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■夏の日の想い出・何てったってアイドル(11)

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「でも貴司と結婚した後、私、夢見たんですよ」
と阿倍子さんが言う。
 
「夢ですか?」
「何か凄く気高い女神様みたいな人が現れて『子供を産みたいか?』と言うんですよね。それで私が『はい』と答えると『だったら取引しないか?』と言うんです」
 
「取引ですか?」
「自分の子供ではない子を1人産んで欲しい。そしたら、自分自身の子供も産めるようにしてやると」
「うーん・・・・」
 
「でも私は答えたんです。私が産むのなら、その子は私の子供ですって」
 
青葉は難しい顔をして考えているようだ。
 
「するとその女神様は微笑んで、だったらその子も含めて私は3人子供を産むことになるだろうと」
 
「なんかちょっと面白い話ですね」
と理歌さんが言った。
 
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「実は、今回産んだ子は私の子供じゃないんですよ」
「へ?」
 
「私の卵子と貴司の精子での人工授精がどうしてもうまく行かないんで、生殖細胞を借りたんです。私の卵子と別の人の精子を結合させた受精卵と、貴司の精子と他の人の卵子を結合させた受精卵を一緒に子宮に入れたんです。着床したのは1個だけだったけど、私はたぶん着床したのは、貴司の精子と他の人の卵子を結合させたものだと確信していました」
 
「その卵子って阿倍子さんの従姉妹か誰かのですか?」
と理歌さんが訊く。
 
「私、姉妹も居ないし、女の若い親戚ってのが全然居ないんですよ。実は今回の妊娠成功の前に1度うちの母の卵子でも試してみたんですが、そもそも受精卵が分裂を始めてくれなかったんです。さすがに年齢的に無理だったんだろうなと思いました。結局この卵子を提供してくれた人は誰か私は聞いてないんです」
 
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私たちはそのあたりは阿倍子さんもあまり追及されたくない雰囲気だったので、敢えてそれ以上は訊かなかった。しかし私は貴司さんがかなりの浮気症ということで、愛人の誰かに頼んだのではという気がした。一瞬千里の顔が浮かんだものの、千里は卵子は持っていないはずだ。
 
「妊娠が不安定だったのは、中の子供と遺伝子的な共通点が無かったせいかも知れませんね」
と理歌さんが言う。
 
「ええ。でも妊娠中にトラブルが起きる度に『あんたは私の子供なんだからね。ちゃんと私のお腹の中ではおとなしくしてなさい』と中の子供に語りかけていましたよ」
 
「ああ、やはり子供の躾けは胎内からですね」
と青葉が笑顔で言う。
 
「ですです。この子、自分の遺伝子は受け継いでなくても私が産んだ子だもん。戸籍にもちゃんと私の実子として載るはずだし、私可愛がって育てていきます」
と阿倍子さんは言っていた。
 
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私たちは微笑んで頷いていた。
 
「そして次は自然妊娠できるかも知れないなあ」
などと彼女は言っていた。
 

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貴司さんが仮眠から醒めて20時半頃に病室に戻ってきたので、阿倍子さんも安定しているっぽいし、私と青葉は引き上げることにした。
 
「青葉は今から帰る?」
「もう最終サンダーバード(大阪20:54)には間に合わないんですよ」
「ありゃ。ごめーん。間に合うように帰ってもらえば良かったね」
「いえ、阿倍子さんの容体が心配だったから完全安定するまでは待つつもりでしたから」
 
「そういえば20時すぎくらいから、ずっと阿倍子さんの手を握ってたね」
「実はあの時間帯からやっと使えるようになるエネルギー源があったんですよ。実はあの人、精神的なものだけでなく肉体的なシステムもかなり弱っていたけど20時以降に入れたエネルギーで完全回復したんです」
「へー。時間限定で使えるリソースがあるんだ?」
「まあ、色々複雑な事情があって」
 
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「じゃ明日の朝帰る?」
「そうします。さすがに疲れたから夜行バスは辛いし。今夜はネットカフェにでも泊まろうかな」
「いや、私たちもホテル取って休むから青葉も一緒に泊まろうよ。ホテル代は私が出すからさ」
 
などと言っていたところに政子が満腹したような顔をして戻って来る。政子はたこ焼きの包みを抱えていて、わざわざそれを1個病室にも届けてきた。その後、こちらでも開けて「冬も青葉もどぞー」などと言って真っ先に食べ始める。それで今日泊まって明日帰ろうという話をしたのだが
 
「母子ともに安定しているなら、もう用事は無いから、私たちは今から帰ろう」
などと言い出す。
 
「泊まらないの?」
「明日の朝の**テレビにアクアちゃんが出演するのよ。可愛い服を着せられそうで恥ずかしい、なんて言ってたから、どんな服を着せられるのか見なくちゃ」
などと政子は言っている。
 
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「誰かに頼んで録画してもらったら?」
「いや、生で見たい」
「分かった。こちらに泊まって明日の朝はホテルのテレビで見ればいいんだよ」
「いや、あの番組は関東ローカルなんだよね」
 

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それで政子は佐良さんを電話で呼び出してしまう。彼女はホテルで休んでいたのだが、すぐこちらに来るということであった。政子のわがままに付き合ってもらって申し訳無い!
 
「そうだ、青葉も一緒に東京まで乗って行きなよ」
などと政子は更に言い出す。
 
「私はできたら明日学校に行きたいんですけど」
「朝、間に合うんだっけ?」
 
青葉は時刻を調べている。
 
「6時の月曜朝限定サンダーバードに乗れば8:47に金沢に着いて、高岡は10:04ですね」
と青葉。
 
「それじゃ授業に間に合わないじゃん、東京を朝1番の新幹線に乗った方がよくない?」
と政子は無茶を言う。
「それだと新高岡到着は8:40です。一時間目に遅刻するくらいかな」
「やはり東京まで行った方が早い」
 
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北陸新幹線の効果だが、凄いなと私は思った。やはり東京と富山・金沢の距離が物凄く短くなっている。
 
そこに佐良さんが到着する。話を聞いた佐良さんは
「長野経由で行きましょう」
と言った。
 
「あ、なるほど!」
と私と青葉は声をあげた。
 
「高岡経由で東京まで行く方法もありますが、それだとノンストップで走っても10時間かかります。何かあったら、8時から始まる、マリ先生の見たい番組に間に合わないかも知れない。でも中央道から長野に寄って東京までなら8時間半で到達できます。マリ先生が見たい番組にも間に合うし、大宮先生は朝1番の長野発の新幹線に乗ると7:24に新高岡に着きますので、これなら遅刻せずに学校に出られると思います」
 
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と佐良さんはカーナビを操作しつつ時刻表も見ながら言う。
 
「よし、それで行こう」
「ノンストップ運転ということは、私と佐良さんの交代で運転ですよね?」
 
「いえ。大阪支社に居るドライバーを呼び出します。その人と交代で運転しますので、ケイ先生は寝ていてください。お疲れになってるケイ先生に運転させたら私が叱られます」
と佐良さん。
 
「うーん。。。また運転できないのか」
 
と私が言うと、青葉が「へ?」という顔をしていた。
 

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佐良さんが運転席、最初は青葉が助手席に乗り、私は2列目に座った。政子は真っ先に乗り込むと、エルグランドの3列目に行き、シートベルトは付けた上で横になって寝てしまっている。
 
初めは下道を走り、途中茨木駅に寄ると、そこに連絡を受けてきてくれた、大阪支社の柴田さんという30代の女性が待っていた。営業部所属の名刺を頂いたが、国内A級ライセンスを持っているので、関西方面で急にドライバーが必要になった時に頼むと言われていたらしい。過去に何度か他の人の対応をしたことがあるということであった。
 
それで彼女が助手席に座って青葉は2列目に移動し、再出発。茨木ICから車は名神に乗る。私も青葉も取り敢えず仮眠した。
 
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車はそのまま名神・東名を走って小牧JCTから中央道に分岐する。最初は急に呼び出された柴田さんが助手席で仮眠していて名神の養老SAで交代、更に中央道の駒ヶ岳SAでまた佐良さんに交代したようである。岡谷JCTで長野自動車道に入り、更埴JCTで更に上信越道に入る。長野ICで降りて長野駅に行く。駅近くのビジネスホテルの前に付ける。深夜到着ということを言った上で私が宿を取っておいたのである。そのくらいこちらでしておかないと青葉はその辺りの公園で野宿とかしかねない。
 
青葉を降ろしたのが深夜2時すぎくらいであった。
 
彼女が確かにホテルの中に入ってフロントに声を掛けるのを見送ってから私たちは再出発する。今度はドライバーは柴田さんに交代である。佐良さんが助手席に座って休む。
 
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「中央道を通ってこのくらいの時間に長野に到達できるんだったら、高岡経由でも2時半くらいにこの付近まで到達できませんでしたかね」
と私は言ってみたのだが
「妙高高原が無ければ到達可能ですけどね」
と佐良さんは言う。
 
「あっそうか!」
「あそこは夜中は絶対濃霧が発生するんで、カーナビが表示する時刻では辿りつけないんですよ」
「そうでした。忘れてました。私もあそこの濃霧は3−4回通ってますよ。いつも霧が出てますね」
「関越を回れば妙高を回避できますが、距離的に遠くなるので1時間近く余分に掛かるんですよ」
「関越トンネルの近くでも濃霧に遭ったことありますよ」
「ええ。あの付近もけっこう霧が出ます」
 
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「今日もちょっと小雨模様ですね。軽井沢付近降ってるかなあ」
と柴田さんも運転しながら言っていた。
 

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車は長野ICで上信越道の上りに乗り、更埴JCTで関越方面へ走る。果たして関東に近づくにつれ雨脚が強くなってきたような感じであった。
 
「これ軽井沢は絶対道路の条件が悪いよ。疲れが出始めたあたりであそこに突っ込むとやばいから、佐久平PAで交代しようか」
と佐良さんが言う。
「分かりました」
と柴田さん。
 
それで軽井沢に掛かる直前の佐久平PAでドライバーは再度佐良さんに交代する。それで走って行くと、軽井沢付近は濃霧が出ている上に豪雨に近い。
 
「ああ、やはり速度制限が掛かってますね」
と言って佐良さんは60km/h程度までスピードを落としたようである。一応車の流れに合わせて走って行く。
 
それで碓氷軽井沢ICをすぎてすぐの奇岩が立ち並ぶ付近でのことであった。
 
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一瞬、車が浮くような感覚がある。
 
私はうとうととしていたのだが、ビクっとして起きる。
 
「今何かありました?」
「済みません。起こさないようにと思って声を出さなかったのですが、大きな水たまりに突っ込んだんですよ」
 
「ハイドロプレーニング現象ってやつですか?」
「少々の水たまりなら、そうですが、今のはそれを越えて、単なる水面滑走でした」
と佐良さんは説明する。
 
「私も一度伊勢自動車道でやったことありますが、あれって何もできることないですね」
と私は言う。
 
「ですです。もう運を天に任せる以外無いです」
と佐良さん。
 
「まあ水たまりにまっすぐ突っ込んだら、まっすぐ通り抜けるだろうという慣性の法則に期待するしかないですね」
と柴田さんも言う。
 
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「ですから豪雨の中では無理な追い越しとかしたらいけないんですよ」
「斜めに進行していたらそのまま壁に向かって直進なんてこともありますからね」
 

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「取り敢えず少し速度を落とします」
と言って佐良さんは前の車から離されるのも構わず速度を50km/hくらいまで落としたようである。ハイドロプレーニング現象は当然速度が低いほど起きにくい。
 
私はその時急に新しいメロディーが頭の中に流れて来た。何か書くものが無いかなと思ってバッグの中を探すと、病院で待機していた時に政子が買って来た、たこ焼き屋さんの包み紙がある。包み紙を取っておいたというのは、よほど気に入ったのだろうが、私はその紙を借りてそのメロディーを書き留めた。『恋は運まかせ』というタイトルを記入した。たこ焼きの紙を使っているのでずっと昔に蔵田さんと一緒に作った『鯛焼きガール』という曲をふと思い出したりした。
 
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車の方は、その後はそういう水面滑走をする羽目にはならず、やがて横川SAのそばを通り過ぎる。そのあたりから霧も晴れ、雨脚も弱くなってきた。私も安心して眠ってしまった。
 
目が覚めた時、ちょうど三芳PAのそばを通り過ぎるところであった。時計を見ると5時である。運転しているのは柴田さんだ。恐らくは高坂SAあたりで交代したのかなと思った。
 
「かなり来ましたね」
「ええ。今日はあまり混んでないのであと2時間程度で到着できると思います」
 

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夏の日の想い出・何てったってアイドル(11)

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