広告:オトコの娘コミックアンソロジー恥ぢらひ編 (おと★娘シリーズ4)
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■夏の日の想い出・若葉の頃(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-06-10
 
「最近女物の服が増殖してて困ってるんだよ」
その日マンションに来たタカは本当に困っているような顔をして言った。
 
「なんか最近どこの局ででもタカ子ちゃんになってるね」
「そうなんだよ。男の服で行くとどうして男装なんです?とか言われて結局女物の衣装着せられちゃうんだよ」
「あぁぁ」
「なんか視聴者が俺の性的な傾向を誤解してるんじゃないかという気がして」
「まあみんなタカはその内性転換するんだろうなと思っているかもね」
 
「この状況、何とか改善できないかね?」
「《3人》の内誰が最初に性転換手術を受けるかでファン投票に掛けるとか?」
とマリが楽しそうに言う。
 
「何それ〜〜?」
「それで1位になった人には私が手術代出してあげるから、潔く性転換手術を受けるということで」
「やだ」
 
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「最近女物の服が増殖してて困ってるんですよね〜」
とその2人は言った。
 
ローズクォーツの「代理ボーカル」は最初2013年8月のサマフェスで1回だけ鈴鹿美里がしてくれた(ローズクォーツSM)あと、その後2014年3月までをシレーナ・ソニカが「覆面の魔女」の仮名で担当(ローズクォーツFM)し、2014年4月から1年間はオズマドリーム(ローズクォーツOM)、2015年4月から1年間はミルクチョコレート(ローズクォーツCM)と続いた。
 
それで2016年4月からはアンミルというデュオが代理ボーカルをしてくれることになり、私とマリは彼女たちと2月に顔合わせをした。アンミルがボーカルなので今年は「ローズクォーツAM」になる。
 
「今年はローズクォーツの代理ボーカルは誰がやるんだろうね?と話していたら私たちにご指名が来て、本当にびっくりしたんですよ」
などとアンミルのアンナは言っていた。
 
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「お二人とも男の娘って本当ですか?」
とマリがふたりに質問する。
 
「本当ですよ〜?」
「身体の状態は?」
「なし・あり・ありです」
「私もなし・あり・あり」
 
「うっそ〜! じゃ身体は完全に男性?こんなに可愛いのに」
とマリ。
 
「CD聴いたけど、ミルカちゃんの声はA5まで出ている。完璧にソプラノ音域、アンナちゃんもE5まで出ている。凄いよ」
と私も言う。
 
「声は努力しましたから」
「女性ホルモンとか飲んでたの?」
「飲んでません」
「私たち将来は女性と結婚したいし」
「男を捨てるつもりは無いので」
「女の子になりたい訳じゃないの?」
「単に女の子の服が着たいだけです」
「ほんとかなぁ?」
 
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「ヒゲと足のムダ毛はレーザー脱毛しました。特にヒゲは剃るのではお化粧で隠せないから以前は抜いてたんで毎日大変だったんですよ」
「じゃついでにおっぱいもシリコンでも入れて」
「いやです」
 
「私は実は一時期迷ったこともあるんですけどね〜。豊胸手術しちゃうのとシリコンパッドをブラに入れておくのって、要するにシリコンが体内にあるか体表上にあるかの違いで、大差無いじゃないですか。それで手術はしないことにしたんですよ。痛い思いするだけだし」
 
「女湯に入れるようになるのに」
「ちんちん付いてるから無理です」
「取ればいいのに」
「無くなると困ります」
 
「中学高校時代は合唱部に入っていたんですけどね」
とミルカが言う。
「合唱ってソプラノが主役で後の3パートは地味じゃないですか」
「うん」
「それでパート分けでソプラノがやりたいですと言って。声が出るの?と言われるから出してみたら、部の女子で私より高音が出る子が居なかったんですよ」
 
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「それは凄い」
「じゃ女子制服着るならソプラノでもいいよと言われたから、着ます!と言ってそれが女物の服を着た発端ですね」
 
「へ〜!」
「最初は卒業した先輩から女子制服譲ってもらって着てたんですよ。でもその内少しずつ女物の服が増えて行っちゃって」
 
「ああ」
 
「今では女物が9割かな」
「男物の服を着ることあるの?」
「ここ2年くらい全く着てない気がします」
「だったら捨てちゃって完全女性生活に」
「それをやるとふらふらと去勢とかしたくなりそうで怖いです」
「すればいいじゃん」
「お婿さんに行けなくなりますよ!」
 
4月には例によって、ミルクチョコレートとアンミルの双方をフィーチャーした「ボーカル引き継ぎCD」をリリースした。
 
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「最近女の子の服が増殖してて困るんですよ」
と西湖(今井葉月)はその日うちのマンションに来て言った。
 
「ドラマじゃ女の子役だもんね〜」
 
「女の子みたいに行動できるように練習で女装外出は結構しているんですけど、母が悪ノリして結構可愛い服とか買ってくるんですよ。それで女物の服が増殖しちゃうんだけど、こないだは乗せられてミニスカで外出しちゃいましたよ」
 
「おお、頑張ってるね」
 
「なんか『ねらわれた学園』の青山玲子役を見たとか言ってファンレターも時々来るんですよね〜。それが男子からばかりで。どうもファンの方は僕を女の子の俳優と思っているみたい」
 
「いや、それは普通そう思う」
 
「今度の『ときめき病院物語II』でも女の子役だし。当初は数回に1度セリフがあるという話だったんですけど、今の所毎回1つはセリフを頂いているんですよ」
「良かったね」
 
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「『狙われた学園』の写真集まで出ることになりましたからね。出演者全員で校舎の外観とかの撮影に使わせてもらった埼玉県の**高校に行って撮影したんですけどね。生徒役の子全員1枚は単独写真があるということで、役名が最後まで付かなかった子も含めて1枚ずつ撮って何だか卒業アルバム作っているような気分でしたね」
 
「なるほどなるほど」
 
「僕はその単独写真の他に馬仲敦美(西沢響子役)ちゃんと肩を組んだ写真とかも撮ってもらったんですよ。最終的に写真集に採用されるかどうかは分からないけど」
 
「肩組んだんだ?」
「女の子と肩組んで緊張しなかった?」
「え?緊張するものなんですか?」
 

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「人間ドックですか?」
と私は鶴見係長(5月から★★情報サービスの社長に就任予定)からの電話に訊き直した。
 
「いや勤め人はみんな年に1度健康診断を受けているし、★★レコードの場合28歳以上の社員には1日コースの人間ドックを受診してもらっているんですよ。でも作曲家の先生方はそういうの全然受けておられないでしょ?」
 
「うーん。大学生の時は年に1回レントゲン撮って内科の先生と30秒くらいお話してとかありましたけど、卒業後は全然受けてないですね」
 
「それで★★情報サービスで先生方から運営資金を提供して頂く見返りのひとつとしてこちらの費用で健康診断を受けて頂こうと。みなさんお忙しいのは分かっているので、日程はご都合に合わせますので」
 
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「でしたら今月中がいいです」
 
ローズ+リリーはゴールデンウィークからツアーに突入する。
 
「でしたら早速明日・明後日などいかがですか?」
「じゃそれで」
 

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ということで私と政子は1泊2日コースの人間ドックを受診したのであった。
 
いつもは夜2時すぎに寝る政子を、前夜は無理矢理22時には寝せ、当日は朝から起こして連れて行ったが、病院に着いても半分寝ている感じであった。
 
手続きをしていたら受付の人が言っていた。
「人間ドックは1日コースで受けられる方が多いんですけど、できたらせめて1泊コースの方がいいんですよね。どうしても病院に来て診察を受けるだけで緊張するので、初日はきちんとした数値が出ないことが多いんですよ。病院で1泊して2日目になると慣れてきて、ちゃんとした数値が出るようになるんです」
 
「なるほどですねー」
 
カルテを持ってあちこちに行かせられるが、途中で★★レコードの北川さんと会う。
 
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「私本当はこんなの受けてる時間が惜しいんですけどねー」
などと彼女は言っている。自ら多数のアーティストを担当するとともに、若い社員のとりまとめ役もしているので、本当に無茶苦茶忙しいはずである。
 
「奏絵さんも2日コースですか?」
「とんでもない。1日コースですよ。とても2日も休んでられません」
「北川さん、担当なさっているアーティストって何人くらいいますかね?」
「うーん。。。数えたことないけど、100人くらいかなあ」
「凄いですね!」
「でも年間リリースしているCDはせいぜい80枚くらいだよ」
「それでも凄いですよ!」
 

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この人間ドックの2日コースに入っていた初日の夜、私は熊本で震度7の地震があったというので驚く。熊本在住の知人・田中美子さん(田中蘭の母)に電話を入れた。
 
多分輻輳しているだろうしつながらないかなと思ったものの、1発でつながった。
 
「いや、それが私もニュースで見てびっくりしているんです」
と田中さんは言った。
 
「実は今日明日は蘭のレッスンがあるんで福岡にふたりで出てきていたんですよ」
「ああ」
 
蘭は昨年夏に加藤課長(当時)にスカウトされて今、度々福岡に出てきて歌と踊りのレッスンを受けている。
 
「うちは結構震源に近いんですよ。近所の友人に電話とかしてもつながらないし。状況がもっと分かるまで様子見ですね。数日このまま福岡に滞在しようかと思っています」
 
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「それがいいかもですね」
 

続けて私はゴールデンシックスの花野子に電話を入れた。
 
「カノン、確か熊本出身だったよね?向こうの親戚とかは大丈夫だった?」
「わあ、ありがとう!よくそんなの覚えてるね。いや、うちは転勤族だから、熊本も単なる転勤先なんだよ」
「ああ、そうだったんだ!」
「うちの家系は母親が秋田で父親が高知なんだよね」
「凄い離れてるね!」
「ふたりとも東京に出てきた所で知り合って結婚して。でもすぐ熊本に転勤になって、そこで私が生まれたんだよ」
「なるほどー! でも向こうでのお友達とかは?」
「小さい頃に引っ越しちゃったから、全然覚えてなくて」
「ああ」
 

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私は福岡在住の従姉・明奈にも電話してみたが、そちらは大した被害は無いということだった。また私は今月下旬に結婚する奥さんが川内市・甑島の出身である松山君にも電話した。
 
「彼女の実家は大丈夫だった?」
「実はまだ連絡が取れないらしいんだよ。電話がつながらなくて」
「ああ」
「でも甑島は震度3だったみたいだから大丈夫とは思うんだけどね」
 
彼は詳細が分かったらメールするよと言っていた。
 

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熊本の地震は日が変わって15日の1:25に昨日のより更に大きな地震が起きるという思わぬ展開となる。情報が一時は混乱したようだが、結局 15日1:25のものが本震(M7.3)、14日21:26のものが前震(M6.5)ということになったようである。前震が最大震度7であったのに、本震が最大震度6と報道されたことから更に混乱を招いたが、最初の地震で益城町の震度計が壊れてしまったため本震の震度は測定できなかったことが明らかになった。恐らく本震も益城町は震度7だったのではと多くの人が想像した。
 
(4月20日になって実際に震度7であっことが確認された)
 
「完全にアウトみたいです」
と私が人間ドックを退院してマンションに戻ってから田中美子さんからは連絡があった。
 
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「あぁ・・・大変ですね」
「最初の地震で壁が崩れたりエレベータが動かなくなったりしたようなんです。それが本震で階段まで崩れてしまって」
「ひゃー!」
 
「最初の地震の後、みんな近くの小学校に避難していたので、幸いにも誰も中にいなかったから良かったのですが。もう建物は立入禁止になったらしいです」
 
「不幸中の幸いでしたね。このあとどうなさいます?」
「いや途方に暮れています」
 
その時私は思いついた。
 
「いっそ東京に出てこられません?」
「え〜〜!?」
「この状態じゃお仕事にもいけないでしょ?」
「ええ。会社からは当面自宅待機でというメールが来てます。勤めていた工場もかなりの被害が出ているみたいで」
 
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「東京におられる間の当面の滞在費は私が出しますよ」
「ほんとですか?」
 

私は彼女がキャッシュカードを手元に持っているという肥後銀行の口座に当座の資金として50万円を振り込んであげた。そして加藤次長に電話して、田中蘭親子をとりあえず東京に呼んだことを話した。
 
「だったら約束していた通り、お母さんの方の仕事先を斡旋してあげるよ。あとアパートも適当な所を探させる」
「すみません。お忙しい時に」
「いや、僕が蘭ちゃんをスカウトしたんだからね」
 

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★★レコードおよびTKRでは被災地域に住んでいる人が両社主催のライブのチケットを所有している場合、無条件でキャンセルを受け付ける旨の告知を出した。またそれによって空いた座席を元に若干のキャンセル待ちを受け付ける旨も発表した。ローズ+リリー・アクア・ステラジオ・丸山アイ・南藤由梨奈などの福岡公演がこのキャンセル待ちを受ける対象となった。また丸山アイや立山みるくなどが熊本公演を予定していたが、これは中止になった。
 
また被災地域の人の払い戻しについては現券が無くても柔軟に応じることも発表した。
 

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夏の日の想い出・若葉の頃(1)

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