供たちを別室に連れ出したりしていたらしい。
 
「でもどうしてお兄ちゃんスカート穿いてるの?」
「スカートは好きだから穿いてるだけだよ。君たちだってズボン穿くだろ?」
「あ、そうだよね。女の子がズボン穿いていいんだから男の子がスカート穿いてもいいよね」
 

佐野君たちによると、奧さんのお父さんが
 
「あんたが気をつけてないから露子の病気の発見が遅れたのでは?」
 
と言って、貴昭を酷く責めて、それに対して貴昭の両親が喧嘩を買って言い争いになり、露子さんの妹さん夫婦が
 
「こんな所でやめてください」
となだめたりしていたらしい。
 

「まあ何か大変な葬儀だったよ。通夜でも告別式でも親族で言い争いしてるから坊さんが困ってた」
と佐野君と麻央は言っていた。
 
露子さんを亡くして落ち込んでいる所に露子の父親から責められて貴昭は佐野君に
「佐野君が居なかったら、僕も死にたくなったかも」
とこぼしていたらしい。
 
「子供2人居るんだから、お前が頑張るしかないだろう。何言われても気にするな」
「うん、ありがとう」
 
「それから唐本からの伝言。香典は治療費出した分と相殺にさせてくれって」
「すまない、本当にすまない」
と彼は泣いていたという。
 
「まあ芸能界って御祝儀や香典の相場が俺たち一般人と100倍か1000倍違うから、これも儀礼の範囲だよ。結婚式に招かれたら300万包んだりするみたいだし」
 
「確かに相場が凄まじいみたいだね!」
 

貴昭は妹さんに
「少し落ち着いたら露子さんの遺品整理に来てほしい」
と言った。
 
妹さん夫婦は49日の5月28日(本当は5/27が四十九日:“給料日”というものの都合で28日にした)に子供も連れて出てきてくれて(旅費は貴昭が出した)、記念品的なものだけ持ち帰り、服などは娘たちに形見として残すもの(振袖と色留袖を含む和服数点)以外、全て処分したらしい。妹さんは、父が貴昭のことを責めたりしたのを
 
「父が酷いこと言って申し訳ない」
と謝っていたという。
 
「お姉ちゃんはうまく島を脱出した。私はお姉ちゃんみたいに頭が良くなかったから脱出失敗した」
などと妹さんは言っていたらしい。
 
露子さんたちの実家があるのは甑島(こしきしま)と言って、川内(せんだい)または串木野から高速船で1時間(フェリーで2時間)行った所にある離島である。上甑島・中甑島・下甑島という3つの大きな島のほか多数の小島からなる列島になっている。
 
露子さんは地元甑島の小学校を出てから鹿児島市内の中学、福岡の高校に通い、そこから大阪の大学に入った才媛である。妹さんは鹿児島市内の中学高校を出たものの、甑島出身の男性と結婚して!島にUターンしてしまったらしい。
 

「でも子供の教育のために一家で鹿児島市内に引っ越そうかと言ってるんですけどね」
「お仕事は大丈夫ですか?」
「まあ何とかなるでしょ。それに仕事替えするのもできるだけ若い内がいいし」
「それはありますね!」
 
「松山さんが再婚した後でも、紗緒里ちゃん・安貴穂ちゃんに会いに来ていい?」
「いつでもどうぞ!」
 
この遺品整理で出てきてくれた時も向こうの一家、貴昭と子供2人と一緒にUSJに行ったらしいが、貴昭が東京に移動した後も、また子供を連れで出てきて、紗緒里・安貴穂も一緒にTDLで遊んでいた。妹さん夫婦はその後、結局福岡市!に移住してしまった。
 
貴昭は露子の遺言を聞いたらしいが、その内容は彼が2年後に再婚するまで誰にも言わなかった。
 

映画『黄金の流星』の制作は、3月下旬からゴールデンウィークくらいまで掛けて行われた。
 
例によってセリフ先録り方式で、基本的に、英語セリフで録音→撮影→日本語・ドイツ語・フランス語のアフレコ、という手順で進める。英語を標準とするのは出演者が英語はだいたい分かること、他の言語のセリフを入れようとした時に英語のセリフの長さがあれば、他の言語もだいたい足りるのが経験的に分かってきたからである。これが日本語で入れていると、足りなくなりやすい。
 

ただ幾つか撮影と同時にセリフ収録した所があった。
 
フォーサイス(ケンネル)とミッツ(内野音子)が言い争うシーンは撮影とセリフ(日本語)録りを同時におこなった。あの緊張感は“セリフを読む”方式では出せなかった。ただ日本語自体早口だったこともあり、英語のセリフを時間内に収めるのに苦労した!
 
シルヴィア(木下宏紀)がジルダル(アクア)を押し倒すシーンも同時録音でやっている。ここはふたりともフランス語ができるので、フランス語で同時録音している。これも同時録音でないとできない迫力?のシーンだった(*42).
 
またクライマックスの隕石爆発でハデルスンたちが流されそうになるのを必死でアルケイディアたちが助けるシーンも同時録音である。ここは英語で録音している。騒音が物凄いので、各自にポータブルの録音機器を付けさせて録音してあとで技術者さんが頑張って同期を取った!
 

(*42) このシーンについてアクアFとアクアMは
「どっちが“やられる”?」
と話し合った。
 
「みのりちゃん(*43)って男の子なんだっけ?女の子なんだっけ?」
「それ誰も知らないのよねー。本人は『ぼく男の子です』と言ってる」
「アクアみたいなやっちゃな」
 
結局Fが“やられた”場合、女の子の身体だったら羽柴みのり(木下宏紀)がギョッとして逆レイプの演技を躊躇するかもということで、アクアMが演じた。
 
(*43) “羽柴みのり”は木下宏紀にコスモスが付けた芸名だがこの芸名を付ける前から本名の“木下宏紀”が多くのファンに知られていたので、結局芸名を使用しなかった。篠原君も“春日ライト”という芸名をもらったものの同様に本名が先に広く知られてしまったので、本名で活動している。
 

結果・・・・
 
ふたりは抱き合ってみたら相手が女の子の感触であったこと、相手が男性器があるかのように偽装していた(と思われた)ことから、アクアは「みのりちゃん、やはり性転換していたのか」と思い、一方の宏紀は「アクアさんって実は女で男を装っていたのか」と思った。
 
それで2人は
 
「みのりちゃんの重大な秘密を知ってしまった」
「アクアの重大な秘密を知ってしまった」
と言っていたようである!
 

男子寮の怪人X、こと丸山アイ先生によると
 
宏紀のペニスは体表外に出ているが勃起しないし小さい。
アクアのペニスは勃起はするが、普段は体内に隠れている(*44).
 
のだそうである!?
 
なんかよく分からない構造である。体内に埋もれているが勃起するとペニスとして使えるというのは、逢魔がホラーショーの菊千代状態なのでは?
 

(*44) アクアのペニスは体内に埋もれており(*45)、直接刺激することができない。アクアは女性不感症で、たとえ彩佳のヌードを見ても立つことはない。睾丸も(一時的に?)無いし、元々性欲もほとんど無いので、アクアのペニスを勃起させるのは彩佳以外には多分不可能。彩佳がどうやってアクアのペニスを勃起させているかは『ひ・み・つ』らしい。
 

(*45) アクアのここ1年半ほどの男性器状態
 
2020.11.02 丸山アイの策略でアクアM去勢される(結果的にFとMの統合ができなくなる←多分それが目的。アイは直接人間世界に関われない“どなたか”の指示で動いている)
 
2021.03,04 変な夢を見てペニスまで消失。女の子の形に変わっている。(この事件の犯人は不明。アイも魔女っ子千里ちゃんも「ぼく知らないよぉ」と言っている。2人とも全く信用ならないが)
 
2021.06.17 桜井さんにヌードを見せるため千里に頼み男性器を作ってもらう。桜井さんに見せた後、声変わり防止のため、再度千里に頼んで、睾丸をダミーと交換してもらった。
 
2021.06.21 八王子の自宅で理史に男性器を見せる。
 

2021.08 この頃からペニスは“埋もれ”始め、11月頃までには海綿体の全体が体内に埋もれてしまって表面には先端だけが出ているというクリトリス状態になる。但し勃起させると体表外部分が10cmくらいあり性交可能だった。
 
2021.12 ペニスは先端まで完全に体内に埋もれてしまう。それでは排尿ができないので、千里が緊急手術?してくれて、女子の位置から排尿できるようになった。にも関わらず精液(睾丸が無いので精子を含まない)は、ちゃんとペニス先端から出るので膣内射精が可能であり、どうなってるんだろう?と思った。なお勃起した時の体表外のペニスサイズは8cmくらいでぎりぎり性交可能である。
 
2022.01 変な夢?を見た後、唐突にヴァギナができている(陰裂は無い)。彩佳が喜んで入れて遊ぶようになった。コスモスから避妊具を付けるよう注意され、彩佳はちゃんと付けてくれるようになったので、膣内射精?されても多分龍虎は妊娠しない。
 
(彩佳は精子あるのか?)
 
彩佳とミューチャル性交に成功したが、さすがに射精はできなかった。
 
龍虎は千里に
 
「ぼく卵巣や子宮まではできてないですよね?」
と尋ねたが、千里は笑って教えてくれなかった(←妊娠させる気満々?)。
 
 
前頁次頁時間索引目次

1  2  3  4  5  6 
【夏の日の想い出・無茶言うなよ】(3)