【夏の日の想い出・無茶言うなよ】(2)

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あけぼのテレビの番組司会は、紆余曲折の末、2022年3月現在、下記のような形で暫定運用されていた。★☆がAT3で、他の3人は“見習いキャスター”である。
 
キャスター担当(暫定)
__(18時台)___(19時台)
月:松島ふうか・鈴鹿あまめ★
火:鹿野カリナ・夕波もえこ☆
水:石条ぼたん・古屋あらた☆
木:松島ふうか・鈴鹿あまめ★
金:古屋あらた・夕波もえこ☆
 
立場上あまり文句が言えないリーダーの鈴鹿あまめに代わって夕波もえこが3月頭、コスモスに要望した。
 
「今の体制だと準備作業なども入れるとほとんど余裕が無いです。私もきついですが、あまめはかなり無茶な勤務状態になっています。ふうかは4月からは独り立ちでいいと思うから、あまめがダウンする前に、見習いキャスターを2人くらいでもいいから増員してもらえませんか?」
 
「うん。何とかする。いつもありがとうね」
とコスモスも答えた。
 

2022年3月23日(水.なる).
 
岩槻の社員寮隣接地に建設中であった§§ミュージックの第2社員寮が完成。播磨工務店から§§ミュージックに引き渡された。
 
あけぼのテレビと大和映像は12月にCG制作会社“まほろばグラフィックス”を立ち上げている。この会社は取り敢えず浦和に小さな事務所を置き、1月から2月に掛けてリモート!勤務で100人ほどのバイト技術者を雇用していた。同社は3月に岩槻データセンターを立ち上げ、そこに本社機能も移転している。
 
ここでバイトしていた技術者で、3月末で大学や専門学校を卒業する人にこのまま正社員になるつもりのある人は居ないかと勧誘した所、30人ほどが応じてくれて、その大半が入寮を希望した。
 
このほか第1社員寮の抽選に漏れて入れなかった人も入寮を希望したので、いきなり50人ほどを受け入れることになった、
 
こちらにも付き添いロボットを3体導入したが、女子社員たちにより、まね、ビーナ、セシルと名付けられた。
 
1号館の付き添いロボットは、最初に導入された3体がアクア、セレン、クロムで、追加された2体がリズム、アケミである。
 
命名基準がよく分からない!
 
でも多分、ハルコとかエーヨとか入ってないのは、きっと頼りなさそうだからだ!
 
「2年後くらいには第3社員寮を考えないといけないかも」
「2年持てばいいですね」
 

コスモスが社長になった時、居た社員はコスモスとゆりこ、マネージャーの田所・沢村・月原、経理の溝上、そしてアクアの付き添い用に新規採用した鱒渕の7人だった。事務所も信濃町の雑居ビルの20平米ほどの1室だった。
 
2016年に田所は§§プロに移動し、溝上は退職、鱒渕は過労で離脱したから当時から居る一般社員は沢村部長と月原課長の2人だけである。そして現在、§§グループはいくつもの子会社・関連会社を持ち総社員数は400人ほど、バイトさんを入れると多分1000人を越える。売上は当時の200倍になり、事務所も信濃町のビジネスビルの1フロアを占有している。
 
タレントの所属人数こそそんなに多くはないものの、芸能事務所の経営規模と資金力では間違いなく大手のひとつとなっている(*29).
 

コスモスは多くの学校で終業式が行われた3月24日、信濃町ガールズの大仙イリヤ(高3)・山本コリン(高2)の2人を呼んだ(学年はいづれも4月からの学年)。
 
「昨年A契約に移行する子が相次いで、B契約の子で主としてデビュー間近レベルの子で支えられていたあけぼのテレビの人手が足りなくなって。その隙間を鈴鹿あまめ・夕波もえこで埋めてきたのだけど、このふたりに、更に追加した古屋あらた・松島ふうかを加えてもまだまだ多忙な状態が解消されてない」
 
とコスモスは背景を説明する。
 
「それでわりとトークのうまい君たちにも、キャスターとして入ってもらえないかと思ってね」
 
「あまめちゃんたちが凄いハードワークになってるとカリナから聞いてたから私とかに声がかかるかもと思ってました」
と山本コリンが言う。
 
「まあ。君たちは、あけぼのテレビ専任というわけではなくて、単発の仕事とかあったらそれもまたお願いするから」
 
とコスモスは言ったのだが、直後から感染対策問題で在来局のプロデューサーと交渉決裂し、タレントを引き上げた番組が相次いだので、在来放送局の番組の仕事が大幅に減り、この2人はしばらく、ほぼ、あけぼのテレビ専任状態になる。
 

さて、私は3/30に青葉を奪われた後、取り敢えず熊谷で待機していた。政子は大阪だから“ごはんをあげる”心配もしなくていいし(ほとんどペット。でも貴昭の子供たちがまともなごはんを食べられているか心配だ)。
 
しかし青葉を拉致していったのは〒〒テレビの制作部のチームだろう。私が関わっているミュージシャンアルバムは〒〒テレビの報道部の番組である。だからこれは同じテレビ局の制作部と報道部の戦いだ!
 
4月1日の夜、ムーランエアーのフライト予定表に、4/2 16:00→17:00 能登→郷愁 Honda-JetBlack(PT) という表示が出たのに気付いた。PTは: Phoenix Trine で千里の会社である
 
元々は千里の資産管理会社だったと思うが、現在は多数の会社の持株会社となっている(*28).
 
どうも話を聞いていると“朱雀フード”が出発点だったらしい。これは彼女が中学生の時に設立した会社だと言う。その頃から千里は何をしていたのだろうか。
 
(答え:熊カレーを作っていた!)
 

私は、多分青葉がこの便に乗って来るとみて、午前中仮眠した。15時過ぎ、郷愁飛行場に入る。17時すぎ、黒い機体のHonda-Jetが着陸してきたのが目で確認できた。
 
私は到着ゲートの所で待っていた。
 
飛行機から降機したっぽい人たちが歩いてくる。
 
ところが青葉が居ない!?
 
こちらにやってきたのは千里と、同程度の年齢の女性。見覚えがある。えっと・・・そうだ。桃香の友人の優子さんだ。確か千葉に住んでる女性とビアン婚したんじゃなかったかな。普段は高岡に住んでいて。奧さんに会いに来たのかな。でも青葉はどこ??
 
優子さんが私に会釈して先に行く。残った千里に私は声を掛けた。
 
「千里、青葉は?」
「知らない、能登空港で別れたから」
「嘘!?」
 

「だから飛行機には私と友人で乗ってきたよ。私、明日は平塚で試合があるし」
と千里。
 
「“今日も”平塚で試合があったみたいだけど?」
と私は言ってやった。
 
「そうだっけ?だったら、きっとそこにも私出たんだよ。最近忙しくて記憶が不確かで」
 
むろん試合に出た千里とここにいる千里は別の千里だろう。試合に出た千里は多分3番だろうからここにいるのは恐らく1番だ(*24).
 
「じゃ青葉は、金沢(職場)か高岡(自宅)か津幡(練習場)に行ったの?」
「知らない。本人に電話して聞いてみたら?」
「あの子が答える訳無い」
「あはは」
 
私は瞬間的に決断した。
 
「仕方ない。もう日程が動かせないんだよ。『ミュージシャン・アルバム』の取材に、千里付き合ってよ」
「青葉無しでいいの?」
「大会前でどうしても時間が取れないので、お姉さんの醍醐春海さんに代理をお願いしましたと言うから」
「そんなぁ」
と千里が珍しく焦っている。でも大枚かけて三つ葉とボニアート・アサドを呼んだんだから、何とかしてもらおう。
 
それで私はホテル昭和で待機しているラピスラズリとカメラマンにメッセージを送り、千里を連行して三つ葉が待っているコテージ8021に向かった。
 

そういう訳で4月2日熊谷で私たちは三つ葉(17:30-19:00) とボニアートアサド(20:00-21:30) のインタビューをしたのである。
 
私たちは4月3日まで2日間のギャラを両者に払っていたのだが、4月2日のみで仕事が終わってしまったので3日は東京に戻って別の仕事をしたようである。この手のギャラはもらえるが早く終わって解放されるのを業界用語で“お笑い”と称する。もっとも三つ葉もボニアートアサドも本人たちはあと1日のんびりしていたかったようだが。
 

(*24) ケイは、3番は試合中、2番は妊娠中だから、消去法でここにいるのは1番と考えた。実際にはここでケイがキャッチしたのは北陸の案件を担当している4番(Robin)。ただし4番では三つ葉の花山波歌(かやま・しれん)と話が通じない(*25) ので、コテージに行く途中で千里たちの全体管理をしている5番(Grace) と入れ替わった。
 

(*25) 波歌(しれん(*26))は桃香の従姪で、“第2次統合千里”(これが分裂したのが千里1〜3)がオーディションのことを教えた。またデビュー準備期に随分アドバイスをしている。話の流れでCDが3万枚売れなかったら全員性転換!という話になった時もこんな会話をした。
 
「無茶なこと言うなあ。マジで性転換手術受けさせたら、テレビ局の社長が逮捕されるよ」
「ほんとに手術受けさせられるとは思わないんですけどね」
 
「まあ大丈夫たよ。心配しないで」
「3万枚売れると思います?」
「君は私が手術無しでちゃんと生殖能力もある男の子に性転換させてあげるから。手術は適当な身代わりに受けさせるし」
「身代わりとかいいんですか?」
「性別を変えたがってる人はたくさんいるし」
「でも結局私も男の子になるんですか?」
「ちんちんあるの楽しいらしいよ」
「それは興味が無いこともないけど」
「それに男の子になれば女装が出来る。女装は凄く楽しいらしいよ」
「わざわざ男になって女装するとか意味が分かりません!」(*27)
 
(*26) 波歌(しれん)は“シレーヌ”(波打ち際で歌う人魚)から命名された。彼女の姉は月音(だいな)。月の女神ダイアナが語源だが“だいあな”では長すぎるので“あ”を抜いた。弟は太陽(みとら)。太陽神ミトラから採った。この3人の名前は読み方が無茶すぎる。苗字も“はなやま”と読む人が多く“かやま”は少数派なので、彼女の名前を初見で読めたのは千里と青葉だけである。
 
(*27) でも女装好きのFTMさんというのは筆者の知り合いにも居る。彼は男になりたいけど、女物の服が可愛くて好きだと言う。普段は男装だけどお祭りには女物の浴衣を着ていく。多分そういう傾向の人もわりと居そう。実際性自認は男だけど女装が好きという天然男性は多いし!
 

(*28) フェニックストラインの主な子会社は下記である。
 
建設会社“播磨工務店”
酪農?会社“播磨牧場”
林業会社“朱雀林業”
製紙会社“朱雀製紙”
食品会社“朱雀フード”
音楽出版社“フェニックス音楽出版”
化学製品会社“フェニックス・ケミカル”
アクセサリーショップ“フェニックス・ドリーム”
スポーツ用品店“フェニックス・スポーツ”
土地所有会社“フェニックス・リゾート”
 

会社名に“播磨”が付くものは一般に“西の千里”が高校時代に始めた事業、“フェニックス”が付くものは一般に“東の千里”が大学時代に始めた事業がベースになっている。朱雀林業は、実はフェニックス・フォレストリーと播磨林業を合併して朱雀林業としたもので、朱雀製紙はその子会社である。
 
美鳳が最初天野貴子に渡した資金は30億円であるが、千里はそれを数千億円まで膨らませている。30億円を渡した目的は、京平に充分な教育と“実践”を経験させるためだが、千里はそれ以前にこの資金を充分に大きくした。震災で出た東北各地の“神的被害”も千里の寄付でかなり復旧できた。
 

(*29) §§ミュージックがここ7年ほどで急激に営業規模が大きくなったにも関わらず組織の統制が取れているのには、様々な会社を買収してきたので、その旧組織が活きているという背景がある。
 
§§ミュージックがM&Aにより取得した子会社
 
§§ミュージック・システムサポート SSS(小熊情報システムを買収)
§§ミュージック・コールセンター SCC (TDタクシーを買収)
§§ミュージック・音楽教育 SME(全国各地の複数の芸能学校・音楽教室を買収)
§§ミュージック・ファンクラブサービス SFC (縦浜出版を買収)
§§ミュージック・ライブビジョン SLV(八王子ライブビジョンを買収)
§§ファン・リテール SFR (ひよこ通販を買収)
 
最初に買収したのが縦浜出版である。当時所属タレントが増えて、ファンクラブの会報を執筆する人手が不足していた。それでバイトで雇っていた人脈から、知り合いで芸能関係の文章が書ける知り合いがいないか?と聞いてもらっていた所、いっそミニコミ誌『たてはーま』を発行している縦浜出版を丸ごと買ってくれないかという話が飛び込んできた。
 
ネットで情報が検索できる時代、タウン誌の売上は落ちてもう廃刊は時間の問題になっていた。しかし歴史的な経緯で多数のライターさんとのコネがある。
 
貸借対照表を見せてもらったが借金は2000万円程度でこのくらいは負担していいと思った。しかし会社買収は素人の手には負えない。
 
コスモスは父の遊園地勤務時代の友人で、現在SN監査法人の社員(*30)になっている渡辺明会計士に相談した、それでこの買収作業をSN監査法人の手でやってもらった。
 
そしてそれ以降の多数のM&Aも、同監査法人の手で進めてもらったのである。
 

(*30) 監査法人の社員というのは一般企業で言えば取締役に相当する。
 
渡辺明さんは、コスモスの父・伊藤太郎と同様、“まるで仮名みたいな名前”なので、意気投合していた。ちなみに渡辺明さんの奧さんは出生名・田中一子で、やはり“仮名みたいな名前”であり、伊藤太郎の妻(コスモスの母)・出生名:鈴木花子と仲良くなり、家族同士の付き合いがあった。それでコスモスにとっては“明おじさん”という感じで、親戚に近い感覚であった。
 

それ以降に吸収した会社も、全て経営難になっていた所を救済合併したところばかりで、極めて友好的な買収だった。
 
各々の債務を精算したが、その精算資金で各々の会社が持つノウハウを買ったようなものである。但し各会社はSN監査法人のスタッフを入れて社内改革し、悪習を撤廃している。コスモス自身が各社員と面談し、話し合って会社方針に同意できない人には充分な退職金を払って辞めてもらい、いわゆるお局様の類いを一掃した。
 
また中堅社員たちに労働法規の講習を受けさせコンプライアンスの徹底を図った。また女性社員が働きやすいように、ジョブ・シェアリングやフレックスタイムを導入。また同一労働・同一賃金を徹底した。また有休取得は義務である!と宣言した。このような経緯で社員たちはとてもモチベーションが高い。
 
その上でコスモスは様々な人脈のある子会社間の社員融和を図るため、統一社員証を作り、会ったら他の部門の人とも笑顔で挨拶しようと呼びかけている。それで部門を越えて結婚した社員カップルも多数生まれている。
 

こういった会社買収のほかに、他の会社と合弁的に作った関連会社も多い、下記はその主なものである。
 
●サンシャイン映像制作(§§ミュージックとサマーガールズ出版が共同設立。あけぼのテレビの実務部門を担当している)
●あけぼのテレビ(コスモス・ケイ・千里・アクアで90%の株を持つ)
●まほろばグラフィックス(大和映像とあけぼのテレビの共同出資会社)
 
あけぼのテレビで働いている人には実は、あけぼのテレビの社員とサンシャイン映像制作の社員とが混じっている。また大田区サテライトの半分は§§ミュージックの分室で、ファンクラブ部門、経理部門や信濃町ガールズ関東の研修施設などが置かれている。両者の間にはセキュリティゲートがある。食堂・売店などは両者の共有施設である。
 
また完全買収ではないが資本参加している会社も多い。
 
●♪♪ハウス(§§ホールディングが19%の株を持つ:20%未満だから持分会社ではない)
●八千代クリーンサービス(49%の株を§§ミュージックが持つ)
●ハイネットテレビ(あけぼのテレビが51%の株を持つ)
●ムーラン・エアー(コスモス・ケイ・千里で25%の株を持つ)
 
これ以外にも結構細かい子会社・関連会社が存在する。
 
八千代クリーンサービスはコロナで仕事が急増した結果、営業規模が膨らんで運転資金が枯渇したのを救済したものである。純粋な資金援助に近いが貸付金ではなく増資分を引き受けたので返済の必要が無い。
 

学校が春休みなので、3月下旬から4月上旬に掛けてあけぼのテレビでは若手主体のネットライブを行った。
 
3.25(Fri) スリルボカン
3.26(Sat) ビンゴアキ
3.27(Sun) 玄関
3.28(Mon) ラピスラズリ
3.29(Tue) スパイスミッション
3.30(Wed) 常滑舞音
3.31(Thu) UFO
4.01(Fri) 赤いトマト
4.02(Sat) CCD
4.03(Sun) WindFly20
 
玄関は昨年あたりから動画投稿サイトを中心に活動し始めたバンドで、主として口コミによりファンが広がっていた。彼らはiTunesとAmazonには登録しているがCDは1枚も発売していない。制作に口出されたくないし売上の中の取り分があまりにも小さいからレコード会社と契約する気は無いと言っている。今回は5万人も接続してくれて結果的にファンが拡大するきっかけとなった。
 
WindFly20がトリのように見えるが、実は土日に配されているのは“回線がパンクする恐れの無い”アーティストである。月〜木曜日が回線をたくさん使用するアーティストであり、実質的なトリはUFOである。
 
今回アクアは映画撮影のためお休みである。
 

中継は、あけぼのテレビから、ЮЮネット・★★チャンネル、ホーライTV、ハイネットTV、平平ビデオ、また提携している全国12のローカルCATVでも視聴することができる。提携自体しているCATVはもっと多いのだが課金の仕組みと有料放送をチケットを買った人だけに配信する仕組みを持ってないと、この手の番組は流せない。
 
あけぼのテレビがハイネットTVと提携したのは何といっても回線幅拡大のためである。単純に自社のバックボーンを増やすのでなく提携の道を選んだのは普段はその回線幅は必要無く、ネットライブの時だけ配信能力が欲しいので、普段は独自の番組を流しておいてもらった方が無駄が無いからである。ハイネット側もビッグアーティストのライブを流せるのは美味しかった。実際この提携以降、ハイネットTVの会員は増えている。
 

今回の地方ガールズからの昇格組は、まず3月28日のラピスラズリのバックダンサーに投入された。中継は仙台の織姫を使用する。先日の地震でモニターなどが200個ほど破損したが、急遽小浜の機器を仙台に運んでちゃんとネットライブができるようにした。
 
参加した信濃町ガールズは下記19名で、28日朝、熊谷からCRJ200(定員2+50)で仙台空港に運んだ。
 
高校1年(3)
箱崎マイコ 広瀬みづほ 花園裕紀
中学3年(6)
豊科リエナ(Leader) 東海林椿希 直江アキラ 山鹿クロム 三陸セレン 長岡飛鳥
中学2年(8)
宮地ライカ 知多めぐみ 長浜夢夜 鈴原さくら 小野寺雪 糸川穂美 鳴田あゆな 石田一絵
中学1年(2)
春野わかな 杉本ひかり
 
ラピスラズリも常滑舞音も高校2年生なので、バックダンサーは高校1年以下を起用している。
 
この他ラピスラズリ・ライブのMC山本コリン、常滑舞音ライブのMC大仙イリヤもこの子たちと一緒にCRJ200で移動した。この2人はこのライブの後から、あけぼのテレビに投入される。
 
舞音の歌にコーラスを入れる水谷姉妹は舞音と一緒に Honda-JetOrangeで移動している、舞音の飛行機には千里とマネージャーの悠木恵美も同乗している。千里は副操縦席に乗る。舞音はこの5人セットで移動することがとても多い。
 
AT4(鈴鹿あまめ・夕波もえこ・古屋あらた・松島ふうか)はあけぼのテレビの仕事で欠席。鹿野カリナ・石条ぼたんもキャスター見習いで欠席である。
 

メンバーは3月28日朝食後に熊谷に移動し、CRJ200で仙台空港に飛んだ。会場の織姫は仙台空港からすぐ近くなので、3月の震災復興支援ライブにも参加した春野わかな・広瀬みづほ以外の昇格組か驚いていた。
 
「熊谷まで時間が掛かったから空港降りた後もまた時間がかかるのかなと思ったらすぐだった」
「まあ熊谷までの行程が、行程の大半だね」
「織姫とかミューズシアター(小浜)は、熊谷の隣にある感覚」
 

信濃町ガールズのユニフォームで、スカート・キュロット・ショートパンツのどれを穿くかは(天然女子でも)任意である。
 
今回、最初ショートパンツを穿いていたのは、花園裕紀と杉本ひかりの2人である。セレンとクロムは当然スカートである。飛鳥はもちろんスカートである。ちなみに広瀬みづほはミニスカ+ベージュの厚手タイツだった(花ちゃんと話し合って決めた)。
 
花園裕紀は、ラピスラズリ・ライブの司会役でガールズたちと同じ飛行機に乗ってきた山本コリンにヘッドロックを掛けられる。
 
「くぉらぁ!、一葉(いちよう)、何ショートパンツとか穿いてる?ちゃんとスカート穿きなさい」
 
裕紀の顔がコリンのバストに挟まれて息苦しい!(裕紀は女性不感症なのでバストに顔が付いてドキドキしたりはしない)
 
「ぼく男の子だよぉ」
「男の娘かもしれないけど、ちんちん無いんだから君はスカートでよい」
と言われて、半強制的にスカートに穿き換えさせられた(セクハラ)。
 

残りは杉本ひかりだけである。
 
「ひかりちゃん、みんなスカート穿いてるよ。君もスカート穿こう」
などと宮地ライカ・知多めぐみから言われる。
 
「えー?でもぼく男の子なのにスカートとか穿いていいんですか?」
「いや君はスカートが似合うとみた」
と宮地ライカ。
「むしろショートパンツ穿いてても女の子に見えるよね」
と知多めぐみ。
 
「じゃ穿き換えます」
と言ってスカートを穿いたが全く違和感が無い。
 
「うーん・・・」
と他の子たちは腕を組む。
 
「君、ふだんからスカート穿いてるでしょ?」
「え?スカート穿いちゃいけないんですか?」
とひかり。
 
「どこからツっ込めばいいのか」
「だいたい、ブラジャー着けてるし」
「いつもスカート穿いてるのなら、信濃町ガールズでもスカート穿きなさい」
 
ひかりはみんなの前で着替えたのでショーツを穿いている所をみんなに見られたし、ショーツに盛り上がりが無いのも見られている。ただ信濃町ガールズの男の娘はみんなタックしているので、女子たちも盛り上がりが無いからといってちんちんが無いとは思わない(←1ヶ月以内に解剖して検査されることほぼ確定)。
 
ということで、今回のバックダンサーは全員ミニスカートになった。
 
(ライブを見た、ひかりの元同級生たちは「やはりひかりちゃん女の子になったのね」と言っていた)
 

初日のラピスラズリのライブでは、バックダンスの入る曲が少ないので、信濃町ガールズたちは休んでいる時間のほうが長かった。結果的に新人たちには良いウォーミングアップになった。
 
29日はお休みだが、クレール2号館を借りて“翌日”の予行練習をたくさんした。これは練習無しではできないぞと、ひかりたちも思った。
 
そして30日は常滑舞音のバックを務める。これがマネキンになったり、猫のコスプレをしたり、様々なお魚になったりなど、舞音・キャットシスターズだけでなく、みんな色々な衣裳を着けて出て行くので、とても楽しかった。
 
くたくたに疲れたけど!
 
「すっごく楽しかった」
「疲れるけど楽しいよね」
「私、猫と間違って犬の衣裳着けちゃった」
「愛嬌、愛嬌」
 
(でも顛末書を書かされた!)
 

仙台ライフから戻った後、昇格組は女子寮地下のB17スタジオに案内された。信濃町ガールズの先輩たちから説明される。
 
「ここはあけぼのテレビBチャンネル制作専用スタジオ」
「ここは空いていたらいつでも勝手に番組を作って良い」
「勝手に作っていいんですか?」
と昇格組は驚く。
 
「ひとりでやってもいいし、何人かで組んでやってもいい」
「やりたい場合はスタジオ管理室にいる水城さんか五条さんに声を掛けて。メッセしてみて空いてる時間を教えてもらうとよい。電話は制作中だったりするとつながらないからメッセが良い」
 
「だいたい30分練習して15分収録。NG出したりした時のための予備が15分で1時間コース」
「まあ高校生以上のメンバーに声掛けて監修してもらうのが無難」
「そうします」
 

「歌を歌ってもいいし、楽器演奏をしてもいいし、漫才や曲芸を披露してもいい」
「差別語や放送禁止用語を使わないように」
「商品名の使用はできるだけ避けて」
「銃器や刀剣・爆薬を使うなど危険なことはしないで」
「しません!」
 
「放送品質に到達してないと水城さんたちが判断したら遠慮無く没にされる」
「私1分で打ち切られたことある」
「全部没にされそう」
「漫才とかは没にされる確率高い。あれって自分で面白いと思っても他人が聞いたら大抵詰まらない」
「まあ歌うのが最も無難。ここに来てる子は大抵とっても歌がうまい子」
 
「でも文化祭の演し物程度のレベルがあれば流してもらえることが多い」
「まあ腕試しと思って、色々やってみると良い」
「途中で打ち切られてもめげない。また頑張ろう」
 
「放送してもらえたら1回1万円もらえる」
「すごーい」
 
(↑この子たちはこの金額を「凄い」と思う)
 

「まあ何人かでやった場合はそれを山分けだけどね」
「高校生とかに監修してもらったらその人が3割取って残りを山分け」
「それでも監修してもらった方がいい気がします」
 
(↑実は高校生メンバーのお小遣い稼ぎになっている。でもそれで監修の実践練習をしている)
 
「空いてる時はいつ使ってもいいし、一週間先まで予約できる」
「予約したらちゃんとその時刻に使うように」
「水城・五条さんは平日は15時から23時まで、休日は朝8時から夕方20時までどちらかが居ることが多い」
「基本的に23時から朝8時までは対応しない。練習には使える」
 
「水城さんたちがお休みの時とか、誰もスタジオ管理室に居ない時は夜23時までなら副寮母の花ちゃんか寮長のロンドちゃんに声を掛けてみて」
「運が良ければ対応してくれる場合もある」
 
「海浜ひまわりちゃんや稲田姉妹には頼まないほうがいい」
「アバンギャルドなものができがちだから」
 
アバンギャルドなものってどんなのだろう?とみんな思っている。
 
「カメラ使う自信のある子は勝手に作って後で映像を見てもらう手もある」
「でも7-8割は没にされる」
 
「どなたかにお願いすることにします」
「うん。それが無難。まずい所とか指摘してくれるから」
「きちっと15分にまとめるのも割と要領がいるしね」
 

「ここの地下スタジオの番号って連続してないんですね」
「まあ歴史的な経緯もあって飛び飛びになっている」
 
「B65はコスモス社長が歌手デビューした時のブラサイズ」
「マジですか?」
 
(↑本当はB5とB6の間だからなのでは?)
 
「B10はアメリカアニメのBen10(ベンテン)から命名された」
「B20はホンダCR-Vに搭載されたB20Bエンジンから命名された」
「B16は日立の古いパソコンB16から命名された」
 
(↑凄く嘘っぽいんですけど)
 
「B17は紅川相談役がお気に入りだったオリビア・ニュートン・ジョンの歌から来ている」
「どんな歌ですか?」
「Please Mr. Please という歌。Don't play B-17 (B-seventeen)という歌詞がある」
「どういう意味ですか」
「曲番号B-17は掛けないでということ。その歌は想い出の歌だからって」
「へー」
「オラオケか何かの番号ですか」
「ジュークボックスって昔の自動演奏機械らしいよ」
 
「へー」(←多分物凄く違う形状のものを想像している)
 

2022年4月1日(金).
 
成人年齢が18歳に引き下げられたことで、2002年4月2日-2004年4月1日生れの人が一気に新成人となった。§§ミュージックは該当の人に新成人のお祝いをした。該当者は下記である。
 
2002年度生
天月聖子“今井葉月”(*31)
南田容子
木下宏紀
大西香緒“三田雪代”
森下比南代“原町カペラ”
田中優子“安原祥子”
 
2003年度生
門脇真悠“大崎忍”
山口暢香
高島瑞絵
柳田章枝“石川ポルカ”
篠原倉光
諸田望美“太田芳絵”
 
「なんか芸名の無い人が多い」
「歴史的な経緯だな」
「きっと作者が芸名考えるの、しんどかったんだよ」
 
木下と篠原は舞音のバックバンドで多忙な日々を送っているがこの日は休みにしてもらった。2人ともひたすら寝ていたようである。
 

(*31) 彼は出生名は天月西湖(あまぎせいこ)だったが、不幸な(幸運な?)偶然の重なりから、本人も知らない内に、法的な名前が聖子に、性別も女性に修正されてしまった。それで吉田和紗(桜木ワルツ)とは婚姻ができず、パートナーシップ宣言した。
 
子供の比奈(ひな)は聖子が養子縁組を申請中。これが認められれば、和紗が実母、聖子が養母という、2人の母を持つ子になる予定。比奈の戸籍の父親欄は空白だが、2人は比奈が将来自分の親について疑問を持った時のため、彼女の母は和紗で父は聖子であるというDNA鑑定書を作成した。
 

花ちゃんは女子寮に滞在中?のFlower Sunshineの立花紀子・竹原比奈子・神谷祐子(以上2002年度生)および山道秋乃(2003年度生まれ)にも成人のお祝いをしてあげた。
 
「え?私成人なの?まだ18なのに」
「知らなかった人もいたのか」
「今日から成人年齢が18に引き下げられたんだよ」
「だったら私、今日からお酒飲める?」
「残念ながら、お酒を飲めるのは今まで通り20歳になってから。ついでに寮内は飲酒禁止」
「残念。焼酎飲んでみたかったのに」
「まあ20歳まで待とう」
 
「いきなり焼酎が出てくるのはアイドルらしくない」
「ここはチューハイとかワインとか言うべきだったな」
「私ワインってあまり好きじゃない。ジュースみたいで。芋焼酎最高」
「えっと君ワインとか芋焼酎とか飲んでるの?」
「え?もちろん飲んでませんよ。まだ18だもん」
「よしよし」
 

今井葉月は映画制作中だが、この時期は越谷でセリフ先録りの作業中で、葉月は時間が取れる。それで、この日はお休みにしてもらって自宅に戻った。
 
家では、和城理紗(*32) がケーキを買ってきて、葉月の成人の祝いをしてくれた。
 
「わっちゃん、ごめんねー。私がしないといけないのに」
と和紗(桜木ワルツ)が言う。
 
「かずちゃんはまだ産褥期間だから休んでて」
「うん。ありがとう」
 
それで葉月がまだお酒を飲めないし、授乳する和紗も当然お酒を飲めないしコーラで乾杯してお祝いをした。
 
(*32) 和城理紗(ワシリーサ:わっちゃん)は本来千里1の専属眷属であるが、龍虎(アクア)と聖子(葉月)のガードをしている。最近は聖子に付いていることが多かったが、和紗が妊娠してからは、なかなか帰宅できない聖子に代わり、和紗の日常の面倒を見てくれている。
 

「でもワシリーサちゃんって名前がロシアっぽいよね?ロシア出身とか?」
 
「私の名前はロシア民話の『カエル姫』(Царевна лягушка, Царевна=princess, лягушка=frog)」(*33) から採られただけで、ロシアとは関係無いです。私は伊勢の二見ヶ浦生まれです。昔話に出てくるカエルの女の子ってあまり多くないんですよね〜。この話は数少ない蛙娘の話だから」
 
「なんでまた蛙の名前とか?」
「え。私、カエルですけど、カエルに見えません?」
 
聖子と和紗は顔を見合わせた。
 
「人間に見えるけど」
「おかしいですねー。私カエルなのに」
 

(*33) 『カエル姫』とは次のような物語である。
 
3人の王子が各々矢を放ち、その矢の落ちた所の近くに居た者と結婚する。いちばん上の王子の矢が落ちた所に居たのは貴族の娘、2番目の王子の矢が落ちた所に居たのは商人の娘だった。しかし一番下のイワン王子の矢のそばに居たのはカエルだったので、彼はカエルのワシリーサと結婚する。
 
ワシリーサは夜の間だけ人間の姿に変身することができた。そして王が課した数々のテストに合格し、イワンの妻として認められる。イワンは、ワシリーサが“脱いでいた”カエルの皮を見付け、燃やしてしまう。するとワシリーサは姿を消してしまった。
 
イワンは大魔女バーバヤーガの所に行き、3つの試練にパスして、人間の姿のワシリーサを取り戻すことができた。
 
矢の代わりにリンゴを投げるというバリエーションもある。また上の王子の矢のそばに居たのは既婚女性、2番目の王子の矢のそばに居たのは男だったので結婚できなかったというのもある(既婚女性・男性と同様に蛙と結婚するのも無茶な気がする)。王子がバーバヤーガの所に行くとワシリーサが鳥やトカゲになって逃げるのを追いかけて捉まえるとか、ワシリーサの2人の妹が出てきて助けてくれるものなどもある。
 

4月4日(月).
 
五反野の駅近くに建つファイブスタービル最上階フロアに、あけぼのテレビ五反野サテライトがオープンした。ここで一部の番組の制作をおこなう。
 
最上階を借りたのは、上の階の足音等を放送に混入させないためである。
 
これはあけぼのテレビの制作が中高生の信濃町ガールズにより支えられているのでいちいち大田区のあけぼのテレビ本社まで行く労苦を省こうという趣旨のものである。特に昨年秋、鈴鹿あまめが最初番組アシスタントとして起用され、その後あっという間にメインキャスターになってしまって以来、彼女の負荷が大きくなりすぎたことから、負荷軽減策として準備を進めていたものである。
 
今後、鈴鹿あまめ・夕波もえこ・古屋あらた、のあけぼのテレビ3人娘が司会を務める番組は原則としてこちらで制作することになる。
 
あけぼのテレビの放送時間は、平日は17:00-26:00 である。これまでは、あまめたち中学生キャスターは18:00-20:00 の時間帯に入っていたのだが、五反野分室ができたことで、彼女たちが17:00から入ることも可能になった。
 
(土日祝は8:00-16:00, 17:00-26:00)
 

また信濃町ガールズたちにより適当に!制作され 7days/24hours 録画を自動放送している“Bチャンネル”の番組もこちらのスタジオとスタッフが空いている時に作ったりもするようにした。
 
Bチャンネルは女子寮地下のB17スタジオで主として作っているが、女子寮の地下にはセキュリティ上ゲストを招いての番組制作ができないので、女子寮から、味噌汁の冷めない距離?(車を使えば!)のスタジオを作ったというのが実態である。
 
Bチャンネルはわざわざファイブスタービルまで来なくてもいいかも知れないが、緊張感のある所で制作することで、彼女たちの度胸付けになる。元々あけぼのテレビの目的のひとつが彼女たちに経験を積んでもらうことである。
 

キャスター担当表は次のように(暫定的に)改訂された。
 
_17:00_18:00__19:00_
月夢夜_|カリナ・あまめ
火バニラ|コリン・ふうか
水みなみ|ぼたん・あらた
木リエナ|イリヤ・あまめ
金レモン|金平糖・もえこ
 
ふうかが仮免卒業となり、アンカーを任せられた。
 
17:00からの枠に豊科リエナ、長浜夢夜、新人の酒田レモン(東海林椿希)(*34), 花畑バニラ(小野寺雪)、更に薬王みなみにも入ってもらった。17:00からの枠は(女子寮に住んでいて)E中学に通っている子だけが間に合う。
 
実はファイブスタービルは、女子寮とE中学の中間地点付近にある。
 
薬王みなみはA契約だが、この時期はわりと時間が取れたので1枠入ってもらった。この子はとてもトークがうまく、松島ふうかなどより上手い。19時台に入(い)れないのは、その時間は他のテレビ局などの仕事が入(はい)る可能性があるからである。しかし彼女をここに入(い)れたことで結果的に水曜17時は凄い視聴率になることになる。
 
金平糖とはセレン・クロム(+裕紀/さくら)の仮ユニット名である。彼らはわりとトークが上手いが、あまめに言わせると
「2人合わせて0.9人前」
ということなのでセットにされた。
 
バニラは後に相棒のショコラも入れて、火曜17時枠は“ツイストクリーム”(後述)の枠となる。
 

中学生キャスターで、あまめだけが平日2回登場である。19時台を任せられる子が居ないので現状ではやむをえない所である。本人も
 
「昨年秋の毎日1人でやってた時に比べれば随分楽だから、カリナさんが慣れるまでは頑張りますよ」
と言っていた。
 
しかしあまめが言ったように今カリナは“キャスター見習い中”なのでカリナがひとり立ちできるようになれば19時台に移ってもらい、18時台には他の誰かを起用する。
 
また現状、AT4以外が司会をしている時は、司会者が対処しきれない事態が発生した場合にヘルプに出て行くため、あまめかもえこが横で待機しており、この2人の負荷はやはりかなり大きい。
 
(困った時に出てくるので、この2人は“ウルトラマン1号”“ウルトラマン2号”と呼ばれている)
 

(*34) 東海林椿希の芸名をコスモスは“庄内レモン”と決めて本人にも通知し、佐々木春夏に言って名刺も作ってあげた。ところが彼女をあけぼのテレビで紹介する時に司会の鈴鹿あまめがうっかり
 
「新人で秋田県酒田市(*35) 出身の酒田レモンちゃんです。凄く優秀な子で、私とか、あっという間に追い越されそうです」
と言っちゃった。
 
椿希も「違います」と言えば良かったのだが、テレビ初出演というので訂正する勇気が無かった。番組が終わってから佐々木春夏に
「酒田レモンじゃなくて庄内レモン」
と修正される。
「ごめーん!」
とあまめも謝る。
 
「ついでに酒田市は秋田県ではなく山形県」
と夕波もえこからも指摘される。
 
「きゃー。ほんとにごめんなさい」
 
「でも庄内レモンより酒田レモンの方が音の“落ち着き”がいいよ」
とその場に居た高崎ひろかが言った。
 
「あ、それは私も感じました」
と本人も言う。
 
「じゃ、あまめちゃんに“酒田レモン”と紹介されちゃったから、君の名前は“酒田レモン”にしよう」
と高崎ひろかが言って、ホームページの信濃町ガールズ紹介コーナーも春夏に言って、酒田に修正させちゃった!
 

「ついでに性別も修正する?」
と夕波もえこ。
 
「ちんちんあると便利そうだけど、おっぱい取る手術はむっちゃ痛そうだからやめときます」
 
「だけどホームページの性別の表示ってあまり意味無いと思いません?」
と高崎ひろかが言う。
 
「実は性別表示は消していいのではという意見は多々ある」
と佐々木春夏。
 
「どう考えてもアクアが男だなんて嘘だし」
ともえこ。
 
「真っ先にアクアの性別は消すべきだな」
とひろかも言っていた。
 
(ちなみにビーナの性別は既に女に訂正済み:ビーナの場合初期の“男”という表示が単純ミスだろうと多くの人に思われた)
 

(*35) 視聴者の間では
「秋田県酒田市というのは謎の自治体だな」
「多分神奈川県町田市とか、静岡県小田原市とかの類い」
「福岡県鳥栖市とか島根県米子市とかの類い」
 
などと突っ込まれていた。
 

鈴鹿あまめは
「始末書書きます」
と言っていたが
 
「気にしない気にない。どうせ社長は気付かない」
と高崎ひろかが言うので、書かなかった!
 
“酒田レモン”という名刺は佐々木春夏があらためて作ってくれた。庄内レモンの名刺は結局1枚も配っていない。
 
コスモスは
「あれ〜、私この子の名前酒田レモンにしたんだっけ?」
と思ったものの、だいたいオーバーフローしているので、庄内レモンにした気がするのは、きっと勘違いだろうと思った!
 

4月4日、あけぼのテレビとTKRは共同で
「信濃町ガールズ・ミュージックキューブ」
を発売した。
 
これは縦横高さ5cm×5cm×5cm の角を丸めた立方体のプラスチック製。色は取り敢えず赤・青・黄・緑・オレンジ・ヴァイオレットの6色。色による機能差は無い。ストラップを付けることができる。
 
これをwi-fiでネットにつながる所に置いておくと、“勝手に”あけぼのテレビBチャンネルの内容を最新96時間(4日)分サイクリックに録音する。これを充電になぞらえて“充音”と称する。
 
(ダンスパフォーマンスなどは“充音”スキップされるし、再放送は新しい物だけが残されるので、実際には10日分近く入る)
 
そして再生ボタンを押すかスマホからの指示または音声による指示で再生し、“充音”した内容を再生するというものである。音はイヤフォン(ステレオミニブラグ/Bluetooth)で聴くか、またはFMトランスミッターを通してカーラジオなどで聴くこともできる。
 
サイズはもっと小さくすることもできるのだが、あまり小さすぎると紛失するのでこのサイズとした。電源は単4電池またはUSB充電(Type-C)である。単4電池でも動作する仕様にしたのは、これを旅のお供に使う場合を想定したものである。基本はシークェンシャル再生で、前回停めた所から再生するが、番組単位(15分)ランダム再生も可能である。
 
一定時間移動しなかったら自動停止するスリープ機能がある(この機能を使用しない設定、USB充電してない時だけ適用する設定も可)。またある時刻になったら再生を開始する目覚まし機能もある(Bluetoothスピーカー使用推奨:結構これで目覚まし時計代わりにする人があった)。
 
本体価格は1000円、使用料は月200円である。支払いはあけぼのテレビの会費と一緒に払うことができる。この使用料は実際問題としてJASRACへの著作権使用料の支払い原資に充てるためのものであり、視聴者へのサービスに近い。
 
それにしても権利問題が生じずギャラの安い信濃町ガールズのパフォーマンスだから成り立つ商品で、地上波テレビなどでは全く考えられない商品である。
 

ところで3月26日から放送されていた明治のチョコ菓子“いろいろイロハ”のCMだが、小野寺雪と糸川穂美が出演したCMが流れ始めてから、このチョコ菓子は売上が倍増した。またこのCMがネット上で結構話題になった。
 
「この子たち何て子?」
「信濃町ガールズの新人らしいよ」
「何か可愛いじゃん」
「歌もうまいね」
 
2人は付き添いで行った海浜ひまわりの指導で(キーボードで伴奏もした!)即興で和音も付けて歌っているので凄くうまく聞こえる。
 
「この子たち名前は何て言うの?」
 
というわけで、わざわざメーカーに問い合わせた人もあり、2人はバニラちゃんとショコラちゃんらしい、という情報が拡散する。
 
売上増加で一時は店頭からなくなり慌てて増産する騒ぎになる。これまでこの商品のCMは何代もの名も無きモデルさん・タレントさんたちが出演していたのだが、メーカーでは、当面この2人に今後もこの商品のCMをしてほしいと要請してきた。4月上旬にはもう少しまともな演出で撮り直したCMが流れ始める。ギャラも前回は80万だったのが200万に引き上げられた(ふたりの取り分はあわせて40万:ひとり20万)。
 
また「このCMの歌、発売されてないんですか?」という問合せがあり、急遽CDを制作することにした。楽曲もCMで使う8小節しか無かったのが3分ほどの曲に補作された。
 

そういう訳で、結局バニラ・ショコラという名前は今更変えられなくなった。
 
「あんたたちに苗字つけてあげるね」
と花ちゃんは言った(コスモスからこちらに投げられた)。
 
「バニラちゃん(小野寺雪)は花畑バニラ、ショコラちゃん(糸川穂美)は米田ショコラで」
 
「ありがとうございます!」
と2人は作り笑顔で!元気よく答えた!
 
「何かいわれがあるんですか」
「芸能人の名前は成功するように花が咲いて実が成るようにというのがいいんだよ。だから田と畑で、花と米だよ」
 
「なるほどー」
 
花ちゃんからそう言われると良い名前のような気がしてきた(きっと気のせい)。
 
「結局私たちセットなんですね」
「うん。君たちのユニット名はツィストクリームにしよう」
「ツイスト?」
「ソフトクリームで2種類のフレーバーを一緒に巻いたものをツイスト(twist)と言うんだよ(*36)」
「あ、聞いたことある気がする」
 

(*36) ツイスト(twist)とは“ねじれ”という意味。電話線やLANケーブルはtwisted pair cable(撚対線:よりついせん)。2本組で撚(よ)ってある。
 
このタイプのソフトクリームはスワール(swirl 渦巻き)とも言う。
 
ウクライナ風に言うとトリパーク(Трiпак)かも!?
 
『くるみ割り人形』の『トレパーク(Трепак)』はこれをロシア語風に発音したものである。
 
なお“ソフトクリーム”は和製英語で英語ではソフトサーブまたは99フレーク。ドイツ語がわりと日本語に近くソフトアイス(Softeis)。スウェーデン語なども似た言い方。フランスでは Glace a l'italienne (イタリアン・アイスクリームという意味)、そのイタリアでは Gelato alla spina (注ぎ口から出るアイスクリーム)と言って英語に近い。また中東では“アメリカン・アイスクリーム”と(各々の言語で)言うらしい。
 

昇格組の鳴田あゆなと石田一絵が花ちゃんのところに来て言った。
 
「花ちゃん、私たちにも名前付けてくれませんか」
「君たちの名前はそう遠くない内にコスモス社長が付けてくれると思うが」
「でも雪ちゃんと穂美ちゃんがもう名前付けてもらったから」
「私たちも名前欲しいなあと思って」
 
なんかこの2人息が合ってる?
 
「君たちわりと仲が良い?」
「はい。昇格試験の後、同じ飛行機で帰ったので」
「機内でたくさんおしべりして仲良くなったんです」
「じゃセットの名前を付けてあげよう」
「ありがとうございます」
 
それで花ちゃんは名付けソフトを起動して2人に名前を考えてあげた。
 
「西浜(にしはま)ももこ、南里(なんさと)くりこ」
と花ちゃんは15分くらい試行錯誤してから言った。
 
「へー」
「西も南も方位の名前、どちらも先頭がナ行、浜と里で対、もも・くりはペア」
「おぉ」
 
「でも西と東とか、南と北とかじゃないんですね」
「そうすると画数が良くないんだな」
「ああ」
「それに日本は偏西風帯にある。偏西風というのは南西の風」
「わあ」
 

「ということで石田一絵ちゃんが“西浜ももこ”、鳴田あゆなちゃんが“南里(なんさと)くりこ”」
 
「それ、どちらがどちらという言われとかあるんですか?」
「鳴田あゆなちゃんは碧南市出身だから“南”を取る。石田一絵ちゃんは西九州の有田出身だから“西”を取る」
 
「すごーい!」
 
(このくらいの屁理屈をバッと思い付かなきゃ、タレントたちの元締めなど・・・以下同文)
 
それでこの2人の名前は西浜ももこ・南里くりこと決まったのである。この2人は後に“ピーチ&マロン”というデュオを組むことになる。
 
なお、コスモスは石田一絵に有田みかん、鳴田あゆなには熱田やまと、という芸名を考えていたらしいが、花ちゃんの付けた名前のほうがずっといいので、そちらを追認した。
 
だいたい有田みかんは佐賀の有田ではなく和歌山の有田だ!どう考えても場所を勘違いしている。勘違いで命名されたら可哀想すぎる所だった。
 

4月5日(火).
 
北区のC学園中学高校で入学式があり、風谷リンゴ(美崎ジョナ)は中学時代と同じ女子制服を着て出席。高校生になった。制服は基本的に同じものだが、胸元のスカーフの代わりにリボンを着けた。
 

4月6日(水).
 
足立区のE中学校で1学期で始まり、下記のメンツがこの学校に転入して新しい学校生活を始めた。
 
3年:
東海林椿希(酒田レモン)
2年:
鳴田あゆな(南里くりこ)
糸川穂美(米田ショコラ)
小野寺雪(花畑バニラ)
石田一絵(西浜ももこ)
 

4月6日(水).
 
長岡飛鳥は世田谷区のF中学に男子用学生服を着て登校した。最初は職員室に来るよう言われていたので、そちらに行く。ところが50代くらいの男性教師にいきなり注意された。
 
「君、何ふざけて学生服とか着てるの?ちゃんと女子制服を着なさい」
「女子制服を着るんですか?」
「まさか持って来てないの?」
「持っては来てますけど」
「だったらすぐ着替えて」
「この辺で着替えていいですか?」
「そこの面談室を使いなさい」
「分かりました」
 
それで飛鳥は職員室前に並んでいる面談室のひとつに入り、セーラー服に着替えた。
 
「セーラー服着ろと言われたんだから、着ていいよね〜」
などと独り言を言っている。
 

それで職員室に入り、教頭先生の所に行く。
 
「お早うございます。3年への転入生、長岡飛鳥です」
「ああ、おはよう。えっと・・・長岡さんは島根県からの転入だったね。これ“うんなんし”でいいの?」
「はい。出雲市の南側にあるから雲南市です」(*37)
「なるほどー」
「平成の大合併で6町村が合併して市になったんですよ」
「ああ。あれ?君の書類、男子になってるけど」
 
「あ、私男子ですよ。男子に見えません?」
と飛鳥は言って、バレエのピルエットのように、くるりと1回転してみせた。(飛鳥は小3までバレエを習っていた)
 
教頭は目をぱちくりさせた。
 
「どうもジョークの好きな子のようだね。書類間違ってるみたいだから直しておくね」
「何でしたら学生服で通学して水泳の授業で男子水着着てもいいですけど」
「そんなことしたら、校長先生が逮捕されるよ」
と教頭は笑っていた。
 
それで飛鳥は3年3組に入るということで担任の先生に紹介され、一緒に教室に行って、みんなの前で自己紹介した。同じクラスになったクロムが手を振っていたので軽く手を振り返した。
 
飛鳥は
『ぼく女子中学生になっちゃった』
と思ってドキドキしていた(*38).
 
(*37) 一般には出雲国の南部にあるからと説明される。
 
(*38) 飛鳥は“身体測定”とか“内科検診”というのを全く考えていない。
 
 
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【夏の日の想い出・無茶言うなよ】(2)