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■東風(20)

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辿り着いた所は結構大きな島だった。
 
「嬉しい!故郷に帰ってくることができた」
「良かったね」
「本当にありがとうね。私、あなたのこと好きになっちゃった」
と言って、モナがアクアに、じゃなくて乙姫が浦島に抱きついてキスする。
 
(「今のほんとにキスしてない?」「ほんとにした気がする」「こら離れろ!」というネットの声)
 
(ここは寸止めのはずがモナは本当にアクアにキスしている。アクアが「ちょっとぉ」と抗議したが、モナは「いいじゃん。女の子同士なんだから」と平気な顔をしていた。でもさすがに後でルキアから文句を言われた!)
 
「ボクも君のことが好きになった」
と太郎。
「こんな広い海の中で偶然の導きで出会ったんだもん。私たちきっと愛し合う運命だったと思わない?」
と乙姫。
 
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「そうかも知れない」
「ね。私たち結婚しましょうよ」
「いいの?」
「私の両親に紹介するから、ずっとここで暮らさない?」
「それでもいいかなあ」
 
それで太郎は乙姫との結婚に同意した。それで2人は愛の口づけをした。
 
(ここはちゃんと台本通り寸止め)
 
(御伽草子で乙姫は物凄く積極的に太郎に言い寄っている。おそらく江戸の町文化はこういう積極的な女というのを許容する文化だったのだろう)
 

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太郎が乙姫の両親・龍宮の王・王妃に挨拶するシーン、結婚式のシーンと続く。
 
結婚式のシーンでは多数の舞姫たちが登場する。これも○○ミュージックスクールの生徒さんたちである。このシーンにはデビュー予備軍の子たちが使われたのでダンスのレベルが高い。
 
結婚式が終わり、一夜明けたあと、ふたりがこの島の立派な町並み、乙姫の住む邸宅の立派な造りを見て廻るシーンなどが映る。春の庭、夏の庭、秋の庭、冬の庭の様子が映る。このあたりは実は予算の都合でCGである。本当に立派な邸宅を建てて四季の庭を造っていたら、それで億単位の予算が飛んでしまう。
 
やがて赤ちゃんが2人産まれた様子も映る。乙姫(坂出モナ)が幸せそうに赤ちゃんを抱いているシーンなども映る。
 
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↓ネットの声
「モナちゃん、いいお母さんになりそう」
「でもルキアは性転換しちゃってるから、女同士じゃ子供できないよね?」
「性転換する前に精子の保存はしてると聞いた」
「だったら、それで子供作ることは可能なのか」
 
このシーンは赤ちゃんはリアルロボットである。2人目が産まれた時にそばにいて赤ちゃんを見ている女の子は秋風メロディーの子供・夕霧(3)である。ちなみに夕霧ちゃんの性別は、源氏物語を読んだことのある人ならご存じの通りである!
 

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元原マミが登場して「こうして数年間が過ぎました」と静かに語る。マミはそう語ったあと、悲しむように目を瞑った。
 
アクア演じる浦島が言う。
「ふと思ったんだけど、ボクの両親はどうしてるかなあと思って」
「なぜそんなことを言うの?」
と乙姫が悲しい目で言う。
 
「思えば両親には何も告げずに出て来てしまったから、一度村に戻って、自分が無事で子供も2人できたことだけでも話してまたこちらに戻ってこようかなと思ったんだよ」
 
「太郎様、私を捨てるの?」
「違うよ。君を捨てる訳ないじゃないか?村に戻って両親と会ったらすぐこちらに戻るよ」
 
「いや、いや行かないで」
と乙姫は泣いてしまう。
 
「ちょっと行ってくるだけだよ。ちゃんと帰ってくるからさ」
 
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それで乙姫は太郎の一時帰郷に同意したものの、
「龍宮から一時的にでも出る人にはこれを渡さなければならない規則なの」
と言って、朱塗りの箱を渡す。
 
「これは何?」
「私にもう一度会いたかったら絶対にこれを開けないで」
「分かった」
 
それで太郎は新しい船を作ってもらい、それに乗って島を出た。
 

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7日ほどの航海で浦島は水江に戻った。
 
ところが上陸してみると、あたりは全く様子が変わっている。
 
太郎は入江や山の形を確認する。間違い無くここは村のある場所の筈なのに、あたり一面草ぼうぼうで、人の影も見当たらない。
 
一体これはどうなっているのか?と悩む。手がかりになるものを求めて太郎は村のあったはずの場所をひたすら歩き回るが人っ子1人居ない。
 
池のそばに出る。
 
2本の杉が立っている。
 
「杉が物凄く大きくなっている」
 
太郎が居た頃、この杉は太さが自分の肩幅くらいだったはずが、今見ると杉は両手を広げても届かないくらい大きくなっている。
 
「物凄く長い時間が経っているんだ」
と浦島は呟いた。
 
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浦島がフラフラと歩いていると、古い朽ちかけた庵があった。何かに惹かれるようにその庵の中を覗く。1人の老人がいた。太郎は問いかけた。
 
「もし、翁殿、お尋ね申す」
「何だね?」
「この付近に住んでいた浦島という者のことをご存知ありませんか?」
「浦島か・・・・それは三百年前(*11)の人だな」
「三百年・・・・」
 
太郎はショックのあまり崩れ落ちるように座り込む。
 
老人は言った。
 
「太郎殿」
「はい」
「自分を求めている人の所に行かれよ」
「求めている人・・・」
 
(*11)太郎が龍宮に居た間にこちらの世界で経過した年数について、御伽草子は700年と書くが、丹後国風土記は300年と書いている。丹後国風土記で、浦嶋は元々雄略天皇の時代の人と書かれている。雄略元年は西暦458年に相当することが歴史学的には推定されているので、それから700年経つと、もはや平安末期である!そこでこのドラマでは300年説を採用した。
 
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風土記編纂は713年元明天皇の詔から始まっており、460年頃に行方を絶った浦嶋が300年ほど後の風土記編纂の時代に故郷に戻ってきたとすると計算が合う。
 

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太郎がフラフラと庵を出る。
 
カメラは庵の中を映す。
 
そこには大きな鏡が1枚立っていた。
 

太郎はいつしか浜辺に出ていた。
 
元原マミの語り
「太郎はあらためて景色を見渡しました。この浜辺も昔より海に張り出している気がします。自分が龍宮でほんの数年過ごしていた間にきっとこちらでは三百年も経ってしまっていた。龍宮と水江では、時間の経ち方が違うんだと太郎は考えました」
 
太郎の目に自分が乗ってきた船が映る。
『自分を求めている人の所に行かれよ』という老人の言葉が脳裏に響く。
 
「龍宮に帰ろう」
と浦島は言い、船に乗るために立ち上がった。
 
「あっ」
 
今立ち上がった時、乙姫から渡された箱を落としてしまったのである。
 
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「しまったぁ!!!」
 
箱が浜辺に落ちてふたが開く。
 
そこから白い煙が立ち上がり、太郎はその煙にすっかり覆われてしまう。
 
そして煙が消えた時、そこには1羽の白い鶴が居た。
 

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「龍宮に帰ろう」(アクアの声)
 
鶴は力強く飛び上がると、一路、西に向けて飛んで行った。
 
たくさんの雲を抜けて、たくさんの島影を過ぎて、鶴になった太郎はひたすら飛び続けた。
 
そしてたくさんたくさん飛んで、やがて鶴はひとつの島影を見る。
 
太郎はそこに降りて行った。
 
乙姫が、太郎が戻ってきてくれますようにとお祈りを捧げていた。
 
鶴はその前に降り立った。
 
「太郎さん?」
と驚いたような声で乙姫が言った。
 
「コー」
と鶴は悲しそうに鳴いた。
 
「あなたなのね?戻って来てくれたのね?」
と言って、坂出モナ演じる乙姫は涙を流して鶴を抱きしめた。
 
鶴も乙姫を抱きしめた。
 
「ずっと、ずっと一緒に暮らそうね」
「コー」
 
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そのモナと鶴の会話で、物語は閉じられた。
 

2021年8月29日(日).
 
今年夏の§§ミュージックのライブは、高崎ひろかがラストを務めることになった。
 
このライブの司会は鈴鹿あまめが務めたが、優秀な彼女だけに、そつなくしっかりと進行させていく。それを見ながらコスモスは、この子も早くデビューさせてあげたいけど、デビュー待ちの子が多すぎるなあと悩んでいた。
 
ゲストタイムは水森ビーナの登場が予告されていたのだが、実際には松梨詩恩と一緒にお揃いのドレスで出て来て、詩恩の持ち歌を1曲とビーナのリリース予定の曲『女子高生の味方』『午後の一息』をデュエットした。
 
ビーナは詩恩にそっくりなので、まるで双子の姉妹歌手が歌っているかのようであった。ゲストタイムの終わりには高崎ひろかが後半の衣装で登場し、三姉妹が一緒にステージに居る状態となる。詩恩とビーナは退場する態勢だったが、
 
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鈴鹿あまめが
「そのまま、そのまま、記念写真」
と言って、カメラに三人が並んだ所を収めていた。この写真はライブ終了後にホームページに掲載された。
 

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ネットを通してライブを観ているコスモスの傍で木取道雄が思い出したように言った、
 
「『浦島太郎』の俺の出演シーンって、あの“特殊メイク”じゃ誰か分からなかったよなー」
「出演者のところに名前も出てなかったね。声もミッチーの声じゃなかったし」
「あれはアクアの声をボイスチェンジャーで老人の声に変換したものなんだよ」
「手間掛けてるねー」
 
「アクアの男声の声色を老人の声に変換しても“おばあさん”の声にしかならないから“おじいさん”の声に聞こえるようにコンピュータのプログラムまで組んで変えたみたい」
 
「ああ、大変そう」
 
「でもあの特殊メイクに1時間掛かった」
「それなのに名前も出てないんだ?」
とコスモスは面白そうに言う。
 
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「原作の御伽草子で、古ぼけた庵に住む老人が出て来て、浦島というのは700年前の人と語るんだけど、普通に考えたら700年前の一漁師が記憶されているはずがない。それで監督が悩んで出した結論は、あの老人というのは実は浦島自身だったのではないかという解釈だったんだよ」
 
「それを示唆するために鏡を映したのね」
 
「だけど本来の浦島太郎というのは、太郎と乙姫のラブストーリーだったんだね」
「そうそう。それを小学校の教科書には書けないから、恋愛要素を抜いた結果、恩返し物語にしては太郎は割に合わなすぎる物語に改変された。それが現代でも広く知られている」
 
「だけど俺、ラストで泣いた」
「そういう意見は多かったみたい。美しい終わり方だったね」
「あれって、太郎は鶴の姿から人の形に戻れるのかなあ」
 
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「どうだろうね。それは余韻として残したんだと思うよ。亀が人型に変化できるんだから、鶴も変化できるかも知れないけど、亀と鶴のままかも知れない」
 
「ふたりとも鶴になったりして」
「それは新たな解釈だ」
とコスモスは笑って言ってから、
 
「御伽草子の作者はそのあたりは読者の想像に委ねたんだろうね」
と言った。
 
「もし仙境に戻るには鶴になるしか無かったのだとしたら、玉手箱は太郎に龍宮に戻る手段を与えるためのものだったのかも知れない。だって最初に船で龍宮に行けたのは乙姫が居たからでしょ?一般人が龍宮に辿り着けるとは思えない」
と道雄は言う。
 
「うん。だから御伽草子のエンディングはハッピーエンドではないかという解釈もあるみたいね」
 
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今回高崎ひろかのイベントで、ひろか・詩恩・ビーナの三姉妹を運ぶのに初めてHonda-JetSilverを使用した。
 
この夏購入した2機のHonda-Jetの内の1機である。
 
「この色は初めて見た」
と詩恩もひろかも言ったのだが、同行したひろかのマネージャー月原美架は
「この色の機体は当面君たち三姉妹に使用優先権を付けるから」
と言う。
 
「それは多分事実上、ビーナの専用機になるな」
とひろかが言った。
 
「Redがアクア、Blueがラピスラズリ、Orangeが常滑舞音、Yellowが白鳥リズム、そして、Silverがビーナということかな」
 
「え〜?飛鳥(松梨詩恩)姉ちゃんの方が忙しいと思うけど」
とビーナは言ったが
 
「いや、数紀がいちばん忙しい」
と飛鳥・邦江ともに言う。
 
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「まだギャラは少ないけどね」
と月原マネージャーは言っていた。
 
「でも来年までには確実に私たちを追い抜くでしょ?」
 
「今回の『シンドルバッド』でかなり注目度が上がったからね」
 
「うちの事務所は結局アクアが忙しすぎるという所から出発している」
とひろかは言う。
 
「それでアクアであふれた仕事を舞音が受けてるけど、舞音ちゃんもあふれてる。それが数紀の所に流れて来始めた感じがするよ」
 
「あんた高校は中退することになるかもね」
「ひぇー!?」
 

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「あるいはもっと緩い学校に転校するとかね」
と月原が言う。
 
「用賀の男子寮の近くなら今井葉月が通った、S学園とかは出席日数に緩い」
「へー」
 
「S学園は女子高だけど、数紀ちゃんは女子高でも通えるよね?」
「女子高!?そんなの入れてくれませんよー」
 
「ちょっと手術すれば入れてくれるよ」
と詩恩。
 
「手術?」
「完全な女の子になる手術ね」
 
数紀は一瞬考えた。それってまさか・・・性転換手術!?
 
「それは勘弁して下さい」
 
「だってあんた既に女子高生になっちゃってるのに」
と2人の姉は言っていた。
 
ちなみに今日のビーナはTシャツに膝丈スカートという軽装である。
 
「別にちんちんとか無くてもいいんでしょ?」
「無いと困るよー」
「ちんちん使っているとは思えないけど」
「使わなくても要るよー」
 
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「あんた、いいお嫁さんになると思うけどなー」
 
2人の姉にしょっちゅうこれを言われてたら、女の子になってもいい気になってそれで去勢手術受けちゃったのかな?と月原は思った。
 
(月原はビーナが去勢していると思い込んでいる)
 
 
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