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■夏の日の想い出・雪月花(3)

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もうひとつ葵照子・醍醐春海のペアで『Roll over Rose + Lily』という曲も入っている。Roll over というのは昔のラジオのディスクジョッキーにリクエストを出してレコードをプレイヤーに掛けて回してくれという意味である。決して「ぶっ飛ばす」訳ではないのだが、歌詞の内容は例の曲を相当意識している感じだ。下手くそな歌謡曲にハマってしまった。もう身体に下手くそな音楽が染みついてて私は下手にしか歌えない。ローズ+リリーのCDを掛けてくれ。あんなきれいな音楽を聴けばこの病気も治るだろう(つまりローズ+リリーの歌はきれいなだけで詰まらないというのを言外に示唆している)、などと歌っている。私も氷川さんも笑い転げていたのだが、ローズ+リリーのファンが過剰に反応しないように私はわざわざ
 
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「ゴールデンシックスのデビューCDに入ってるRoll over Rose + Lily、聴いたけど、笑って笑ってお腹がよじれそうだった。作曲者は私の長年の親友醍醐春海」
 
とツイートしておいた。
 
実際こんなふざけた曲を堂々と書けるのはきっと千里か神崎美恩くらいだろう。
 
カノンたちとの約束に従って私が提供したのが『ロングシュート』という曲。これは中学生の頃に能登半島の見附島(別名軍艦島)を訪れて書いたものである。この島には、弘法大師が中国から帰国する船の中から投げた五鈷杵がここで見付かったという伝説があることから発想したもの。PVではバスケットボールのコートのセンターラインの所からシュートしてゴールにボールが飛び込む映像が入っている。これは千里が数十回シュートして、奇跡的にダイレクトに飛び込んだシーンを採用した。つまり画像自体には一切細工無しである。
 
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その他入っている曲はリノン作詞・カノン作曲の 『カラオケ天国』、ツキヨ作詞作曲の『ワンナイト・ラブ』である。「ツキヨ」こと月夜は美空の実姉で彼女は 24121503 というバンドを組んでいるのだが、ゴールデンシックスの前身のDRK時代から楽曲を提供してくれていたのだそうである。
 

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ローズ+リリーのアルバム『雪月花』の作業は淡々と進んでいた。
 
3番目に制作したのは萌枝茜音さんから提供してもらった『カオル』という曲である。萌枝さんは元々はロックバンドを組んでいたのだが、アイドル歌謡を最近は多く書いており、鈴鹿・美里やチェリー・ツインなどにも楽曲を提供している。それでこの曲も、その系統に属する曲なので、歌謡曲っぽい感じで仕上げることにした。
 
渡部賢一グランド・オーケストラに出演してもらい、ストリング・セクションやブラス・セクションをたっぷり聞かせる曲に仕上げた。この時期のオーケストラのリズム・セクションは、Eliseの実妹・亜矢が率いるナディアルが担当している。
 
PVも音源制作に引き続き、同じメンツで、東京中野のスターホールのステージを使用して撮影した。歌謡ショーのようなセット(響原さんから、実際の歌謡番組のセットのお下がりをもらった)を設置し、私たちは1970-80年代の歌謡曲の歌手のようなキラキラするドレスを着て、髪も昔風に結ってもらって歌っている。
 
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この曲はアイドル系の歌ということで十代のファンの掘り起こしを狙ったのだが、意外に40代以上の層に受けて、カラオケでもたくさん歌われることになった。音域もあまり広く使っていないので、カラオケでも歌いやすいのである。ローズ+リリーの曲は、私の音域を生かすように2オクターブ以上ある曲が多いのだが、この曲は1オクターブ半くらいしか使っていない。
 
またこの曲のPVでは、フードコーナーでメロンソーダを飲んだ後、繁華街をさまようように歩く女性の姿を映し込んでいる。カラオケ屋さんの標準画像っぽい作りなのだが「この人は誰ですか?」という問い合わせが結構あった。
 
実は苗場にも出演してもらった女子バスケ・チーム《千葉ローキューツ》のキャプテンで歌子薫さんという人である。カオルという名前なので出演してもらった。彼女は千里の古い友人であり、また和泉の友人の照橋ヒナさんの古い友人でもある。千里も大学生時代に、このバスケ・チームに所属していたらしい。
 
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「千里は、なんでそのチーム辞めたの?」
と政子が尋ねると、千里は
 
「性転換手術を受けるためだよ」
と答えた。
 
「それにちょうど、初期メンバーが就活とか結婚のために相次いで脱退したから、そのどさくさまぎれに私も辞めさせてもらった」
 
「おかげで私ひとり取り残されて、この後どうしようと思った」
と薫さん本人も言う。
 
「でもそのメンツで、全日本クラブ選抜を制したし、翌年は全日本クラブ選手権も制したんだから薫は偉いよ」
と千里。
「主力がごそっと抜けたから建て直すのに大変だったよ」
と薫。
 
政子が悩むように言う。
「その千葉ローキューツって男子バスケチーム?」
「ううん。女子バスケチームだよ。苗場でも苗場行進曲で出てもらったじゃん」
と千里。
 
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「私は女子選手としての正式なIDカードをもらってすぐにローキューツに参加したんだよ。それまでは男女混合のお遊びみたいなチームに居たんだ」
と薫が言う。
 
「女子バスケチームに所属していたということは、千里ってその時点で女子選手だった訳だよね?」
と政子。
「当然。男が女子バスケチームに入れる訳無い」
と千里。
 
「ということは性転換手術を受けるために辞めたというのはどう考えてもおかしいんだけど」
と政子。
 
「いや、千里は中学生の時から女子バスケチームに居た」
と薫が衝撃の発言をする。
 
「ということは、やはり千里って、小学生の内に性転換してたんだ!?」
と政子が言う。
 
「本人は否定するけど、そうとしか考えられないよね」
と薫。
 
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千里は笑っている。彼女は以前にも自分がいつ性転換したのか自分でも分からない、みたいなことを言っていた。彼女の「言い訳」を聞いてもさっぱり意味が分からないのである。
 
すると政子は言った。
「ということは、やはりケイも小学4年生頃までに性転換していたんだ?」
「なんで、そうなるの!?」
 

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「ちー姉が2012年にタイで性転換手術を受けたのは間違いないんだよね」
と久しぶりに東京に出てきた青葉も言った。
 
「でもそれだとあれこれ矛盾がある」
と私は言う。
 
「何らかの予定調和のひとつという気もする。だから多分、ちー姉って実は小学生の内に性転換したんだけど、実際に性転換手術を受けたのは大学4年の時なんだよ」
 
「意味が分からん」
 
「普通の大工さんは、基礎工事をして柱や梁を組み立ててから屋根を乗せる。材木を合わせてから釘を打つ。ところが、予定調和の大工さんは屋根を乗せてから柱や梁を組み立て、その後基礎工事をしたり、釘を打ってから材木を合せたりすることができる」
「なんかガリバー旅行記にそんな話があったね」
 
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「ちー姉って物凄い予定調和で動くんだよ。ちー姉って本人は否定するけど、強烈な霊感の持ち主じゃないかと私は思うこともある。でも私が見る感じ、ちー姉のオーラって、ふつうのやや霊感が発達した人程度しか無いんだよね。Eliseさんとか、七星さんとかと似た程度の、小さなものなんだ。あのオーラから判断する限りは、そんな大した霊感があるとは思えない。だから私にも、ちー姉って、よく分からない存在なんだ」
と青葉は言う。
 
「ちー姉の予定調和って凄いんだよ。今夜はビーフストロガノフが食べたいなという気分になっている時に帰宅したら、ちー姉と桃姉が来ていて、ビーフストロガノフを既に作っていてくれたりする。トランプがしたいねと言ったら荷物からトランプが出てくるし、ヴァイオリンの練習しようかなと言ったらちゃんとヴァイオリンを持っている」
 
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「ああ、そういうのは千里と付き合っているとよく経験する。千里の鞄って何だか魔法の鞄なんだよ」
 
「雨宮先生から一度聞いた話では、東京から大阪まで送ってくれないかとファミレスのバイトに出ているちー姉に頼んだら、普段はスクーターでファミレス通勤してるのに、その日だけは自分の車でファミレスに来ていて勤務が終わった後、その車で迎えに来てくれたんだって」
 
「物凄い偶然だね」
「しかも普段は夜10時から朝5時までの勤務なのに、その日だけは他の人のシフトを代わってあげていて、夜12時で終わるシフトに入っていたらしい」
 
「話ができすぎ!」
 
「桃姉も言ってたんだよね。ちー姉が『傘持っていきなよ』と言った時は、朝どんなに晴れていても雨が降る。おかげで桃姉はちー姉と同棲し始めてから、急に雨に降られて困るということが、ほとんど無くなったらしい」
 
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「雨が降るの分かる人は結構いるよね」
「気圧に敏感な人とかだよね。あと電話が掛かってくるのも事前に分かるみたい」
 
「青葉も分かるでしょ?」
「うん。私はだいたい30分くらい前に分かる。ちー姉は私ほどじゃないけど、5分くらい前には分かるらしい」
 
「それって、やはり千里は結構な霊感人間なんだと思う。だから青葉って、やはり最適の人に保護してもらったんだよ」
 
「うん。そう思うことがある。物凄く大きな運命の流れにあるんだろうな」
 
そう言って青葉は遠くを見るような目をした。
 

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8月下旬、その青葉が出てきたついでに彼女の吹くサックスをフィーチャーして収録したのが『眠れる愛』である。この曲は、政子が眠っているのを見て、私が書いた曲だ。時は2009年のクリスマス。『アイドル・クリスマス』というイベントに出演した私と政子はその後、政子の要求で帝国ホテルに泊まった。受験勉強の疲れから政子はふかふかのベッドでぐっすり眠ったのだが、その時の曲である。実は名曲『恋座流星群』とほぼ同時に仕上げた曲だ。
 
演奏はスターキッズの《アコスティックバージョン》を基本にしているが、そこに七星さんと青葉のツイン・アルトサックスをフィーチャーした。
 
PVでは『眠れる森の美女』を意識したセットの中で、童話のような衣装を着けたスターキッズのメンバーが、実際に演奏しているのを撮影した。そこに更に、帝国ホテルの部屋を借りて、眠っているマリを撮影して、その映像を加えている。ベッドに入って目をつぶってと言ったのだが、マリは本当に眠ってしまったので、結果的に本物のマリの寝顔を公開することになった。
 
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演奏の映像では、小人さんのような衣装を着けた七星さんと青葉の双方が使用しているピンクゴールドのサックスが可愛い!というので結構評判になったようである。元々は七星さんが青葉を唆せて買わせたものの、唆した七星さん本人も欲しくなって後から買ったもので、Yanagisawa A-9937PGP という製品である。
 
また、時間経過を表すのに、ゼンマイ式の木製の古い仕掛け時計を映しているのだが、この時計が趣きがあって評判になっていた。七星さんの私物なのだが、以前スイス旅行をした時に古道具屋さんで見付けて買っていたものらしい。時計マニアの★★レコード・則竹さんがこれを見て、恐らく1920-30年頃のものではないかと言った。
 
もう動かないようになっていたのだが則竹さんは「修理できると思う」と言うので、七星さんが「だったら修理お願いします!」と言い、則竹さんの知人の時計職人さんに依頼したところ、丁寧に歯車やカラクリ部分を分解して磨いて、切れていたゼンマイだけ新しいものに交換して、組み立て直してくれた。それで実際に動いている様子、カラクリが飛び出す様子などを撮影することができた。
 
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9月上旬、5番目に制作したのは上島先生に書いて頂いた『白い虹』という作品である。白虹というのはふつうは月が作る虹なのだが、この歌では、恋を失って、ショックで色覚が消失してしまい、虹が白く見えるという状況を歌っている。
 
上島先生は最初このアルバムのために『青い静寂』という曲を書いてくださったのだが、曲の品質に問題があり、制作段階で議論になった。氷川さんが上島先生に他の収録候補曲を聴かせた所、がぜん意欲が出たようで、全く新しい曲を書いてくださった。『青い静寂』は別の歌手に回してしまったようである!?
 
この曲は、色彩排除ということから、ピアノの伴奏のみで歌っている。実際に音源製作時にピアノを弾いてくれたのは、スリーピーマイスのエルシーである。彼女には昨年のアルバムでも、『カトレアの太陽』でピアノを弾いてもらっている。
 
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またこの曲のPVもモノクロで撮影した。わざわざ富士フイルムの古いシングル8(8mmフィルムカメラ)でモノクロフィルムによる撮影を行い、それをビデオ変換している。カメラはヤフオクに出品されていたものを近藤さんが見付けて落としてくれ、それをメーカーに持ち込んで修理してもらって動くようにした。またモノクロフィルムも実はもう純正品は存在しないのだが、ドイツのメーカーが製造したものが何とか入手できた。
 

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8mmフィルムで撮影しているというのを聞いて、何と○○プロの丸花社長が顔を出して「懐かしい!」と言っていた。丸花さんは磁気テープではなくフィルム式の動画カメラを使用していた最後の世代っぽい。
 
「いや、昔は歌手のステージを8mmフィルムで随分撮ったよ」
 
などと言って、昔の話をたくさん語り、氷川さんが聞き役になってあげていた。
 
「ね、ね、この8mmカメラ、もらえない? 僕が持ってたのはもう壊れて動かないんだよ」
などと丸花さんが言うので、制作が完了した所でこのカメラは余ったフィルムと一緒に丸花さんにプレゼントされることになった。
 

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夏の日の想い出・雪月花(3)

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