広告:ここはグリーン・ウッド (第5巻) (白泉社文庫)
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■夏の日の想い出・辞める時(13)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-02-11
 
2月22日(土)。群馬県の某温泉。
 
早紀は女子の友人3名と一緒にこの温泉に来ていた。
 
午後この温泉に着いてから「まずはお風呂行こう」という話に、最初早紀は「私夜中にひとりで入りに行く〜」と言ったのだが
 
「夜中に行くのは勝手だが、みんなとも行こう」
と言われる。
 
「でも私は身体に不都合な真実が・・・」
と言うものの
 
「でも私、早紀と銭湯で遭遇したことがあるのだが」
「私も遭遇したことある」
「私は3回以上遭遇している」
「なんだ、みんな遭遇してるのか」
 
などと言われた。
 
「要するに早紀は女湯に入れる身体であることは間違い無い」
「そもそも女湯に入るのに不都合があるのであれば、私たちと同室で一晩過ごすことにも不都合があるはず」
「そういう不都合が無いことを再確認するためにも一緒に女湯に行こう」
 
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などと言われて半ば連行され、
「やはり何も不都合は無かったね」
「上も下も全く問題は無いね」
と女湯に入れる身体であることを友人たちに認証された。
 

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その後、食事をしてから軽くプロレスごっこ(?)して親睦(?)を深めた上で、夜中の12時過ぎに消灯して寝た。
 
そういう訳で早紀がひとりで大浴場にやってきたのは、夜中の3時である。
 
「信子ちゃんもお風呂付きのマンションに引っ越しちゃって寂しくなったなあ。ああいう女湯初心者の男の娘を“教育”するのも楽しいのに」
などと独り言を言う。
 
「どこかに可愛い男の娘は落ちてないかなあ」
などと言いつつ、大浴場の暖簾の前で止まる。
 
「ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な」
と指を左右に振った上で
 
「こっち!」
と言って、女湯の暖簾をくぐる。
 
浴衣を脱ぎ、防寒用に着ているTシャツ、その下に着ているスリップ、ブラジャー、パンティと脱ぎ、タオルとシャンプー類を持ち浴室に入る。
 
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夕方一度入っているので軽くかけ湯しただけで湯船に入ったが、湯船の中にひとり先客が居たので驚く。
 
全然気配しなかったのに!
 

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「こんばんは」
「こんばんは」
とお互い笑顔で挨拶を交わす。
 
「東京方面の方ですか?」
「あ、はい。出身は長崎なんですが。そちらも東京方面?」
「ええ。今は東京に住んでいます。出身は札幌なんですが」
 
などといった感じで出身地に始まって、2人は結構話していたのだが・・・
 
やがて、向こうが訊いてきた。
「ところで、君の性別は?」
「たぶん、君と同じ」
 
「やはりそうだよね〜」
「うん。そんな気がした」
 
と言って、ふたりは握手をした。
 
「ぼくのことは真琴(まこと)と呼んでよ」
「いいよ。じゃ、ぼくは早紀(さき)で」
 
「手の感じが女の子。女性ホルモン飲んでるよね?」
「まあそれはお互い様っぽいね」
 
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「睾丸は・・・・無いよね?」
「うん。それは無いかな」
「睾丸が付いてて、この体型はありえない」
「この顔つきもありえない」
「その声もあり得ない」
「その喉もあり得ない」
 
「おちんちんはあるの?」
という質問にはお互い微妙な笑みを浮かべる。
 
「それを女湯で話すのはやめない?」
「そうだね。お互いに」
 

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そのあとはしばらく《無難な》おしゃべりをしていたのだが、早紀は突然
 
「あっ」
と言った。
 
「どうしたの?」
「もしかして真琴ちゃんって、Rainbow Flute Bandsの・・・・」
早紀が途中まで言ったところで真琴は人差し指を立てて、早紀の唇に当て、それ以上言わないでというサインをした。
 
「でもぼく、早紀ちゃんに凄く親近感を感じる」
と真琴。
「やはり**ちゃんってこういう子だったのね」
と早紀。
 
「ね、あとでアドレス交換しない?」
「うん。もっともっとお話したい気がする」
 
それでふたりはまた握手した。
 
「キスしてもいいけどね」
「ぼく同性愛じゃないから」
「ぼくも同性愛じゃないよ」
 
「なんか今のはお互いに違う意味で言った気がする」
「そのあたりはあまり深く追及しないということで」
 
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「でも多分セックスも可能な気がしない?」
「ちょっと興味はあるね。姿勢が難しそうだけど」
 

結局早紀と真琴は30分近く湯船の中で会話し
 
「ちょっと入りすぎたかもね」
「のぼせそう」
などと言って一緒にあがった。
 
ふたりが身体を拭いていた時、脱衣所のドアが開くと、明らかに男と思われる人物が入って来た。
 
「きゃー!」
とふたりが声をあげる。早紀は手近にあった籠をその男に投げつけた。
 
「真琴ちゃん、通報!」
「うん」
と言って、真琴はインターホンに飛びついた。
 
「待って、待って。俺、女だから」
と入って来た人物が言う。
 
「ん?」
「俺、FTMなんだよ。でもまだ身体を直してないから、夜中に女湯に入りにきたんだよ。本当は男湯に入りたいけど、男湯で従業員さんとかに見つかると捕まるから」
 
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「ほんとに女なの?」
 
「脱いでみせるから」
と言って彼(?)はズボンと上着を脱ぎ、男物のシャツとトランクスを脱いだ。胸にはサラシを巻いていた。
 
「ちんちんあるじゃん」
「これ作り物」
と言って彼はおちんちんを取り外した。
 
「おっぱいもあるね」
「うん」
と言って彼はサラシをほどく。
 
それで見るとふつうに女の身体に見える。しかし女の身体に男の顔が付いているかのようだ。
 
「その身体じゃ男湯に入るのは厳しいね」
「理解してくれた?」
 
「うん。お兄さんも大変ね」
「籠ぶつけちゃって御免ね〜」
とふたりは言った。
 
それで早紀と真琴はおしゃべりしながら服を着る。今入って来たFTMの彼は脱いだ服やおちんちん!をロッカーに移し、タオルと石けんを持って浴室に行こうとした。その時「あっ!」という声を挙げた。
 
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「どうしたの?お兄さん」
「ね、君たちこそ、男の子ってことは?」
 
「ぼくは女湯に入るのが趣味なんだよ」
「ぼくは女湯でおどおどしている男の娘を物色するのが趣味」
 
「あんたら通報しようか?」
「通報してもいいけど、確実にお兄さんの方がつかまると思う」
 
「うーん・・・」
と彼は悩んでいたものの
 
「今日はいいことにしとこう」
と言ってふたりに手を振ると、浴室の中に入っていった。
 

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身体を洗って、湯船に浸かっていると、隣の男湯から声が聞こえた。
 
「ジュリー、もしかして何か揉めた?」
「通報されそうになって、籠ぶつけられただけ」
とこちらは答える。
 
「なんだ、いつものことか」
「ああ。俺も早く性転換して、コーと一緒に入りたいよ」
 
「まあ子供7人くらいできてからな」
「7人も産むの〜?」
「7人いればバレーができる」
「そうか。コーは学生時代バレーしてたからね。でも6人じゃないんだっけ?」
「リベロ入れて7人だよ」
「ああ」
 
「でも通報しようとしたのは男の娘だったよ」
「夜中だから入りに来たんだろうな」
「凄い完璧に女の子してた。おっぱいも大きくしてたし。俺が通報したら、たぶん俺のほうが捕まってた」
 
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「ジュリーは過去に数回警察に連れて行かれそうになったな、そういえば」
と言ってから向こうの声は言った。
 
「男の娘といえば、秋に鳥取から京都までヒッチハイクで乗せた男の娘も可愛かったな」
 
「ああ、あれはまだ女装初心者っぽかったね」
「今頃はもう少し慣れてるかな」
「女装ヒッチハイク旅行なんてやったら、かなり度胸付いたろうからね。あれは3〜4年以内に去勢くらいはしちゃうと見たよ」
 

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2014年1月25日。私とマリはロリータ・スプラウトの初ライブを行った。これは歌は私とマリが生で歌っている声を★★レコードのシステムでリアルタイムに二重唱→四重唱に変換して流すというもので、同時にファンからの応募で決まったロリータ・スプラウトの“4人”の絵を、アニメで動かすものである。実際にはバレンシアのメンバーがモーションキャプチャー用の機械を取り付けて踊っているのをアニメの動きにリアルタイムで変換している。
 
26日には篠田その歌の結婚式に出席した。彼女は2004年10月に私が誤って迷い込んで参加してしまった○○プロのオーディションの事実上の優勝者で翌年2月にデビュー。昨年末で引退するまで約9年間ポップスシンガーとして活動してきた。
 
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彼女の楽曲は前期(2005-2009)は上島先生の曲と東郷誠一先生(中の人は初期の頃は香住零子だが、その後不安定)の曲、それにセミプロ作曲家の作品をカップリングして販売するケースが多かったが、後半(2009-2013)は上島先生と秋穂夢久の曲をカップリングするパターンが定着した。秋穂夢久というのは、つまり私とマリであるが、その事を知る人は少数である。
 
27日には今度デビューする南藤由梨奈という新人歌手の制作をめぐって私がお願いして上島先生と蔵田さんの秘密会談をセッティングした。実は南藤のデビュー曲に関して、事務所側が最初上島先生に打診したものの、多忙で無理と言われ断られたので、代わりに蔵田さんに依頼した経緯がある。ところが蔵田さんがその曲を書いた後で、上島さんが「やはり書きましょう」と言ってかなり力(りき)を入れた作品を作ってきたので、丸花さんと私は困ってしまい、それでここ数年歌謡界のライバル、二大流行作曲家として競ってきた2人を直接会わせて調整することにしたのである。
 
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結局南藤由梨奈はこの2大作曲家から1曲ずつ楽曲をもらい、両者に関わる人物で手が空いている!?鮎川ゆまが、彼女のプロデュースをすることになり、ゆまが元々リーダーをしていたレッドブロッサムのメンバーが由梨奈のバックバンドを務めることになった。ゆまの名前は丸花さんから出てきたのだが、どうも後で聞いてみると、丸花さんは保坂早穂さんから、ゆまちゃんに何かいい仕事探してあげてと言われていたのもあったようである。
 
ゆまは上島先生の盟友である雨宮先生の弟子であり、また蔵田さんがリーダーを務めていたドリームボーイズの常連ダンサーであった。
 

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1月28-31日はローズクォーツ++(ローズクォーツ&ローズ+リリー)で制作している“Plays”シリーズの第8弾 RoseQuarts plays Sakura のボーカル録音に政子と2人で行ってきた。この楽器演奏部分は既に1月中にマキ・タカ・サト・ヤスの4人と若干のサポートミュージシャンで収録されている。
 
その後、私は2月1-3日にはKARIONの22枚目のシングル『四つの鐘』の制作に入る。このシングルは初めて私の写真をジャケットにも入れて最初から発売される作品となった。このCDは4月2日に発売されることとなるが、その発売時点で公式サイトに掲載されている過去のKARIONの全てのCDのジャケ写を、私が入っているバージョンに交換した。これは各々のCDの制作の時点で当時使用した3人バージョンと一緒に毎回撮影しておいたものである。
 
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続いて2月4-6日にはローズ+リリーの18枚目のシングル『幻の少女/愛のデュエット』の制作をスターキッズと一緒に行った。こちらはKARIONのCDの一週間後、4月9日に発売されることになる。
 
そして2月5日(水)には§§プロの新人・明智ヒバリが『チェックのスカート』でデビューした。ヒバリは実際に高校の制服っぽいチェックのスカートとブレザーという姿でジャケット写真に写っていた。背景には彼女の実家がある福岡の公共施設アクロスの階段状のグリーンガーデンが写っており、実際に現地で早朝に撮影したものである。
 
この日には鹿島信子から、戸籍が女性に変更されたというメール連絡があり、私は「おめでとう。これで信子ちゃんも立派な女の子だね」と祝福する返事を送っておいた。
 
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夏の日の想い出・辞める時(13)

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