広告:オトコの娘コミックアンソロジー-~小悪魔編~ (ミリオンコミックス88)
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■夏の日の想い出・2年生の秋(5)

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「『花模様』はクラシックっぽく伴奏するわけですね」
「うん。だからマキはウッドベース、タカがアコスティックギター、サトとケイがヴァイオリンの音をキーボードで出して二重奏。これに
サトのフルートと、ケイのハープシコードも重ねる。ドラムスは入れない」
「フルートはキーボードで?」
「生フルート吹けるでしょ?かなり練習してたし」
「まだ、あまりうまくないですけど」
「それは構わない。完璧な音よりローズクォーツの音を私は求める」
「分かりました」
 
一方の『涙のピアス』の方は、ノリの良いスローロックのリズムに、シンセの多彩なサウンドを入れ、様々なパーカッションやホムス・こきりこまで指定されている。
「下川先生、張り切ってる」
「だって、上島先生の曲が張り切ってるもん。これ明らかにダブルプラチナ(50万枚ヒット)くらいは狙って書いているよね」
「あわよくばまた3年越しのミリオン狙いですね」
「そうそう。ローズ+リリーのシングルなんて、次いつ作るか分からないしね」
 
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録音は水曜から月曜まで6日間、ぷっ通しで続けられた。実際には『涙のピアス』
と『花模様』が、それぞれ2日かかり、『可愛くなろう』が1日、残りの2曲を1日で制作した。このシングルは11月16日に発売・ダウンロード開始となることが決まった。
 
「私、この曲に合わせてピアスしちゃおうかなあ」
「しちゃえ、しちゃえ」と政子。
「でもなんか痛そうで」
「もっと痛いおちんちん切りした人が何怖がってるのよ」
「それはそうだけど」
「私がピアスしてあげようか?」
「ピアッサーで?」
「ふとん針でもいいよ」
「いや、ピアッサーでお願いします」
 
政子はピアッサーを買ってきて、私の家で、私の両耳にピアス穴を開けてくれた。
「痛いよー」
「よしよし、泣いてもいいからね」
「えーん」
「1ヶ月間はこのピアスを付けといてね」
「うん」
 
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とは言われたものの、その日の夜、富山の青葉に電話して遠隔ヒーリングを受けようとした時のことである。
「あれ。冬さん、ピアスしたんだ」といきなり言われた。
「分かるの?」
「そのくらい分かるよ」と青葉は言う。
「今、ピアッサー付属のピアスしてるんだよね」
「うん、1ヶ月はこのままにしておけって言われた」
「それ、すぐ外せるようにしてあげようか?」
「そんなことも出来るんだ!」
 
「携帯をハンズフリーにしてベッドに横になって。携帯はおへその所に置いて」
「うん」
「心を楽にして」
いつものように青葉に触られているかのような感覚が来る。
いつも胸から性器にかけて重点的にヒーリングしてもらうのだが、今日はその感覚が耳のところに来た。少し熱いような感じ。でも心地いい。
 
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「もう大丈夫だよ」
「痛みが無くなった」
「傷が治るのにあと数時間掛かるけど、明日の朝にはもうそれ外して、ふつうのピアスに変えてもいい」
「凄ーい」
「じゃ、いつものヒーリング行くね」
「うん」
「眠っちゃっても大丈夫だから。終わったらこちらから切るから」
「うん、私、いつもヒーリングされながら寝ちゃってる」
 
優しく、とても柔らかい手で身体を触られているみたいな感じ。物凄く気持ちいい。ほんとに不思議な感覚だ。
「あ。ちょっと御免」
「誰か来た?」
「違うの。5分くらい中断していい?」
「あ、何か曲思いついたのね」
「うん」
 
私は机の引き出しから五線紙を取り出すと、急いで思いついたメロディーを書き留める。
「よし、これで大丈夫。。。。あれ?タイトル思いつかない。何にしよう」
「恋の間違い探し」
「え?」
「なんてのは?」
「あ、うん。ぴったり。それにしよっ。ででも、なんでこの曲にぴったりなタイトルをそちらで思いつくの?譜面も見てないのに」
 
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「だって、その譜面を書いてる最中の冬さんの波動をこちらでは感じてたもん」
「あらためて、青葉って、すごいね」
「いや、こんな曲を書ける冬さんが凄い。かなりいい曲だよね」
「うん、そうなの」
「それと、冬さん、今恋してるでしょ」
「えー!?」
「ま、その点は追求しないでおこう」
 
その日は青葉といろいろおしゃべりしながらヒーリングを受けた。そしてそれが終わると、『恋の間違い探し』の譜面を美智子にFAXする。するとすぐに美智子から電話が掛かってきた。
「明日、スタジオに全員集合」
「わぉ」
「この曲も、ローズ+リリーのシングルに入れちゃう。編曲は今から私がする。他のメンバーにも私が連絡するね」
「うん」
 
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その後、美智子と町添さんが話合った結果、ローズ+リリーの新しいシングルは『涙のピアス』『花模様』『探し物』で1枚、『可愛くなろう』『恋の間違い探し』
『渚の思い』で1枚、の3曲入りCDを2枚同時リリースすることになった。どちらもダブルA面である。なお、『探し物』は『恋の間違い探し』とタイトルがかぶるので『あなたの心』と改題された。
 
「しかし『あなたの心』も『渚の思い』も本来A面にできる曲ですよ」とマキ。
「今ケイは凄く乗ってるね。いい曲がどんどん出来るみたい」
 
これで決まりと思ったら、過去のローズ+リリーのCDが4-5曲入っていたのに3曲では寂しいと政子が言い出した。そこで、先日私が高速を1日で900km走破した日に書いた曲の中から『熱風』と『トライアングル・ラブ』を収録することにした。しかしレコード会社からは入れてもいいが明日の朝までに持ってきてくれることが条件と言われたので、この伴奏を美智子は大半を、打ち込みで一晩で作ってしまった。なお、『熱風』は美智子だけで打ち込みをしたが、時間が足りないから手伝ってと言われ『トライアングル・ラブ』の打ち込みは美智子の書いたスコア譜から私がかなり打ち込んだものを美智子が修正・調整して完成させた。また、私と政子の歌、それに私のキーボード演奏を深夜に2時間(3時から5時)スタジオを借りて収録した。
 
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ミキシングが完成したものを聴くと、ふつうにギター・ベース・ドラムスの他、サックスやフルート・ヴァイオリンなどが入っているように聞こえるのだが、ドラムスもサックス・フルート・ヴァイオリンも打ち込みだし、ギターとベースは実は私のキーボードなのである。
 
「キーボードで弾いてるのにギターを実際に弾いてるみたいに聞こえるって不思議」
と政子。すると美智子がニヤニヤして
「それ、上級テクニックなの。さすがエレクトーン5級だけのことあるね」
と言った。私は7月にエレクトーン5級を受け、先日その合格通知を受け取っていた。
 
「ドラムスも打ち込みに聞こえない。まるで生で打ってるみたいに聞こえる」
「それもそういうテクがあるのさ。オートじゃこうはならないよ」
と美智子はこれには得意そうに言う。
「昔のYMOがギターとかの音を実はシンセで録音の時はやってたんですよね」
「うんうん。今ではよくある話だけど、当時は特にそんなこと思いつく人いなかったろうし。凄いね」
 
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時間を24時間巻き戻して、私がピアスをした翌朝、レコーディングスタジオで政子にピアスの痛みがもう無くなったことを言うと、「凄い。さすが青葉だね」
と感心していた。その日のレコーディングの休憩時間に「じゃ、最初にするピアス、私がプレゼントしてあげようか?それとも正望君に買ってもらう?」
と言う。「いや、ほんとに彼とはそういう関係のつもりないから」と答える。
 
「じゃ、私がプレゼントしちゃうよ」「うん」
政子は私をアクセサリーショップに連れて行き、きれいな涙型のローズクォーツのピアスを買ってくれた。
「すごい、可愛い。でもよくこんなのがあったね」
「実は何日か前にこれ見つけてたの。買っといて1ヶ月後にプレゼントしようかと思ってたんだけどね」
「わあ」
 
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そのピアスを付けてスタジオに戻ると、美智子が
「あ、すごい。涙のピアスじゃん」という。
「しかもローズクォーツですよ」と政子。
 
「そのピアス付けて、明日ジャケット写真撮ろう」と美智子はニコニコして言った(実際にはその晩徹夜になったので、徹夜明けの顔を撮る訳にはいかないということで、ジャケット撮影は翌朝になった。これも期限ぎりぎりだった)。
 
『涙のピアス』のジャケット写真には、私がこの涙のピアスを付けているところの接近写真をバックにして、私と政子がブーケを付け花柄のワンピースを着て手をつないでいる写真が使われることになった。『可愛くなろう』の方は、この曲をCMに使わせてと申し入れがあっていた化粧品会社の最新の製品をちりばめ、政子が私にメイクしてくれている写真、私が政子のヘアメイクをしている写真が配置された。
 
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夏の日の想い出・2年生の秋(5)

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