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■夏の日の想い出・2年生の夏(4)

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この一週間で40ヶ所回り、このキャンペーンでの各店舗の売り上げだけで、3万枚近く売った。ダウンロードは急な販売であったにも関わらずFM局でのアピールが効いたようでその後ネットなどでの口コミもあり、最初の一週間で6万カウントを記録。先行プレスしたCDの売り上げと合わせて大手ランキングの3位にランクインした。更に27日に正規盤のCDが発売されると、キャンペーンで回ったCDショップでポスターなどを貼ってもらったり楽曲を流してもらったりしたおかげもあり、好評な売り上げでCDとダウンロード合わせて、この週だけで20万枚に達し、週間ランキング2位に入った。
 
「惜しいね。先週は△△、今週は○○、と大物の発売が続いたから。タイミング次第では週間ランキングのトップもあり得たね」
「○○とか初動でミリオンだもん。仕方ないですよ」
「うん。ただ○○は初動だけで終わりだけどね。熱狂的なファンが1人10枚とか20枚とか買ってるので跳ね上がってるから」
「楽曲別のダウンロードはどう?」と政子。
「トリプルA面の3曲が凄い競ってる。それぞれダウンロードしている層が微妙にずれてるけどね」
「へー」
 
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「『夏の日の想い出』は10代・20代の女性が多い。『キュピパラ・ペポリカ』
は20代・30代の女性、『聖少女』は20代から40代に掛けての男性が多い」
「うーん。夏の日の想い出のほうが若い層に受けたか。負けた」と私。
「ふふふ。上島先生もホッとしてると思うよ。でも上島先生と冬って、少しライバル心持ってない?」と美智子。
「えー?そんな恐れ多い」
「向こうはかなり持ってるよ」
「そう?」
「うふふ。だからうちにいい曲提供してくれる。まあ、嬉しいことだわ。ローズ+リリーのメモリアルで『あの街角で』が上島先生の『白い手紙』を個別ダウンロード数で上回ったでしょ。あれで上島先生の闘争本能に火が点いたのよ。当面先生、かなりリキの入った作品を提供してくれるよ」
と美智子。
「あれはローズクォーツ版と比較しようという人たちのダウンロードだったし」
 
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「不思議なパラソルも、南十字星も好評だよ。まあ、斎太郎節は別として、普段なら、どちらもタイトル曲に使えるようなレベルの曲だからね」
「うん」
「でも、今回のトリプルA面の3曲のクオリティが高すぎたから。カップリング曲にも相当のレベルが求められたのよ」
「だよね」
 
「不思議なパラソルをCM曲に使いたいって、○○○屋さんから照会があって」
「わあ」
「△□◇の新しいCMに使いたいらしい。ケイちゃんにも出演してくれないかと言われたからOKした」
「きゃあ」
「性転換手術済みなんですか?と向こうの広報担当の人から訊かれたから済んでますし、10月に20歳の誕生日が来たら戸籍も女性に変更予定ですと答えておいた」
「ああ、企業はその付近、気にするんだろうね」
「うん。子供向けの商品だからね。私がそう回答したら、ああ、じゃ普通の女性と同じと思っていいですね、と言っていた」
「そう言われるとちょっと嬉しい」
「え?言ってあげようか?冬は普通の女性だよって」
「あはは。でもテレビに出演するの初めてだったりして。ローズ+リリーの記者会見の時以来だ、テレビカメラの前に立つの」
 
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その後「南十字星」の方も、ビール会社のCMに使いたいという話が来て、そちらにはローズクォーツの4人で出演することになった。私は未成年なので他の3人が美味しそうにビールを飲んでいるのを少し離れた場所から見ている役であった。また「聖少女」は秋から始まるドラマの主題歌に採用が決まった。
 
「ドラマが始まるとまた売れそうだな。ケイにドラマの方にもちょっと出ないかという話もあったらしいんだけど、浦中さんが断った」
「あはは。美智子も断ってたでしょ」
「うん。こちらまで来てたらね。ローズ+リリーがテレビに一切出なかったからね。ローズクォーツもテレビには出ないスタイルで行きたいのよね。CMは例外」
 
「音楽番組にも出ないんですか?」とマキ。
「出たい?」
「いえ、子供の頃、浜田省吾とか山下達郎とかがテレビに出ないスタイル貫いているの見て格好いいなあと思っていたんで」
「じゃローズクォーツはテレビには出ない、というのでいいね」
と美智子は笑って言う。
「まあ、正直テレビに出るとあれこれ注文が多いし、拘束時間は長いしねぇ。あまり好きではないのよね」
 
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「フォーク系の歌手は時間制限や表現に介入されるのを嫌う人も多いみたいですね」
「そうそう。そのあたりも色々あるよね。それに私自身が若い頃、テレビ番組の裏側を見すぎたせいもあるかなあ」
「そういえば河合さん(スイート・ヴァニラズのマネージャー:美智子と同様にスイート・ヴァニラズのマネージング会社の社長でもある)とも、そんな話をしてたね」
「うん」
スイート・ヴァニラズもテレビ出演拒否組である。
「そういうわけでみんな映像は自主制作したPVをyoutubeやニコ動に流す」
「うちもかなり流してるもんね」
 
「PV公開するとCDとかの売れ行きが落ちるんじゃないかと言って嫌う人もいるけど、うちの場合新しいPV流した直後にiTuneや着うたフルとかのダウンロードが増える傾向あるんだよね。CDは集計が遅いからよく分からないんだけど」
「PVは試食品ですから」
などと私達は話をしていた。
 
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7月31日の日曜日、その日私達は九州から岡山と広島で新曲のキャンペーンをし、その仕事が夕方に終わって、そのあとフリータイムとなった。月曜火曜はオフの日で、水曜日の朝までに東京に戻っていれば各自好きにしていいよということであったので、私は取り敢えず広島に来るといつも寄る「みっちゃん」でお好み焼きを食べた後、夕方の広島の街を散策していた。今夜は広島で泊まった後、明日は富山に移動して青葉ちゃんのヒーリングを受けてから帰京する予定でいた。
 
街角に若い女の子の列ができている。何だろう?と思って見てみたら占い師さんであった。50歳前後だろうかという感じの女性占い師の前で一人の女の子が頷きながら話を聞いている。その後ろに似たような年代の女の子がずらっと並んでいる。私はあまり占いとか信じる方ではないので、へーと思いながらそこを通り過ぎた。
 
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そしてちょっと角を曲がった所に、70歳くらいかな?という感じの女性占い師さんがいて、ここには全く列ができていなかった。客は全然居ないのに、その占い師さんの眼光が鋭いことに私は興味を持った。それで、占いなんて全然やったことないのに、なぜか私はその人の前に立った。
 
「ちょっと運勢見てもらえますか?」
「生年月日と分かったら出生時刻、それに生まれた県を教えてもらえる?」
「はい。1991年10月8日午前11時2分、岐阜県高山市です」
占い師さんはさっとメモするとテーブルの下からノートパソコンを取り出しそのデータを打ち込んでホロスコープを表示させた。手相か何か見られるかと思ったので、意外なハイテクに驚く。
 
「あなた、表に立って活躍するお仕事に向いてるね。あまり家庭に籠もって、女の幸せを追求しようとかいうタイプじゃないわ」
「あはは、そうかもです」
「3年くらい前に人生が大きく変わるような出来事なかった?」
「ありですね。今のお仕事始めたのがちょうどその頃です」
「なるほどね。でも普通のビジネスじゃないわね・・・・うーん、芸術的なお仕事、音楽とか踊りとかじゃないかしら?」
「当たりです。私、歌手なんです」
 
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「あなた、そのお仕事にほんとに向いてるわよ。成功すると思う。若い内はいろいろ苦労するかも知れないけど、頑張りなさい」
「はい」
「あなた、器用なタイプでしょ。いろんなことができちゃう。それで人はそんなにあれこれやらずに何かに絞ったほうがいいと言うだろうけど、それではダメ。あなたは色々なことをしていることで全てがうまくいくタイプ。絞ってしまうと、どれもうまく行かなくなる」
「心当たりあります」
「だから特に若い内はほんとに何でも貪欲に挑戦していった方がいいわ」
「なるほどですね」
 
「今わりとお仕事順調でしょ?」
「はい」
「このペースで頑張っていれば好調を維持できると思う。へたに休養期間とか入れると急速に売れなくなったりするわね」
「一時休養期間があったんですが」
「それ・・・・去年の6月以前ということない?」
「はい。一時期休んでいて、昨年の6月から活動再開しました」
「2010年の・・・7月8日。これが休養してもよかった時期のタイムリミット。これより後まで休んでいたら、あなた復活できてなかったわ」
「わあ」
「次は2034年までは休んじゃだめ」
「23年後か・・・・」
「赤ちゃん産む時に歌うのができなくても、たとえば作曲活動とかは続けるとかそういうことをしていれば何とかなると思う」
「赤ちゃんですか・・・」
 
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「うーんとね・・・・やはりお仕事しているせいかな。結婚して赤ちゃん産むのは少し遅めかもね。。。これで見ると、27歳くらいで子供ができそう」
「そ、そうですか?」
ホロスコープにそういう示唆が出ているのかも知れないが、占い師さんは私に子供を産む機能が無いことまでは知らないから、これはしょうがない。
「あれ?あなた結婚せずに子供だけ作っちゃうかもね」
「あ、そういうのはあまり気にしない方だから」
「あなた強い子だから、ひとりでもちゃんと子育てしていけるわ」
 
占い師さんは、他にも仕事をしていく上での注意点とか、人生が辛くなった時はこんなこと考えてみて、などといった類のアドバイスをしてくれた。話していたのは15分くらいであったが、私はかなり満足してそこを後にした。満足したので名刺を頂いておいた。
 
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しかしこの占い師さんは凄いと思った。話し方にあまり商売っ気が無いから、あまり流行らないのかも知れないが、いわゆる「当てる」タイプの占い師さんなのだろう。だいたい流行る占い師さんは当たる・当たらないはあまり関係無く話術の巧みな人で、むしろ当たらないことが多いと聞いたことがある。
 
「しかし子供か・・・・・」
私はちょっとため息を付いた。
「それだけは自分で放棄しちゃったものだからなあ・・・・」
と思いながら、私は遅くまで開いているカフェに入り、ブラックコーヒーをオーダーした。
 
 
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