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■夏の日の想い出・君に届け(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2020-07-26
 
震災イベント直前の3月6日、私のマンションを氷川真友子課長と八雲礼江係長が一緒に訪れたのだが、2人が(氷川さんと礼江さんで)結婚すると聞いて私は仰天した。
 
「氷川さんがバイなのは知ってたけど、八雲さんはストレートかと思ってた」
と私は言った。
 
ここで言う“ストレート”とは、八雲礼江(戸籍上は礼朗)は戸籍上も男性で社会的にも男性で通っているものの、元々女性指向があり、性転換手術も終えていて肉体的にも女性なので、恋愛対象は男性なのではという意味である。
 
「基本的には私はストレートなんですけど、真友子は決断力とかもあって男らしいから、前からずっと好きだったんですよ」
と彼女は語る。
 

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「加藤さんには報告したんですか?」
「昨日報告しました。親には週明けに報告に行くつもりです」
「親御さんにも報告する前に、私の所に来られたんですか」
「ローズ+リリーにも影響が出るので」
 
「氷川さん、お仕事はどうなさるんです?」
「もちろん続けます。ただ、妊娠中はなかなか普段のようには動けないので、いろいろフォローしてもらうことになりました」
 
「ちょっと待って下さい。氷川さん、妊娠してるんですか?」
「予定日は9月です」
「誰の子供です?」
と私が聞くと
「私の子供です」
と八雲さんが言うので
「それはあり得ない。八雲さんも女性なのに」
「加藤部長は特に疑問を持たなかったようですよ。ああ、君は女装していても男性だもんねと言われました」
 
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次から次へ思いもよらない話が出てくるので私の頭の中では混乱に混乱が重なる。
 
「八雲さん、女装で加藤さんの前に行かれたんですか?」
「私が課長命令で、礼江には女装での勤務を命じました」
と氷川さん。
 
「へー!」
 

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「いや私は『妻として命令する。女装しなさい』と言われたんですけど」
「そうだったっけ?」
「それで男物の服は全部捨てられちゃったから男装勤務できなくなっちゃたし。私も妻の命令なら仕方ないので女装で勤務することにしました」
と八雲さん。
 
なんか楽しそうじゃん!
 
「八雲礼朗の名刺と社員証も捨てちゃったもんね」
「仕方ないから八雲礼江の名刺と社員証を使います」
 
この2人ほんとに楽しそうじゃん。
 
「昔、ダイアナ・ロスが所属していたスプリームスというアイドルグループが"Stop in the name of Love"という曲をヒットさせたじゃないですか。あれは男女が喧嘩して、男が『もう帰る』と言って、出ていこうとしたところで、女が"Stop! in the name of Love"と言って引き留めたらしいです。それを歌のタイトルにしちゃったんですね」
 
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「押してもだめなら引いてみな(**)、みたいな話ですね」
 
「だから、"Be woman! in the name of Love"ですね」
 
「なるほどー。でも私、八雲さんは女の格好で仕事すればいいのにと前から思ってましたよ」
と私も言った。
 
しかし八雲さんが10年以上にわたる仮面男子をやめたのはいいことだと思った。人は自分に正直な生き方をすべきだと私は思う。
 

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(**)『おしてもだめならひいてみな』水前寺清子の1968年のヒット曲。星野哲郎作詞・首藤正毅作曲。
 
星野がトイレの個室に入ろうとしてドアを押しても開かなかった。すると近くに居た掃除のおばちゃんが「押してもダメなら引いてみな」と言った。それを曲のタイトルに使ったのである。歌詞の上では「押す」「引く」は恋愛や仕事での機微のことを歌っている。
 
もっとも占い歴40年の私に言わせれば、恋愛もビジネスも引いたら終わり。押してもダメなら、もっと押せ、である。引いてしまうと、そのままサヨナラされる危険が高い。
 

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「でも加藤部長は礼江が性転換手術を受けていることを知らないもんだから、礼江の子供だというのを信じてくれましたね」
などと氷川さんは言っている。
 
「本当は誰の子供なんです?」
 
「私の子供ですよ。私が性転換手術を受ける前に冷凍保存していた精子で妊娠したんです」
 
「だったら妊娠は計画的なものですか?」
 
「礼江が性転換手術済みであることを知っている女子社員たちの多くはその説明で納得してくれました。課長の仕事があまりにもきついから、妊娠を理由に少し休みたいのだろうと思ってくれたようです」
 
「えっと、それで結局本当のところは?」
 
「複雑すぎて、私も分からなくなりました」
「実は私は本当に礼江の子供を妊娠している気がしてきて」
 
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などと2人は言っている。真相は今は言いたくないのだろうと思い、私もそれ以上は追及しないことにした。
 

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ともかくもそれで、仙台には氷川さんは行かないことにし、代わりに八雲さんが行くということで、私もその方針を承認した。どうもその話をしなければならないので、親にも報告に行く前に私の所に来たというのが実際のところのようであった。
 
「お住まいはどうするんですか?」
「真友子のマンションがとても便利な所にあるし広いので、私がそこに同居することにして、実は先月からもう一緒に暮らしているんですよ」
 
「じゃ既に実質結婚しちゃったんですね」
 
「ちなみに真友子が男役で私は入れられる専門です」
「男役楽しいです。女役はつまらないです」
「でもあまり激しい運動するとお腹の赤ちゃんによくないから、逆正常位とか座位とか、真友子の負担にならない体位でしています」
「でもお互いに指で相手の栗ちゃんを相互刺激するのが一番気持ちいいね」
「女同士っておっぱいの触りっこもできるのがいいよね」
 
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いや、別にそんな話は訊いてないのだが。
 
「ケイさんとマリさんも栗ちゃんの相互刺激が一番気持ちいいと言ってましたね」
「えっと・・・」
 
そのあたりの話はマリがかなりの人にしゃべりまくっている。実際、私とマリの関係では、ほとんどディルドーの類いは使用しない。マリは自分のヴァギナは基本的に男性との結合にしか使わないなどと言っている。私は入れられるけど!
 

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「週明けにも各々自分の親に報告して、一度両家で一緒に食事でもする予定です」
 
私は疑問を感じて質問した。
 
「氷川さんの実家に行く時、八雲さんはどういう格好をなさるんですか?」
 
「振袖でも着せていこうかなと思っているんだけど」
と氷川さんは言っている。
 
「つまり女装で実家に行くんですか?」
「うちの母には女装趣味の男性と結婚すると言いました。母は、あんたにはお嫁さんが必要だと思ってたよと言って笑って許してくれました」
 
「確かに、氷川さん、お嫁さんが欲しいって言ってましたね!」
 
「戸籍上は男で、実質は女だから、私としてはレスビアン婚できるのに入籍もできるから、ある意味理想の相手です。少なくとも私が主婦する必要無いし」
と氷川さん。
 
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「御飯とかは私が作るよと言ってます」
と八雲さん。
 
「実際この1ヶ月、礼江が御飯も作ってくれて、お弁当まで作ってもらえて助かってます」
と氷川さんは言っている。
 
「1人分作るのも2人分作るのも手間は変わらないし」
 
「取り敢えずうちの親には礼江は女装はしているけど、まだおちんちんは付いてることにしておきました。でないと妊娠を説明できないので」
 
「いろいろ工作が大変みたいですね!」
 

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「実は加藤部長には、課長の職を辞任したいと言ったんですけど。それは困ると言われたんです」
と氷川さんは言った。
 
「私も困ります」
 
「ひとつには、私がまだ課長に就任してから半年ちょっとでこんな短期間に辞められるのは困るという問題、ひとつは女性の役職者が妊娠に伴ってその職を辞すという事態は、男女雇用機会均等法違反として、労組から抗議されたり、当局に通報されたり、場合によっては報道機関から叩かれる可能性もあって、とても困るということでした」
 
「加藤部長の意見に賛成です。それに、ほんとに今、氷川さんが課長を辞めたら、代われる人がいませんよ」
 
JPOP部門の課長は、2007年6月から2016年6月まで9年間、加藤銀河が務めた後、森元晃嗣が2019年1月まで2年半務めたが過労で倒れる。その後、南頼高が5ヶ月間務めた後、昨年6月株主総会後の新体制で、氷川真友子が課長に就任している(南は制作部次長に昇格)。ここで氷川さんが辞任すれば、JPOP部門の課長(JPOP系のアーティストを統括する部門−年商百億円レベル−の実質社長のような地位)がコロコロ変わる異常事態となる所だ。
 
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「それで、取り敢えず、加藤と話し合った上で、こういうことを決めました」
と言って、氷川さんは説明した。
 
・ローズ+リリーに関する事項は、できるだけ秩父光恵にやらせる。秩父のヘルプに4月入社予定の新人だが、寺尾友紀を取り敢えずバイト待遇で出社させる(彼女は大卒予定で、この後は卒業式に出るだけらしい)。
 
・氷川は出産まで残業・休日出勤を原則として禁止。
 
・深夜作業が必要な場合、八雲礼江係長がフォローする。休日の仕事はできるだけ秩父・寺尾がおこない、彼女たちでは処理しきれない大きな判断や大きな額の決済が必要なケースは八雲がフォローする。
 
・仕事の内容によっては、まだ療養中ではあるが、森元元課長(制作部長付)がフォローする。人手が足りない場合は南次長もヘルプする。
 
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「南さんは彼自体にヘルプが必要だと思う」
と私が言うと
 
「同感です」
と氷川・八雲の2人とも言った。要するに南にヘルプしてもらうという状況は考えないほうがよい。
 

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なお、2人は結婚式は双方の親の承諾を取った上で、4月くらいに行い、披露宴はネット中継方式でおこなう予定だと言っていた。婚姻届けは今月中にも出すつもりだということだった。
 
(結果的に八雲礼江は戸籍上の性別を変更することができなくなる)
 
私はあらためて彼女たちを祝福し、御祝儀も渡しておいた。
 

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夏の日の想い出・君に届け(9)

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