広告:オトコの娘コミックアンソロジー~天真爛漫編~ (おと★娘シリーズ8)
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■夏の日の想い出・雪月花(6)

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拍手の鳴る中、従姉たちと清香伯母が花道を歩いて退場する。代わりにまたステージ中央から、アコスティックギターを持った近藤さん、ヴァイオリンを持った鷹野さん、ヴィオラを持った香月さん、チェロを抱えた宮本さん、ウッドベースを抱えた酒向さん、手ぶらの月丘さん、純金フルートを持った七星さんが出てくる。月丘さんがハープシコードの前に座る。更にもうひとり純金フルートを持った女性が出てくるが、これは千里の友人で「醍醐春海の一部」である水野麻里愛さんである。続いてヴァイオリンを持った松村さんが出てきた後、最後にギターを持った男性が出てくる。それが元クリッパーズの中村将春さんというのが認識されると歓声があがっていた。
 
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後半の伴奏者の衣装は薔薇と百合の模様のドレス、または同じ模様のポロシャツと黒いズボンである。
 
そして先の曲が終わって拍手があり、それからスターキッズ&フレンズが順に登場してくる約2分ほどの間に、私とマリと千里は着付けの専門家(実はクロスロードの友人の浜田あきらと彼女の同僚の美容師さん5人)の手によって振袖を脱いでいた。千里は総銀のフルートを持つ(彼女は普段白銅のフルートを吹いているので、純金製を吹かせてみたものの「辛い」と言ったので今回は総銀にした)。
 
『花の女王』を演奏する。
 
ここからの後半アコスティックタイムではPAを使用しない。楽器の音だけでこの2万人収容の大会場に音を響かせる。そのために音量不足になりやすいギターは近藤さんと中村さんのツインギターにし、ヴァイオリンも鷹野さんと松村さんのダブルにしている。リズムキープはウッドベースを弾く酒向さんの役目で、中央の台を下げて平坦にした、ステージ中央に陣取って演奏する。他の伴奏者は酒向さんを取り囲んで円形になり、タイミングのずれを最小限にする。
 
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そして私とマリはマイク無しの肉声で歌う。
 
観客も全員着席して、静かに聴いてくれる。
 
私とマリは会場の全方向に均等に顔を見せられるようにステージを歩いてまわりながら歌った。
 
この『花の女王』は元々のアレンジではヴァイオリンの三重奏なのだが、今回は七星さん・水野さん・千里の3人のフルートをフィーチャーしてフルート三重奏にしてみた。
 
ヴァイオリン三重奏だと「美しい花の女王」だが、フルート三重奏にすると「可愛い花の女王」という感じになった。
 
続けて『花園の君』を演奏する。これもヴァイオリン三重奏バージョンを元にフルート三重奏に改編してある。これもとても甘い香りのする『花園の君』になっていた。あとで、この2曲に関しては、こういうアレンジもいいですね、という意見が多数出ていた。
 
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このアコスティック演奏で、更に『雪の恋人たち』『花模様』『君待つ朝』
と弾いていく。更に夢美に入ってもらって彼女の私物のバロックオルガンを使用して、『言葉は要らない』『アコスティック・ワールド』『天使に逢えたら』『夏の日の想い出』と演奏する。
 
そして前半にも出てもらった前田さん・佐藤さんにも入ってもらい、水野さんにはフルートをヴァイオリンに持ち替えてもらって、鷹野・松村の2人と合わせてヴァイオリン5重奏にして『時を戻せるなら』『あの夏の日』と演奏する。
 
ここで私はマイクを持って少し長めのMCをする。その間に楽器の変更をする。
 
PAが復活する。そして酒向さんのドラムスの音が響き、月丘さんもキーボードで和音を四分音符で弾く。
 
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「それでは最後の曲です。『苗場行進曲』」
 
マーチのリズムに合わせて会場で手拍子が打たれる。
 
この会場に設けられている2つの花道から、2つの集団が各々音楽に合わせて行進して入ってくる。どちらも女子バスケットチームで、片方は薫率いる千葉ローキューツ、もうひとつは千里の友人の佐藤さんという人がキャプテンをしているジョイフルゴールドというチームである。関東実業団で女子1部に所属するチームらしい。
 
双方とも全員バスケットボールを持って行進してきたのだが、両者同時にセンターステージに着いた後、全員ボールを投げる。するとそのボールは相手チームの選手が全部受け取る。会場が思わず沸く。そして両チームのメンバーが出てきたのと反対側の花道から退場し終わったところで曲は終了した。
 
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手拍子が拍手に変わる。私たちは深くお辞儀する。客席がステージを取り囲んでいるので、私とマリはステージを周りながら四方向でお辞儀をした。そして伴奏者はステージ中央の穴から退場する。私たちも再度四方に向かってお辞儀してから、穴の中に消えた。
 

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拍手がアンコールを求める拍手に変わる。約1分経ったところで私とマリはまたステージに現れる。
 
スターキッズが穴から登場する。所定の位置につく。近藤・魚のペアがお玉を持って出てきて、私とマリにもお玉を渡す。
 
「アンコールありがとうございます。それでは1曲歌います。歌は?」
 
と客席にマイクを向けて訊く。
 
「ピンザンティン!」
 
という声が帰ってくる。それで前奏が始まると客席で早速お玉を振る姿が見られる。私たちもお玉を振りながら歌う。近藤・魚のペアがお玉を振りながら踊ってくれる。
 
「サラダを〜作ろう、ピンザンティン、素敵なサラダを」
「サラダを〜食べよう、ピンザンティン、美味しいサラダを」
 
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元気いっぱいこの歌を歌い会場は最高の盛り上がりとなる。
 

終曲とともに盛大な拍手。私たちはまたステージをぐるりと回って、四方にお辞儀をする。スターキッズとダンサーが退場する。拍手はアンコールの拍手になっている。スタッフが花道の向こうからグランドピアノを運んで来る。それがセンターステージに到着し、ステージ中央に置かれキャスターを固定した所で、私はピアノの前に座る。やっと拍手が鳴り止む。マリはいつものように私の左側に立つ。
 
私のピアノ伴奏で、ふたりで『ずっとふたり』を歌う。
 
幸せな愛を歌った素直なラブソングだ。気負わず、束縛せず、相手を信じて、各々の意志で愛し合う。
 
ヤマハのコンサートグランドの音が2万人入った会場に響き渡る中、私とマリの声も大会場に響き渡る。
 
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観客が静かに聴いてくれる中、歌は終曲を迎える。
 
最後のピアノの音が減衰して消えてしまった次の瞬間、会場は割れるような拍手となる。私は立ち上がり、マリと一緒にお辞儀する。また四方に向かってお辞儀した後、私たちは花道を通って手を振りながら退場した。
 
「これを持ちましてローズ+リリーの夏ライブを全て終了します」
と今日締めのアナウンスをしてくれたのは、何とAYAであった!
 

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『雪月花』の制作は続いていた。
 
9月下旬、8番目に制作したのは『ムーンライト・トーク』である。この曲のPVには、今年の9月8日の中秋の名月を撮影したものを使用している。浴衣を着て、名月をバックに歌う私とマリの映像を入れている。お団子を山の形に盛ったりもしている(PVの最後ではお団子は無くなっている)。
 
この曲をまとめていく段階で私はミュージカル『南太平洋』の中の可愛い曲『ハッピートーク』をちょっと連想したので、あの映画の中でケーブル中尉と島の娘リアットがやっていたように、私と政子で《指遊び》もしている。指でリズムを取りながら《お話し》するのである。
 
音的には南国っぽくするのにスティールギターを入れている。これはローズクォーツのヤスに弾いてもらっている。またカスタネットの音を入れたが、これを打っているのはマリである。
 
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「冬と指遊びしてたら、私、冬のおちんちんを指で弾(はじ)いて遊んでいた頃のこと思い出しちゃった」
と政子か言う。
 
「そういう発言は絶対放送中とかライブとかではしないでよね」
と私は釘を刺しておく。
 
「でもそれっていつ頃の話?」
と千里が訊く。
 
「大学1年生の頃」
と政子は答えたが
 
「それはあり得ない。だって冬は高校1年の時に性転換したんでしょ?大学の頃におちんちんが残っていた訳無い」
と千里。
 
「やはりそうだよね!」
と政子は千里の意見に大いに同意するように言った。
 
「やはりあの頃、私に見せてたおちんちんはフェイクだね?」
「ちがうよー。本物だよー」
「だって触っても大きくならなかったじゃん」
「タマ抜いてたら大きくならないよ」
「雨宮先生はタマ無くてもおちんちん大きくなるらしいよ」
「あの人は異常なんだよ」
「誤魔化さずに有り体に白状せい」
「ちょっとぉ!痛たたたた」
 
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政子が私に馬乗りになって服を脱がせ始めたので、千里は
「私は遠慮して帰るね」
と言って帰ってしまう。
 
「こら〜、人んちに波風立てたまま帰るな!」
と私は千里に文句を言った。
 

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10月に入ってから、その千里(醍醐春海)が書いてくれた『月を回って』の制作をする。この曲はアコスティック系の音作りをしてムーディーにまとめたが、千里が龍笛を吹いてくれた。千里の素晴らしい龍笛の音が今回のアルバムに入ることになったのだが、千里は高校生時代、地元のオーケストラで制作したCDやゴールデンシックスの前身DRKのCDでも龍笛を吹いているらしい。
 
その時も演奏に落雷の音が混入していたらしいが、今回もやはり演奏中に落雷が起きる。その音も当然音楽の一部と割り切って制作している。
 
「この歌詞は葵照子さん?」
「実はこの歌詞は私が書いたもの。でもクレジットは葵照子にして印税山分け」
と千里。
「マリ&ケイと同じような仕組みか」
 
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「この詩がまるで本当に月を回って、月の裏側を見てきたかのようだよね」
と七星さんが言うと
 
「うん。本当に月を一回りしてきたんだよ」
などと千里は言う。
 
「千里のことばはどこまで信用していいのかよく分からん」
「私はケイみたいに嘘つきじゃないけど」
 
「目くそ鼻くそを笑うという気がする」
 
などと、なぜか出てきてファンから頂いたスコッチウィスキーをたしなむように飲んでいる小夜子が言って、政子が大いに同意していた。
 
「小夜子さん、ともかちゃんの手は離れました」
と千里は訊く。
 
「うん。今日は、あきらにふたりの世話を押しつけて出てきた。あきらはおっぱいも出るから便利。おかげでこうやってお酒も飲める」
「ああ、お酒飲んで授乳したら、赤ちゃんが酔っ払いますよね」
 
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「子供は2人で打ち止めですか?」
「そろそろ次の子供作ろうかと思ってる」
「あきらさんって、女性ホルモンは飲んでないんですよね?」
「飲んではいない。でももう立たないよ」
「あらら」
「ともかにお乳あげてる時は幸せそうな母の顔って感じしてる。あれで精神的にもう完全に女になっちゃってるから、男性機能は自分で無意識の内に停めちゃったんだろうな」
「だったらどうやって子作りするんですか?
「人工授精するつもり」
「へー」
「じゃ、射精はするんですか?」
「そうそう。立たないまま逝っちゃうみたい。だから最近は私が男役になることが多い」
「ほほぉ」
「ドライで逝っちゃうこともあるけど、だいたいは出して果てるよ」
「じゃ、女役でも反応は男性型なのか」
「性転換手術を受けて女の身体になってても反応は男性型のままの人は多いらしいね」
「冬は女性型だよね。たぶん」
と政子が言うと
「男性として未発達のうちに性転換したからだよ」
と千里が言う。
「ああ、それはありえそう」
「だって冬って、幼稚園の頃から女性ホルモン飲んでたんでしょ?」
「ああ、やはりそう思う?」
「だって小学6年生であんなに立派なおっぱいがあったんだから」
と千里。
「だよねー」
 
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私は話題を変えるのに小夜子に尋ねる。
「まだ出る内にあきらさんの精子冷凍保存しておかなくていい?」
「まあ精子が無くなったら本当に打ち止めだね」
と小夜子。
「ふむふむ」
「その時は眠り薬飲ませて性転換手術の手術台に乗せちゃう」
と小夜子は付け加える。
 
「ああ、それでいいでしょうね」
と政子は言う。
 
「本当は今でもすぐ性転換手術受けてもいいよ、とは言ってる。それならそれでもうこの先の子供は諦めるし。でも手術を勧めても何かぐだぐだ言ってるんだよね」
と小夜子。
 

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10曲目に制作したのは麻美さんの回復・退院に喜んで政子が書いた詩に私が曲を付けた『神様ありがとう』である。ある意味で大ヒット曲『神様お願い』のお礼参りである。
 
私たちは実際、8月31日の大宮アリーナでのローズ+リリー・ライブを終えた翌日、ふたりで伊勢の神宮を訪れ、参拝したあとでこの曲をきれいにまとめた。どこの神様が願いを聴いてくれたのか分からないので、取り敢えず神様の代表にご挨拶をしておこうという趣旨だった。なお、更に千里のアドバイスで和歌山県の熊野三山も訪問した。
 
演奏は基本的にスターキッズの通常バージョンで行っている。こういう曲についてはシンプルに構成するのが良いと考えた。
 
曲のPVは、やはり『神様お願い』が震災絡みで多数の人に聴いてもらったことから、DASH村の所在地として有名な浪江町での撮影を敢行した。
 
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町と撮影について交渉したら、町側が所有する最近の町内の様子のビデオなども提供してもらい、それも利用してこのPVを完成させた。最後に私とマリが浪江焼きそばを美味しそうに食べている所が映っているのはご愛敬である(美空も映っているように見えるのは、きっと気のせい)。
 
撮影は私と政子だけで行くと言ったのだが、スターキッズの5人も付き合ってくれた。念のため政子と七星さんには直前の妊娠検査をお願いして陰性であったのを確認して一緒に行った。撮影と録音は私の恋人である正望と、高校時代の同級生で義兄?の佐野君がやりたいと言って同行してくれたので彼らにやってもらった。佐野君は私の姉・萌依の夫の小山内和義の妹で、私の元同級生でもある小山内麻央の彼氏(実質的なフィアンセ)という、親族なのか何なのかいまいち微妙な関係である。
 
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町側が指定してくれた、かなり放射線量の低い場所にあり復興準備のため電気が来ている小学校の体育館の中で演奏し、撮影は2時間ほどで終了して退去。退去時には移動に使用したハイエース(○○プロ所有の9人乗り)の洗浄をした上で、きちんとスクリーニング(放射能検査)を行った。放射能量は問題無いレベルだったが、念のためいちぱん外側の服と靴は所定の方法で廃棄することにした。
 
しかしこの映像はかなりの反響があったようである。撮影に使用した小学校の卒業生の人からもお便りを頂いた。
 

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夏の日の想い出・雪月花(6)

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