【娘たちのベイビー】(3)

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2015年8月時点で、§§プロと何らかの契約を結び、毎月数回以上の仕事をもらっている(あるいはもらえそうになった)練習生・研修生の類いには下記のようなメンツが居た。括弧内は生年度である。
 
高校生
川内峰花(1998) 2014ロックギャル4位,2015ロックギャル3位 “ハナちゃん”研修所No.205
大村祭梨(1999) 2015ロックギャル2位 研修所No.202
仲原恵海(1999) 2014ロックギャル6位 川口市在住
 
中学生以下
月嶋優羽(2000) 2014ロックギャル3位・2014フレッシュガール2位 川崎市在住
米本愛心(2001) 2013フレッシュガール3位(1位=明智ヒバリ)研修所No.204
佐藤ゆか(2001) 2015ロックギャル8位 研修所No.203
南田容子(2002) 2015ロックギャル10位 船橋市在住
天月西湖(2002) アクアのボディダブル 桶川市在住
溝口ルカ(2002) 2015ロックギャル12位 八王子市在住
秋田利美(2004) 2015ロックギャル優勝 研修所No.201
 
「私、コスモス社長に提案したんだよ」
とその日ハナちゃんは言った。
 
その日は偶然にもこの10人が全員大田区のサテライトオフィス(通称“スタジオ”)に集まっていたのである。
 
「ほら、他の事務所の歌手だと、テレビとかライブとかで歌う時に、同じ事務所のまだデビュー前の子がバックダンサーとかコーラスを務めたりしているじゃん。うちもそれやりましょうって」
 
「ああ、それは面白いかも」
「コスモス社長はあまり歌う場面がないけど、川崎ゆりこ副社長、桜野みちるさん、それにアクアちゃん、ありさちゃん、ひろかちゃんは結構テレビにも出るし、ライブも結構ある」
 
「実質その5人かな」
 
「このあと西宮ネオン君のライブとかも出てくると思う」
「男の子のバックは少し緊張するな」
 
「その時はみんなで男装しようか?」
「マジ?」
「まあ、ネオン君のは置いといて、他の女の子たちのバックでは、女装で」
「女装なのか!?」
 
「なんか可愛い感じのユニフォーム作ってもらってさ。それを着てバトンとか持って踊る」
 
アクアさんは男の子じゃないの〜?と西湖は思ったが、誰もアクアを男の子とは思っていないようである。しかし別の質問がある。
 
「バトン!?」
 
「バトンでもいいし、ステッキでもいいし、魔法のスティックとか、あるいは新体操の輪っかみたいなのでもいいし、いざという時に武器になるものがいいかな」
 
「武器〜〜?」
 
「でもユニフォームはミニスカかなあ」
「うん。ミニスカが可愛いと思うよ。下にはブルマ穿いておけばいいね」
 
西湖は内心「ミニスカ〜?それ僕も穿くの〜?」などと思いながらも聞いている。
 
「それでチームの名前も付けてテレビなんかだとチーム名もテロップに入れてもらいましょうよ、と言ってたのよね」
 
「それ広告料取られるのでは?」
「局にもよるらしい。でもそのくらいいいよと社長は言った」
「ほほお」
「でも何てチーム名にするの?」
 
「信濃町ガールズなんてどうよ?」
「ああ、いいかも」
 
そういう経緯で“信濃町ガールズ”は発足したのである。
 

「メンバーはここに今居る10人?」
「他にも10人くらい、うちが費用を補助してレッスンに通っている子たちがいるでしょ?あの子たちもメンバーに引き込もう」
 
「それ全国にいるよね?」
 
「うん。地方にいる子は20-30人いるかも。その子たちは近くにライブツアーで行ったような時にダンサーに加わってもらえばいい」
「ああ、それでいいよね。踊っている所のビデオを送っておいて、練習しておいてもらう」
 
「単にレッスンだけ受けているのより、そういう実践があった方が絶対いいよね」
「そう思う」
 
「ギャラは1人1公演5000円くらいでどうですか?と社長に言ったけど、社長は『うーん』って悩んでいた。もしかしたら少し値切られるかも」
「まあギャラはいいよ。ステージに出ること自体が楽しいもん」
 
「リーダーはハナちゃんさんですか?」
と秋田利美(後の白鳥リズム)が質問した。
 
「“ハナちゃんさん”は二重敬語だ」
「ハナちゃんでいいよ」
「いや、何か呼び捨てしてるみたいで」
「さかなクンは“さかなクンさん”と呼ぶべきなのか、みたいな議論もあるよね」
「ハナちゃんは、うちのホームページには“仮名ハナちゃん”と書かれている」
「あれ最初“仮名”は苗字かと思った」
 
「まあ、自分で付けた竹本和恵なんて名前もあるんだけどね」
とハナちゃんは言っている。
 
「それ絶対本名のほうが芸名っぽい」
と愛心が言っている。
 
「本名は?」
「川内峰花(かわうち・みねか)。最後の“花”の字からハナちゃん」
「小学生の頃からのニックネームと言ってたね」
「小学1年の担任が“かわちみね・はな”さんって誤読したんだよ」
「それは難易度の高い誤読だ」
「前の学校で担任したクラスに川内丸信(かわちまる・まこと)君という子がいたんだって」
とハナちゃんは字で書いてみせる。
 
「ああ、それで!?」
 
「でも“はな”ちゃんって可愛いじゃんと言われて、友だちみんなから“はな”ちゃんにされてしまった」
「なるほどー」
 

「まあそれで思ったんだけど、高校生はシニアメンバーということでいいと思う」
とハナちゃんは言う。
 
「ほほぉ」
と同じく高校生メンバーの大村祭梨(後の花咲ロンド)が感心するように言う。
 
「高校生はわりと単独での仕事も多いしね」
ともうひとりの高校生メンバー・仲原恵海。
 
「まあ使いやすいからね。中学生は時間制限も厳しいからテレビ局も使いにくい。それでライブとかでは積極的にダンサーを務めればいいんじゃないかな」
 
「確かにそれがいいかも」
と祭梨も言う。
 
「だから中学生からリーダーを出そう」
 
「だったら中3の優羽(ことり)さんがリーダー?」
「いや、私は研修所に住んでいないから、研修所に住んでいる人からリーダーは出した方がいいと思う」
「それはあるね〜。緊急時に連絡とかしやすいし」
 
「じゃ中学2年のゆかちゃんとアコちゃんでじゃんけん」
 
「じゃんけんかぁ」
と言ってふたりはお互いを見つめる。そしてお互いの呼吸を読んで
 
「ジャンケンポン」
と早口で言ってジャンケンした。
 
「やった、負けた!」
「くぅ!勝ってしまった!」
 
ということで、ジャンケンにより佐藤ゆかが信濃町ガールズの初代リーダーと定まったのであった。
 

8月下旬、研修所に八重夏津美(海浜ひまわり)が、やってきた。
 
「おはようございます。何かお仕事ですか?」
と、廊下で遭遇した愛心が声を掛ける。
 
「いやあ、コスモス社長から210号室を空けてくれと言われて」
「なるほどぉ!」
 
今研修所は10個の部屋に8人が入居しているが、206には明智ヒバリの荷物がいまだに入ったままで、210は海浜ひまわりの荷物置き場と化していてどこも空いていないのである。
 
「ちょっと荷物移動させるね」
と言って、彼女は腕力のありそうな女性2人を伴ってきていて、その2人で210号室にあった荷物を段ボールに詰めて全部206に移動してしまった(ここは業者などを入れる場合も原則として男子禁制)。
 
「これで210は誰かが臨時に泊まる時に使えるから」
「あのぉ、206は?」
 
「何か荷物置く時は勝手に入って使っていいよ。ヒバリちゃんの荷物は、沖縄に送るにしても福岡のお母さんの家に送るにしても送料が掛かりすぎるから賞とかの類い以外は廃棄するか、誰か要る人があったら使っていいって」
 
「それ必要なものをお母さんでもいいから選別してもらえませんかね?」
「連絡してみよう」
 

それで夏津美が沖縄のヒバリに直接電話で連絡してみると、翌日福岡在住のお母さんが(ヒバリの)従妹の女子中学生さんと2人で新幹線で駆けつけて来た。
 
「ごめんなさい。荷物がそのままになっているって全然知らなかった」
「誰も連絡してなかったのかな?」
「昨年夏の段階では引退なのか休養なのかよく分からない状況だったしね」
と愛心。
 
「でも結局現役復帰するみたいですね」
とハナちゃんが言う。
 
「そうなの!?」
とお母さんが驚いている。そんな話は聞いていなかったのだろう。
 
「来年の春くらいにCDをリリースする予定があるらしいです」
 
「あの子、また歌手をするのかしら?」
「沖縄を離れられないから、制作も全部沖縄でやって、ライブとかもしないしテレビ出演とかもしないそうです」
「ああ、それなら何とかなるのかも」
 
それでお母さんと従妹さんに、ハナちゃんや愛心など、たまたまその時研修所に居た女子たちが手伝って、必要そうなものだけ、段ボール箱10個にまとめた。その他に明らかにゴミというものも結構出る。
 

衣類を整理していたら利美が
「それ捨てるならもらっていいですか?」
というので
 
「うん。欲しいのはどんどん持って行って」
とお母さんが言う。
 
「私スカート持ってないから、スカート何着かもらっちゃおう」
などと利美は言っている。
 
「スカート持ってない!?」
「あんた女の子だよね?」
「生物的には女だと思いますけど、新潟の小学校ではほぼ男子とみなされてました。バレンタインとかもらっちゃうし」
 
「もらう方なんだ!」
 
「あんた男の子になりたい女の子とか?」
「あるいは実は女の子になりたい男の子とか?」
 
「取り敢えずちんちんは持ってないです。男でも生きれる気はするけど、取り敢えず女のままでいいでーす」
 
「よし。女になる気があるのなら、ヒバリちゃんの服は君がもらって、少し女の子ライフに慣れなさい」
 
とハナちゃんが言い、結局下着とか以外はほぼ全部利美の部屋に、衣裳ケースごと移動されることになった。
 
(でも新学期になって転校先の小学校に出て行くと、男の子と誤解され1年半にわたり“男子児童生活”を送ることになる)
 

ヒバリの部屋はみんなで協力したおかげで3時間ほどで仕分け完了となる。お母さんがゴミの処理代金概算として5万円渡そうとしたが、ハナちゃんはそれを押しとどめた。
 
「ゴミの処分代は事務所で出すからいいですよ。送料もコスモス社長から言われていますからこの伝票使って下さい」
と言って事務所の名前・登録番号が印刷された、宅急便の伝票をお母さんに渡す。
 
「ありがとうございます」
 
「それとこれ2人分の往復の交通費」
 
「すみませーん!」
 
「受け取りのサインだけください」
と言って署名をもらう。
 
「何か多いんですけど」
 
「福岡からは飛行機の往復で計算するから。差額はもらっておけばいいですよ」
「じゃそうさせてもらおう。余った分は山分けしようか」
と従妹の人と言っている。
 
「では残った家具とか寝具とかは、他の子で使わせてもらいますね」
「はい、よろしくお願いします」
 
それでNo.206には、ベッドと布団、本棚(本棚の中身は沖縄に送った)や食器の入った食器棚などのほか、海浜ひまわりのスタンプが押されたよく分からない段ボール(記号?で中身が書かれている)20個ほどが押し入れに積み上げられた状態となり、緊急の時にはここにも人を泊められるようになった。
 
なおワーキングデスクは利美、ドレッサーは祭梨、ミシンは佐藤ゆか、と、新しく入居してきた3人が譲り受けた。本棚はヒバリとひまわりが使用していた6個が空っぽの状態で壁際に並べられており、欲しい人がいたら持って行ってと寮生たちに告げられた。
 

アクアの初アルバムに収録するのは最終的に12曲となった(実際には14曲録音したのだが、2曲は営業的な観点から外し、作曲者にことわって他の歌手−桜野みちる・川崎ゆりこ−に回させてもらうことにした)。
 
アルバム発表時の並べ方では下記のようになる。
 
Water Side
『ウォータープルーフ』上島雷太
『翼があったら』マリ&ケイ
『ライオンと少女』針谷童夢
『夢見るコレジエンヌ』紅型明美
『半分少年』Ya!Ye!
『The Young and the Freshness』霧島鮎子・上野美由貴
 
Beach Side
『朝食ラーメン娘』ヨーコージ
『ロックバンドの少女』XAMFUS
『水辺のニュムペ』karion
『走って告りに行こう!』Golden Six
『憧れのピーチガール』松浦紗雪・藤崎亜夢
『テレパシー恋争』ゆきみすず・東郷誠一
 

上記はアルバムの並べ順なので、実際の制作順は結構違う。
 
最初に作ったのはゴールデンシックスの作品『走って告りに行こう!』。作詞作曲のクレジットは Golden Six だが、実際には花野子が歌詞・曲ともに書いたものを千里が調整している。この曲の伴奏もゴールデンシックスが務めた。
 
(この時点ではまだエレメントガードはヤコ・エミを中心に編成することを決めただけで、メンバーを探している最中だった。昔のサイドライトの他のメンバーはもう音楽業界から引退していて復帰の意志は無いということだった)
 
この曲の演奏をしたゴールデンシックスのメンツは下記である。
 
Gt.リノン B.ミソラ金剛 KB.カノン Dr.キョウ Fl.タイモ(千里) 割れ目木鼓.ハナちゃん
 
ハナちゃんは「あんた色々できそうだね」とカノンから言われて金色の六芒星のバッヂを渡され、“ゴールデンシックスと愉快な仲間たち”のメンバーになってしまった。
 
実際彼女はギター、ベース、ドラムス、キーボード、フルート、クラリネット、トランペット、ホルンができる。でもヴァイオリン族は苦手らしい。
 
ハナちゃんが演奏しているのは、割れ目木鼓という変わった楽器である(私物)。木鼓は「もっこ」と読む。英語ではSlit Drum(スリットドラム)という。木の中身をくりぬいて空洞を形成した楽器で、くりぬく時に空けた細長い穴(スリット)があるので、スリット・ドラムという。
 
「この子の性別は女の子だよね」
などと言って、川崎ゆりこからドツかれていた。
 
この木鼓を木製のバチで叩くとカッカッカッという感じの甲高い音がする。
 
「女の子を棒で叩くって凄い楽器だね」
などと発言したら、ゆりこが睨んでいた!
 
ともかくも、この楽器で廊下や階段を走っている様を表現するのである。
 
木鼓は中国南部・東南アジア・南部ポリネシアなどに分布する楽器で、地域により形や演奏法にも色々なバリエーションがある。南米やアフリカにも類似の楽器がある。日本の木魚!やタヒチのトエレも割れ目木鼓の一種である。ハナちゃんが所有しているのは彼女のお父さんが自作したもので、伐採後10年乾燥させた薩摩ツゲを使用している。
 
ツゲ(柘植)は硬く伸び縮みが少ないので、古くは笛の材料として使用されていた。
 
なお、強度を増すため一部福岡産の檜(ひのき)も使用しているらしい。
 
お父さんは10個くらい試作した中のひとつを彼女に渡していたのだが、音源製作に使用すると聞いて、自作の木鼓の中でいちばん出来のよいものを車に積んで佐賀県の実家から、はるばる運んで来て、「以後これを使いなさい」と言って進呈してくれた。
 
この木鼓は長さ1m近くもある巨大なもので(柘植でこのサイズのものは多分かなり高価)、穴が3つ空いていて各々ドミソになっているという変わった木鼓である。音高微調整のための“子板”付きである。
 
重さは15kgほどあり、腕力のあるハナちゃんなら何とか運べるが、愛心などは持てなかった(スポーツ少女の利美やありさは楽々と持ち上げた)。アフリカには2つ穴の木鼓もあるらしいが、3つというのは自分が作っているもの以外にはないかもとお父さんは言っていた。
 

この曲のPVでは数人の女子(§§プロの練習生の中学生)とダンスの練習をしていた体操服姿のアクアが、ふと思い立ったように立ち上がり、走って行く所から始まる。アクアは校庭を走り、廊下を走り、階段を駆け上がり(どこを走るかでハナちゃんが打つ木鼓の音程が変わる)、最後は屋上に出て、後ろを向いて立っている人物に声を掛ける所、そしてその人物がこちらを振り向こうとしている所まで、それでアクアが何か言った所までで構成されている。
 
このPVを撮るためにアクアは廊下や階段を5−6回走らされた。
(その前に西湖は10回走らされた!)
 
なお屋上に立っていた人物は顔も映っていないし、体操服姿なので性別も不明である。それでこのPV公開後、アクアは男の子に告白したのか、女の子に告白したのか?というのでかなり議論になった。
 
「アクア様は女の子に告白したんだと思うな」
「アクアは男に告白したのかも知れない」
 
と男女のファンから妄想に満ちた意見が出ていた。
 
(実をいうと、この屋上に立っていた人物もアクア自身である)
 

『憧れのピーチガール』はアクアの“ファンクラブ会長”松浦紗雪が作詞し、いつも松浦作品に曲を付けている藤崎亜夢が作曲したものである。この曲も伴奏はゴールデンシックスがしてくれた。
 
ビーチで遊んでいる水着の女の子に男の子たちだけでなく、女の子たちからも視線が集まっている、という感じの歌である。それなら“ビーチガール”なのではと思うのだが、“ピーチ”にしたのは、女の子が桃ジュースを飲んでいるから!?と説明されている。
 
(本当は「桃のようなお尻」だったのを検閲!が入って、桃ジュースにされたのでは?とファンの間では噂された)
 
このPVは夏の内に撮影しようということで、アクアの代わりにピーチガールを演じる同い年の米本愛心が、桃色のビキニの水着を着け、本当に桃ジュースを飲みながらビーチを歩いている所に、多数の男女が振り向いてそちらに注目する、という構成になっている。愛心はお友だち(月嶋優羽)とビーチボールを投げて遊んだり、パラソルの下で数人の女子(§§プロの関西周辺の練習生)とやはりジュースを飲みながら楽しそうにおしゃべりしていたりする。アクアは最後の最後にアロハシャツとホワイトスラックスという格好でサングラスを掛けて愛心たちがいるビーチを見つめているシーンで登場するのみである。
 
この撮影は和歌山県の加太海水浴場で実は早朝に撮影した。映っているのは全員前日集めたエキストラである。前日の夕方和歌山市内で、★★レコードの名前で、誰のアルバムのPVかは伏せたまま「ホテル1泊夕朝食付き・水着支給・ギャラは無し」の条件で募集。男性(の水着が着られる人)100名・女性(の水着が着られる人)150名で締め切った。水着は自前のものを着てもよいものとした。
 
翌朝5時にバス5台に分乗してビーチに移動。起きられない、気が変わって水着姿を曝したくない、毛の処理に失敗した!などの理由で脱落した20名を除き230名で撮影を行った。ビーチを歩いたのが無名の米本愛心なので、みんな新人のアイドルかな?などと思っていたようだが、最後の最後に海の家の中からアクアが出て来たのに参加者たちが気付くと、凄い騒ぎになった。
 
しかし実際にはスタッフの顔を見て、§§プロの人たちが混じっていることに気付き、こんなに巨額の予算を掛けているのならアクアの撮影なのでは?と想像していた人がどうも20-30人居たようである。実は、わざわざ費用を掛けて参加者をホテルに前泊させたのも情報漏れが起きてエキストラ以外の見物人が殺到し撮影不能にならないようにするためであった。
 
エキストラは日本語が分かるなら国籍不問、中学生以上(未成年は親の同意が必要)・年齢上限無しとしたら、中国人5名・アメリカ人男性とフランス人女性1名ずつも参加した。また63歳の(日本人)女性も居た。この人はビキニの水着を着ており、若い参加者が驚いていた。物凄く引き締まったボディで多くの人は40歳くらいだろうと思っていたようである。国際大会にも出たことのある元スポーツ選手だと言っていた。
 
なお、男性の水着が着られると申告した女性は居なかったが、女性の水着が着られると申告した男性は2人居て、2人とも自前の水着を持参した。1人はビキニ姿を披露して、もうひとりワンピース型の女性水着を着た人から
 
「おっぱい大きくしてるんですか?」
と訊かれ
 
「してないよ。私女房いるし。これは偽装」
と言うので、「すげー!」と感心されていた。
 
協力してくれた230名には発売後大手CDショップの店頭でアクアの実際のアルバムと引き替えできるクーポンカード(偽造防止のためIC入り、追加料金を払ってDVD付きアルバムとの交換も可能)を配ったが、このクーポンカード自体にプレミアムが付いてオークションに出品され高騰したのはさすがに§§プロ側の想定外だった!
 
実際230枚のクーポンの内交換されたのは半数程度で、他の人たちは記念に保存しているものと思われた。
 
なお、松浦紗雪は後に、
 
「『ぜひアクアちゃんにビキニの水着を着せてビーチを歩かせましょう』と提案したんだけど、ダメですと言われて、代わりに研修生の愛心ちゃんがやってくれました」
 
とコメントしていた。
 
ネットでは「紗雪さんの意見に賛成!」という声が圧倒的だった。
 

『ロックバンドの少女』は"XAMFUS"名でクレジットされた作品。神崎美恩作詞・浜名麻梨奈作曲の歌をXANFUS全員で練っている内に、元々の曲とは似ても似つかぬ曲になってしまったので「これはもうXANFUS作詞作曲でいい」と浜名が言い、このようなクレジットになった。
 
とても元気なダンスナンバーである。この曲の音源はXANFUS自身の伴奏で、充分練習した後、最後は(アクアの歌も含めて)一発録りで収録された。
 
この曲のタイトルはアクアが選出された『ロックギャル』コンテストの名称を焼き直したものでもあるが、1937年公開の伝説的な映画『オーケストラの少女』も意識したタイトルである。
 
深夜ベッドで寝ていた女性(演:秋風コスモス)が何かの気配に目覚めて階段を降りて行くと、家のリビングでロックバンドが演奏していたので、それを見て驚く、というストーリー仕立ては『オーケストラの少女』のクライマックスのパロディになっている。
 
撮影に使用した豪邸はセットである! 豪邸であるかのように装うのに贅沢な壁板を使用し、螺旋階段などはわざわざロートアイアンで作らせたのでほんとに豪邸のように見える。セットの製作費は800万円で、制作を指揮したのは、毛利五郎の上司である雨宮先生である。
 
「この螺旋階段、このまま壊すのはもったいない」
という声もある。
 
「ほんとによくできてるわね。誰か自宅に装備しない?安く売ってあげるわよ」
「装備できるような自宅がありません!」
 
雨宮先生は海外合宿中だった千里に電話して
「あんた、豪邸の建てかけを何ならこれを建てた土地込みで2000万円で買わない?」
と言ったが、千里は
「その2000万円は先生が私に払ってくださるんですよね?」
と答えたので、雨宮先生は電話を切ってぶつぶつ言っていた。
 
(このセットの壁板は建設中の新しい§§プロ研修所に転用された)
 

さて『ロックバンドの少女』で演奏しているバンドの構成は、ボーカル:アクア、ギター:米本愛心、ベース:ハナちゃん、キーボード:天月西湖、ドラムス:佐藤ゆか、となっていてビデオでは各々本当に演奏している。コスモスが驚いた以降の演奏はこのバンドである。クレジットは
 
Vo.Aqua Gt.Aco B.Hana KB.Seiko Dr.Yuka
 
となっている。
 
楽器を演奏した4人の中で、愛心・ハナちゃん・ゆかはXANFUSのメンバーから
「君たちうまいね」
 
と言われたが、西湖についてはXANFUSのキーボード担当ノワールが
「負けたぁ!」
と言っていた。
 
「あんた、この腕があれば、ピアノのコンテストで入賞できる」
と浜名麻梨奈が言ったが
 
「昨年、**コンクールの関東大会で準優勝しました」
と西湖がいうので
「さっすが!」
と浜名が声をあげていた。
 
「私、小さい頃から母に『女の子はピアノくらい弾けた方がいい』と言われてレッスンに通っていたんですよね」
と西湖が言うので、数人腕を組んで考え込む。
 
「よし、全員お揃いのセーラー服を着て演奏しよう」
と音羽が言い出す。
 
「ああ、それいいですね」
とハナちゃん。
 
「あのぉ、僕もセーラー服ですか?」
と西湖が訊くが
「当然」
と言われて着せられる。
 
「アクアもセーラー服を着よう」
と音羽は言ったが、同席していたコスモスが拒否した。
 

ちなみにタイトルは『ロックバンドの少女』だが、実際にロックバンドで歌っているのはアクアなので、ビデオが公開された後、
 
「つまりアクアは少女ということでいいんだよね?」
「何を今更」
「アクア様が少年なわけない」
 
とネットの意見はいつものようであった。
 

『水辺のニュムペ』は"karion"でクレジットしているが、実際には小風作詞・和泉作曲である。美空は横で見ていてあれこれ注文を付けていた。伴奏はトラベリングベルズがしてくれている。
 
(ユニットの名前は KARION だが、編曲者名などとしてクレジットする場合は karion と小文字にするのはデビューの頃以来の流儀)
 
水辺に棲むニュムペ(女の精霊)の淡い恋心を歌った作品である。ちなみに最初は『水辺のニンフ』と英語(Nymph)にしていたのだが、美空が「水辺の妊婦?」と読み間違えたので、本来のギリシャ語でニュムペ(Νυμφη:Nymphe)にした。
 
女の子の立場から、男の子に恋い焦がれる気持ちを歌っているので、歌詞と現実を混同したファンから
 
「アクア様はやはり男の子が好きなのかなあ」
などという書き込みもあったが、作詞者(小風)自身、かなり妄想が入っている感じもある。
 
テレビ番組で司会者からその問題を尋ねられたアクアは
 
「ごめんなさい。ボク、恋というものそのものがよく分からないんです。ですから実は男の子にも女の子にも興味が無いです」
 
と答えていた。(「女の子が好きです」とは答えないのがアクアらしい)
 
こういう発言と普段の言動からアクアは実はアセクシュアルなのでは?と思った人もあったようである(実際にはアセクシュアル傾向があるのは西湖の方)。
 

たまたまその日同じ番組に出ていた桜野みちるは、アクアの性意識問題について尋ねられて
 
「この子は小さい頃にした病気の影響で身体的発達が遅れていて、まだ思春期が来てないんですよ。まだ男女未分化みたいだし。この子が女の子なら、これからおっぱいが膨らんで来るだろうし、この子が男の子なら、これからちんちんが生えてくるのでは?」
 
などと発言していた。
 
ネットでは
「これからちんちん生えてくるって、アクアにはやはり現在ちんこは無いのか?」
「ちんちんって生えてくるものなんだっけ?」
「アクア様はきっと、これから胸が膨らんでくるのよ」
 
などといった書き込みが見られた。
 
PVでは、アクアの代わりに高校生のハナちゃんが、ニュムペに扮して妖精っぽい半透明の衣装をつけ竪琴(私物!のライア)を弾いたり、横笛(私物のフラウト・トラヴェルソ)を吹いたりして、遠い目をしている。王子様のような衣装を着けた人物と馬車に乗っているシーンなどもあるが、その人物の顔は映っていない。ファンの多くが、西宮ネオンでは?と想像したが大正解である!
 
西宮ネオンはこの時期、§§プロの“唯一の男子タレント”として、品川ありさや高崎ひろか、桜野みちるなどのPVにも登場して、かなり忙しかった。
 
「ハナちゃん、これ出演者をクレジットするのに、ハナちゃんと書いていいんだっけ?」
と沢村マネージャーが尋ねた。
 
「あ、そうですね。だったら竹本和恵で」
「本名?」
「本名は川内峰花で〜す。竹本和恵は作曲する時のペンネームで」
「あんた作曲するの?」
「コンペとかに応募したことありますけど、1度も通ったことありません」
「まあコンペって倍率が高すぎるからね〜」
 
それでこのPVには“演:竹本和恵”とクレジットされることになる。
 
なお、ハナちゃんが半透明の衣装の下に何も着けてないのでは?と話題になったが、アクアがその問題についてはコメントした。
 
「あれは肌色の水着を着けた上であの半透明の衣装を着ているんですよ。裸ではありません。よく見て頂くとちゃんと水着の線が見えると思います。さすがに女子高校生のヌードは公開しませんよ」
 
それでビデオをパソコンに取り込み、大画面のテレビでコマ送りにして研究?した人が「確かに水着の線が見える! 1:37秒付近」と報告。多くの人がその付近を見てみた所、20インチ程度以上の画面ならそれが確認できることが判明した。
 

『半分少年』はYa!Ye!の作品である。これはエレメントガードのヤコとエミが作った曲である。実はエレメントガードが結成されて最初に制作した作品である(但しドラムスはレイア)。
 
日本語の「え」には、あ行のえ e 、や行のえ ye 、わ行のゑ we があったものの、現代では発音上の区別は失われている。エミは漢字では「江美」で「江」という漢字は本来 ye と発音していた。それで彼女は自分の名前を Yemi Kakita とサインしており、Yako & Yemi で略して Ya!Ye! になったのである。
 
(ヤコは Yarida Kozue 槍田湖寿絵 *4 の姓と名から1文字ずつ取ったもので小学生時代からのニックネーム)
 
『半分少年』は小泉今日子の『半分少女』(橋本淳作詞・筒美京平作曲)へのオマージュであり、まだ大人の男になりきっていない“半分男・半分男の子”という少年の気持ちを歌ったものである。
 
実は今回のアルバムで唯一の男の子立場の歌詞の曲である!?
 
しかしこの曲はタイトルだけが一人歩きして「半分少年」というのは、“半分少年・半分少女”と解釈されて、
 
「性別未分化のアクアちゃんにふさわしいタイトルだよね」
と書かれていた!
 
(*4)本名は「小豆絵」なのだが、「あずきえさん?」などと読まれてしまうので、数年前から「湖寿絵」と書くようになった。でも「ことしえさん?」と読まれてしまうらしい!
 

PVでは、アクアの学生服姿が使用され、彼の理想の男性像としてパイロットの制服を着た男性が登場しているが、この人の顔は撮していない。その人の奥さんとセーラー服姿の娘さんの映像も一瞬だけ映るものの、奥さんの顔も撮していない。娘さん役を演じているのは川崎ゆりこである!ゆりこは今年23歳だが、元々童顔なので充分セーラー服が行ける。
 
しかしこの映像は「アクアはゆりゆりみたいな女の子になりたいのだろう」と解釈されてしまったきらいもあった!
 
ちなみに実際にパイロット制服の男性を演じているのはハイライトセブンスターズのケンタで、奥さんを演じているのは同バンドのヒロシである!制作現場に陣中見舞いに来ていたのを毛利さんが徴用した。
 
(奥さん役は“1人を除いて”全員一致でヒロシと決められたが、夫役はジャンケンで決めたらしい)
 

『ウォータープルーフ』(water proof)は「防水」という意味である。実際の歌詞はダイビングで水中深く潜ってもその水圧に耐えてしっかり動いている防水時計のことを叙述しているが、防水時計のように、様々な圧力・濁流などに負けず、自分らしさを失わないようにしてほしいという、上島先生の祈りが込められた曲である。
 
でも実はこの曲は上島雷太さんの作品ではなく、福井新一さんが書いたものである。上島さんは、ほとんど自分の息子のような龍虎に曲を書くのは照れくさくて、彼女に頼んだ。春風アルトさんの手前があるので、福井さんが書いたのは秘密である。(知っているのはコスモスや千里くらい。龍虎も薄々は気付いている)
 
(福井新一さんも、龍虎の保護者である支香も上島雷太の元恋人)
 
同時進行で制作されたPVでは、ダイビングを楽しむ若い男女が数人写っているが、これは∞∞プロの研修生4人をセーシェルに派遣し、現地に来ていた日本人ダイビング観光客も6人臨時雇用して撮影したものである。セーシェルの美しい景色が多数写っている。アクアがウェットスーツを着けている場面も写るが、これは伊豆半島の熱川でセーシェルに行ってきた4人と一緒に撮影したものである。
 
ちなみにウェットスーツの下にアクアは女性用ワンピース水着を着ているが、この水着姿は秋風コスモスの政治的判断?で公開ビデオには残さないことにした!
 

2015年9月下旬。アクアの先月のライブツアーの様子を映したライブビデオがDVDとブルーレイ、及びダウンロードで販売された。ライブのチケットを入手できなかった人がたくさん居たこともあり、このビデオは価格が(DVDの場合)1万円もするにも関わらず、10月末までに合計30万枚(件)も売れた。
 
余波で1st,2ndシングルもまた売れたし、発売が予告されているアルバムの予約も物凄い件数入った。
 

アクアのアルバム制作は続いていた。
 
『翼があったら』はマリ&ケイの作品である。
 
今年はマリもケイも海外ツアーなどまでしたおかげで、かなり多忙だったのだが(その多忙さが実は問題だった)、加藤課長から「よかったら1曲提供してもらえないかな?」とケイが頼まれた。
 
話を聞いたマリはアクアに直接電話すると
 
「アクアちゃんのためにこないだ書いた詩があるのよ」
と言った。
 
「わあ、ありがとうございます」
とアクア。
 
「珠(たま)と鉾(ほこ)の歌というの」
「なんか格好いいタイトルですね」
「2番には杯(はい)と幸(こう)も出てくるんだよ」
「武術の歌ですか?」
とアクアは尋ねた。この時アクアは古風な道着を着た男性が日本武道をしている様を想像したらしい。
 
マリはアクアとおゃべりしながら、どうも歌詞を書いた紙を探しているようである。ケイは、大丈夫かな?と思ったので、アイランドキッチンに行き、軽食を作り始めた。マリはやがて
 
「あったあった。歌ってみるね」
と言う。歌詞ノートを見つけたようである。
 
「はい、お願いします」
「ちょっと伏せ字があるけどごめんね」
「伏せ字?」
 
それでマリはとんでもない歌詞を適当な節(ふし)に乗せて歌い始めた。
 
珠(たま)と鉾(ほこ)の歌
 
**鉾、切って女になろう。
**鉾、**鉾、ばーいばい。
**珠、取って男をやめよう。
**珠、**珠、いーらない。
**杯、育てて女になろう。
**杯、**杯、ほーしい。
**幸、掘ってお嫁さんになろう。
**幸、**幸、作りたい。
 
「拒否します!!」
とアクアは断固として言った。
 
ケイも顔をしかめて調理を中断し寄ってくる。そして歌詞ノートをあらためて見て
 
「これは酷い」
と言った。
 
「待って待って、特別に伏せ字の所を公開してもいいから」
 
などとマリは言っているが、ケイは受話器を取り上げる。
 
「ごめんねー、もっとまともな歌もあるはずだから」
と言った時、ケイは思いついた。
 
「マリさ、こないだのワールドツアーの途中、日本からニューヨークへ移動する飛行機の中、アラスカ上空付近でマリが書いた詩が使えない?翼なんとか」
 
「ああ、あれならいいかもね」
 
とマリが言うので、ケイはパソコンを開き、その曲を検索して『翼があったら』という歌であることを確認する。アクアにタイトルを告げたら
「良さそうなタイトルですね」
と言っている。
 
ケイがパソコンに入っているMIDIを再生させながら、自分で試唱する。
 
するとアクアは
「きれいな歌ですね!ぜひそちらにして下さい」
と言った。
 
それで『珠と鉾の歌』ではなく『翼があったら』をアクアは歌うことになった。(『珠と鉾の歌』はアクアが拒否しなくてもコスモスに確実に却下されている)
 
「だったら珠と鉾の歌は私たちで歌う?」
などとマリは言ったが
「そんな歌が公開できる訳無い」
 
とケイは言った。
 
マリはこの後、ローザ+リリンにまで提示したらしいか、彼ら(彼女ら?)も「嫌です」と拒否したらしい(彼らの事務所の社長は面白がったらしいが)。
 

『翼があったら』は最初はやや複雑な和音が使用されていたのだが、アクアに渡すのでアクアのファンが受け入れやすいものにしたいこと、伴奏がエレメントガードなので彼女たちが演奏に苦労しなくてもよいようにしたいこと、を考慮して、七星さんに頼み、和音をシンプルなものに変更してもらった。その結果、ケイが高校生時代に書いていたようなクリアなサウンドになった。
 
この曲には信濃町ガールズのコーラスも入っているが、彼女たちはPVには出場していない。
 
PVは劇団桃色鉛筆の子役俳優さんたち男女20人ほどに出演してもらい、全員背中に小さな羽根が付いたペールブルーの衣装を着てもらい、同様の衣装を着けたアクアと一緒に大きな風船を転がし、多数のシャボン玉を飛ばして撮影している。
 
(アクアの背が低いので小学生たちに埋没していた!)
 
またホンダから提供してもらったホンダジェットが空を飛んでいる所を別の飛行機から撮影した映像も混ぜたので、美しい映像になった。
 

『ライオンと少女』は針谷童夢(はりがい・どうむ)という人の作品である。本名・プロフィールは非公開で寡作な作曲家だが、過去に桜野みちる・神田ひとみに楽曲を提供したことがあり、実は品川ありさのデビューCDのカップリング曲も書いている。コスモスによると20代の女性作家らしい。§§プロと関わりがある作曲家なので、アクアにも提供してもらったようである。
 
この曲はタロットカードの『力(strength)』の絵柄がテーマになっており、ライオンが口を開けた所に女性が頭を突っ込んでいる絵が冒頭に写る。その後、ライオンが座っているそばで、アクアと4人の女子中学生(佐藤ゆか・南田容子・米本愛心・溝口ルカ)が白い衣装を着ておしゃべりしている様が映っている。ライオンのぬいぐるみなども転がっている。
 
最後はタロットの『力』の構図そのままに、ライオンが口を開けた所にアクアが頭を突っ込んでいる映像で終わっている。
 
むろんライオンは全て合成である。ライオン自体は動物園で撮影させてもらったのだが、口を大きく開けたシーンを撮るのに撮影班は半日ねばったらしい。
 
ちなみにこのPVで女子中生4人は白いドレスを着ている。最初は青系統のドレスだったが、クロマキー合成のグリーンバックとの相性が良くなかったので白に変更された。但し下着が透けないようにいったん黒いシャツを着てもらってから白いドレスを着てもらった。アクアは同じデザインのパンタロンスーツを着ているのだが、座っている映像が多いので、このPVを見た多くの人は
 
「アクアちゃんのドレス姿は可愛いね」
という感想を持ったようである!
 

『夢見るコレジエンヌ』は紅型明美という(多分女性の)作曲家の作品で、この人も§§プロに関わりのある作曲家らしいが、これが初めての公開作品だそうである。かなり若い作家のようで、とても可愛い作品である。
 
コレジエンヌ collegienne とは college の女生徒という意味のフランス語だが、フランス語の college は大学ではなく中学校である。高校はリセ lycee で、女子高生はリセエンヌ lyceenne になる。
 
小学生 ecolier / ecoliere エコリエ・エコリエール
中学生 collegien / collegienne コレジアン・コレジエンヌ
高校生 lyceen / lyceenne リセアン・リセエンヌ
大学生 etudient / etudiente エテュディアン・エテュディアント
 
要するにこの曲は『夢見る女子中生』という意味で、実際恋や将来のことに思いを寄せる女子中生の心情を歌ったものである。アクアはこのアルバムの制作を指揮した毛利五郎から、とにかく可愛く歌うことを要求されたので、本当に女子中学生になったつもりで歌ったらしいが、物凄く可愛い歌に仕上がり、ファンの中高生たちを狂喜させた。
 
「アクアって、何て可愛い歌い方をするんだ。嫁さんに欲しい」
「アクア様って、ホント可愛いなあ。お嫁さんにして欲しい」
 
といった声が発表後多数出ていた。個別ダウンロード成績もひじょうに良かった。
 
PVでは月嶋優羽・佐藤ゆか・天月西湖の女子中生(?)3人がミッション系の女子制服っぽい衣裳を着けて中学校っぽい校舎を歩いているシーン、授業を受けているシーン、部活にいそしむシーンなどが映っている。
 
この撮影は実際には栃木県内の廃校でエキストラの地元女子中高生を50人集めて行った。ちなみに女子制服を着たら女子に見えるなら本人の性別は問わないと言ったら、男子も2名面接に合格して参加した!
 

『The Young and the Freshness』(若くて新鮮)は若くて元気のよい新人歌手アクアをそのまま歌ったものであるが、霧島鮎子(日野ソナタ)の歌詞に上野美由貴(秋風メロディー)が曲を付けたものである。バリバリ§§プロ関係者の作品である。
 
『The Young and the Freshness』というタイトルは『The Young and the Restress』を意識したタイトルである。『The Young and the Restress』はアメリカのメロドラマ(アメリカでは「ソープオペラ」と呼ぶ)で1973年から既に42年にもわたって放送され続けているドラマのタイトル。原題の意味は直訳すると「若さゆえに落ち着かない」という感じで、ヘイズ中村さんの意訳では「青春のざわめき」。
 
日本ではこのドラマのテーマ曲が『コマネチのテーマ(Nadia's theme)』として有名である。なぜコマネチになったかというと、1976年モントリオール五輪で金メダルを3つも取ったルーマニアのナディア・コマネチの体操演技の映像に重ねて、よくこの曲を掛けていたかららしい。(コマネチが演技の時にこの曲を使用したわけではない)
 
ヘンリー・マンシーニやポール・モーリアなどのポップ・オーケストラによる美しい演奏でも知られ、イージーリスニングの定番曲のひとつにもなっている。ベンチャーズによるロックバージョンなどもある。
 

この曲の音源は、アクア自身のフルートの美しい調べをフィーチャーして制作された。
 
PVもこの制作時の様子をそのまま使用しており、この音源のフルートはアクアによるものであることも明記したので、
 
「アクア様って、こんなにフルートが上手いの?」
と驚きの声があがっていた。
 
この曲のバックで信濃町ガールズが“ライトグリーンのブレザーにタータンチェックのミニフレアースカート”という“信濃町ガールズの制服”を着てダンスをしている。これが信濃町ガールズのビデオ上の初出となった。
 
この時バックで踊ったのは後に“オリジナル10”とファンから呼ばれることになる下記の10名である。
 
川内峰花・大村祭梨・仲原恵海・月嶋優羽・米本愛心・佐藤ゆか・南田容子・天月西湖・溝口ルカ・秋田利美
 
後に他プロダクションへ転出した月嶋優羽や米本愛心などにとっては貴重な映像である。
 
そういう訳で、西湖はしっかりミニスカの衣装を着せられてダンスすることになった!
 

このPVの最後にはアクアが“男性用バレエ衣装”にトゥシューズ(今のアクアの足サイズで再度オーダーメイドした)を履いて、『白鳥の湖』の黒鳥32回転を踊る映像が入っており(32回転を全部映した)、
 
「すげー!」
という声があがるのと同時に
 
「なんでチュチュじゃないのよ!?」
という不満の声もあがっていた!!
 
(毛利は「黒鳥の衣装か、せめてクラシック・チュチュ着ようよ」と言ったが、同席していたコスモスが不許可とした)
 
もっとも男性用バレエ衣装を着けていると、お股がスッキリしていて何の盛り上がりも無いのが明確に分かるので、
 
「アクア、やはりチンコ無いのでは?」
「アクア様におちんちんなんかある訳ないもんね」
 
という声もあがっていた。
 
でも龍虎が2014年末のバレエ発表会で黒鳥の衣装をつけて32回転をやっている映像もすぐに流出した。
 
「チュチュ着てる〜!!」
「かっこかわいい!」
という声もあがっていた。
 

『テレパシー恋争』は秋からのドラマ『ねらわれた学園』の挿入歌にすべく作られた作品である。ゆきみすず作詞・東郷誠一作曲とクレジットされているが、実際には葵照子・醍醐春海(琴尾蓮菜・村山千里)のペアが書いたものである。
 
“恋争”は“れんそう”と読み、連想の同音異義語。連想はテレパシーの類語という構造になっている。テレパシーを使った恋の鞘当てで、2人の女子からテレパシーをたくさん送られた男子が頭痛になって頭を押さえて倒れるというストーリーになっている。
 
これは『ねらわれた学園』の学級会での対決で、高見沢みちるの脳波攻撃で関耕児が頭を押さえて倒れるシーンのパロディである(本編より先に公開されることになった)。
 
演じているのは、男の子はアクアだが、女の子2人は実は『ねらわれた学園』で男子生徒!を演じている中学1年男子の古賀君と千鳥君である。
 
実はドラマの撮影が終わって三々五々と俳優さんたちが帰っていた時に
 
「誰かアクアちゃんのPVに出てくれる人居ない?先着2名」
とその日アクアの付き添いで来ていた川崎ゆりこが呼びかけたら、この2人が
 
「はい!はい!」
と手を挙げて寄ってきたので、出演してもらった。2人はスタジオまで来てから
 
「え〜〜!?女の子役なの?」
と驚いたが、
「2人ともセーラー服行けるよ」
とゆりこが言って乗せてやらせた。
 

2人には足の毛は剃らせてもらい、下着から女物を着けてもらって(下着を付ける時「はみだして」しまったので、いったん「処理」してもらってきた後でガードルを着けさせた)。
 
セーラー服を着せてウィッグを着け、メイクアップアーティストさんにナチュラルメイクを施してもらった。
 
中学1年生だけあってまだ身体付きも顔つきも“男”になりきっていない。それでちゃんと女の子に見える雰囲気に仕上がった。
 
そもそも役者志望の子たちだけあって2人とも結構な演技力があり、ちゃんと女の子っぽい演技もできたので、撮影は1時間で終了した(その前に女の子に変身してもらうのに2時間掛かっているが!)。
 
とても可愛く撮れたし、撮影されたまだ未編集のビデオを見て
 
「すっごい可愛い!」
と本人たちが感動していた。
 
「でも癖になったらどうしよう?」
「最近男の娘の需要、わりとあるよ」
「うーん・・・」
 
「着けてもらった下着は持って帰っていいですから」
 
とゆりこが言うと、2人とも顔を見合わせて、結局着けたまま!帰宅したようである。
 
むろんアウターは学生服に戻っていたものの、着けてもらった下着は、パンティー、ガードル、ブラジャー(スーパーフックでアンダー延長)、ウレタン製バストパッド、キャミソールである。
 
2人が女の子下着をどう使うかは神のみぞ知る!?
 
あるいは2人の人生は変わってしまったかも知れない!??
 
ちなみにこの撮影のことが漏れて、放送開始後、高見沢みちるを演じているのは誰か?というのが議論になった時、実は女装の古賀君では?という説も出ていたようである。古賀君は身長が172cmほどで、高見沢みちるの身長に合致するのである。千鳥君の方は身長が合わない。
 

『朝食ラーメン娘』はヨーコージ(ドリームボーイズの蔵田孝治)の作品である。元々は『朝焼けにラーメン・いきなり焼き肉』だったが、コスモスの要請で少しトーンダウン?して『朝食ラーメン娘』に落ち着いた。
 
朝からラーメンくらい食べちゃう元気な女の子を歌った作品である。
 
(このアルバムはほとんどの作品がアクアがまるで女の子であるかのような作りがされている)
 
アクアが朝起きてパジャマから普通の服(自粛してスカートではなくズボン)に着換え、朝御飯の席に就いてラーメンを食べながらテレビで桜野みちるのライブ映像を見ているというストーリー仕立てのPVが作られた。
 
タイトルは『朝食ラーメン娘』だが、実際に朝御飯にラーメンを食べているのはアクアなので
 
「つまりアクアは娘ということでいいんだよね?」
「何を今更」
「アクア様が息子なわけない」
 
といつもながらのファンの反応であった。
 

9月26日(土). スペインのLFBが開幕し(開幕自体は25日)、千里たちグラナダ・レオパルダは初戦に臨んだ。この日はいい試合はしたのだが、6点差で敗れてしまった。それで今シーズンは黒星スタートとなった。
 
10月3日(土)、先日“妖怪徘徊”問題を解決した富山県J市に桃香・青葉と3人で訪れた。ここでその妖怪問題とは別に起きていた“クラクションの怪”という事件を調査し、うまく解決することができた。
 

貴司は日本男子代表の1人として9月23日から10月3日まで中国の長沙でやはり五輪予選を兼ねるアジア選手権に参加した。
 
その渡航の少し前9月9日に貴司は千里と都内のホテルでデートした。この時、貴司は千里にセックスさせて欲しいと言ったが、千里は例によって、結婚している男性とセックスはできないと断る。しかし貴司がしつこいので千里も折れて「アジア選手権で優勝したらセックスしてもいい」と言った。
 
実際には日本男子はこのアジア選手権で4位になり、オリンピック切符は確定しなかったものの、世界最終予選に出場することができるようになった。そのきっかけとなったのがカタール戦での貴司の大活躍であった。
 
貴司は10月5日帰国したのだが、千里がその貴司を呼び出す。横浜のホテルの指定された部屋に行った貴司に千里は言った。
 
「今日のことは忘れることができますか?」
「忘れる」
「じゃ今から1時間くらいのことは無かったことに」
「うん」
 
それでふたりはキスをして一緒にベッドの中に入った。
 
2人は30分ほどで眠ってしまうが、千里はその寝ている間にその3年前のことをリフレインするような夢を見た。貴司も似たような夢を見ていた。貴司はなぜ自分と千里はこんな迷路に入り込んでしまったのだろうと自省していた。
 
そして目が覚めた時、千里は宣言した。
 
「私は貴司の妻に復帰したから」
と。
 
貴司は黙って千里を見ていた。そして思い起こしていた。以前千里は、次に自分とセックスするのは、ふたりが夫婦に戻った時だと言っていたことを。
 
 
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【娘たちのベイビー】(3)