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■夏の日の想い出・花の女王(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2013-07-13
 
ところで、ローズ+リリーにはこれまでデビュー以来5年間、一度もファンクラブが作られたことが無かったのだが、花枝が主導して、来年の1月からファンクラブの活動をすることになった。
 
それで、その《予備登録》を今回の福岡・横浜・大阪の公演会場で受け付けることにした。入場ゲートのそばに《ローズ+リリー・ファンクラブ開設》という看板を出して、登録用紙(料金受取人払のハガキ)を自由に取ってもらい、会場内のボックスに入れてもいいし、後から書いてポストに入れてもいいということにした。
 
その結果、福岡では11000人の入場者に対して、後から郵便で到着した分まで入れて、3万人以上の予備登録があり、花枝が仰天していた。
 
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恐ろしい数の登録数だったので、花枝は急遽、この登録の事務をするバイトさんを10人雇うとともに、会場で回収した分と初日到着した分は入力代行会社に丸ごと委託した。社内で入力をしてもらうのに雇った人の中のリーダー格は汐田早波さんという27-28歳くらいの人で、以前花枝が務めていたイベンターでもデータ入力のバイトをしていたという人であった。
 
「汐田さん、タイプ凄い速いですね」
と私は彼女の入力している様を見て言った。
 
「ええ。以前テープ起こしの仕事とかもしてたので」
「わあ凄い。秒10文字以上打ててますよね?」
 
「そうですね。カナ入力で秒9-10文字くらい、英語の入力やローマ字入力なら秒12文字くらいです。こういう日本語ばかりの入力ならカナ入力の方が速いですね」
「おお! カナ入力派だ。仲良くしましょう」
と言って、私は彼女と握手した。
 
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UTP関係者でカナ入力するのは、私と政子の他は悠子くらいである。ちなみに私がカナ入力するのは、その方がローマ字で打つより速く入力できるからで汐田さんと同様の理由である。私はだいたいカナでも英語でも秒7-8文字くらい打つ。政子の場合も、カナ入力の方が速いといえば速いのだが、政子は両手の中指1本ずつで、のんびり打ち込むので、どっちみち、ゆっくり入力である。
 
なお、予備登録は急遽、UTPのサイト、及びローズ+リリーの公式サイトにも入力フォームを作り、オンラインでも登録できるようにした(携帯のメールアドレスで認証する方式にして、スパム登録や二重登録を防止)。
 
この結果、横浜・大阪での用紙による登録と、オンライン登録とを合わせて9月末までに20万人の登録者があった。
 
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ローズ+リリーのファンクラブは年末までは「準備期間」の名目で無料運用し、1月以降の継続を望む場合は会費の納入が必要という方式にした。サービス内容としては、会員証の発行、会員限定コンテンツの公開、定期メールなどで、12月にはローズ+リリーの写真入りクリスマスカードを送付、そして来年の春以降ローズ+リリーのライブでのファンクラブ先行予約を行うことも予告していた。
 
(但しファンクラブで売るのは全体の2割以下で、座席もぴあなどと対等に分けるので、ぴあでも最前列が取れる可能性があることを断っている)
 

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花枝はファンクラブの活動をしていく上で、こういうことができないかという要望を募集した。その結果、年4回くらいでもいいから会報を出して欲しいという声がひじょうに多かった。最近はネット上の限定ページやチケット優先確保だけをサービス内容にして会報は発行していないファンクラブが、アイドル系を中心に多くなっているが、やはり紙の会報を求める声も強いようである。
 
花枝はこの会報の作成について、ローズ+リリーの最新情報をいつもレポートしてくれている《千葉情報》の発信者、琴絵・仁恵のふたりに接触して打診した。するとふたりは、一般向けにも充分な情報を流し続けることを条件に会報の編集を引き受けてくれることになった。(この件に関して、ふたりが来年入社する予定の★★チャンネルおよび親会社の★★レコード側の承認も取れた)
 
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なお、ファンクラブの会員番号は一般の人には1001番から出すことにした。そして1番はマリ、2番はケイということにした。
 

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さてローズ+リリーの福岡公演にゲストで出てくれたバレンシアは公演の4日後、9月4日の水曜日にデビューCDが発売になった。私は名目上はこのCDの制作には関わってないことになっているのだが、一応事務所の先輩という立場でデビュー曲発表記者会見には同席して、色々コメントをしておいた。
 
彼女たちは週末の横浜と大阪のローズ+リリーのライブにも参加した後、9月いっぱい全国のライブハウスをキャンペーンで回ることにしており、それには窓香が帯同することになっている。
 

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そのバレンシアの発売日翌日。私は月末に予定しているKARIONのアルバムの件で打ち合わせがあるのでと言われて出て行ったのだが、場所が写真スタジオだというので、何だか嫌な予感がした。
 
取り敢えず完成して既にプレスに回している音源を聴かせてもらう。みんな出来映えに満足している感じだ。
 
「まあ、そういう訳で今日は午前中、このアルバムに封入するミニ写真集用の写真を撮ろうと」
と畠山さん。
 
「わあ、みんな頑張ってね」
と私は言ったのだが
 
「蘭子も頑張ろう」
と小風に言われてしまう。
 
「やはりそうなるのか」
「顔は出さないからさあ」
「うむむ」
 
という訳で私も振袖を着せられた。着付けをしてくれたのは畠山社長の妹さんで都内で美容室を開いており、しばしば∴∴ミュージックのスタイリスト的な役割もしている。私も6年来のお付き合いである。
 
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着た振袖の色は、和泉が赤、小風が黄色、美空が青、私はピンクであった。
 
私は身長が166cmほどあるが、和泉も165cmの長身なので、並ぶとほとんど変わらない感じである。小風−和泉−私−美空、と歌う時にいちばん自然な並びに並んでの写真も撮ったが、長身の2人が中央、150cm台の小風と美空が脇にという構図は、とても美しくなる。(後で編集で私の顔はマスクしてもらう)
 
なお、私がKARIONを辞退した後に一時加入したラムは170cmを越える長身だった。
 
ひとりずつの写真も撮ったが、私は後ろ向きの写真を掲載してもらうことにした。
 
午後からは菊水さんのスタジオに移動して、PVの撮影を行った。写真集にも写ってしまったので、PVくらいもうどうでもいいやという感覚である。しかし水沢歌月がKARIONのPVに出演するのは久々になった。
 
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トラベリングベルズのメンバーにも入ってもらって、実際に演奏している所を撮影した。私がキーボードを弾くので、ヴァイオリンについては、七星さんにお願いして出てきてもらい、ウィッグを付けて私のボディダブルを務めてもらった。
 
「すみませーん。詰まらない用事で呼び出してしまって」
「いいよ。ちゃんとその分のギャラはもらうしね」
 
と言って七星さんは笑っていた。七星さんは身長160cmくらいなのでヒールの高い靴を履いて私との身長差を調整し、吹き替えを務めてくれた。
 
なおヴァイオリン奏者の近景はあらためて私が同じ衣装・ウィッグを着けて別途弾いて撮影する。ただし、顔と指は写らないようにしてもらった。指は顔と同じくらい表情があるので、指を見たら私の指であることがバレてしまう。
 
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ひととおり撮影が終わり、映像を確認しながら休憩する。トラベリングベルズの5人はお疲れ様でしたということで解放し、KARIONの4人と畠山さんに七星さんで、しばしお茶を飲みながら話をする。
 
「でもとうとう蘭子ちゃんが写真にも写ってくれて僕は嬉しいなあ」
などと畠山さんは言っている。
 
「ね、ね、この写真と見開きにしたりしない?」
などと言って、畠山さんは自分のパソコンの中から一枚の写真を取り出す。
 
「うっ」
「おお、可愛い!」
「何だか懐かしい〜」
 
それはKARIONのデビュー前に、私たち4人で撮った写真である。4人ともヒラヒラした感じのドレスを着ている。
 
「あ、今回の振袖と同じ配色じゃん」
「ほんとだー」
 
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写真の中でも、和泉が赤、私がピンク、小風が黄色、美空が青を着ている。並んでいる順序も、小風−和泉−私−美空 である。
 
「何も考えずに衣装を選んだけど、やはりこの4人、こういうイメージなのかね〜」
と畠山さんは感心していた。
 
七星さんも写真を覗き込んで
「可愛い。ちゃんと冬ちゃんも女の子してる」
などと言っている。
 
「まあ、普通に女子高生にしか見えませんよね」
と小風。
 

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そんな話をしていた時、七星さんの携帯のバイブが鳴った。
 
「あれ、繁ちゃん(鷹野さん)だ」
と言って電話を取る。
 
「はい」
「・・・えーー!?」
 
「どうしました?」と私が訊く。
「繁ちゃん、急病だって」
「えーーー!?」
 
私も驚いた。
「病状は?」
「それが、手足口病らしい」
「・・・あれ?大人でも罹るんですか?」
 
私はてっきり子供の病気だと思い込んでいた。
 
「ああ。大人でもやるよ。私も大学生の時にやったから」
「へー!」
「どうしよう? あれ治るまで一週間掛かる」
と七星さんは本当に困っている感じ。
 
私は電話を代わり、直接本人から病状を聞いた。取り敢えず医者からはできるだけ他の人との接触を避けるよう言われたらしい。お母さんが来て、取り敢えずしばらく御飯とかの世話はしてくれることになったらしい。
 
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「分かった。代理の演奏者は何とかするから、休んでてください」
「ごめーん」
 
と鷹野さんは本当に申し訳ないという感じであった。
 

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さて。鷹野さんは公演でヴァイオリンとベースを弾く。ひとりでこの両方が弾ける人が簡単に確保できるとは思えないから、2人の代理演奏者を見つけなければならない。日数が無いから、できたらローズ+リリーの曲をよく知っている人が良い。
 
ヴァイオリンは何とかなりそうな気がする。ヴァイオリン奏者には初見に強い人が多い。やはり問題はベースだ。
 
最初に考えたのはローズクォーツのマキだった。が即否定した。彼ならローズ+リリーの曲は全部弾ける。が困ったことに、土曜日はローズクォーツが出演する「しろうと歌合戦」の生放送がある。時間帯も重なっているので彼を使うことはできない。
 
次に考えたのはバレンシアのベース奏者・愛好(あいす)だ。どっちみち一緒に行く。ベース奏者が必要になるのは、ライブの後半だから、ゲストコーナーで出てきた人が、そのまま後半のライブに居残りするのは演出上もそう大きな問題は無い。しかし私は否定した。これが一週間くらい時間があればいいのだけど、公演が土曜日で今日は木曜。つまり1日しか時間が無い。その1日で、11曲を覚えるのは、少々できる人でも至難の業である。バレンシアの練習を見ていて愛好(あいす)の譜読みはあまり速い方ではない気がしていた。
 
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シレーナ・ソニカの穂花も考えてみた。実力は充分だし初見にも強い。大会場でのパフォーマンスは未知数だが度胸はありそうだ。しかし、彼女を使うには《鈴蘭杏梨》問題を考慮しなければならない。できたら避けたい。
 
私はスイート・ヴァニラズのSusanに頼めないかと思い、電話してみた。彼女は初見に強いし、セッションセンスも抜群である。
 
「おはようございます」
「おはようございます」
と挨拶を交わして、事情を説明した上で都合を訊いてみた。
 
「いつ?」
「今度の土日なんですが」
「ああ、ごめん。日曜日はライブハウスの出演がある」
「ああ、そうでしたか。済みませんでした」
「うん。ごめんねー」
 
私は悩んだ。nakaさんも考えたが、今度の土日はワンティスの録音が入っていたはずだ。トラベリングベルズのHARUさんも一瞬考えたのだが、今週末は妹さんの結納があると言っていた気がする。他にも何人かの知り合いのベース奏者を考えてみたが、やはり1日で11曲覚えてもらわないといけないというハードルが高すぎる。これはと思った人3人に電話してみたら全員土曜か日曜のどちらかがふさがっていた。私はいっそ土曜と日曜で別の人を使うか?というのまで考え始めた。
 
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その時、和泉が訊いた。
 
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