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■夏の日の想い出・小6編(6)

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修学旅行を終えた週明け、ボクは協佳、有咲、夢乃と一緒にチアの練習を始めた。
 
「これやろうと思うのよ」と夢乃が携帯に入れた動画を見せる。
 
「何か格好いい子たちだね」と有咲。
「うんうん。衣装は安っぽいけどね」と協佳。
「Perfumeっていうんだよ。先月デビューしたばかりらしい。インディーズだけどね」
「へー」
「インディーズって何?」
「メジャーって呼ばれている大手のレコード会社以外のレコード会社からCDを出したってこと。今の曲は『スウィートドーナツ』、それから次の曲は『ジェニーはご機嫌ななめ』」
 
「あ、こちらの曲は聴いたことある。うちのお父ちゃんがCD持ってた。えっと、かなり昔のヒット曲だよね。名前は何て言ったかな・・・ジューシィ・フルーツだ!」
とボク。
 
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「ああ、誰とかのカバーって言ってたから、たぶんそれだよ」と夢乃。
 
「これ声を電気的に加工してるけど、本家のは裏声で歌ってたよ」とボク。
「へー」
「こんな感じ」
と言って、ボクはトップボイスでその歌を歌ってみせる。
 
「その声は初めて聴いた」と有咲。
「ソプラノボイスのひとつ上の声だよ」
とボクは普通のソプラノボイスで言ってみる。
「ただこんな感じで機械音声っぽい感じになるから、使い道が限られるのよね」
とトップボイスで言ってみる。
 
「そんな声まで持ってたのか!」と奈緒。
「歌詞覚えてるみたいだけど、この曲、けっこう聴いてたの?」と協佳。
「ううん。でも2〜3度聴いたかな。たしか2年くらい前」
「2年前に聴いた曲を歌えちゃう訳?」と協佳。
 
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「冬は1年以内に聴いた曲なら、たいてい歌えるよ」と有咲。
「すげー」
「ねえ、冬、今の振り付け踊れる?」と有咲は更に言う。
「うん」
 
と言って、ボクは『ジェニーはご機嫌ななめ』をトップボイスで歌いながら今見たPerfumeの振り付けで手足を動かしてみる。こちらはあまり動きの無い曲だ。
 
「すごーい」
「1度見ただけで踊れるって・・・・」
「冬はこれが得意なんだよ。冬、もうひとつの何とかドーナツも踊れるよね?」
 
「うん」
ボクは『スウィートドーナツ』を今見た振り付けで踊りながらふつうのアルトボイスで歌ってみせる。こちらは結構な動きがある。
 
「よくそんな一発で覚えれて、しかも踊れるね?」
「え? だってこれ今見たばかりだし」
「普通の人は10回見ても踊れないよ」
 
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「細かい所は少し違うかも。ボク、ダンスの要素に分解して記号的に記憶するから。ふつうのダンスの要素にない動きしてたら、そこが適当に似た動きに置き換えられてる可能性ある」
「いや、冬の動きでいいと思うよ」
「冬、それ2小節ずつくらいに切って踊れる?」
「うん」
「じゃ、みんなその冬の動きをマネしよう」
「よし、人間ダンスコピー機さん、お願ーい」
 
そうやってその日はボクが少しずつ踊ったのを見て、他の3人がそれを真似する形で練習を進めた。
 
音楽はPerfumeのCDを調達しようとしたものの売っている所を見つけられずに困ってしまった。そこで、夢乃が持っていた映像をSDカードごと借りてボクが自宅に持ち帰り再度見てから譜面に起こしてみる。『ジェニーはご機嫌ななめ』
に関しては父の持っているジューシィ・フルーツ版のEPレコードを借りて、そちらを聴きながら譜面を起こした。
 
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ジューシィ・フルーツの4人が各々ギターを持って踊るような姿勢で並んでいるジャケ写が何となく格好良いな、という気がした。ああ、バンドとかも楽しそうだなという気分になる。
 
ボクは改めてその譜面を見ながらエレクトーンで弾き語りで歌い、それを姉に頼んで携帯で録音してもらい、それを夢乃のSDカードにコピーしてもらった。夢乃の映像がショッピングセンターでのキャンペーンライブを携帯で撮影したもの(違法とは知らなかったらしい)で歓声や店内放送まで入っているし音質もかなり悪かったので、ボクの演奏したものを流しながら踊ることにした。
 
(運動会前日になってからTSUTAYAで売っているという話を聞き込み、1枚買ってきたものの「ここまで冬ちゃんの歌で踊るのに慣れちゃったから、このままで行こう」ということになってしまった)
 
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その運動会が来る前に、合唱サークルの大会があった。ボクたち6年生にとっては最初で最後の大会になる。
 
参加人数は「40人以内」ということだったので、うちの学校は全員出場できる。ユニフォームは無いが、上は白っぽい服、下は青系統の膝丈くらいのスカートかショートパンツでお願いしますと言われた。
 
ボクはそれっぽいのを持っていなかったので母に言ってみたら、姉が「あ、私が適当なの貸してあげる」と言う。ボクは少し嫌な予感がしたのだが、一緒に姉の部屋に行ってみる。
 
「白い服はこれがいいと思うな」
と言って渡してくれるのは、姉が通学時に着ている白いブラウスだ。
「これ、ブラウスだけど」
「いいじゃん。冬以外はみんな女の子なんでしょ?女の子の服着ればいいじゃん」
「まさか下もスカートを穿かせようとか言わないよね」
「このスカート、たぶん膝丈くらいだよ。きれいな青でしょ」
「そうだね・・・」
「取り敢えず着てみない?」
「えーっと、ブラウスはまだいいとして、青いショートパンツとか持ってないの?」
「うーん。。。取り敢えず着てごらんよ」
「もう・・・」
 
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ボクは着ている服を脱いで、そのブラウスとスカートを身につけてみた。
「うん。可愛い。ちゃんと女の子に見えるよ」
「えーっと、女の子に見える必要無いんだけど。ねえ、ショートパンツ無いの?」
「だって、女の子の集団にひとり男の子が混じってたら変だよ。女の子で行こうよ」
「混じってるのは全然気にならないから」
 
「そうだなあ。仕方ない。じゃ、これ穿いてみる?」
と言って、姉は押し入れの奥の段ボール箱から、青いショートパンツを取り出してきた。
 
「ウェスト59だからさ。私にはもう穿けないから押し入れに入れてたんだよね」
「59なら大丈夫だよ。ボク57くらいだから」
 
スカートを脱いで穿いてみるとウェストが少し余るがこのくらいは問題無い。
 
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「そのスカートの方は大幅にウェストが余る感じだもん。こちら貸して」
「そっかー。ウェストが余りすぎるのは問題だよなあ。惜しい」
 

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大会は日曜である。当日姉から借りたブラウスにショートパンツを穿き会場に行く。ブラウスの下には姉のお勧めでベージュのタンクトップを着た。白よりアウターに響かない感じである。ショートパンツの下は、姉にさんざん唆されて、女の子パンティを穿いてしまった。姉はブラジャーも付けなよと言ったがそれは勘弁してもらった。
 
集合場所に行くと有咲が先に来ていたのでハイタッチしてからハグし合う。「今日は女の子で来たのね」と有咲。
「え?別に女の子じゃないよ」とボク。
「だって、これ女物のブラウスに、ショートパンツもレディスだよね。前の袷せが左前だし」
「うん。自分で白い服とか青いショートパンツ持ってなかったから、お姉ちゃんから借りてきた。ふだん学校に着て来る服もけっこうお姉ちゃんのだけどね」
「どうせならスカート借りてくれば良かったのに」
「なんで〜?」
 
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やがてメンバーが集まってくるが、スカート派とショートパンツ派が半々くらいの感じである。その内先生もやってきたが、ボクを見ると
「お、冬ちゃん、今日は女の子モードで来たね」
と言った。有咲がそばで笑っていた。
 
スカートの子とショートパンツの子が半々ならということで、アルトのショートパンツの子、アルトのスカートの子、ソプラノのショートパンツの子、ソプラノのスカートの子、というふうに並べてみたら結構きれいな感じになったので、その並びで歌うことになった。ボクも有咲もショートパンツなので並んで歌う。
 
会場外の公園で1度合わせてからステージ袖の方に向かう。出番は5番目なので早々に自分達の歌を歌ってから、他の学校の歌を聴くことになる。袖の方まで行った時は前の前の学校が歌っている所だった。
 
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「なんかうまいね」
「やっぱりこの春から練習し始めた私たちじゃかなわないなあ」
「ちょっと緊張しない?」
 
ボクはちょっとまずいなと思った。こういう場に慣れてない子ばかりなので、必要以上に緊張してる。
 
「倫代、今日は胸の目立つ服着てきてるね」
「ってか、白い服ってあまりなくてさ。これ一昨年着てた服を無理矢理着てきたから、結果的にこういうことになっちゃったのよ」
「でも胸大きいね〜、触っていい?」
「うーん、まあ冬ならいいか」
「わっ大きい!Cカップくらい無い?」
「冬も触っちゃうよ」
「どうぞ」
「うーん。絶望的に胸が無いね。お医者さん行って女性ホルモンの注射を打ってもらった方がいいかもよ」
 
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「何やってんの〜? おっぱいの触りっこ?」
「有咲もこれBというよりCカップ近くない? ブラジャーちゃんと付けた方がいいよ」
「あ、倫代の胸、私と同じくらいかなあ」
「他の子の胸も触っちゃおう」
 
「え、ちょっといきなり何よ?」
「おっぱいの触りっこ」
「よし、触っちゃえ」
 
「何やってんの?」
「あ、美蘭のはBくらいだよね」
 
「きゃー、何するのよ?」
 
という感じであっという間に、おっぱいの触りっこが伝染する。先生が
「あんたたち何やってんの? 静かにしなさい」
と注意した。
 
しかしこの騒動のおかげで、緊張はどこかに行ってしまったようだ。
やがて前の学校が出て行き歌い始める。
 
「なんか私たちの歌と大差無いよね」
「あ、今のところピアノさん間違った」
「前の子が間違うと私もなんか気楽になるなあ」とピアノ担当の美蘭。「よし、のびのびと歌うぞ!」と有咲。
 
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ボクは微笑んだ。
 
そして出番が来る。ステージに出て行く。美蘭がピアノの前に座る。先生が指揮台に就きタクトを振ると美蘭の伴奏が始まる。
 
「ときにはなぜか・・・・・」
 
ボクたちはこれまで練習してきた曲『気球に乗ってどこまでも』を歌う。合唱大会ではおなじみの曲らしく、プログラムを見たら、ボクたち以外にもこの歌を歌う学校があった。
 
ソプラノで絶対音感を持っている倫代がソプラノの並びの最後列中央に立ちしっかりした声で歌っているので、それに合わせてみんなも正しい音程で歌っている。ボクはアルトの最後列中央に立っていて、倫代の声を聞きながらアルトパートを大きな声で歌う。ボクは絶対音感は無いのだけど相対音感が凄く精密と言われてこの役を請け負っていた。他のみんなもボクの声を聴きながらしっかり合わせてくれる。これ、結構良い出来なんじゃない?とボクは思った。
 
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やがて歌い終わると、みんな満足そうな顔をしている。やはりみんな「よく歌えた」という気分になっている。そして2曲目『大きな古時計』を歌う。
 
昔から知られている曲ではあるが、昨年平井堅が歌ってあらためて話題になった歌である。「チックタック・チックタック」の部分がソプラノとアルトで輪唱っぽくなるようにアレンジしてある。1曲目がうまく歌えたのでこちらはみんなリラックスして歌うことができた。
 
そして終曲。先生が客席に向かって一礼し、袖に下がる。ボクたちもゆっくりと列になって下がる。そして袖に下がるとみんなで
「やった」「やった」と嬉しがってあちこちでハグし合った。ボクも有咲、倫代ほか5〜6人の子とハグした。
 
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先生も「騒がないで。さあ客席に戻るよ」と注意するものの、嬉しそうな顔をしている。
「でも、みんなよく歌ったね」と通路に出てから先生は褒めてくれた。
 
「なんか直前におっぱいの触りっこになったので緊張がほぐれたね」
「じゃ次から出番前に、おっぱいの触りっこする?」
「そのあたりは5年生たちに任せた」
「これ、うちのサークルの伝統になっちゃうの〜?」
 
この「伝統」は実際少なくとも3〜4年は続いたようで、ボクはちょっと責任を感じているのである。
 

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夏の日の想い出・小6編(6)

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