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■振袖モデルの日々(2)

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席が番号順ということなので、鈴佳は姉の所から離れて後ろの方の席に移動した。いちばん後ろの人が327の番号札を付けているのを確認して鈴佳はその隣に座った。
 
やがて選考委員の人が入って来て
「最初にペーパーテストをします」
と言った。
 
それで裏返しのテスト用紙とボールペンが配られる。オーディションでペーパーテストなんてするんだ?と思いながらも鈴佳は
 
「では表に返して回答してください」
という声で用紙を返し答え始めた。
 
内容は戦車というものに関するごくごく基本的な問題である。
 
「戦車が動き回るのに使用する凹凸のあるベルト状のものを何と言うか?」
(答え:無限軌道あるいはキャタピラー)
 
「戦車のことを英語で何と言うか?」
(答え:タンク)
 
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鈴佳は何て簡単な問題なんだ!と思いながら回答していった。
 
「回答終了。裏返して下さい」
という声で全員いっせいにボールペンを置きテスト用紙を裏返す。
 
それでスタッフの手によって集められた。
 

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その後、順番にひとりずつ名前が呼ばれ、10秒以内で自己紹介しなさいと言われる。それで実際問題として、ほとんどの子が
 
「お疲れ様でした。もう帰っていいですよ」
と言われている。つまり不合格である。
 
時々「では隣の控室で待機してください」
と言われてスタッフにナビゲートされ移動している子がいる。
 
鈴佳は見ていて、どうも今やった試験の成績が良い子と、可愛い子、センスのいい子を残しているようだと思った。姉は合格した。控室の方に移動する。へー。大したもんだなと思う。
 
2時間ほどそれを眺めていて、やっと順番が来る。
「おおぬま・すずかさん」
と呼ばれた。
 
それ「すずか」じゃなくて「すずよし」なんだけど〜と思うものの
「はい」
と答えて出て行き
 
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「こんにちは。大沼と申します。中学1年生です。戦車は好きで小学4年生の頃、たくさんプラモデルを作りました」
と言った。これでもう10秒である。
 
「はい。では隣の控室で待機してください」
と言われる。
 
ああ、テストの成績が良かったからかな、と思ったのだが、
 
「あ、ちょっと」
と言われる。
 
「はい」
 
「君、服装はズボンではなくスカートを穿いてきて欲しかったんだけど」
「あ、すみません!」
「スカート持って来てないの?」
「あ、いえ持ってはいますが」
「じゃ着替えてくれる?そこの衝立の後ろででも。それと上も半袖かノースリーブで」
「はい」
 
それでスタッフに促されて衝立の後ろに行く。
 
ちょっとぉ、スカート穿くの〜?と思ったものの、そう言われた以上穿かないといけないような気がしたので、鈴佳は紙袋の中からキャミソールとスカートを取り出し、上の服とシャツ、それにズボンを脱いで姉のキャミソールとスカートを身につけた。
 
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やだぁ、こんな格好。
 
と思ったものの
「まだ掛かるかな?」
と言って女性スタッフがこちらを覗き込むので
 
「今参ります」
と言って、そのスタッフに付いて、隣の控室に移動した。
 

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第一次審査に参加したのは自分まで入れて328人だったのだが、この控室にいるのは、20人ほどである。鈴佳が入って行った時、それを認めた姉の玲花が吹き出すような顔をした。
 
もう!
 
それで鈴佳が席に着くと、次の審査方法を説明される。
 
「第二次審査では、審査員の前を往復歩いてもらって、それで姿勢や歩き方などをチェックさせてもらいます。そのために足の動きが見えやすいようにみなさんには膝より短いサイズのスカートを穿いてきて頂きました。歩いてもらった後でいくつか質問をさせて頂く場合もあります」
と言っている。
 
それで最初の一次通過者から名前を呼ばれて前に出て行く。審査員の人たちが座っているテーブルを前にして、まず左側に歩いて端まで行き、それからターンして右端まで歩く。またターンして真ん中まで戻る。それで質問される。
 
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「好きな歌手は?」
「Exileです」
 
「好きな食べ物は?」
「納豆御飯です」
 
この人は左側のテーブルの所で座って待っていて下さいと言われた。
 
2番目の人は今の人よりスタイルがいい感じがした。それでウォーキングしたあとで尋ねられる。
 
「316×235の答えは?」
「72510です」
(本当は74260である。結構良い勘をしている)
 
「カメルーンの大統領は?」
「エムボマ」
(本当はポール・ビヤ。エムボマはカメルーン出身のサッカー選手)
 
この人はデタラメな回答をしたものの、やはり左側のテーブルで待ってて下さいと言われた。
 
3番目の人は美人ではあるが、スタイルは微妙かなと思った。しかしウォーキングはいい雰囲気だった。質問される。
 
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「好きな野球選手は?」
「あれ?誰だろう?えっと確かあのメジャーリーグに行った人。名前が出て来ない。済みません。思い出せません」
 
「好きなAKB48の曲は?」
「ごめんなさい。私、AKB全然聞いてないので」
 
この人は「お疲れ様でした。もうお帰りになっていいですよ」と言われた。それで鈴佳は選考基準が分かった。この質問には「即答する」ことが大事なんだ。内容は間違っていても構わないんだ!
 

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4番目の人は歩いている時の姿勢が悪いと思った。案の定この人は質問もされないまま「お疲れ様でした」と言われてしまった。
 
22人の一次通過者がウォーキングと口頭試問(?)に臨み、5人の受験者が通過して左側の席の所に残っていた。なんと姉の玲花も残っている。姉ちゃんすげーと思った。玲花は
 
「日本の総理大臣は?」
「橋下徹」
(正解は安倍晋三)
 
「アニメ『妖怪ウォッチ』の主題歌を歌ったユニットは?」
「キング・クリムゾン」
(正解はキング・クリームソーダ)
 
と微妙?な回答をしたものの残った。鈴佳は「姉ちゃん、高校生にもなって日本の総理大臣の名前を知らないってひどい」と思った。それとも受け狙いだったのか??
 
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最後に「おおぬま・すずかさん」と呼ばれるので「はい」と言って出て行く。姉が「ほほぉ」という顔をしている。
 
鈴佳は他の参加者同様、まずは左に向かって歩く。スカートなんて穿いたことないので無茶苦茶恥ずかしい。それで歩き方が少し内股になった。
 
左端まで行ってから180度向き直り、それからまた歩く。内股で歩くと両足をぶつけそうなので、結果的に腰でバランスを取るような歩き方になった。右端まで行くとまた振り向いて中央まで歩き、審査員テーブルの真ん中の所で右を向いて審査員たちを見る。審査員さんたちが何だか頷いている。何なんだ!?
 
「299×298は?」
鈴佳は1秒くらい考えてから答えた
「89102です」
 
へ?という顔をした審査員の人がひとり携帯を取り出して操作している。どうも本当に計算しているようだ。それで他の審査員に見せている。驚いている様子。いや、(n-1)×(n-2)は、n2-3n+2 だから900-9:2と一瞬で計算できるんだけど?
 
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「エストニアの首都は?」
「タリンです」
 
これも審査員の人たちが驚いている。それで本来は2つしか質問されないはずが更に聞かれた。
 
「君、数学とか地理とか得意?」
「数学はわりと得意です。エストニアの首都は先週たまたま授業で出てきたんですよ」
「なるほどー」
 
それで「ではあなたも合格です。そちらの席で待機していた方もこちらに出てきてください」と言われる。
 
それで二次合格者6名が並んだ。
 

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「みなさん6名が合格です。撮影は来年の春まで数回に及びますが、まずは今日の午後から水戸市に移動しておこないます。服装はこちらで用意していますので現地で着替えてください。高校生の女子制服のような衣装です。報酬は今日1日拘束で11,111円、源泉徴収して1万円をお渡しします。確定申告するとたいていの場合、全額戻って来ます」
 
と説明された。
 
すごーい!1万円ももらえるのか!
 
鈴佳はその報酬の額を聞いて、今日1日は女の子のふりをしてもいいかなと思った。
 
それで各自いったん「普通の服装」に着替えた上で移動することになる。スタッフの人たちが退席して、合格した6人だけで着替えた。
 
「あんたそのままスカート穿いていたら?」
と姉が言うが
「取り敢えずズボンにする」
と言って家から穿いて来たジーンズを穿く。そんなことを言った姉も最初穿いていたサブリナパンツに戻った。
 
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実際合格者6人のうちスカートのまま移動したのは1人だけで他の5人はパンツルックである。
 
「私足がすぐ冷えるから実はスカート苦手なんですよー」
などと言っている子もいる。
 
スタッフの人と一緒にJRで水戸に移動し、その先は用意してあったワゴン車に乗せられて水戸市郊外にある撮影現場に行った。
 
戦車が10台、空き地のような所に置かれている。
 
「あの戦車の型が分かる人いますか?」
と聞かれるので
 
「ドイツIV号戦車、日本の97式中戦車、ソ連のT-34、アメリカのM4中戦車・・・」
 
と鈴佳が全部名前を挙げると
 
「君、凄いね!」
と言われる。
「いや、君はペーパーテストで唯一の全問正解者だったんだよ」
とも言われた。
 
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そりゃまあ、女の子たちは戦車のこととか知らないよね。
 

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