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■夏の日の想い出・愛と別れの日々(3)

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実際この頃から政子が日々書く詩の品質も、まだ本調子ではないものの、かなり良くなった。4月も中旬になった頃、やっと政子らしい詩が復活してくる。
 
「良い詩を書くね〜」
と紅川さんが感心したように言うと
「私天才ですから」
と政子は答えた。
 
「じゃ、そろそろ帰る?」
とお母さんは言った。
 

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政子は結局4月20日の日食を見てから帰ることにした。それで千里が政子を迎えに行ってくれた。ついでに桃香および自分の子供たち(京平・早月・由美・緩菜)も連れて行った。
 
この日食は東京都区内では見られない。房総半島の館山で0.009くらいのわずかな食分、紀伊半島の潮岬で0.025、九州の鹿児島で0.029 だが、那覇で0.149, 宮古島では0.155まで欠けるのである。それで日食を見るためにわざわざ沖縄まで来る人も居たようである。(南大東島で0.206 小笠原の父島で0.270 海外ならグアムで0.702 オーストラリアの北西のケープレンジ国立公園付近では皆既になるので皆既を見たい人の多くは実際にはオーストラリアに行ったようである)
 

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この日、テレビの取材班が乗る観測隊第1群は3機のジェット旅客機で南アフリカのヨハネスブルグを日本時刻の7時(現地時刻で午前0時)頃に離陸して一路観測地へ向かった。時速1100km程度のいわゆる遷音速で4時間ほど飛行し、インド洋南、フランス領南方南極地域ケルゲレン(Kerguelen)諸島付近に到達する。
 
ケルゲレン諸島は地図で見ると一見、紅葉の葉のような形をしたひとつの大きな島に見えるのだが、実はとても小さな島が多数で構成された諸島なのである。島と島を区切る水路はまるで川のようであり、良港に恵まれ、高緯度海域を航行する船のかっこうの待避所になっている。
 
日食が始まるポイントはこのケルゲレン諸島の北西、48゜27.1'S、63゜37.5'Eの位置である。日出直後で最初は金環食で始まる予定だったのだが・・・・
 
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雪である。
 
観測ポイントに浮かべた船の上でリポートするNHKの人気女子アナが悔しそうな表情で風雪に荒れる夜明け空の中継をしていた。
 
しかしジェット機は雲の上を飛ぶので雨も雪も関係無い。安全間隔ギリギリの10km程度の間隔をあけて飛ぶ3機の飛行機は、各々アメリカ・日本・NATOに所属していて、共同で取材をしている(パイロットはアメリカ空軍・航空自衛隊・NATO空軍所属の、曲芸飛行の経験もある熟練パイロット)。テレビにはこの3つの飛行機から太陽を映した映像が並んで表示されている。
 
日本所属の観測機に乗る横浜の民放テレビの30代ベテランアナウンサーが「雲の上は晴れです。東の海から欠けた太陽が登ってきました」と報告する。この第1群の観測ポイントはケルゲレン諸島の北東、南緯46.5度・東経71.6度付近、日食開始ポイントから600kmほどの距離の場所である。
 
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そして日本時間の11:37(現地時刻6:37)、日食はこの地点で金環食から一時的に部分食に変化した後、皆既食に変化した。テレビの画面では最も西を飛ぶNATOの飛行機の画面が金環食から部分食に変化し、そのわずか2秒後に最も東を飛ぶアメリカの飛行機の画面が部分食から皆既食に変化して「ハイブリッド食」というのがどういうものか中継されている各国の一般家庭に伝わったようである。この変化する間、真ん中の日本の飛行機の映像は部分食のままであった。
 
この様子は日本とアメリカ・イギリスはもとより、韓国や台湾・中国・インドなどにも中継されているのだが、幻想的な天体ショーにかなり沸いたようである。
 
なお、この金環→皆既の変化が起きたのは、時間的には開始点でのレポートがあってからわずか36秒後。日食はこの付近では時速6万kmという猛スピードで移動しているのである。スペースシャトルが宇宙空間を飛行する速度の倍であり、この速度に比べたらジェット機など停止しているに等しい。この様子を飛行機の中から撮影したのは「雲の上で撮影する」という意味しか無い。
 
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中継はその後、オーストラリア北西端(12:29)、東ティモール(13:15)、ニューギニア島北西部(13:49)の定点観測地点から、##放送、◇◇テレビ、ΛΛテレビの女子アナがレポートをし、幾つかの洋上観測ポイントでの中継もあった。
 
日食の軌跡→
https://eclipse.gsfc.nasa.gov/SEsearch/SEsearchmap.php?Ecl=20230420
(NASAのサイト)
 
日食は月が地表に落とす影なので、地球の表面が太陽と成す角度により移動速度は変化する。太陽を真正面に見ることになる中心区域では2000km/h程度だが、端の方になるほど地面が斜めに向いていることになり速度が上昇する。朝と夕方の影が長くなるのと同じ現象である。日食の開始ポイントでの移動速度が物凄かったのはこのせいである。
 
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宮古島に居るマリたちは13:25頃、全員日食グラスを持って表に出て南から少し西の方にある太陽を見る。
 
「まだ欠けてないよ」
と政子が言う。
 
「もう少しだよ」
と千里は答える。
 
「あ、左側が少し欠けてきた」
と最初に声をあげたのはあやめであった。
 
宮古島での日食は13:28に始まった。
 
「これもっと欠けるの?」
「いや、ここではちょっと欠けるだけ。一応最大食は14:16くらい」
 
「なんだつまらない」
などと政子は言うが、あやめや夏絵などの4歳児連合、京平や哲夫などは太陽が少し欠けているのを見て、充分大騒ぎをしていた。
 
「でもけっこう長時間継続するね」
と桃香が言う。
 
「終了は15:01かな」
 

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日本の白浜友紀レポーターが乗る特別観測機は日本時刻の12時(現地時刻13時)前にグアムを飛び立ち、マーシャル諸島南方海域へ飛ぶ。1000km/h程度で3時間近く飛行し、かつての日本最東端であったミリ環礁(ミレー島)の南南西160kmの海上 4.58N 171.14E 付近に到達する。
 
「太陽は現在皆既食です」
という白浜さんの声がテレビから響いたのが日本時刻14:50(現地時刻17:50)くらいであった。
 
「この人、卓球の元日本代表だよね」
と桃香。
 
「そそ。観測員の選抜オーディションで欺されて参加させられて優勝した青葉が辞退したから2〜4位の3人が訓練を受けて、2位の人が直前にコロナに罹って3位の白浜さんに回ってきたらしい」
と千里は説明する。
 
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「運の強い人だね!」
と政子は感心している。
 
「白浜さん、なんか凄い服を着てますね」
とスタジオが呼びかける。彼女は耐G耐熱スーツを着ていて顔も宇宙飛行士のようなヘルメットで覆われている。
 
「はい。この服を着ていなかったら数秒で失神するそうです。でもこれ年齢も性別も分かりませんね」
と白浜は応じている。
 
「現在既にマッハ3.2 (3800km/h)で飛行していますが、これより加速するそうです」
という声のあと一瞬画像が乱れる。この特別機が付けているロケットブースターに点火したのである。
 
「現在速度はマッハ7.8 (9400km/h)に到達しました」
と白浜はレポートする。
 
この飛行機はアメリカ海兵隊が管理している最新鋭のジェット観測機で、機体の外装は超音速飛行のため発生する350度もの高温に耐えるチタン合金。単独でもマッハ3.6まで加速することができるのだが、スペースシャトルの打ち上げに使用するような巨大なブースターに点火することで最高マッハ8近くまで加速することができる(スペースシップワン/ツーと同様の方式だが、スペースシップツーでもマッハ3.5程度しか出ない)。
 
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ただし最高速で飛べるのはせいぜい6-7分である(もっともその6分間で900km 福岡から那覇くらいの距離を飛ぶことができる)。飛行時にはとんでもないソニックブームが発生するのでこういう海の真ん中でしか最高速飛行はできない。
 
このジェット機は制作費用が1機1兆円も掛かっておりアメリカもわずか3機しか所有していない。定員は操縦士2名を含めて8名。民間人は日米の大学の先生1名ずつと民間観測員=白浜。撮影は同乗している航空自衛隊の技術将校さんがしてくれている。非常に貴重な場所に陣取っているのだが、白浜も大学の先生たちも、加速時に掛かる凄まじいGと、機内冷却装置でも冷やしきれずに50度近くになる室温に耐える宇宙飛行士並みの訓練を受けさせられている。
 
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14:54頃「もうすぐ皆既食が終わります。ダイヤモンドリングが光りますからよく見ていてください」と白浜は言う。そしてすぐに「今終わりました。確かに光りましたね!」と興奮した口調で語った。
 
「よくわからなかった!」
などと由美と夏絵は言うが
 
「ひかったのみえたね」
と早月やあやめは言っている。大輝・葉月などは何のことやら分からない様子であった。
 

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そして白浜は皆既食の終了を告げると、ほんの一瞬の後、続けて
「今金環食が始まりました!」
とアナウンスした。
 
この間、わずか2秒半、移動距離では数km。速度は9000km/h程度である。
 
そしてこの金環食も2分ほどで終了する。そして金環食の終了後すぐに太陽は(光っている側を上にして)西の空に沈んでしまう。
 
「三日月のような太陽が今沈んでいきます。約3時間の素晴らしい天体ショーを私たちに見せて。この感動をたとえれば、男の子がスカート穿いて魚を釣っているようなとでも言いますでしょうか」
 
この白浜の言葉は中継されている国に同時通訳でその国の言葉で伝えられたが「As if a boy on skirt fishing」と聞いたアメリカやインドの視聴者は、日本人の感覚はぶっ飛んでる!などとネットに書き込んでいたようである。日本のネットワーカーの間では「意味が分からん!」という意見が多かったようだ。
 
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天体ショーの終了地点は 北緯2度58.9分、西経178度48.2分で、ハワイの南西300kmほどの場所である。実際この飛行機は観測終了後、速度を次第に落としてハワイに向かい日本時刻の15時半(現地時刻4月19日20時半)頃、ホノルル国際空港に着陸した。
 

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この天体ショーを、白浜がレポートする太平洋上の中継まで見てから、マリたちは宮古空港に移動し、帰途に就いた。紅川さん一家が空港まで見送りをしてくれたが、すっかり仲良くなった子供たちが別れを惜しんで泣いたりするので、
 
「また来るよ」
と言ってマリたちは千里のA318に乗り込んだ。
 
2時間ほどの飛行機で熊谷の郷愁飛行場に戻り、そこから政子達は小平市の自宅に、千里たちは浦和の自宅にそれぞれ戻った。
 
実家に戻った政子に私は連絡した。
 

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「同窓会の案内が来てるよ」
「どの同窓会?」
「高校の時の。今週末。土曜日、つまり明後日」
「久しぶりだね」
「佐野君が幹事なんだよね」
「ほほぉ」
「今まで生徒会長した飯田君が幹事していたんだけど、もう5年くらい実質活動できない状態が続いていたんで、佐野君が引き継ぐことにしたらしい。それで、コロナもそろそろ大丈夫だろうしということで数年ぶりの同窓会だって」
 
「佐野君が幹事なら行かざるを得ないね」
「まあそうなるね」
 
佐野敏春は、私の姉・萌依の夫である小山内和義の妹の麻央の夫である。麻央は私の小学校の時の親友だし、佐野君自身、私や政子とずっと交流がある。まあ要するにほとんど身内だ。
 
政子はその日佐良さんの運転するアコードで都心に出て来た。そして私と一緒に同窓会会場になっている深川アリーナに行った。
 
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会場に入っていくと、
 
「おお、唐本〜、愛してるよぉ」
などと言って佐野君がいつもの台詞を言って寄ってくるが、私に抱きつく前に麻央から蹴りを食らっている。
 
「麻央も来たんだ?」
「私そっちの同窓生でもないし関係無いと言ったんだけど、アシスタントで付いてこいと言われた」
 
「まあ配偶者同伴は構わないはず」
 
「あれ、唐本のフィアンセは来てないの?」
と近くに居た菊池君。
 
「正望は今大きな訴訟抱えていて忙しいみたい。私も1ヶ月くらい会ってない」
と私。
「お前ら七夕夫婦に近いだろ?」
と佐野君。
 
「そうなんだよねー。メールは月に1回くらいしてるけど」
「お前たち実は既に関係消滅してるということは?」
 
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私は最後に正望とセックスした日を思い出せなかった。
 

副生徒会長だった紗恵が乾杯の辞を述べて乾杯し、あとは適当に食事を取りながら歓談する。私は政子があまり食べないので、旅疲れであまり食欲が湧かないのかなと思って眺めていた。
 
しかしさすがにこの年齢になると女子の出席者は少ない。女手が足りないので私や政子、麻央もけっこう忙しかった。私たち以外で来ていた女子は、奈緒、琴絵、仁恵、詩津紅、紀美香、理桜、紗恵、など、何だか私と特に親しかった子が多い。学年は400人居たのだが、来ているのは男子100人・女子20人くらいである。
 
「女子は俺が個人的なコネで一本釣りした」
などと佐野君は言っている。
 
「なるほどねー」
 
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それでこのメンツか。
 
「私、着ていく服が無いと思ったんだけど、佐野君から聞いた来てくれそうなメンツ聞いて、そのメンツなら普段着でいいかと思って出てきた」
と理桜。
 
「年収億ある人たちが、ユニクロ着てるからなあ」
と紀美香。
「私たちは普段着こんなもんだよ」
と私。
 
「那覇の国際通りで100円で買ったTシャツ着てこようかと思ったんだけど、さすがにやめとけと母ちゃんに停められた」
「庶民的だな」
 

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夏の日の想い出・愛と別れの日々(3)

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