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■夏の日の想い出・花の咲く時(3)

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「さすがに時間的に無理です」
「名前だけ冬ちゃんの名前出して実際のお稽古は師範代の人に任せるとか」
「それは無責任です」
「でもその手の教室ってよくあるよね」
「あるある」
 
「でも、私、大学卒業したら、名前あげるからね、と言われてます。もらっても使わないのに」
「あはは、それは折角だから、もらっておくといいよ」
 

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7月17日。槇原愛の<休業前ラストシングル>『お祓いロック』(c/w光の舞・遠すぎる一歩)が発売された。
 
事前の「槇原愛がクビになる?」騒動、そしてそれを受けての愛の強気の記者会見(愛フリークとアンチ愛を同数程度生み出した)が話題になっていたこともあり、いきなり初動が5万枚来た。(槇原愛の過去のシングルは最高で1.2万枚)レコード会社が今回は絶対来るとみて最初から10万枚プレスしておいたのが当たったのであるが、初動5万という数字を見てレコード会社は20万枚の追加プレスを決めた。
 

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ローズ+リリーの『Flower Garden』は本当にひとつひとつの曲がしっかり作りこまれていて、各楽曲のクォリティが高いことから、FMでもたくさん掛けてもらい、CD/DLもどんどん売れた。発売翌週には100万枚/DLを突破。気の早い人には今年のRC大賞確実などと言っている人たちもいた。
 
一方、08年組のジョイントCD『歌姫』も物凄い勢いで売れ、あっという間にミリオン到達。先の『SEVEN』と合わせて、08年組の強さを印象付けた。
 

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KARIONのアルバム「作り直し」作業は和泉が会見でも言ったように6月いっぱい掛けて編曲の見直し、一部曲目自体の入れ替えを行い、ひとつひとつの曲を洗練させて行った。実際問題として、アルバムに入れる予定だった12曲(泉月6曲・福孝6曲)の内、8曲を入れ替えた(外した曲は来年のアルバムあるいはどこかのシングルに入れる)。
 
福留さん・TAKAOさんも、ローズ+リリーのアルバムの仮音源を聴き、けっこう闘争本能を掻き立てられたようで、非常にクオリティの高い曲を作ってくれた。和泉は「マリちゃんには負けん」と言って無茶苦茶リキが入っていて、発想を得るために一週間の旅行に行って来て、たくさんの詩を書いてきた。その中から特に出来の良い詩を数点選び、親戚が住職をしているお寺の薬師堂に籠もって校正し言葉を洗練させた。そして私が書いた曲にも色々注文を付け、高い水準のものを求めた。
 
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また最終的に、作曲はこの2つのペアだけでは間に合わないので応援をお願いすることにした。櫛紀香さんにも声を掛けて詩を提供してもらい、TAKAOさんが煮詰まって(誤用)いたので、SHINさんが曲を付けた。なお、SHINさんが作曲してもクレジットは「作曲:TAKAO」とする。この2人は実は作曲や編曲を共同で行っており、印税も山分けしている。
 
編曲も凝ったものになっていた。今回の編曲は全曲を私と和泉・TAKAOさんの3人で進めたが、演奏陣がトラベリングベルズのメンバーだけでは足りないので、応援をお願いした。『Flower Garden』にも参加してもらった、ヴァイオリンの松村さんにもお願いしたが、私はフルートを吹いてもらう人としてやはりこの人しかいないと考え、七星さんにお願いした。
 
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最初七星さんに自分が関わっているユニットの音源制作に協力して欲しいと言ったら、てっきりマリ&ケイ・ファミリーの誰かと思ったようで、実はKARIONだというのを打ち明けると、仰天された。
 
「冬ちゃん、KARIONの何なの?」
「KARIONの4人目のメンバー《蘭子》で、KARIONのサブリーダー。トラベリングベルズの正キーボード奏者兼ヴァイオリニスト。そして水沢歌月です」
「えーーーー!?」
 
そもそも「サマーガールズ出版」という会社を作ってUTPとはローズ+リリーのライブ活動やメディア出演に関する委託契約のみ締結したのは、私自身がローズ+リリーとKARIONの両方に関わっていく上で、契約上の問題が生じないようにするためであったことまで話すと、更に驚かれた。
 
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「関わっている人みんなの利害が一致したんです。畠山さんは水沢歌月が欲しい。津田さんはローズ+リリーが欲しい。私とマリは専属契約ではなく委託契約にすることでマイペースで活動できる。町添さんは水沢歌月もマリ&ケイもローズ+リリーも全部欲しい。そしてこういう枠組みを作ることで、ローズ+リリーは音楽制作活動の資金に余裕がでるし、出資した各社に色々便宜をはかってもらえる。そして各社は、ほぼノーリスクで利益を享受できる。サマーガールズ出版は無借金経営なので倒産の可能性は限りなくゼロに近いですし」
 
「確かにそれは全員の利害が一致したかも知れないけど、ひとつ大きな問題がある」
と七星さん。
 
「はい」
「冬ちゃんの負荷が無茶苦茶!」
「あはははは」
 
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「つまり、冬ちゃんって、ローズ+リリー、ローズクォーツ、マリ&ケイ、鈴蘭杏梨、水沢歌月、KARION、トラベリングベルズをやりながら、大学生もしてるんだ?」
「えっと・・・そんなものかな? あ、もうひとつロリータ・スプラウトなんてのもありますけど。あと現在開店休業中だけど、民謡も」
 
「ロリータ・スプラウトはどう関わってるの?」
「ロリータ・スプラウトはローズ+リリーの変名です。私とマリの歌唱ユニットです」
「へ? だってロリータ・スプラウトって4人じゃないの?」
「和音を自動生成してひとりでデュエットになるソフトで二重化してます」
「えーー!?」
 
「正確にはデュエットをクヮルテットにするソフトなんですけどね。ローズ+リリーがまだ受験勉強中で表立って活動できなかった時、政子が歌いたい、CD出したいと言ったので、じゃバレないようにCD作っちゃおうかと言って始めたのがロリータ・スプラウトです。まあ、ローズ+リリー・タイニー・スプラウトを略してロリータ・スプラウトなんですけどね。一応政子のお父さんの承認は得てます。そしてサマーガールズ出版の目的のひとつはロリータ・スプラウトの制作費を出して印税を受け取ることだったんです」
 
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「ってことはローズ+リリーって、全然休養してないじゃん!」
「実はそうですね」
 
「ね、冬ちゃんって、やはり5人くらい、いや10人くらいいるんでしょ?もしかしてマリちゃんも3人くらい居ない?」
 
「あはは、昔そういう説がありましたね」
と言って私は取り敢えず笑っておいた。
 
「彼氏とのデートの時間無いんじゃない?」
「そうですね。今年はまだ1回しかデートしてないかも」
「彼氏が可哀想!」
「あはははは」
 

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「ところでケイが水沢歌月だってこと、マリちゃんは知ってるの?」
「言ってませんけど知ってると思いますよ」
と私は答えた。
 
「ふーん」
「政子が気付かない訳ありません」
「ふふふ。信頼してるんだね」
「ええ。私と政子は夫婦ですから」
 
七星さんは「ぶっ」と吹き出した。
 
「結婚したの?」
「結婚式挙げました。時々付けてるお揃いのブレスレットが実は結婚指輪代わりです」
 
「えーーー!? じゃ、各々の彼氏との関係は?」
「そちらともいづれ結婚します。そちらは法的に。そして指輪をもらいます」
「それって?」
「はい。重婚です」
「呆れた!」
 
「七星さんも近藤さんと結婚しちゃいましょうよ。面倒なら入籍無し、同居無しなんてのでもいいじゃないですか。指輪だけ買ってもらって」
 
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「あ、それいいな」
 

そういう訳で『三角錐』制作の音源作りは「拡大版トラベリングベルズ」で進められていった。
 
《リズミカル・アレンジ》では基本的にはTAKAOさんのギター、HARUさんのベース、DAIさんのドラムス、私のキーボードに和泉のグロッケンでリズムセクションの音を録り、これに、私と松村さんのヴァイオリン二重奏、MINOさんのトランペット、SHINさんのアルトサックス、七星さんのフルートといった楽器を重ねる。曲によってはヴァイオリンを多重録音して四重奏にしたり、クラリネット(私)・テナーサックス・ウィンドシンセの類(SHIN・七星)、トロンボーン(MINO)やパーカッション類も加える。
 
これだけ楽器を使うと、従来のKARIONには無かった非常に重厚なサウンドになる。
 
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これに、和泉・小風・美空・私の歌を入れて、更にコーラス隊のコーラスを加えるのだが、歌とコーラスは別録りになる。実際、小風・美空は「卒論書いてて」と言って、休ませている。
 
七星さんから言われた、
「こないだの『Flower Garden』ではちょこっとしか吹いてなかったから分からなかったけど、冬ちゃん、フルートはそれほどでもないけど、クラリネットは凄くうまいじゃん」
 
「ありがとうございます。クラリネットは中学の時からやってますから」
「やはり若い内に覚えた楽器は違うんだろうねぇ」
 
「冬をトラベリングベルズの正クラリネット奏者に任命しようか?」
と和泉が言うが
「勘弁して。ピアノとヴァイオリンで手一杯。多重録音の回数をあまり上げたくない」
と言って逃げておいた。
 
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《アコスティック・アレンジ》では、HARUさんのウッドベースと、TAKAOさんのアコスティックギター、私のグランドピアノ、和泉のグロッケンという形でリズムセクションを録り、私と松村さんと七星さんのヴァイオリン三重奏、七星さんのフルートと私のクラリネットにSHINさんのサックスといった木管セクションを重ねている。曲によってはヴァイオリンを2回あるいは3回と重ねて、ストリング・オーケストラっぽくしたものもある。ドラムスのDAIさんとトランペットのMINOさんはお休みである。
 
「その日出番が無かった人にもちゃんと演奏料はお支払いしますのでご心配無く」
「いいんだっけ? ホントに何もしてないのに」
「音を出してなくても、トラベリングベルズの面々がそこにいる存在を感じて演奏してるんです」
「寝ててもいい?」
「どこかで映画でも見てきたり、彼女とデートしててもいいですよ」
「本当にデートしてこようかな・・・」
「どうぞ、どうぞ」
DAIさんは今年末に結婚予定である。
「鐘ちゃん(DAIさん)、あとでお土産の差し入れお願いね」
 
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『君の背中』『最後の微笑み』、『アメノウズメ』『恋のスカイダイビング』
『金の矢』はリズミカル・アレンジを基本とし、『僕の愛の全て』『明かりを消して』と『天女の舞』『月虹』はアコスティック・アレンジを基本としている。
 
和泉が旅行で壱岐に行き、塞神社の少し衝撃的な情景を見て発想した曲『アメノウズメ』は、踊りの女神であるアメノウズメを象徴するようにキーボードで多数の楽器の音を出してひじょうに華やかな曲に仕上がっている。
 
『Flower Garden』ではこういう所で多数の演奏者に頼んで生楽器を使ったのだが、逆にこちらは和泉の友人2人に箏を弾いてもらった他は、電子の音で生楽器っぽく演奏する道を選んだ。実際の録音作業では2台のキーボードを使用し、私と和泉で分担して弾いて録音の手数を減らしている。私も和泉も例えば「オーボエの音でキーボードを弾く」のではなく「オーボエを吹くかのようにキーボードを演奏する」テクを持っている。
 
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一方福留さんが3日間ボーっとしていた末に書いたという『僕の愛の全て』はアコスティックならではの、とても美しい愛の讃歌に仕上がった。この曲では和泉の友人が所属する大学の弦楽合奏団に特別参加してもらい、本格的なストリングサウンドをフィーチャーしている。
 
『Flower Garden』では私の個人的なコネをフル活用したが、『三角錐』では和泉の個人的なコネを結構活用した。
 

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《ロックアレンジ》と称して、TAKAOさんのギター、HARUさんのベース、DAIさんのドラムス、の3つの楽器のみのシンプルなサウンドにした曲も2曲(『君が欲しい』『君をゾーンプレス』)ある。
 
また普通に通常のトラベリングベルズ(ギター・ベース・ドラムス・キーボード、グロッケン、ヴァイオリン、アルトサックス、トランペット)で録ったものも1曲『魔法のマーマレード』ある。
 
一方で、リズム楽器を入れずに、私の電子オルガン(フルー管系の音)と和泉のグロッケンのみという《チャーチ・アレンジ》の曲『愛のトッカータ』が1曲。
 
更に《無伴奏》という曲を1曲『歌う花たち』設定した。これをアルバムのラストに入れる。ただし本当に無伴奏では歌いにくいので、歌唱収録用の伴奏を私のピアノで録っておく。
 
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冒頭曲については『アメノウズメ』か『僕の愛の全て』のどちらかという所まではすぐにしぼれたものの、どちらにするか、私たちはとても悩んだ。
 
私としては静から動に移るのが美しいと考え『僕の愛の全て』→『アメノウズメ』
という線を考えたのだが、和泉は先頭はやはり看板になる曲ということで、『アメノウズメ』が先頭で『僕の愛の全て』は真ん中付近に置くことを提案。
 
最終的には、TAKAOさんが、
 
「やはりKARIONの中核は森之和泉+水沢歌月なんだから、その曲を先頭に置くべき」
と意見を出して、『アメノウズメ』を先頭にすることが決定した。
 

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夏の日の想い出・花の咲く時(3)

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