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■娘たちの予定変更(27)

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インプを運転して大学を出た後は、市内の公民館に行く。ここの会議室を今日の午後は借りていたのである。
 
この日はローキューツのメンバーの中で集まれる人は来てと言って呼び集めていた。だいたい揃ったかなという所で、18-20日に行われた全日本実業団競技会の試合録画のダイジェストを見せる。《せいちゃん》と《げんちゃん》が録画し、編集してくれたものである。
 
会議室に集まったのは、浩子・麻依子・国香・薫・誠美・夢香・司紗・凪子・桃子・聡美などであった。麻依子と誠美はNTCで「自主合宿」中だったのだが、一応この日のお昼でそちらが終了になったので、千葉に移動してきた。
 
「きれいにまとまってるね。千里お疲れ様」
と浩子が言うが、薫は首を傾げている。麻依子がもっとハッキリ言った。
 
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「千里が自分で録画したり編集したりできるようには思えん」
 
「うん。友だちにしてもらったんだよ」
と千里が言うと。
「なるほど〜」
という声があがる。
 
司紗が
「細川さんですか?」
とストレートに訊く。
 
「あ、えっと・・・」
と思わぬ突っ込みに千里が焦り真っ赤になるので、みんなは「なるほど彼氏にやってもらったのか」と思ったようであった。
 
「千里、このビデオのオリジナルある?」
と薫が訊く。
「あるよ。このハードディスクの中のorgというフォルダに入ってる」
「じゃよかったら、そのディスクごと貸してくんない?」
「いいよー。後で持ち帰って」
 
薫は全編見て色々分析するのだろう。
 

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「でも佐藤さん、凄すぎる」
と聡美がビデオを見て言った。
 
「2007-2008年の北海道の女子バスケでは、千里さんと佐藤さんがトップ2だったんですよ」
と凪子(L女子高出身)が言う。
 
「まあ千里がマッチアップするよね?」
と薫。
 
「当然。向こうもそのつもりだと思うよ」
と千里。
 
「だから山形D銀行みたいにダブルチームはしなくて済む」
と薫。
「いや佐藤さんにダブルチームしたら、うちは他の3人で向こうの4人には対抗できない」
と浩子。
 
「レベルの高い選手が多いもんなあ」
と国香。
 
「ただし、実質結成1年目で、選手層が薄いんだよ。それが救い」
と千里。
 
「来年以降はもっとすごくなるだろうね。数年後にはWリーグ入りするかも」
と麻依子。
 
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「うん。多分藍川さんもいづれはと思っていると思う。ただWリーグに入るには、ファンを開拓して地域に愛されるチームに育てないといけないから、それに多分4〜5年は掛かる」
と千里。
 
千里は藍川さんの《寿命》も気になっていた。本人も自分がいつまでこの世に留まれるのか全く分からないと言っている、明日消滅する可能性もある。美鳳さんに訊いてみたこともあるのだが、美鳳さんにも分からないと言っていた。千里に隠しているのではなく、マジで分からない様子だった。
 

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「佐藤さんも凄いけど、湧見さんも凄いね」
と夢香が言う。
 
「千里の愛弟子のひとりだね」
と薫。
 
「ついでに元・男の娘だね」
司紗。
 
「2年前、高校2年の8月に去勢手術を受けたから今大会から参加資格ができたんだよ」
と千里が言う。
 
「18歳未満なのに去勢できたんだ?」
「まあ緩い病院は存在する。でも多分年齢誤魔化して手術してもらったんだと思う」
 

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「センター陣も背の高い人が多いね」
と浩子。
 
「ローザとサクラはどちらもプロ級。ナミナタさんもかなりのもの」
と誠美。
 
「ナミナタは社会人選手権には出られないんだよ。あの大会は外国人選手は登録できない」
と千里が説明する。
 
「じゃ、このナミナタさんとローザさんが出ない訳ね?」
「ローザは日本人選手扱いだから出場できる」
「うっそー!?」
「彼女は幼い頃に日本に来て一家丸ごと帰化している。帰化選手でも日本の小学校・中学校を出ていれば、生まれながらの日本人と同じ扱いなんだよ。実際、ローザはフランス生まれなのにフランス語ができない」
「へー!」
 
「牛丼とそばが大好きな生粋の日本人だね。朝食には御飯と味噌汁に納豆か海苔が無いとダメらしい」
 
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「お友達になりたい気がする」
と桃子が言っている。
 
「じゃ社会人選手権の時にアドレス交換かマイミクか持ちかけてみるといいよ」
 

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“ビデオ鑑賞会”が終わった後、千里はインプを運転して、そのまま東京北区のNTCに入った。車内で日本代表仕様のジャージ上下に着換えてから建物の中に入る。
 
U20の第五次合宿が明日22日から25日まで行われることになっている。26日からはU20アジア選手権である。日本からインドへの移動は明後日23日に行うことになっている。チェコでは世界選手権が始まる日である。
 
食堂に行くと、ずっと「居残り」練習していた純子と留実子が居る。ほかに星乃・雪子も居残りしていたのだが、ふたりは一時外出しているらしい。
 
千里も夕食を取ってきて一緒におしゃべりしている内に、だんだんメンバーが集まってきた。玲央美は19時頃来たが、食堂に入ってきて千里を見るなり、いきなり腕をつかんだ。
 
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「な、なに?」
「ちゃんと女の子になったね」
と言ってニコリとする。
 
「私はふつうに女の子だけど」
と千里。
 
「どうしたの?千里、生理来た?」
と江美子が訊く。
 
「生理は15日に来たから、今回の大会中は大丈夫」
と千里は答える。
 
「だったら問題無いね」
と江美子は言ったが、その向こう側に居た留実子は微妙な顔をしていた。
 

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外出していた雪子と星乃、純子も19時半頃には戻って来た。合宿が予定外に長期に渡ったので、色々足りないものが出ていて、その買い出しをしていたようである。
 
20時すぎ、会議室でミーティングが行われ、パスポートを持っていることが確認され、いったんチームの方で預かることになる。
 
U20アジア選手権は2002年にはじまり4年に一度行われることになっていたのだが、3回目の今年2010年で終了することになっている。
 
____ U18_ U19_ U20_ U21
____ Asia 世界 Asia 世界
2004 86-7
2005 ____ 86-7
2006 88-9 ____ 86-9
2007 ____ 88-9 ____ 86-9
2008 90-1
2009 ____ 90-1
2010 92-3 ____ 90-1
2011 ____ 92-3 ____ 90-1
 
これまでのシステムの欠点はこのやり方は偶数年生まれの人に有利で奇数年生まれの人に不利だということである。高3・偶数年生まれと、高2・奇数年生まれでチーム編成すると、どうしても高3偶数年生まれがメインになる。またU18-19は2年に1度なのに、U19-20は4年に1度しか無いという問題もあった。天才が埋没しやすいシステムで、1989生の花園亜津子はU18にしか出ていない(U19世界選手権がインターハイと日程がぶつかってしまった問題もあった)。
 
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FIBAはU20,U21を廃止してU16,U17を設置した。新しいシステムはこうなっている。
 
____ U16_ U17_ U18_ U19
____ Asia 世界 Asia 世界
2009 93-4 ____ ____ 90-1
2010 ____ 93-4 92-3
2011 95-6 ____ ____ 92-3
2012 ____ 95-6 94-5
2013 97-8 ____ ____ 94-5
2014 ____ 97-8 96-7
2015 99-0 ____ ____ 96-7
2016 ____ 99-0 98-9
 
このシステムではU16-17は奇数年生まれが主役になり、U18-19は偶数年生まれが主役になることになる。但し、過去のやり方ではU19チームがそのままU20に持ち上がれたのに対してU17とU18はチームがいったん解体されることになる。奇数年生まれの子はU17とU18を同じ年にやる。偶数年生まれの子はU17に出た2年後にU18に出ることになり、間の年は出る大会が無い(物凄く頑張るとU19に出られる)。
 
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2010年は1993年生まれの子(小松日奈・水原由姫)がU17とU18を兼任して、とっても忙しかった。この2010年は切り替えの年でもあり、更にU24,U24(Univ)なども動いていて、複雑怪奇だったのである。複数のチームが同時に合宿をしているケースも多く、兼任者は大変であった。
 

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今回のU20アジア選手権の大会システムは、U18アジア選手権と同様にレベル1,2に分かれている。前回のレベル1は、中国・韓国・日本・台湾・タイ・インドであったが、入れ替え戦でインドはウズベキスタンに勝って残留を決めたものの、タイはシンガポールに敗れてレベル2に落ちた。それで今回のレベル1は中国・日本・台湾・韓国・インド・シンガポールの6ヶ国で行われることになる。
 
予選リーグをやって1〜4位が決勝トーナメントに進出するが、5〜6位については、U20アジア選手権が今回で最後の大会になるので、入れ替え戦は行われない。
 
決勝トーナメントは1位と4位、2位と3位で準決勝をやって勝者が決勝戦、敗者が3位決定戦に出ることになる。2位以上が来年のU21世界選手権に行くことができるので、実質準決勝が世界選手権の切符を賭けた勝負ということになる。
 
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前回(2006)の順位は1位中国、2位日本、3位台湾、4位韓国であった。
 
「中国はたぶん隠し球をしてきますよね」
「するだろうね。恐らく呉(ウー)選手をそれに使うのではないかと思う。ビデオをかなり集めたから明日の夕方にでも見てもらいたい」
と片平コーチが言う。
 
「おお、情報戦ばっちりですね」
と星乃。
 
「前回は勝(シェン)選手に危うくやられる所だったからね」
と彰恵。
 
「凄い選手だという所までしか試合前には分からなかった。対戦していて偶然対処法を見つけた」
と千里が言う。
 
「恐らく、中国も今、渡辺君と花和君の情報を必死に集めているよ」
と片平コーチ。
 
「日本もそのふたり、決勝戦にキープしますか?」
と朋美が訊くが
 
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「必要無い。うちは堂々とやる」
と篠原さん。
 
「やはりそれが日本流ですよね〜」
と星乃は言った。
 
「そもそも渡辺君の情報は中国はU18チームから得られるはず」
「確かに確かに」
 
「だからジュンはけっこう警戒されると思うよ」
と玲央美は言った。
 

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翌日9月22日は主として連携プレイを中心に練習。最後に7人対7人で紅白戦をした。
 
■Aチーム
PG.朋美 SG.千里 SF.彰恵 PF.百合絵 PF.桂華 SF.星乃 C.サクラ
■Bチーム
PG.早苗 SG.渚紗 SF.玲央美 PF.江美子 PF.純子 C.留実子 PG.雪子
 
朋美:早苗、千里:玲央美、彰恵:江美子、サクラ:留実子、といったライバルを分離して戦力が均衡するように分けている上に、彰恵−百合絵、留実子−雪子というかつてのチームメイトを同じ組に入れて連携しやすくしている。新参の純子のことも雪子や留実子はよくよく知っている。
 
それでこれでかなり白熱した試合となった。
 
40分の試合で最後92-89となった所から、玲央美がスリーを決めて同点に追いつき、引き分けで終わった。
 
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「いや、これはかなりマジになった」
「でも気持ち良く汗を流せた」
 
などと言って引き上げようとしていた時のことであった。
 
「ダイ(桂華)?」
「どうかしたの?」
 
「いや、何でもない。ちょっと腹痛。お昼に3日前のおにぎり食べたせいかなあ」
などと本人は言っているものの、座り込んでしまった。
 
「おいおい。こういう時はちゃんと健康管理してもらわなきゃ。もったいないと思っても消費期限が切れたのを食べちゃダメだよ」
と高田コーチが注意する。
 
「医務室行く?」
とそばにいる百合絵が声を掛ける。
 
「寝てれば大丈夫と思う」
と桂華。
 
しかし高田コーチは言った。
「寝てれば治るかも知れないけど、こういう時は万全の処置をした方がいい。まだ医務室は開いているはずだから、ちょっと行ってみよう」
 
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「ちょっと私、付いてきます」
と百合絵が言っている。
 
「うん。頼む」
と高田コーチ。
 
桂華は体格がいいので、百合絵のような大きい子でないと、途中で立てなくなったような場合に助けてあげられない。
 
それで百合絵に助けられて桂華は立ち上がり、医務室の方へ行く。その時、千里の後ろで《びゃくちゃん》が言った。
 
『ちょっと、あの子、やばいよ』
『え?』
『あれ、盲腸だよ』
『うっそー!?』
『でも医務室に行くなら、看護婦さんが気付いて病院に運ぶと思う』
『うーん。。。だったら、びゃくちゃん、しばらくあの子に付いててくれない?』
『うん』
 
それで《びゃくちゃん》は千里から分離して、桂華と百合絵に付いていく。桂華の足取りが怪しいのを後ろから支えてあげて、医務室に行くのを助けてあげた。
 
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すると何か感じたのか、玲央美が千里の方を見た。
 
「あれまずい?」
と小声で訊く。
「もしかしたら。でも病院に行くから大丈夫だと思う」
「病院に行くことになるのか!?」
 

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