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■夏の日の想い出・4年生の夏(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2013-07-05
 
2013年5月1日、ローズクォーツの新譜『魔法の靴/空中都市』が発売されたが、私はこの曲の新曲発表記者会見は、ちょうど5日の仙台ライブ準備で多忙であったので、それが終わった5月6日に開かせてもらった。
 
私と花枝・氷川さんの3人での会見であったが、この席で私はローズクォーツを取り敢えず7月から来年3月までの半年間、お休みすることを明らかにした。
 
「大学の卒論をまとめるのに、どうしても時間が足りないので、大変申し訳ないのですが、お休みさせて頂きます」
 
「ケイさんがお休みするという場合、ローズクォーツ自体の活動はどうなるのでしょうか?」
 
「伴奏系のお仕事は元々私抜きで行っておりましたので、今まで通りです。私抜きの状態、いわゆるローズクォーツ−−(マイナスマイナス)で、今仕事の話が出ているのですが、これは来月発表になるかと思います」
 
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「ボーカルが入る形式のお仕事は?」
「ボーカルも入る形式のものについては、基本的には断りますが、どなたかにピンチヒッターをお願いする場合もあります」
 
「ローズクォーツの新譜もそれまで休みですか?」
「通常のシングル、アルバム、またRose Quarts Plays シリーズ全てお休みになります。特に Plays シリーズはマリも参加しますが、マリも私同様に卒論で忙しいので」
 
「その間、マリ&ケイの作曲活動の方はどうなるのでしょうか?」
「そちらもできる限り休ませて頂きますが、どうしても必要な分は未発表の既存曲の手直しなどで対応させて頂く場合もあります。実は未発表の既存曲は100曲以上あるので」
 
と私が言うと、記者席は結構ざわめく。
 
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「鈴蘭杏梨さんもお休みですか?」
と質問が飛ぶ。大胆な質問だ。
 
「それは鈴蘭杏梨先生に訊いてください」
と私が笑顔で答えると、記者席から忍び笑いが漏れる。
 
「でも鈴蘭杏梨先生が楽曲を提供している kazu-mana はみどりさんが妊娠のためしばらく休養ですし、槇原愛ちゃんも大学受験のため休養ということなので、きっと鈴蘭杏梨先生もお休みなのではないでしょうか?」
 
結構な数の記者が頷いている。
 
「ローズ+リリーの活動もお休みですよね?」
「はい、そうなります。ふたりとも卒論で手が空かないので。ただ卒論の提出が12月になりますので、それ以降は時間が取れたら何かする可能性もあります」
 
「ローズ+リリーのライブツアーが7月から9月に掛けて予定されていたと思うのですが、そちらはどうなりますか?」
「そちらは元々予定が入っていたものなので実施します」
 
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「ローズ+リリーの来月のベストアルバム、7月のオリジナルアルバムは発売されますか?」
 
「ベストアルバムの方は既存音源を使用し、若干のリミックス行うだけですので、こちらの作業はほとんど発生しません。オリジナル・アルバムについては6月までに作業を完了しますので、ちゃんと発売します。その他にこれも6月中に作業を終える予定ですが、8月にシングルを発売するかも知れません。但しアルバムの作業がずれ込んだ場合は春に延期する可能性もあります」
 
「気が早いとは思うのですが、サマーロックフェスティバルに関してはどうでしょう?」
 
「ローズクォーツ、ローズ+リリーとも、サマーロックフェスティバルの話はまだ頂いておりませんし、そもそもアーティストが決定するのは来月ではないかと思うのですが、仮の話として、こう考えています」
 
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と言って、私は予定を公表する。
 
「どちらにもお声が掛からなかったら、そもそも出ません」
記者席から笑い声がする。
 
「ローズクォーツだけにお声が掛かった場合は、そのステージだけ歌わせて頂きます。これは私ひとりの参加になると思いますし、音源使用が禁止でマリのボーカルを録音から流すことができないので、デュエット曲は歌えないことになります」
 
実際問題としてそういうことになると、選曲が非常に難しくなる。ローズクォーツの曲で売れている曲のほとんどが、私とマリで歌っているか、多重録音で私自身のデュエットにしているかである。しかしこの件に関しては記者さんたちは聞き流している雰囲気だ。このケースは有り得ないと思っているのだろう。
 
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「ローズ+リリーだけにお声が掛かった場合は、初めての正式出演ということにもなりますし、これまで何度もお声を掛けて頂いたのを断っていたのが申し訳ないので、マリとふたりで参加させて頂きます。この件についてはマリ及びマリのお父様の了承済みです」
 
これは結構記者席がざわめく。
 
「ローズクォーツ、ローズ+リリーの双方にお声が掛かった場合は、両方出るとなると、私もさすがに練習も含めた負荷が大きすぎるので、ローズ+リリーのみに出演させて頂き、ローズクォーツには代替ボーカルをどなたかにお願いすることを考えています」
 
「代替ボーカルはどなたになりますでしょうか?」
「サマフェスのお話を頂いた後でそれは検討します」
「やはりデュオの歌手でしょうか?」
「さあ、それはその時になってから考えます」
「女性歌手ですよね?」
「それは当然そうなります。男性であっても女性の声が出る人なら問題ないですけど」
 
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と言うと記者席は沸く。
 
実は鈴鹿美里のふたりに歌ってもらうことが一昨日決まったのだが、これは今はまだ発表できない。
 

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5月は慌ただしく駆け抜けていった。
 
ローズ・クォーツ・グランド・オーケストラの作業、およびアルバム作成、ローズ+リリーの『Flower Garden』の制作、KARIONの2つのシングル(7月と11月に発売予定)と5周年記念アルバム『三角錐』の制作、槇原愛の休養前ラストシングルに関する作業、ワンティスに関する作業、田中鈴厨子さんのリハビリに関する作業、などが並行して進む中、それらの合間のわずかな時間を使って、卒論のプロット作りに励んでいた。
 
『Flower Garden』の制作は5月23-24日に『あなたがいない部屋』『夜宴』を私と政子の2人だけで演奏して収録し、残りはタイトル曲の『花園の君』のみとなる。『あなたがいない部屋』は高校の時に雨宮先生に編曲して頂きデモ音源としてレコード会社などに売り込みしたものであるが、今回雨宮先生は新たなアレンジをしてくれていて、当時は入っていなかったウィンドシンセとかリコーダー(又はファイフという指定)などという楽器が加わっている。幸いにもウィンドシンセは私が吹けるし、リコーダーは政子も吹けるので、無難に収録を終えることができた。『夜宴』で政子はグロッケンを弾いた。
 
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どちらもそう難しくない曲なので、収録したその日の内に、私はこの2曲の仮ミクシングをしておいた。
 
翌25日、私は夕方密かに和泉と会い、以前から言われていた『Flower Garden』
を少し聴かせてという話に応じて、ここまでの仮ミクシング状態の曲を聴かせた。
 
「何これ?アルバム作ってたんじゃなかったの?」
と和泉は言った。
 
「そうだけど」
「これ、シングルを10枚くらい作ったんじゃない?」
「そのくらいの手間暇は掛けたね」
 
和泉は何だか悩んでいるような雰囲気であった。
 
「これコピーもらってもいい?」
「和泉ならいいよ。小風と美空まではいいけど、まだ他の人には聴かせないでね。この段階で聴かせるのって、スッピンを晒すようなものだからさ」
 
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「TAKAOさんと福留さん、畠山さんには聴かせていい?」
「そうだなあ。そこまではいいことにするか。でもそれ以上は勘弁して」
「分かった」
 
それで私はmp3をUSBメモリーにコピーしてあげた。
 

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5月27日。政子は卒論のプロットを完成させ、すぐに川原教授に見せる。教授は政子の「特殊事情」に配慮してすぐにそのプロットを審査してくれて翌日朝、直接政子に電話して「OK」の返事をしてくれた。それで政子はお父さんにそれを報告し、政子の08年組ジョイントライブへの出場が承認された。
 
実際に政子がライブに出ることは29日に発表されたのだが、とにかく出場確定した28日の夜(正確には29日の0時〜8時)、私と和泉・光帆、EliseとLonda、及び★★レコード関係者が集まってジョイントライブの進行に関する打合わせを行った。途中でダウンして寝てしまう人も出る中、私・和泉・光帆・Londaは完徹で計画をまとめあげた。
 
Eliseが途中で寝てしまって朝爽快に目覚めたので、そのEliseが運転する車でLondaは帰宅すると言っていたが、私と和泉・光帆の3人は仮眠室でいったん仮眠させてもらうことにした。光帆は11時半にはテレビ局に行かなければならないので起こしてもらうよう頼んでいた。和泉は9時からラジオ局の仕事があったのだが、さすがに無理なので、代わりに小風に行ってもらうことにして電話連絡していた。
 
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仮眠室はひとつの部屋にベッドが4つあるので、私と和泉と光帆の3人で使わせてもらい、氷川さんたちは別の部屋で仮眠するということだった。
 
「疲れたけど、何とかまとまったねー」
「みんなお疲れ様−」
 
「そうだ、冬、私決めたよ」と和泉。
「ん?何?」
「KARIONの制作中のアルバムだけどさ、作り直す」
「へ!? それかなり制作進んでたんじゃないの?」
「録音はコーラスとパーカッションを除いて全部終わってた。でもローズクォーツのあのアルバムを聴いたら、恥ずかしくて出せないよ。だから発売も延期」
 
「何、何?冬たち、そんな凄いの作ったの? 私にも聴かせてよ」
と言うので、光帆にも1個コピーしてあげた。光帆はそれを聴きながらすぐに眠ってしまった!
 
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私と和泉は小声で会話を続けた。
 
「編曲をやり直す。というか、実際問題としてあまり編曲という感じのことはしてなかったからさ。ボーカルはパート別の音をちゃんと指定していたけど、楽器はスコア譜も書かずにギターコードだけで演奏は各自に任せてたもん。それをまともに編曲してアレンジ譜を作る。歌月にちょっと頑張ってもらう」
 
「ああ、水沢歌月さん、たいへんそう」
 
光帆は寝ている感じではあるが念のため、私たちは「水沢歌月さん」みたいな言い方をしていた。
 
「それから、曲目も検討しなおしてたんだけど、『月虹』『愛のトッカータ』
2曲は残すけど、他の4曲は外す。代わりに新たに4曲書く。TAKAOさんたちにも話したんだけど、向こうも『君の背中』『最後の微笑み』は残すけど、他の曲は外して、新たに数曲書くと言ってる。これを6月中にやる」
 
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「和泉も歌月さんも、今卒論のプロットまとめてる最中じゃないの?4曲も書けるの? それすごく上質な曲を4曲作るってことでしょ?」
 
「そう。シングルで出しても最低ダブルミリオンを狙えるような曲をね」
「きゃー。大丈夫?」
 
「私ちょっと旅行に行ってくる。社長にわがまま言って、6月5日から11日までの予定を全部キャンセルした。一部は小風や美空に代行してもらうけどね」
 
「どこ行くの?」
「分からない。風の吹くまま気の向くまま」
 
「それで詩を書いてくるのね?」
「うん。少なくともマンションに籠もっていい詩が書けるとは思えないから」
 

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私の多忙状態は6月の前半も続き、仕事が深夜に及ぶことも幾度もあった、というかジョイントライブの件に関する事前準備は、メンバーのスケジュールが深夜しか空いていないので、わざわざ深夜に会議や代理リハーサル等が設定されていた。(和泉は1回目の代理リハーサル(6/04)と2回目の代理リハーサル(6/14)の間の 6.05-11 に旅行に行ってきた)
 
そんな中、6月9日にはローズ+リリーのベストアルバムの収録曲をテレビの1時間枠で一挙放送などという企画があった。そして6月12日には『Rose Quarts Plays Easy Listening』の発売記者会見を行った。私とタカ、及び指揮者の渡部さんが会見に出席した。
 
「ポール・モーリア・グランド・オーケストラを思わせるサウンドですね」
 
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一部の曲を流したので記者から声があがる。
 
「ポール・モーリアのヒット曲を4曲『エーゲ海の真珠』『恋はみずいろ』
『オリーブの首飾り』『恋人たちのバラード』とカバーしています。そもそも私の楽曲アレンジの原点はポール・モーリアにあるんです。中学1年の時に伯母から大量にポピュラー音楽のLP/CDを頂きまして。その時ポール・モーリアのLP/CDが段ボール箱に2箱近くありまして。それを聴いて感動して、私各々の曲でどの楽器がどこを担当しているのか、スコアに書き出してみたんですよね。それが今、私が色々な楽曲を編曲をする時の基本になっているんです」
 
「伯母さんって、若山鶴音さんですか?」
「そうです。鶴音伯母は、若い頃は民謡だけじゃなくて、ロックから映画音楽やイージーリスニング、ラテン音楽から中国音楽・韓国音楽、ロシア民謡からアフリカ音楽・中東音楽まで実に様々な音楽を聴いていたそうです。で、その時聴いてたLPを大量に私の所に送ってきた訳でして。最近買った民謡のCDを収納する場所が無くて困ってたので助かったなんて言ってました」
 
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記者席から少し笑いが漏れる。
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夏の日の想い出・4年生の夏(1)

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