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■夏の日の想い出・ビキニの夏(6)

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なお、私は9月以降は学校があるので、珠妃の全ての活動には付き合えないと言ったので、(三谷さんもまだ怪我から回復していなかったので)バンドのヴァイオリン奏者は引き続き募集され、8月下旬になってやっと、20代の女性ヴァイオリニストが採用された。
 
私は後任者も決まった段階で、頂いたヴァイオリンは返上しますと社長に言ったのだが、社長はそれはあげた物だから持っていていいし、何かの時はまた頼むと言われた。井瀬さんが
「珠妃ちゃんを守ってくれた御礼もあるんじゃない?」
と言っていたのでもらっておくことにした。私はこのヴァイオリンに《Flora》という名前を付けた。
 
ところで7月の公演の際、私があそこで身を挺して珠妃を守り、その後7月中に行われたキャンペーンには私は参加しなかったので(元々参加する予定が無かった)、あの時のヴァイオリニストは大けがしてバンドを離脱したとか、どうも亡くなったようだなんて噂も立っていた。横浜のイベントで怪我したヴァイオリニストも死んだらしいなどという噂まで立ち、7月下旬のキャンペーンではヴァイオリン奏者が日替わりであったこともあり、「珠妃のバックバンドのヴァイオリニストは死ぬ」とか「死ななくても病気になる」「いや発狂すると聞いた」などという変な都市伝説が一人歩きした。
 
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「売れずに憤死したヴァイオリン制作者が祟っている」なんて話も出てきて、更には『恋のスピッカートには霊の声が入っている』という話まで出ていた(該当箇所を事務所でみんなで聞いてみたが、私にも他の人にもただのノイズとしか思えなかった。一応再プレスの際に除去した)。
 
しかしそのような噂もまた『黒潮』のセールスを押し上げ、8月上旬には300万枚を突破した。ミニアルバムの方もあっという間にプラチナディスクとなった。
 

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さて私の方だが、夏休みは去年に引き続き、例の可愛い水着を着てプールに来るように奈緒に言われ、また学校のプールで水泳の練習をしていた。昨年はクロールの手足の動きをしても速攻で沈んでいたのが、今年は数十秒はもつようになっていた。それで何とか25mプールの3分の1くらいまで泳いでいけるようになった。
 
「やはり若葉と2人でずっと校舎の周りを走っているおかげだよ」
「あれで少しは筋肉付いてきてるんだろうね」
「きっと来年くらいには25m泳げるようになるんじゃないかなあ」
「冬、スクール水着買って、授業にも参加しなよ」
「パス」
 
「もっと可愛い水着プレゼントしたら、授業に出てこれる?」
「でもこの水着だってけっこう可愛いよ。これより可愛いのってどんなの?」
「やはりビキニだな」
と協佳。
 
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「おお、ビキニ!」
 
すると有咲がその件をバラしちゃう。
「冬はビキニになったことがある」
 

「なに〜〜!?」
「じゃビキニ持ってるの?」
「持ってない、持ってない、借り物だよ」
 
「冬はビキニを着けたらまるでおっぱいがあるみたいに見える」
「何〜?ぜひその姿を見たい」
 
「じゃ見せてあげる」
と言って有咲がスティルを1枚みんなに見せちゃう。
なんでそんなの持ち歩いてるんだ!? だいたい誰からもらったんだ?
 
「おぉ!!!!!」
「可愛い!」
「冬ちゃん、バストがBカップくらいあるみたい」
「上げ底だよぉ」
「何にも無い胸をここまで大きく見せられるものなの?」
「あはは」
 
「すごーい。冬ちゃん、このテク教えてよ」
「それシリコンパッドで下から押し上げた上で、透明なビニールテープで引っ張って脇の肉を寄せてるんだよ。結構痛い上に10分しかもたない」
「いや、10分でもこんなに胸があるように見せられるのは凄い」
 
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「これ、もしかして5月に学校休んでハワイに行った時の?」
と奈緒がやっと気づいたように言う。
「ハワイじゃなくて沖縄だけどね」
 

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私は5年生の6月から女性ホルモンの補充療法を受けていて、一応毎年4,8,12月には病院で検診を受けることにしていた。8月の上旬、病院に行き採血・採尿されて、数値をチェックされる。おちんちんのサイズを測られた上で精液も採取するように言われ個室で射精させて容器に取った。
 
先生は顕微鏡でチェックしていた。
 
「前回オナニーしたのはいつ?」
「5月かな・・・」
「えっと夢精したのは?」
「2週間前です」
 
「なるほど」
「薄いですか?」
「いや、むしろ濃いくらいだね。精子も元気だよ。でもオナニーあまりしないんだね」
 
「病院の検査で射精させる以外で今年は2回しました」
「勃起する?」
「しません。射精させるのにも男の子みたいに掴んで上下とかできないので、指で押さえて女の子みたいにグリグリして射精させます」
 
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先生は頷いている。
 
「普段女の子のヌードとか見ても大きくなったりしない?」
「私、女の子のヌードには何も感じません」
「あ、そうか。じゃ、男の人のヌード写真は?」
「そんなの持ってません」
「まいっか」
 
胸の発達具合もチェックされる。
 
「乳首・乳頭はかなり大きくなってきたね。乳房自体も膨らみ始めている。トップとアンダーの差が6cmだからAAカップのブラ付けられる」
「これもっと大きくはできませんよね」
「ホルモンの量を増やせばもっとよく発達すると思うよ。でもそうしたくないんでしょ?」
「ええ。まだ今の段階では生殖機能も維持しておきたいんです。いづれ消したくなるだろうけど」
 
「それは君の気持ちが自然にそうなった時でいいと思う」
「豊胸手術とかする訳にもいかないだろうしなあ」
「さすがの僕も小中学生には豊胸手術はしないよ。中学生の去勢ならしたことあるけどね」
 
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ちょっとドキっとする。去勢か・・・。
 
「ゴールデンウィークにちょっと某所でビキニ着ちゃったら、また着たい気分になっちゃって。でも私、胸無いから、ビキニは悲惨なんですよね。ゴールデンウィークの時は、上手な人が寄せて集めて、まるで胸があるみたいに見せてくれたんですけど」
 
「・・・・ヒアルロン酸とか注射してみる?」
「ああ!」
「知ってる?」
「はい。効果が大してないことも、いづれ身体に吸収されて元の木阿弥になることも」
「それだけ分かっていればいい」
「料金はおいくらですか?」
「10ccで4万円。たぶん業界でもかなり安い方。ちなみに0.5cupアップには30ccくらい打つ必要がある。70ccくらい打ってあげようか?Aカップになるよ」
 
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「56万もお金無いです!」
 

その年の8月は土日は松原珠妃の全国ツアーに付き合ったのだが、平日は民謡の伴奏やお囃子に行ったり、また何度かドリームボーイズのライブでバックダンサーをした。
 
「今月の土日は全部ふさがってるんですー」
と言ったら
「16日もダメ?」
とドリームボーイズのマネージャー・前橋さん(後に社長になった人)から訊かれる。
 
「16日は空いてますが」
「じゃ、よろしく〜。幕張メッセだから」
「はい」
 
ということで、私はお盆明けの16日にはいそいそと千葉まで出て行き、ドリームボーイズのバックで踊ったのであった。
 

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「今日は新曲『あこがれのおっぱい』に合わせて、ペチャパイから巨乳までを順番に並べるというコンセプトだから」
と前橋さんが言うと
 
「ひっどーい」
「それセクハラ〜!」
という声がダンスチームの女の子たちから上がる。
 
「心配しないで。いちばんのペチャパイは、小学生の柊ちゃんがいるから」
と言われる。
 
「はい!永遠のペチャパイ、柊洋子、行きます!」
と私は言って、真っ先にラインに立った。
 
私が率先して並んだので、他の子たちはぶつぶつ言いながらもお互いの胸を見つめ合いつつ、何となく整列する。
 
「右端の**ちゃん、かなり巨乳だね。Gカップくらいある?」
「Hです」
「おお。凄い!」
 
彼女は本当に巨乳で、みんな羨ましそうに見ている感じだった。
 
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ダンス自体は、リーダーの葛西さんが(Cカップだったので)真ん中付近になってしまったが、私が例によってすぐ振り付けを覚えたので、結果的には葛西さんより左の人は私の踊りを見ながら踊ることができて、踊りやすかったようであった。
 

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「洋子ちゃん、明日の予定は?」
とイベントが終わってから、前橋さんから訊かれる。
 
「松原珠妃のツアーで沖縄に行ってヴァイオリンを弾きます」
「おお、うちも明日は沖縄なんだけど。こちらでも踊らない?」
「えっと・・・」
 
「そちらの公演は何時から何時?」
「13時から15時。実際には10時から16時くらいまで拘束されると思います」
 
「うちの公演は夕方からだから大丈夫」
「それでは東京に帰れません」
「君、まさか沖縄日帰り?」
「はい」
 
「無茶な。泊まりなよ。他の人も日帰りなの?」
「いえ。全員那覇に泊まって翌日鹿児島に移動してライブです。私は鹿児島には出ないので東京に戻ります」
 
「ちょっと話し合ってみよう」
 
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ということで、前橋さんは松原珠妃のマネージャーの青嶋さんに直接電話して話を付けてしまった。
 
「松原珠妃の公演の後で、うちの公演に移動してもらうのはOKだって。どちらも那覇市内だから大丈夫だよ。宿泊については、向こうが他のメンバーと一緒にホテル確保して、費用に関してはうちと半々持ちということで話がついた」
 
「えっと・・・・うちの親には・・・」
「頑張って説得して」
「あはは・・・」
 

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即母に電話したら、変な遊びでなければ、夏休みでもあるし構わないよと言ってくれた。前橋さんが途中で電話を替わってくれたが、前橋さんは凄く紳士的な人なので、母も信用してくれた雰囲気であった。
 
そういう訳で、結局17日の沖縄行きは1泊で行ってくることになったのである。沖縄日帰りというのには元々体力的な不安があったので、ちょっとホッとした。
 
それで千葉から東京へと帰るのに千葉駅で電車を待っていたら、
「あれ〜、冬だ」
と声を掛けられる。
 
「若葉! 何だか若葉とはよく不思議な場所で会うね」
「幕張メッセのファンタジア・フェスティバル見てきた」
「ああ!」
「あれ?冬も?」
「私は見たというか、出たというか」
「嘘!? あれ?松原珠妃出てたっけ?」
 
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「ううん。松原珠妃は今日はお休み。今日はドリームボーイズのバックダンサー」
「へー! あのバックダンサーの中に冬がいたのか。気づかなかった」
 
「まあ、バックダンサーまで見てる人なんて、あまりいないから」
「冬って、何か色々なものに関わってるんだね?」
「まあ民謡系が多いけどね。今月既に民謡の大会の伴奏、5件やったし」
「よくお仕事してるなあ」
「松原珠妃のライブも2日札幌、3日仙台、9日横浜、10日名古屋と出た」
 
「・・・・ね、もしかしてスケジュール表がお仕事で埋まってたりしない?」
「そこまではないよ。4日から6日までと、11日と15日も休んだし」
 
「8月に入ってからの17日間に、松原珠妃4件、民謡5件やって、休んだのは5日間だけ? つまり残りの3日間もお仕事なのね?」
「うん。まあ、ドリームボーイズやってた」
 
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「並みのアイドル歌手より忙しいような。明日は?」
「沖縄に飛んで、午後は松原珠妃、夕方からドリームボーイズ」
「掛け持ち!?」
「うん」
 

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「でも沖縄いいな。私も行きたくなった。明日は沖縄泊まり?」
「日帰りで帰ってきて月曜日は休むつもりだったんだけどね。ドリームボーイズが入ったから、那覇泊まりになった」
 
「月曜日の予定は?」
「特に無し。一応羽田行きは、月曜日の夕方の便を取ってもらってる」
「あ、じゃ沖縄で私と一緒に少し遊ばない?」
 
「いいけど、今からチケット取れるかな?」
「ああ、それは大丈夫」
 
と言って若葉はどこかに電話していた。それで千葉から東京に戻る電車の中で返事のメールが来ていた。
 
「明日朝の航空券、松原珠妃とドリームボーイズのコンサートチケット、それに月曜日の羽田行き、冬と同じ便を確保」
 
「ちょっと待って。航空券はまだしも、松原珠妃もドリームボーイズも既に売り切れてたんだけど」
「ああ、そのくらい平気。コネで取っちゃう」
 
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「若葉のコネって凄い!」
 

「でもせっかく、沖縄に行くんなら、海に行こうよ」
「ああ、それもいいね。沖縄で1日何しようかと思ってた」
 
「新しい水着買っちゃおうかなあ。冬も買わない?」
「そうだなあ、それもいいかな」
「じゃ、一緒に買いに行こう」
「うん」
 

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夏の日の想い出・ビキニの夏(6)

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