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■夏の日の想い出・翔ぶ鳥(2)

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ところで、M市を会場とする場合の最大のメリットが、実はこの町が温泉町であることで、市内の温泉旅館組合、隣接するE市の温泉旅館組合が公演終了後送迎バスを運行してくれることになった。それ以外に宮城県内で最大収容能力を持つ秋保温泉も共同で送迎バスを運行してくれることになり、この3ヶ所で4000人分の温泉宿泊枠を確保することができた。このあたりは旅行代理店との共同作業で確保作業を進めたのだが、温泉枠は他の少し遠い温泉、必ずしも有名でない温泉などを入れて最終的に8000人分、また仙台・石巻市内のホテルにも1万人分の宿泊枠を用意できた。
 
それでやっと、ローズ+リリーの公演地は決定したのである。
 
交通に関しては、松前会長がJRと交渉して、イベント終了後、最寄り駅から仙台駅までの臨時列車を運行してもらえることになった。また三陸自動車道のIC近くに臨時駐車場を確保し、そこおよび最寄り駅と会場の間を騒音の少ない電気自動車のバスでピストン輸送することにした。
 
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今回のイベントについては、この手の交渉事に慣れておらずコネも無い村上社長は何をすればいいか分からないようで、町添専務は忙しすぎて身動きが取れない中、松前会長がよく動いてくれて何とか形を整えることができた。
 
なおカウントダウンライブのチケットは当初3万人ということで予定していたのだが、ファンクラブへの申し込み倍率が、他のツアー地では2倍程度(1.5-3.0)であったのに対して、カウントダウンライブでは競争率が5倍を越えたため、急遽5万人まで枠を広げることにした。
 
実は現地はΛのような形になっており、その片側に四角形のエリアを確保して会場設営する予定だったが、Λの頂点部分にステージを設営し、両翼に客を入れることで5万人に増やすことができた。その会場設営予定図を見て政子が「鳥の形だ」と言った。
 
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それでツアーの他の会場はファンクラブ7割、一般発売3割だったのだが、カウントダウンだけは一般発売は3万の3割で9000枚、ファンクラブで残りの41000枚となり、一般発売率は18%、ファンクラブ抽選の競争率は2.5倍に緩和された。
 
チケット販売数を増やしたことから、宿泊枠の拡大も必要になった。これはかなり距離のある遠刈田温泉・鳴子温泉、更には山形県内や福島県内の温泉、ホテルなどにも手を広げ、最終的に温泉枠15000人分、ホテル2万人分の確保に成功した。また当日宿泊が確保できない人が出た場合、主催者側できちんと清掃などをする条件で地元の公共体育館や学校体育館などを開放してもらえることになった。体育館に簡易ベッドを並べて対応する。食事も地元の商工会がテント村を出してくれることになった。
 
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体育館の簡易宿泊施設では、男女を別の体育館に分離して、変なトラブルの発生を防ぐが、性同一性障害の人までは対応しきれないので、そういう人は値段は高くなるが、旅館かホテルとのセット券を購入してくれるよう案内した。旅館は相部屋だが申し込みの画面で性別に男・女・MTF・FTMと設定し、MTF同士、FTM同士で相部屋にして、トランスジェンダーではない人と一緒にならないよう配慮している。
 
MTFの人が戸籍上男性だからといって普通の男性と同じ部屋に入れられると、本人も他の男性も困ってしまうし、お酒の入っている人が多いのでレイプ事件の発生の危険も生じる。かといって普通の女性と同じ部屋に入れられた場合、本人のパス度によっては女性側が不安を感じる。
 
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このあたりの問題は昨年若干トラブルが発生していたので(トランスジェンダーの客を従業員用の部屋に寝せて急場をしのいだケースがあった)、その反省を元に最初からちゃんと対応することにした。
 
今回実際に(体育館での宿泊を含めて)宿泊を申し込んだ約4万人の客の内、MTFが800人、FTMも400人ほどいて「こんなにいるのか!」と森元課長が驚いていた。ただ実際問題としてローズ+リリーのファンには私の性別問題があってトランスジェンダーのファンが元々多いと思う。更に「完全パス」している人はMTF/FTMとは申告せずに、パスしている性別で申し込んでいると思うので実際にはたぶんこの倍くらい居るかも知れない。
 

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12月4日(日)。今年のYS大賞が発表された。
 
今年の大賞は小野寺イルザが『マジック・スクエア』で受賞した。彼女は賞が取れそうで取れないという微妙なポジションのまま、ここ数年くすぶっていたのだが、2014年に上野美由貴(=秋風メロディー)の書いた『夜紀行』でRC大賞の金賞を取り、昨年も久保佐季(=丸山アイ)の『雨の青葉通り』が賞こそ取れなかったもののゴールドディスクを獲得して大きな話題になった。そして今年は鴨乃清見が書いた『マジック・スクエア』で、初めて大きな賞を取った。
 
作曲者の鴨乃清見は寡作で秀作書きの作曲家として世間的には名を知られ、大西典香と津島瑤子の作品にだけその名前を見ていた。そして大西典香の引退に伴い、その枠を歌う歌手を募集して山森水絵がオーディションに優勝。今年デビューした。
 
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鴨乃がそれ以外の歌手に楽曲を提供するのはひじょうに稀である。鴨乃については、プロフィールが全く明かされておらず写真さえもない。しかしさすがに大賞を取ったら発表会場に姿を現すのでは?という観測もあったものの、この日当人は出席せずに、∞∞プロの鈴木社長が代理で出席していた。
 
「名誉ある賞を頂き、大変感激しております。そちらにお伺いしたかったのですが、どうしても時間的にダブるお仕事を抜けられないため、大変申し訳無いのですが、欠席させて頂きます」
という鴨乃のメッセージを鈴木さんが読み上げていた。
 
実は千里はこの日、宇都宮でWリーグの試合をしていたので、さすがに出席不能だったのである。
 

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ネットでは「時間的にダブるお仕事」って何だろう?と議論されていた。
 
「まあ普通の会社勤めではないんだろうな」
「締め切りに追われている週刊漫画家とか」
「それなら予め1日早く作品を仕上げれば済むこと。そのくらいの調整はできるだろ」
「病院の先生でその時間帯に手術があるとか」
「ああ、医者ではないかという説はあった」
「歌詞にそれを感じさせるものが出ていたことがあったな」
「裁判官でその時間帯に法廷があるとか」
「裁判官説があったのは、むしろ秋穂夢久(あいお・むく)だな」
「あの人も徹底していた。篠田その歌の結婚式にはさすがに顔を出すだろうと言われていたのに出なかった」
「いや、あれは実は出席していたらしいよ。その歌ちゃんが結婚後に出たラジオ番組で言っていた」
「へー」
「あれだけたくさん招待客がいれば、紛れることも可能だろうし」
「なるほどー」
 
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「でも鴨乃清見のお仕事って何だろう」
「その手の、時間が動かせないタイプの仕事、しかも同僚や友人に代わってもらうことが不可能な仕事なんだろうな」
「ハンバーガーショップのバイトで、その時間帯シフトが入ってるとか」
「まさか」
「それこそ誰かに代われるだろ」
「鴨乃の年収があれば、そういうバイトをする必要は無いはず」
 
「でも公務員とかなら、そちらやめて専業になってもいい収入あるよな」
「だから多分、作曲家なんかやめて、そちらの専業になってもいいんじゃない?と言われるようなお仕事なんだよ、きっと」
「あ。そうかも知れない」
 

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YS大賞では、そのほか優秀賞として、松原珠妃『還流』ローズ+リリー『振袖』 KARION『雪の世界』AYA『18.2482』ステラジオ『ぷかぷかゴーゴー』ゴールデンシックス『明日のために走れ!』丸山アイ『花一匁』アクア『エメラルドの太陽』 などが選ばれた。
 
また最優秀新人賞はCats Five『猫猫ワルツ』、そのほか新人賞としては、山森水絵『∞の鼓動』、西宮ネオン『流星ダンス』などが選ばれていた。
 
AYAの『18.2482』というのはルート333(平方根のrootと国道のrouteを掛けている)ということだそうで、北海道の国道333号をAYA自身がフェアレディZで走る風景がPVになっていた。
 
「AYAさん、以前はカイエンに乗っておられませんでした?」
とレポーターに訊かれ
「すみませーん。あれぶつけて壊しちゃって。新しくフェアレディ買ったんですよ」
とゆみは答えていた。
 
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事故を起こしたので、ゆみは免許証を事務所に(正確には元マネージャーの高崎さん個人に!)取り上げられていたのだが、今年の春にやっと返してもらった。それでその車を買ったものの「何事があっても交通法規を遵守します。疲労運転は絶対にしません。自分の技量を超える道は走行しません」といった誓約書を改めて提出したらしい。
 
(事故の原因は長い下り坂で、ずっとブレーキペダルを踏んで減速していたことで起こしたフェード現象である)
 
『雪の世界』は福留彰・相沢孝郎のペアがKARIONに提供してくれた最後の作品である。ステラジオの『ぷかぷかゴーゴー』は歌詞があまりにもぶっとんでいて「ステラジオ大丈夫か?」と言われたものの、直後にマリが歌詞を書いたアクアの『エメラルドの太陽』が出て、「マリちゃんはもっと壊れてる!」と言われ、結局、薬物疑惑(?)で警察が動いたりなどということにはならなかった。
 
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2016年12月7日(水)。
 
ローズ+リリーの4枚目のオリジナル・アルバム『やまと』が発売された。ローズ+リリーのアルバム自体としては12枚目になる。
 
2009.06 RLA01『ローズ+リリーの長い道』(Best1) 41万枚
2011.07 RLA02『Rose+Lily After 2 years』(Mem1) 54万枚
2011.10 RLA03『After 3 years,Long Vacation』(Mem2)80万枚
2012.03 RLA04『Month before Rose+Lily, A Young Maiden』(自主制作) 140万枚
2012.04 RLA05『Rose+Lily after 1 year, 私の可愛い人』(自主制作) 60万枚
2012.08 RLA06『Rose+Lily after 4 years, wake up』(Mem3) 70万枚
2013.04 RLA07『Rose+Lily the time reborn, 100時間』(自主制作) 120万枚
2013.06 RLA08『RPL投票計画』(Best2) 150万枚
2013.07 RLA09『Flower Garden』(Org1) 国内210万枚 海外80万枚
2014.12 RLA10『雪月花』(Org2) 国内220万枚 国外120万枚
2015.12 RLA11『The City』(Org3) 国内130万枚 国外(振袖とセット)65万枚
 
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(ベスト盤2枚、自主制作盤3枚、メモリアルシリーズ3枚、オリジナル4枚)
 
当日はアルバムの中から『夜ノ始まり』『東へ西へ』『かぐや姫と手鞠』、『青い炎』『寒椿』の5曲を、私とマリで生歌唱したが、伴奏については実はけっこう大変であった。
 
この日の演奏ではキーボード/ピアノに詩津紅を入れて月丘さんにはマリンバやヴィブラフォンを弾いてもらっている。七美花の笙、千里の龍笛、照屋時子さんという明笛奏者、そして風花の篠笛を入れる。ツインギターを入れるのに(スターキッズ準メンバー)宮本さんを入れている。そしてヴァイオリン奏者を10人並べている。
 
特に4つの笛が合奏する『かぐや姫と手鞠』の演奏前には私は記者さんたちに警告した。
 
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「この曲を演奏する前にお願いがあります。録音機器、スマホ・携帯の類いは全て電源をお切り下さい。この演奏はエネルギーが凄まじいので、その手の電子機器は確実に壊れます。この曲の録音中にもスピーカーが壊れたり棚の本が落ちたりしました」
 
それで演奏し始めるが、警告を聞かずに電源を入れたままにしていた記者さんもあったようで「わっ」という声が数ヶ所で起きていた。
 

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12月10日(土)。ローズ+リリーの年末年始のツアーが始まった。12月31日のカウントダウン・ライブも含めると13ヶ所16万6400人の動員になる。チケットは7割をファンクラブの抽選で売った後、残りを11月19日(土)に発売し、翌日までに全て売り切れている。
 
ちなみにアクアのツアーはドーム7ヶ所で動員23万人、チケットは9割をファンクラブの抽選で売り、残り1割を一般発売で売ったが5分で売り切れている。(つまり発売開始と同時に電話がつながった人だけが買えた)
 
アクアの興行成績に、氷川さんなどは、かなり対抗意識を持っている感じではあるが、私は
 
「比較しても仕方ないですよ〜」
と言っておいた。
 
ちなみにチケット売上総額はローズ+リリーが14.4億円、アクアは19.3億円になるが、アクアは9割がファンクラブ経由直売、こちらは直販が7割なのでアクアの方が利益率が高い。もっともローズ+リリーもカウントダウン・ライブの温泉宿泊券と航空券/新幹線切符とのセット販売分を入れると単純な売上は20億円を越えている(実はそちらのマージンが結構おいしい)。
 
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しかし1年前にアクアのプロジェクトを別会社に分離したのは本当に正解だったと私は思った。★★レコードの社員さんもTKRの社員さんも明らかにかなりのライバル意識を持ってライブ企画を進めている。まさに松前さんが言ったように「切磋琢磨」しているのである。
 
なお、どちらも“同行者を含めて”写真付きの公的身分証明書またはファンクラブ会員証が入場の際に必要である(社員証は偽造が容易なので不可)。特に実態性別を変更しているものの戸籍上の性別は変更していない人はファンクラブの会員証無しでは事実上入場困難である。同行者にも身分証明書を求めるのは最初から2〜3枚余分に買っておき、それを高額転売して「同行者」ということにして一緒に入場しようとする人があるからである。
 
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さて今回のローズ+リリーのツアー初日は先日落成したばかりの深川アリーナ、つまり91Club体育館である。
 
350台の駐車場はあるものの、それを解放すると大渋滞が発生するのは目に見えているので、今回のライブでは「身障者手帳・養育手帳をお持ちの方のみ駐車場をご利用になれます」という案内をし、事前に許可番号を発行するようにしておいた。それと別にチケットと宿泊・往復航空券をセットで販売したツアー客は羽田空港や東京駅からバスで会場地下まで連れて来た。
 

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夏の日の想い出・翔ぶ鳥(2)

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