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■夏の日の想い出・つながり(20)

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アクアは『ほのぼの奉行所物語』の撮影を7月上旬に終えた後、今年末に公開予定の映画『八十日間世界一周』の制作に入った。実際には6月下旬の段階でアクアは葉月・山村マネージャーと一緒に、中村監督と会い、簡単な打合せをした。
 
「このお話は知ってる?」
「何か気球に乗って世界一周するお話でしたっけ?」
「それは『気球に乗って五週間』と混線してるな」
「あれ?違いました!?」
 
「舞台は1872年、今から150年くらい前のイギリス。主人公は大金持ちの紳士、フィリアス・フォッグ。ロンドンの社交クラブで友人たちと話していた時に、『世界は狭くなった』という話題が出る。インドに鉄道が敷かれ、アメリカ大陸横断鉄道が敷かれ、スエズ運河が開通した。だから地球は狭くなったと言うんだよね」
 
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「ああ、そういう時代ですか」
 
「それでここまで交通が発達すればたぶん3ヶ月もあれば世界一周ができるのではないかという意見が出るんだけど、フォッグは『3ヶ月も要らない。もう少し短い80日で充分だ』と言う。それで賭けるか?みたいな話になり、フォッグは自分の発言を証明するため自分の財産の半分にあたる2万ポンド、これはだいたい5億円くらいかな、それを賭けることになる。残りの2万ポンドを世界一周の旅費に使うから、もし賭けに失敗すれば全財産を失うことになる」
 
「わぁ・・・」
 
「それで彼は今日は10月2日だから、80日後の12月21日午後8:45までに戻って来ることをクラブの仲間たちに約束し、雇ったばかりの召使いのパスパルトゥと2人で世界一周旅行に出かけるのだよ。イギリスから船でフランスに渡り、イタリアから地中海航路でエジプトへ。スエズ運河を通って更に航路でイギリス領インド帝国のボンベイへ。そこからインド鉄道でカルカッタへ。航路で香港、横浜と寄って、太平洋航路でアメリカのサンフランシスコへ。鉄道でアメリカ大陸を横断しニューヨークへ。そこから大西洋航路でイギリスへ」
 
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「でもやはり色々予定外のことが起きるんでしょう?」
「そうそう。それを金に任せて解決していく」
「なるほどー」
 
「ところがフォッグが大金を持っているのを見て、刑事のフィックスがてっきり彼のことを強盗犯だと思い込む」
「へー」
 
「それでフィックス刑事はフォッグの逮捕状を請求するんだけど、その逮捕状が届く前にフォッグたちは出発してしまう。それでフィックスもフォッグを追って世界一周することになる」
 
「費用はどうするんです〜?」
 
「どうするんだろうね。そして一行はインドでサティで夫に殉死させられようとしていた女性、アウダを助ける」
 
「サティ?」
「昔のインドでは夫が死んだら妻は夫と一緒に火葬されてしまっていたんだよ」
 
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「そんな無茶な!」
「まあそれで助け出すんだけどね」
 
「だって夫婦はたいてい夫が先に死ぬのに」
 
「16-17世紀にインドを支配したイスラム政権のムガール帝国がこれを基本的には禁止し、どうしても殉死したいものは太守の許可を取れということにして、許可を取りに来たら必死で死なないように説得したりして、何とかほぼ無くすことに成功する。ところが18世紀の末になって突然インド東部のベンガル地方でこの風習が復活してしまう。かなり強制度が強くて、当時のベンガルの女は、お産で死ぬか、夫に殉死させられるかの二択に近かった」
 
「ひどーい。なんで女性たちはそんな馬鹿なことに反対しないんです?」
「そういうのが風習の恐ろしさだよ」
「うーん・・・」
 
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「しかしヒンズー教の改革指導者たちがサティは教典的な根拠が無いと訴え、当時インドを支配していたイギリス人のインド総統も禁止令を出したりして、19世紀末にはなんとか再度無くなったんだけど、この物語の舞台になった19世紀の東部インドではまだ結構行われていたんだよね」
 
「不条理だなあ」
 
「日本だって江戸時代の初期には主君が死んだらそれに殉死するという風習が一時期広まって、幕府が殉死禁止令を出して、そういうことをやめさせようと苦労しているよね」
 
「勝手に個人的に死ぬのはいいですけど、事実上強制されると困ったことになりますね」
 
「僕はこういうのを習慣の迷路と呼んでる。今の日本で問題になっているサービス残業とかも、やはり習慣の迷路だと思うんだよ」
 
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「そうかも知れませんね」
 

「まあそういう訳でインドから先はアウダも加わって4人での旅になる。最後の方はかなり厳しくて、ニューヨークでイギリス行きの船にあと30分という所で遅れてしまう」
 
「あらあ」
 
「でもフォッグはフランス行きの貨物船に乗り込んで、その途中で船を乗っ取って無理矢理リバプールに行かせてしまう」
 
「いいんですか〜?」
「このあたりはもう無茶苦茶だよね。ほぼ海賊だよ。そして80日目、何とかフォッグはリバプールに到着する。後は列車でロンドンに向かえばよいだけ」
 
「凄い」
 
「ところがここでフォッグの逮捕状は届いていたものの、国外なのでそれを執行できずにいたフィックス刑事がフォッグを逮捕してしまう」
 
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「あらぁ」
 
「そして80日後の午後8:45は拘置所の中で無為に過ぎてしまう。ところがそこにフィックスがやってきて『申し訳無い。真犯人は既に逮捕されていた。間違いでした』と」
 
「酷い」
 
「それでフォッグはフィックスを殴るけど、賭けに敗れたというので失意の内に自宅に戻る」
 
「バッドエンドですか?」
 
「ところがだね。12月21日の夕方。クラブではフォッグは戻ってくるかねぇ、無理でしょとか、友人たちが会話をしていた。8:40になっても現れないので、やはり無理だったかね、と言ったりもするが、『まああと5分あるから、それまでは待とう』という声もある。そしてみんなが時計に注視する中、8:44:57になってドアが開き『諸君、私は戻ってきた』とフォッグが言う。彼はわずか3秒の差で賭けに勝ったんだよ」
 
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「え!?どうなっているんですか?」
 
「これは当時の読者は半分も理解した人がいなかったと思う。ヒントはね。彼はヨーロッパからインドへ、インドから日本へ、太平洋を渡ってアメリカへ、大西洋を渡ってイギリスへ、と東向きに1週したことなんだよ」
 
「え〜〜〜!?」
 
「後は自分で考えてごらん」
と監督が言うのでアクアも葉月も腕を組み、顔を見合わせて悩んでいた。
 
それを見て山村マネージャーが我慢できずに含み笑いをしていた。
 

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そういう訳でこの映画では、アクアがフォッグとアウダの2役を演じ、葉月がボディダブルを務める。原作ではフォッグ氏は40歳前後、アウダは多分30歳くらいかと思われるが、この映画ではフォッグは20歳、アウダが16歳という設定にする。またフォッグはイギリス紳士らしい上等のフロックコート姿(撮影ではヴィクトリア朝の紳士服を復元したものを使用する)、アウダはサリーを着る。
 
最初アクアと葉月がサリーを試着した時は2人とも
「これ凄く頼りないですー」
と言っていた。
 
当時はまだ現代のような「スーツ」が生まれる前である。スーツは20世紀初頭にフロックコートの裾を短くした形の普段着として生まれた。フロックコート姿ではズボンは上着と別布を使い、スーツは同じ布を使うが、当時の感覚では上着とズボンは別の布を使うのが正式であり、同じ布で上着もズボンも作ってしまうのは、きわめてラフな印象を与えた。
 
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八十日間世界一周の本などではアウダがずっと額にビンディを入れている挿し絵があったりするが、実際には寡婦はビンディを描いてはいけないことになっている。ビンディはあくまで既婚で夫が生存していることを表すマーク。要するにビンディが無い女性は結婚可能であることになる。この映画ではアウダはサティの場面ではビンディを入れているものの、救われた後はそれを消したという設定にする。
 
パスパルトゥはコミカルな役どころであることからお笑いコンビ先割れフォークのスキ也が起用され、フィックス刑事役はアクアの映画ではおなじみになった感じの大林亮平が務める。
 
つまりクライマックスではアクアが亮平を殴るシーンが出てくることになるが、今年1-3月のドラマ『少年探偵団』では二十面相役の亮平は何度も小林少年役のアクアに投げ飛ばされたり、殴られたり蹴られたりしている!
 
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7月の前半はこの4人だけでスタジオ内のセットを使用して試し撮りを兼ねた撮影をおこなった。
 

2018年7月22日(日)。
 
この日某スポーツ新聞が《桜野みちる・森原准太・熱愛発覚》というスクープを報じた。2人が今年初め頃から恋愛関係にあり、何度もみちるが森原准太のマンションに入って行く姿が目撃されているというのである。
 
桜野みちるは1994年4月生の24歳、森原准太は1989年9月生の28歳である。
 
みちると森原の各々の所属事務所はどちらもその日激震が走ったようであるが、結局夕方になって、明日・月曜日に両者共同で記者会見を開くということをFAXで報道各社に送った。
 
別々の記者会見ではなく、共同で記者会見するということは、交際は事実なのだろうと多くの人が考え、みちるファン・森原ファンの双方から悲鳴があがった。ただし多くのファンは祝福メッセージをネットに書き込んでいた。
 
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記者会見は月曜日の12時から都内のホテルで開かれ、桜野みちる、森原准太、桜野の事務所§§プロダクションの紅川社長、森原の事務所※※エージェンシーの池原社長、双方のレコード会社担当の6人が並んだ。
 
記者が200人近く詰めかけている。
 
記者の代表が質問をしてそれに答えていく形を取る。
 
「最初に質問します。交際は事実でしょうか?」
 
これには森原君が答えた。
「事実です。僕と桜野みちるさんは、真剣な交際をしています」
 
この森原君の発言が大量にツイッターに書き込まれ、一時期タイムラインがこれで埋まる状態になる。
 
「ではご結婚なさるのでしょうか?」
「来年の春くらいに結婚式をあげることを考えています」
 
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「お仕事はどうなさるのでしょうか?」
この質問に対して
「僕は今の仕事を続けます」
と森原が答えたので、会見場に失笑が漏れる。
 
「えっと、桜野さんは?」
「ファンの方には申し訳無いのですが、私は今年いっぱいで引退することにしました」
とみちるが答える。
 
ここでまた桜野みちるの発言が大量にツイッターに書き込まれる。
 
「引退前にライブなどはなさいますか?」
「11月から12月に全国30箇所程度でホールツアーをしたいと思います。ラストは12月31日に関東ドームでライブをして、それで引退とさせて頂きたいと思います」
 
「12月31日にラストライブということですが、もし12月31日の紅白歌合戦に呼ばれた場合はどうなさいますか?」
「申し訳ありませんが、仮定の質問にはお答えできません」
 
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「妊娠していますか?」
という質問にはまず森原君が答える。
「僕は妊娠していません」
記者席がどっと沸く。隣に居るみちるも吹き出した。
「えっと桜野さんは?」
「私も妊娠はしていません」
と、みちるは笑いながら答えた。
 
2人があっさり交際、そして結婚予定であることを認めてしまったので、その後の会見は概してなごやかな雰囲気で進んだ。
 
2人はまだ婚約指輪も交わしておらず、これから用意して結納なども交わすということであった。また桜野みちるは現在出演中のテレビ番組も12月までに全て降板する方向で現在各放送局と交渉中であると紅川社長は述べた。
 
 
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