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■娘たちの予定変更(2)

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「まあ着たい人は着てもいいんじゃない?何を着るのも自由だよ」
と美緒が言う。
 
「紙屋君、振袖着る?」
「遠慮しとく」
 
「千里は振袖着るよね?」
「どうしようかなあ」
 
「お客様は髪が長いですね。長い髪は和服に似合いますよ」
と店員さんが千里に言っている。
 
「千里、それウィッグだっけ?」
「いや私は自毛だと思う」
「その件は先日から、結構議論されていた」
 
「千里は去年の4月頃は男みたいな短い髪だった」
「物理的にあれから1年ちょっとでこんなに伸びる訳が無い」
「千里はかなり短い髪にしている時と、こういう長い髪にしている時がある」
「それで長い髪がウィッグなのか、短い髪がウィッグなのか議論がある」
 
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「私、ショートヘアのウィッグもロングヘアのウィッグも持っているよ」
「ああ、やはりウィッグをかなり使っているよね」
「で今日の髪は?」
「内緒」
 
「うーん・・・・・」
 
「お客様、ちょっと羽織ってみられませんか?着付けするとなると30分ほどかかりますが」
 
「そうだね。ではここは清紀君が羽織ってみるということで」
「え〜〜〜!?」
 

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しかし、うまく乗せられて、紙屋君が振袖を羽織ってみることになる。彼は着ているジャケットを脱いで、下に着ているブラウス!の上に羽織ったのだが「待って、付けひげ外す」などと言っている。
 
「それ付けひげだったのか!」
「だって、ヒゲのある状態で女装できないし」
「やはり女装するんだ?」
「ただのお遊びだよ」
と紙屋君が言うと
「お遊びというよりプレイでしょ。清紀は女役だし」
と美緒が言っている。
 
「きゃーっ」
と悲鳴があがる。紙屋君が困ったような顔をしている。
 
しかし振袖を羽織った紙屋君は意外に可愛い。
 
「お客様、お似合いですよ」
と店員さんが言う。
 
「うん。似合ってる」
と居並ぶ女子たちからも声があがる。
 
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「紙屋君、成人式は振袖を着なよ」
「どうしよう?」
と紙屋君はマジで悩んでいるようであった。
 

千里たちがそごうで振袖を見ていた頃、女子会には出席していなかった桃香は都内の老舗っぽい呉服店で、高岡から出てきた母・朋子と一緒に振袖選びをしていた。
 
最初朋子は金沢の友禅の工房に頼んで、加賀友禅の素敵な振袖を頼もうなどと言っていた。朋子は桃香の成人式のために10年前からずっと貯金をしており、500万円ほど積み立てていたらしい。
 
しかし桃香は成人式で1回しか着ないもののためにそんな10年掛けて貯めた貯金を使うのはもったいないと言った。
 
「私はそもそも振袖なんか着たくないし、着るとしてもレンタルでいいよ」
と桃香は言う。
 
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それでふたりでかなり議論したあげく、都内であまり高くない振袖を朋子と桃香の折半で買うという線に落ち着いたのである。
 
しかしそもそも女物の服自体に関心の無い桃香なので、和服などことさらである。店員さんの説明も遙か頭上を走り抜けて行く感じで、全然訳も分からない中、母と店員さんの会話で話は進んでいる。
 
どうも和服というのは、たくさんハンガーに掛けてあるものの中から自分の気に入った柄でサイズの合うものを選ぶような仕組みではないらしい。今桃香たちが見ているのは、生地の写真にすぎない。
 
それで生地で選んで注文して、実物はできあがってのお楽しみということのようである。試着もできないから自分に似合うかどうかも全く不明だ。
 
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結局1時間近い商談で話はまとまり契約する。価格は「セット価格」で69万8千円である。振袖本体の価格は48万で、それに帯とか色々付属品が付いてその値段になるようだ。これを34万9000円ずつ母と桃香で出すことにした(最終的には『端数は出すから』桃香は30万でいいと言われた)。
 
なお、実際に着る時には、これ以外に肌襦袢なども必要である。
 

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この時期は桃香も1年の春以来やっているコールセンターのバイトのおかげで現金の貯金が20万円くらいと、株が150万くらいあったので、このくらいは充分払えると思った。その貯金形成の中で大きかったのは昨年夏に福岡まで行って頑張った大きなイベントの予約受付である。
 
あの時は、自分とほぼ同時期に入った佐藤さんというスポーツウーマンっぽい背の高い女子と一緒だったのだが、彼女はその仕事のあと、あのバイトを辞めた。現役に復帰すると言っていたから、今はどこかで頑張ってプレイしているのかも知れないなという気はしている。
 
株は実は高校時代の恋人の優子が得意なようで、今所有している銘柄も彼女の勧めで買ったものである。購入価格は100万円くらいだったが、全部買ったあと値上がりして現在は150万円くらいになっている。「上がる株は分かる」と優子は言っていたが、どうして分かるのか桃香にはさっぱり分からない。
 
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振袖を選んだ後、軽く夕食を取ってから母と別れる。母は東京に居る友人に会ってから、上野発23:33の急行《能登》で高岡に帰るということだった。
 
桃香は何となくそこの商店街を歩いていた。
 

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千里たちは結局、そごうの呉服売場で30分近く、店員さんの説明を聞いた上で「色々教えていただいてありがとうございました」と言ってお店を出る。そのあと、先に帰ると言った紙屋君など数人を除いて店内のティールームに行き、お茶を飲んでから解散した。
 
「千里この後どこに行くの?」
と玲奈から訊かれた。
 
「都内の知り合いの所にちょって寄ってから北区の合宿所に戻る」
 
実は作曲依頼がかなり溜まっているものの代表活動が忙しすぎて対応しきれないので少し調整させてもらいたいと考え、新島さんのマンションまで行って直接話し合うことにしたのである。時刻は新島さんはずっと居るからいつでもいいよと言われている。合宿所には夜11時までに戻ればいいことになっている。
 
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「知り合いって彼氏?」
と香奈が訊く。
 
「違うよ〜。女性だよ」
「なんだ」
「千里って女の子にはマジで興味ないんだっけ?」
「うん。私はビアンではない」
「ビアンという用語を知っているのが偉い」
「普通の人はレズと言う」
「ビアンという言葉を知っているということは、もしかしたら当事者だったりして」
「だって女の子とは結婚できないじゃん」
 
「ん?」
と言って玲奈と香奈は顔を見合わせていた。
 

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千里の行き先が渋谷だと言うと、玲奈たちも「じゃ私たちも渋谷まで行こうかな」と言って、結局3人で一緒に移動することになる。友紀は千葉市内のバイトに行った。美緒は彼氏(?)とのデートがあるようであった。
 
「でもマジで千里、成人式は振袖を着なよ。予算が無かったらレンタルでもいいしさ」
と玲奈が言う。
 
「うん。私、結構その気になりつつある」
と千里も答える。
 
「よしよし」
 
「そういえば千里の自称ってさ。去年の4月頃は《ボク》と言ってたけど、最近は《わたし》が多いよね」
 
「そうだっけ?」
と本人が言っている。
 
「あまり意識してない?」
「私、《ボク》なんて言うことある?」
「言ってる」
「うーん。。。意識したことなかった」
 
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「声も入学直後くらいはかなり低い声で話していたけど、最近は普通に女の子の声にしか聞こえない声で話している」
「私、あまり低い声出ないよ。アルトの下の方はかなりきついんだよね」
「ああ、確かに千里の声はソプラノっぽい」
 
「私、千里って実は何人かいるのではないかと思うことがある」
「実はその説もよく話題に上る」
 
「《わたし》と言う千里と《ボク》と言う千里がいるんだったりして」
「それは面白い説だ」
 
「千里のプログラムっていつも酷いのに、こないだ凄くきれいなプログラム書いていた」
「あれ、課題とかで与えられたものなら誰かに書いてもらったんだろうと思うけど、その場で書いたからね」
 
「バイトも今はバスケ活動で休んでいるみたいだけど、昨年後半とか信じられなかった」
「そうそう。だから千里は2人居ないと1人では無理だって言ってた」
「そう?」
 
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「だって、深夜のファミレスでバイトしてるのに、千里が教室で居眠りとかしてるの見たことないし」
「うん。千里は一体いつ寝てるんだ?とよく言ってた」
「そこから千里2人説は出てきたんだよ」
 
「バイト以外にバスケの練習に出てるんでしょ?」
 
「ファミレスは火木土で、バスケのチーム練習は月水金だから両立するんだよ。それにファミレスで忙しいのは1時くらいまでで、その後はお客さんがまばらになるから、お客さんが来た時と呼ばれた時だけ起きればいい。後はずっと寝てるよ」
 
「それよく起きれるね」
 
「でも日本代表に選ばれるほどなのに、バスケの練習、週に3回で足りるの?」
「チーム練習が週に3回・3時間だからね。個人的には毎日10kmくらい走っているし、ドリブル走も30分くらいするし、うちのアパートにバスケのゴールを設置してるから家にいる時にずっとシュート練習してるよ。平日は1日500本程度だけど」
 
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「何か今物凄くハードな練習内容を聞いた気がする」
「いやたぶん日本代表になるくらいの選手ならそのくらい練習するのかも」
 
「あとファミレスでは支給品のローファー履いているけど、歩く時にカカトを床に着けないようにして歩くことで、足の筋肉鍛えてる」
「なるほどー。そうやって鍛錬してるのか」
 
「でも10km走るのってどのくらい時間掛かるの?」
「ゆっくり走るから時速8kmとして1時間25分くらいかなあ」
「シュート500本ってどのくらい時間掛かる?」
「連続してやっている訳じゃないんだよね。鍋やヤカンが沸く間にシュートしたり、トイレから戻ったら10本シュートとか、問題1問解いたら1本シュートとかやってるから。工作の得意な友だち(実は貴司である)にゴールを通った数を自動カウントする機械作って取り付けてもらっているんだよ。それで500本行った所で1日分終了。純粋な時間としてはたぶん3時間くらいじゃないかな」
 
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「なんかそれだけで5時間掛かっているのだが」
「ファミレスのバイトは何時間?」
「夜9時から朝5時までの8時間」
「大学が朝9時から夕方4時くらいだよね?」
「うん。それで7時間」
 
「大学7時間、バイト8時間、バスケ練習5時間ならそれだけで20時間」
「計算上は成立するな」
「でも移動時間とかお風呂入る時間とか考えると、寝る時間が無くなる」
「深夜バイト中は、お客さんから呼ばれない限り寝てるから多分2時間は寝てると思うよ。それに週3日だし」
 

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千里たちは総武線で錦糸町まで行き、半蔵門線で渋谷に出た。錦糸町で乗り換える時に香奈が
 
「あ、トイレ行っとこう」
と言って、(女子)トイレの外側までできている列に並ぶ。
「私も」
と言って玲奈も並ぶ。すると千里も
「じゃ私も」
と言ってその列に並んだ。
 
「ん?」
と言って香奈と玲奈は顔を見合わせたが
 
「まあいいんだろうね」
「むしろ向こうに行けば女子トイレが混んでるからってこっちに来るなとか言われるよね」
「確かに確かに」
 
と、ふたりは話している。
 
「どうかした?」
と千里は訊いたが
「いや、問題無い」
と香奈も玲奈も言って、列に並んだまま3人でおしゃべりしていた。
 

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桃香は自分が迷子になったようだというのを認識し始めた。
 
歩いている内にどんどん寂しい感じの場所になってしまう。といって反対方向に歩いて行っても、全然元の場所に戻れない感じで、事態は悪化していきつつあった。
 
お店でもあれば道を聞けると思うのだが、そのお店も無いのである。
 

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