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■夏の日の想い出・ビキニの夏(2)

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そんな話をしていた時、声を掛けて来た男性がいた。
 
「あれ〜、ピコちゃんだ」
と言って、蔵田さんは無遠慮に私たちのテーブルに座り、ちょうど近くを通ったクルーに「ビッグマックのLLセット2個」などとオーダーして2000円渡す。本当は席でのオーダーは受け付けてないはずだが、クルーさんも虚を突かれた感じで「あ、はい」と言ってしまった。
 
「あの、もしかしてドリームボーイズの蔵田さんですか?」
と有咲。
「うん」
「きゃー、ファンなんです。サイン頂けますか?」
「いいよ」
 
それで有咲はちょうど買ったばかりだったスケッチブックにサインをもらって嬉しそうにしていた。
 
「冬、蔵田さんと知り合いなの?」
「昨日、沖縄で一緒にお仕事したから」
「えーーー!?」
 
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「役得で、ピコちゃん抱きしめちゃったよ」
と蔵田さんが言うと
「うらやましいー。私も抱きしめられたい!」
などと有咲が言う。
 
すると
「いいよ」
などと言って、蔵田さんは有咲をハグしてくれた。本当は女の子を抱きしめるのは嫌だと言っていたが、ファンサービスだろう。
 
「感激〜。死んでもいい」
などと有咲は本当に嬉しそうだった。
 

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しかし・・・・・それから蔵田さんは私たちの前で2時間ほど「モー娘。宝塚論」
をしゃべり続けた!
 
オーダーしたビッグマックセットを2セット、ぺろりと食べてしまい、更にもう1セット食べてしまった。私も奈緒・有咲も後で「男の人の食欲って凄いねー」などと言ったのであるが。
 
その蔵田さんの延々と続きそうなおしゃべりが中断したのは、そこにドリームボーイズのベースの大守さんが来たからであった。
 
「おお、やはりここにいた」
 
どうもこのマクドナルドは蔵田さんのお気に入りの店で、ここにいるのではないかと探しに来たもようであった。
 
「収録始めるのにコージ来ないからさ。みんな待ってるぞ」
「あ、ごめん、ごめん」
と言ってから
「あ、君たち、僕らのミュージックビデオの撮影とか見る?」
などと私たちに訊く。
 
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すると有咲が
「行きます!」
と大きな声で言った。それで私たちはぞろぞろと付いて、スタジオに行った。
 

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スタジオに行くと、ドリームボーイズのメンバーが全員集結しているので有咲が物凄く興奮していた。奈緒はスタジオの機材とかが物珍しいようでキョロキョロしていた。
 
「あれ? バックで踊る女の子が足りないんじゃない?」
「あ、それそれ。7人用意する予定だったんだけど、どうしても5人しか調達できなかったんだよ」
 
「それは困るな。『虹の向こうで味噌カツ』という曲のタイトルに合わせて虹色の衣装の女の子7人で踊ってもらうつもりだったのに」
 
なんつータイトルだ?
 
「国によっては虹は5色という国もあるよ」
「日本じゃ7色だ」
 
そんなことを言っていた時、蔵田さんはふと私たちの方に目をやった。
 
「ね、君たちダンス得意?」
「へ?」
 
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「私ダメです。私が踊るくらいなら、ドジョウに踊らせた方がいいかも」
などと奈緒は言っている。
 
「じゃ、僕のファンの子と、ピコちゃんは?」
「この子、バレエの経験者です」と有咲は私の方に手をやって言う。
 
「おお、それは頼もしい。君は?」
「郵便ポストよりは上手いかも」
「ああ、それで充分」
 
それで私と有咲は準備運動をしてからダンスの人たちに加わることになった。先に来ていたダンサーの人たちもリーダーで葛西さんという人以外は中学生という感じだったので、小学6年生の私たちが入ってもそんなに違和感は無い。
 
踊り方を高校生かなという感じの葛西さんが説明する。
 
「・・・と、これをずっと繰り返すんだけどね」
 
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「こんな感じですか?」
と言って、私は今葛西さんが踊ってくれたのを真似て踊ってみる。
 
「すごーい。あんた才能あるね!1発で覚えちゃうなんて」
「私は冬を見ながら踊ろうかな」と有咲。
 
それで少し練習してみた。実は葛西さん以外の人たちも今初めてこの振り付けをやるようであった。最初は全然揃わないものの、30分も踊っているうちに、何とかという感じになった。
 
「ダンス組の方、まとまってきた感じだね?」
と大守さん。
 
「はい。あと30分も練習したら完成です」
「よろしくー。こちらの演奏もあと30分くらいの練習で何とかなりそう」
 

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ということで30分後、本番衣装に着替えてミュージックビデオ撮影に臨む。
 
葛西さんが赤で左端に立ち、それから橙・黄・緑・青・藍・菫と虹の七色の衣装を着る。結局私が完璧に葛西さんの踊りをコピーできたので真ん中に入ってくれと言われ、私は緑色の衣装を着た。有咲は一番右で菫色の衣装である。
 
衣装を着けた時、私の胸が結構あるので有咲から
「冬、豊胸したの?」
などと突っ込みが入る。
「あげ底〜」
「へー。まるで谷間があるみたい」
「えへへ」
 
ドリームボーイズのメンバーがスタジオのセンターフロアに並び『虹の向こうで味噌カツ』を演奏し、その後ろで私たちダンサーが踊る。増田さんの軽快なドラムスに合わせ滝口さんのギターと大守さんのベースが音を奏で、原埜さんのキーボードが彩りのある和音を補強する。野村さんのサックスがムードを高める。そして蔵田さんが歌う。
 
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タイトルは酷いが、中身はまともで、軽いロックのリズムに乗せて歌う明るいラブソングであった。30分ほど掛けて5テイク撮影した。実際にはよくできた部分をつなぎ合わせて1本のビデオにまとめると言っていた。
 
「君たち、ありがとう」
と言って私と有咲は現金でギャラをもらった。封筒の中身を見たら1万円も入っていたので、私も有咲も「きゃー」と喜んだ。
 
「おお、なんかたくさんもらったね。ステーキ食べ放題に行こうよ」
と奈緒が言ったが
「とりあえず今日はそろそろ帰らないと叱られる」
と有咲。
 
「よし、じゃ明日」
「いいよ」
と私は笑って答えた。
 

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「ねえねえ、ピコちゃん。君、ほんとにダンス上手いね。また時々頼める?」
と私は蔵田さんに言われた。
 
「そうですね。時間さえ合えば」
 
「君のスケジュールはどこに問い合わせればいいんだろ? ζζプロ?」
「あ、えっと津田アキ民謡教室の方がいいかな」
と言って、私は教室の電話番号をメモに書いて渡した。
「柊洋子の名前で問い合わせてください」
と言ってその名前も書いておく。
 
「了解〜。君、民謡歌手の卵?」
「民謡は習ってるけど、どちらかというとポップス歌手指向です」
「ああ。あそこならその気になれば○○プロからデビューできるだろうしね」
 
と蔵田さんは言ったが、私はそのあたりの構造はよく分かっていなかったし、○○プロという名前もその時聞いたまま忘れてしまっていた。
 
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でもそういう訳で、それ以降私はしばしばビデオ撮影やライブなどでドリームボーイズのバックダンサーを務めることになるのである。
 

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5月18日、私は津田先生の民謡教室の関係で、神奈川県のY市まで出かけて行った。この時期、私の三味線も練習し始めてから約1年が経過し、かなりの腕になっていたので津田アキ先生が歌うのの伴奏を務めるためであった。
 
市の音楽イベントで10組ほどのアーティストが出演する。現地に行ってからプログラムを見て「おぉ!」と思った。出演者の中に松原珠妃の名前があったのである。出番は私たちのひとつ前だ。
 
日曜なので恐らく他のイベントもこなして、直前に来るのではないかと思ったら案の定であった。出演予定時刻の1時間ほど前にやってきた。私が手を振ると、最初私のことが分からなかったようであった。
 
「あんた冬〜?」
「おはようございます、松原さん」
「・・・おはよう。振袖着て、演歌でも歌うの?」
「私、今日は三味線で伴奏。うちの先生が歌うから」
 
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「あんたの先生って・・・・」
と言って、静花はプログラムを確認した。
 
「私のひとつ後か・・・・」
「ごめーん。私の方が後で」
「まあ、あんたの『先生』だしね。冬自身が私の後だったら、ここで首くくって死ぬわ」
と言って静花は笑っている。
 
「でも頑張ってね」
「冬もね。でも冬って振袖似合うなあ」
「頻繁に着てるから。でもまだ自分で着られないんだよ」
「ああ。振袖は和服の中でも特に難しいもん。そもそも着るのに時間が掛かる。私も何度か着たけど、大変だよね」
 
「ほんとほんと。手慣れた人に着せてもらってるし、これ結構略式の着方だから15分くらいで着ちゃうけど、丁寧な着せ方すると30分掛かるよね」
「トイレが近い子には着られない服だと思った」
「同感、同感」
 
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今日の静花の衣装は海をイメージしたのか青いマリンルックである。髪のブーケが可愛い。白いスカーフも清楚な感じで素敵だ。
 

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「ところで、あんたの先生は?」
「そろそろ来ると思うんだけどなあ」
「あんたの先生って、男性の楽屋を使うんだっけ?」
「まさか。女性の楽屋だよ」
 
「身体は完全に女なの?」
「そそ。5年前に性転換手術を受けてるから」
「へー。でも奥さんいるんだよね?」
 
「よく分からないけど、レビスアンとかいうのかな?」
「レスビアンでは?」
「あれ? 私今何て言った?」
「私には再現不能だ」
「まいっか」
 
そんなことを言っているうちに珠妃の時間が迫ってくるのでメイクを直してから楽屋から出て舞台袖まで行く。私も付いていく。珠妃の伴奏者の人たちがいる。何となく会釈すると彼らも会釈してくれた。
 
珠妃の前に演奏しているのは何だかロックバンドのようであったが、私には騒音にしか聞こえなかった。およそ調和するような音はなく、各楽器の音はバラバラ。不協和音にさえなっていない。
 
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私は三味線のケースをそばに置いて珠妃とおしゃべりしていたのだが、ギターの人が「あ、調弦確認しておかなくちゃ」と言って・・・・私のその三味線ケースを手にとって開けようとして「あれ?」などと言っている。
 
「それ、私の三味線ですが」
「あ、ごめんごめん。自分のギターは・・・こっちだ」
「なんかサイズが似てますね」
「同じくらいのサイズだね」
「三味線ケースにエレキギター入ったりして」
「その逆も行けたりして」
 
などと会話を交わしたが、私は「ん?」と何かを思いつきそうな気がした。
 
その時、ステージの方で「破壊するぞ!」という声が聞こえた。何するんだろうと思いそちらを見ると、メンバーのひとりが松明(たいまつ)を取り出し、それに火を点けた。
 
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「ちょっと、困ります! ステージ上で火を使わないでください!」
と舞台袖にいた係の人が叫ぶが演者は無視である。そしてギターを弾いて?いた人が自分のギターをその松明の上に晒し、火を点けてしまう。私はムッとした。楽器を粗末に扱う人は嫌いだ! その私の表情に気づいたのか、静花が私の手を握ってくれた。
 
「ありがとう」
「あんな馬鹿な奴らにいちいち怒ってたら感情の無駄遣い」
と静花が小さな声で言う。
「そうだね」
 
係の人は「やめてくださーい!」と叫んでいるが、ステージ上の人たちは更に無軌道ぶりを発揮する。ベースの人が自分が持ってたベースでギターの人を殴る! ベースが壊れる。そして殴られてフラフラしていたギターの人を掴むとドラムスのセットに向けて、投げた! ドラムスセットが派手な音を立てて壊れる。更にドラムスにアルコール?か何か掛けて松明の火を移しちゃう!この人たち、いったい何がしたいの?
 
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とうとう係の人がステージ上に飛び出して行く。
 
「ただちに演奏を中止してください。すぐ退場してください!」
と言うが、その係の人を、ベースの人は殴り倒しちゃった!
 
「これ・・・・警察呼んだ方がいいのでは?」
「消防署が先かも」
と私と静花は呆れ果てて会話する。
 
そして更にキーボードの人が花火を取り出して、松明にかざし火を点けた!ロケット花火のようで、客席に飛んでいく。
 
「危ない!」
と思わず私たちは叫んだ。
 
会場の人が数人ステージ上に走り込み、彼らを取り押さえようとする。もうここまできたら、もうこいつらは「演奏者」ではない。ただの暴漢だ。私と静花は眉をひそめていた。
 
しかし彼らはどんどんロケット花火に火を点ける。客席で悲鳴があがる。そして・・・・
 
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ロケット花火の内の1発がこちらに飛んできた。
「あっ」
と思った時、静花のバックバンドの人が腕を押さえて座り込んだ。
 
「三谷君!」
「大丈夫?」
 
「大丈夫。平気」
と言ったものの、その人は真っ青な顔をしている。
 
「見せて」
と言って、静花のマネージャー青嶋さんが彼の腕を見る。
 
「これ、病院に行かなきゃダメ」
 
花火の直撃で怪我をしたようで、ボトボトと血が落ちている。どうも動脈を切った感じである。静花が自分のスカーフを取って動脈を圧迫するようにして巻き付けて縛った。
 
「青嶋さん、すぐ病院に連れて行ってあげて。雑菌が入って化膿したらヤバい」
と静花が言う。
 
「うん。井瀬さん、後をお願い」と青嶋さん。
「分かった」と井瀬さん。
 
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それで青嶋さんは後事をギターの井瀬さんに託し、三谷さんを連れて病院へと急行した。ステージ上では多数の会場のスタッフがようやく危険行為をしていたバンドメンバーたちを取り押さえ、火も消しとめた。
 
「これ、もうイベント中止かなあ」
「かもねぇ」
 
などと私たちは言っていたのだが、騒然とした雰囲気がやっと収まった所で会場の責任者っぽい人たちが私たちの所に来て訊いた。
 
「大変お騒がせしました。ステージの清掃も終えました。幸い、観客には怪我人はいなかったようです。次行けますか?」
と責任者さんは訊いた。
 
私と静花は顔を見合わせた。
 
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夏の日の想い出・ビキニの夏(2)

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