【夏の日の想い出・ラブコール】(4)

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ローズ+リリーのアルバム制作は、8月10日から『Multiply』(増殖という意味)の制作に入った。これは私がこの春に見た夢がベースになっている。
 
私は雑誌にコラムを書き、毎月20万円の報酬をもらっていたが、仕事が忙しくなり、コラムを書く時間が無くなってしまったので、申し訳無いけど、とお断りした。それからしばらくして、依頼者の会社に行くと、会議室に猫が20匹いる。
 
実はあなたに払っていた報酬でこの猫たちの御飯を買っていたのですが、コラムが無くなってしまい、この子たちを飼い続けることができなくなったので、バラバラに里子に出すことになったんですよ、と言われるので、それは悪いことをしてしまったと思う。そして子供たちが泣いている中、猫たちはとうとうあちこちに里子に行くことになる。子供たちが「○○ちゃんとはいつ会えるの?」と言うので、私は子供たちに嘘をつくことになるけど「7月に会えるよ」と言った。
 
というところで目が覚めた。
 
なんか物凄く罪悪感を感じてしまったのだが、よく考えるとこの夢はおかしい。
 
コラムを書いて報酬をもらっていたのは私である。依頼主は20万円を私に払ってくれていたわけで、依頼主がもらっていたわけではない。それなのに、コラムが無くなったので餌代が出せなくなったといのは辻褄が合わない。
 
などということを政子に言ったら「その話もらった」と言って、詩を書いたのである。政子は最近不調でなかなか詩を書けないようなのだが、この日はスイスイと書いて私に渡してくれた。それに曲を付けたものである。
 
これは1匹の猫が49匹!に増える話である。
 
最初は雄猫1匹だったのが、奥さんを連れて来た。そしてその奥さんが子猫を6匹産んだ。その子猫たちがみんな各々、奥さんあるいは彼氏を連れてきて14匹になる。そしてこの7組のペアが各々子供を平均5匹産んで35匹増え、49匹になる。
 
それでこの猫たちの餌代を稼ぐために私がビアノに向かって必死で曲を書いている、というところで終わる(落ちが無い!)。
 

そういう訳でこの曲のPVは私とマリ自身で演じた。
 
マリが捨て猫を1匹拾ってきた所から始まり、奥さんを連れて来て2匹になり、奥さんが子猫を6匹産んで8匹になる。子猫が各々のパートナーを連れてきて6匹増えて14匹になり、7組のペアが各々子供を産んで35匹増えて49匹になる。
 
それで餌代を稼ぐために、私が5人に分裂して!各々の私がそれぞれピアノの前で必死に五線譜にボールペンを走らせているのである。
 
猫は最初の2匹(栗原リアの飼い猫サファイヤとフランツ:どちらも雑種の3歳:避妊手術済み)以外は、CGで描き込んでいて、実際の撮影はほぼ私とマリの2人だけで行なった。
 
発売後「これに近い話を聞いた」という反響が多数寄せられた曲である。
 
ああ、恐い!
 
なお、5人のケイはもちろん合成だが
「やはりケイは5人いたんだ!」
というジョーク(だと思う)が多数、ネットに書き込まれた。
 

楽曲の方は、アコスティック楽器をベースに、木管・弦楽器を入れているが、金管は入れていない。木管セクションで、録音をしていた時にたまたま通りかかった甲斐姉妹を捕まえて“猫笛”(ピッチが違う2個)を吹かせている。それで「ニャーオ」という音(声?)が多数入った、楽しい曲になった。
 
歌っているマリも随分楽しそうだった。
 

8月14-15日には、仙台の織姫で、姫路スピカのネットライブ、甲斐姉妹と水谷姉妹のネットライブが行われ。バックダンスは九州・沖縄の信濃町ガールズが務めた(当然集められている東北地区の子たちと交替で踊る:交替しながらでないととても体力がもたない)。
 
更に16日には小浜市のミューズシアターでアクアのネットライブが行われた。このライブのバックダンサーは、今年のビデオガールコンテストに上位入賞したばかりの子たちを連れて行った(これに福井・鳥取・島根在住の地方ガールズを加えた:感染拡大地域からの移動を控えたので石川・富山や関西地区からは呼んでいない)。
 
リハーサルはアクアも葉月も多忙で間に合わないし、前回リハーサル役を務めた水物ビーナも多忙なので、背丈が近い薬王みなみがアクアの代役をして行なわれた。みなみは大役に興奮したものの「気持ちいいー」と言っていた。
 

アクアは今回も5月のライブと同じように、前半はドレスで、後半は男性衣装で歌った。どうもコスモスとしては、しばらくこのスタイルを使うつもりのようである。ドレスを着たいというのはアクアFの希望らしい。
 
信濃町ガールズの新人たちは、本番でアクアの歌唱を間近で聴いて感動していた。アクアの実力を肌で感じ、各々自分が追いつき追い越すべき目標として認識したようである。
 
もっとも森田浩絵などのように
「アクアさん、すごーい。やはり私とかとは格が違う」
と、単に圧倒されてしまった子もいたようではあるが!
 
信濃町ガールズはラストまで全く疲れを見せない、アクアのスタミナにも驚いたようだが、これは2人で半分ずつ歌ったおかげというのは、さすがに明かせない。
 

昨年あるできごとに関して書いた『All of You』("I love you All"から改題)を8月17日から制作開始した(これで6曲目)。
 
政子の子供大輝の父親は以前の彼氏・大林亮平で、彼が胎児認知していたので、大輝の戸籍の父親欄には、きちんと大林亮平の名前が記入されている。これは実は亮平の(現時点での)唯一の実子である。
 
大林亮平は昨年、原野妃登美と結婚し、妃登美は昨年9月2日に月花を産んでいる。しかし実は月花は亮平の子供では無い(法的には亮平の子供ということになっている。だから法的には月花と大輝は姉弟であるが本当は無関係)。
 
月花の本当の父は、作詩家の八雲春朗である。八雲春朗は2019年頃から“三つ叉”をしていて、高木佳南(東郷誠一の娘)、氷川真友子(ローズ+リリーの担当)、原野妃登美の3人と同時に付き合っていた。
 
そして“誰かさん”のニードルワークのお陰で、3人を同時に妊娠させてしまった!
 
そしてその3人が全員2020.9.2に子供を産んだのである。
 
結局八雲春朗は高木佳南と結婚したので、彼女が産んだ宏文は普通に夫妻の子供として入籍された。
 
氷川真友子は春朗の弟(現在は妹だが戸籍上はまだ男性だった)・八雲礼江と結婚したので、真友子が産んだ稲美は、礼江の子供として入籍された。ただし、礼江はとっくの昔に性転換手術を受けており、精子など存在しなかった。2人の結婚は事実上のレスビアン婚である。礼江は真友子が春朗の子供を妊娠しているのを承知の上で、真友子に自分と結婚して欲しいと言った。
 
春朗と礼江は兄妹(元兄弟)で血液型も同じなので、生まれた子供の血液型や容姿などで、問題が生じる可能性が全く無いのである。
 
そして大林亮平も、妃登美が他人の子を妊娠しているのを承知で彼女と結婚した。実は、大林亮平は過去に彼女と付き合っていた時期もあったものの、政子との結婚を考えて、妃登美とは別れていた。
 
ところが亮平と政子は決裂してしまい、結婚はキャンセルになった。すると、政子が亮平を妃登美に“トレード”してしまったのである!妃登美が結婚できない男の子供を妊娠していること、男からもらった手切れ金だけでちゃんと子供を産んで育てていけるか不安を持っていることを知り「亮平に面倒みてもらいなよ」と言って、妃登美が春朗からもらった手切れ金と交換に亮平を妃登美に売っちゃった!のである。
 
亮平は自分が“売り渡された”と知って仰天したものの、子供を妊娠していてその父親と結婚できない妃登美に同情した。それで彼女のお腹の中の子供の父親になってあげることにしたのである。
 
だから、一連の親子関係は、建前としては↓なのだが
 

 
本当はこのようになっているのである。
 

 
私は、自分の種でない子供を産む女と敢えて結婚してあげる亮平の心意気に感動し、“君の全てを愛す”という曲を書いたのである。
 

もっともこういう内容をストレートに歌詞に出すと、上記、秘密の親子関係を暴露してしまいかねないので、私は“坊主愛しければ袈裟まで愛しい”という雰囲気の歌詞にまとめあげた。
 
「フェチだ」
と随分ファンからは言われた歌である。
 
MVには、花咲ロンドと、桜木レイアに出演してもらっている。
 
むろんレイアが彼氏役で、ロンドが彼女役である!
 
ふたりが楽しく夕食を一緒にして、一緒に寝室に消えて行く。そして一夜開けて、彼氏はお仕事に出かける。その後で、ロンドはスマホを開いて彼氏の写真を見てうっとりしている。更に彼が脱いで行ったパジャマを抱きしめたり、彼の使っていたパソコンを撫でてみたり、彼が昨夜熱心に見ていた、常滑真音のビデオを自分も見て、やはりうっとりしている。
 
それは舞音ちゃんを見ているのではなく、舞音ちゃんのビデオを通して、愛しい人の面影を見ているのである。
 
このフェチかげんが物凄い名演技だと言われた。こういう女を演じるのがまたロンドは似合っているのである。
 

2021年8月18日(水).
 
舞音withスイスイが歌う『こどものうた』(22曲入りアルバム)が発売された。CDジャケットは、黒招き猫に扮した舞音と、白招き猫に扮した水谷姉妹である。
 
舞音は『タイカジキ、カニエビ、イカタコ、サケマグロ』のヒットで、子供たちに人気のお姉さんになったので(幼児番組にもよく呼ばれているし、幼児雑誌の表紙も飾っている)、その曲を含む、こども向けの歌を歌ったものである。
 
7月中旬から『招き猫2』と同時進行で作っていたもので、こちらが先に完成していたので発売もこちらが先になった。
 
『こどものうた』は信濃町アンサンブルの伴奏・水谷姉妹のコーラス・山本コリンの仮歌。『招き猫2』は招き猫バンドの伴奏・水森ビーナの仮歌(最終的にセレン&クロムのコーラスを入れた)で、舞音だけが両方のメインボーカルを取るという、かなり無茶苦茶なスケジュールの進行だった。
 
「私4人分くらい仕事してる気がする」
と舞音は言っていたが、これをやりながら、熊谷のスタジオでCM撮影したり。東京にヘリで往復してテレビの歌番組とかにも出ていたので本当にそのくらい仕事をしていたと思う(舞音はスケジュールが混んでいるのと、感染予防の観点からもバラエティにはできるだけ出さないようにしている)。
 

8月18日のお昼過ぎ、青葉から連絡があり、やはり現役を続けることにするということだった。何でも最後は水連会長の鈴木大地さんに説得されたらしい。私は鈴木大地さんが日本水連の会長をしていたことを知らなかったが、ともかく彼女の決断に賛成し、激励した。あらためてこちらは今後も青葉を含む“津幡組”を応援するということを伝えた。
 
青葉は19日にHonda-Jetで金沢に帰り、ローカル番組でメダルを披露したらしい。゜
 

8月20日(金).
 
この日はアクアの20歳の誕生日であった。この日、アクアはΛΛテレビから記者会見を行った。この記者会見には下記のメンツが顔を揃えた。
 
アクア本人、醍醐春海(千里)、田代涼太、長野支香、志水照絵、秋風コスモス、雨宮三森、上島雷太。
 
私はここに出なかったが、何かあったら顔を出せるよう、近くの部屋で待機していた。
 
アクアが誕生日に何か本人自身のことについて何か発表するらしいというのは春頃から噂に流れていて、多くの人が性別問題についての発表、つまりアクアは本当は女であった、あるいは何かの原因で女になってしまったという発表ではと思っていた。
 
しかしアクアは言った。
 
「実は発表するのは私の両親に関することです」
 

それから1時間ほどにわたり、この8人がリレー方式で説明した内容は極めて驚くべきことであって、反響は物凄かった。
 
・自分の両親はワンティスの高岡猛獅と長野夕香であること。
・最初に志水夫妻に預けられた経緯
・両親の事故死の後のこと
・アクアの病気のこと
・長野支香・上島雷太がアクアの存在を知った経緯
・アクアの戸籍が作られるまでの話
・ついに病気の原因が分かり手術を受けたこと
・退院後のアクアを誰が面倒見るかという問題
・田代夫妻の申し出
・その後の病気療養のこと
・成長の遅れと治療薬の副作用
・オーディションを受けた経緯
・両親のことを20歳になるまで公表しないことにしたこと
・その後のこと
 
(今回は龍虎の戸籍の父親欄の問題は公開しなかった。また手術前夜の“龍に乗って飛んだ夢”の話も省略した)
 
ただ、みんなアクアの性別問題について何らかの説明があるものと思っていたので今回の記者会見は、その“期待”を肩透かしにした形になった。それで結果的には翌日の新聞ではこの記者会見の記事はあまり大きな扱いにはなっていなかった。
 

この日は、龍虎Mは、彩佳たち3人、西湖と和紗、の合計6人で代々木のマンションでお誕生会をした(西湖も同じ誕生日。ちょうど1つ下)。
 
ただし、ケーキのろうそくは息ではなくうちわで消す、お誕生会の間は飲食無し(各自ペットボトルから直接飲むのだけOK)、食事は誕生会終了後各自の部屋で。というルールにした。また未成年が3人いるのでアルコール無しである。
 
部屋割については、
 
M部屋:龍虎Mと彩佳
F部屋:西湖と和紗
N部屋(鏡部屋):桐絵と宏恵
 
という形で2人ずつ泊まった。
 
龍虎Mは彩佳から誕生祝い・成人祝いにパーカーの金色のボールペンをもらった。先月龍虎があげた“ファッションリング”のお返しである。龍虎は「高そう」と思ったが「千里さんのお陰で住居費がかかってないから少しゆとりがあった」と彩佳は言っていた。
 
なお龍虎Fは八王子の家で松田君とのんびりした夜を過ごした。松田君から何かもらったらしいが、Mにも秘密らしい。
 
(まさか子種じゃないよね?とMは心配した。Fは“自分が存在している間に”子供を産みたいと時々言っている。でもMは本当にどちらが消えるかは分からない気がしているし、自分が消えた場合は彩佳のことを頼むとFには言っている)
 
和紗は西湖にホワイトハウスコックスのバッグを誕生祝いにあげた。モノセックスなデザインで、西湖が女装で使用しても問題無い感じのものである。そして和紗は言った。
 
「せいちゃんが20歳になったら、私、せいちゃんの赤ちゃん産んでもいい?」
「ボクの赤ちゃん!?」
 
葉月は想定外の話に真っ赤になっていた。
 

仙台の織姫で、8月21日にはラピスラズリ、8月22日には常滑舞音のネットライブが行われ、どちらも物凄く練り上がった。
 
特に常滑舞音は、回線接続者数の見積もりを誤り、回線ダウン寸前になったのを何とか持ちこたえた。結果的に舞音の現在の集客力は、アクアに次ぐレベルであることが明らかになった。
 
今回のバックダンサーは中国四国地区(+東北地区)の子たちが務めた。実は震災イベントでも中国地区の子たちを使ったので、今回は関西地区の子たちを使おうかとも考えていた。しかし、大阪周辺のコロナの状況が深刻になっているので、その地区からの移動を回避したのである。同じ理由で関東地区の子も避けた結果、消去法で中国四国になった。北陸東海の子はゴールデンウィークに使っている。東北地区の子は当然集められているので両者で交替しながら踊ることになった(先週は九州地区/東北地区でおこなった)。
 
今回特に常滑舞音のライブでは、フラワーサンシャインの歌を歌うのにバックダンサーから5人が前面に出て来てフラワーサンシャインっぽいユニフォームで踊ったり、アンコールでは、全員マネキン人形のふりをしてみたり、通常のバックダンサーの域を越えるパフォーマンスがあって、ガールズたちもかなり楽しんだようである。
 

「え?アクア、今年は紅組から出るの?」
 
私はコスモスからの電話で、アクアは今年は紅白歌合戦では紅組から出ることに本人が同意したと聞いて驚いた。
 
「あの子、もう自分は女の子ということでもいいと思い始めているのかなあ」
「周囲はほとんど女の子だと思ってるけどね」
「まあ確かにそうだ」
 
何でもNHKの部長さんがわざわざ事務所に来訪して、アクアを説得したらしい。
 
「いっそ、もう性転換手術受けちゃう?と言ったら嫌だと言った」
「まあMちゃんは女にはなりたくないだろうね」
 
Mは・・・女の子になってもいいと思った瞬間消滅するだろうなと私は思った。
 
「可愛いドレス発注したし、Fが出たらと彼には提案した」
「Fちゃんは紅組から出るの喜ぶだろうね」
「まあ2人で役割分担していけばいいと思うんだけどね」
 
「ところでFが万一妊娠した場合だけどさ」
と私は言った。
 
「うん」
「千里が自分の家の地下で妊娠中と出産後半年くらいは過ごさせると言ってたよ。産科医・助産師も間違い無い人に来てもらって」
 
「そうしてもらえると助かる」
「その間はM1人で頑張ってもらわないといけないけどね」
 
千里家の地下を知っているのは、千里2・千里3・アクアF・アクアM、私とコスモス、青葉、千里の親友の佐藤玲央美くらいという話だった。他に恐らく皆山さんは知っている(そこで練習してるというのを伝えているはず)。しかし貴司さんや桃香さえ知らないし、入ることもてきない。厳しいセキュリティが掛かっている。
 

「私、松田君と1度話したんだよ」
とコスモスが言うので
「話したんだ!」
と私は驚いた。コスモスは本当に行動が速い。先手先手と打っていく。
 
「少なくとも彼女が25歳になるまでは絶対に妊娠させないよう確実に避妊すると誓ってくれた」
「彼はしっかりした人だよ。アクアもいい男の子を捉まえたと思うよ」
「うん。ほんといい子だね」
とコスモスも言っていた。
 
2人の関係もアクアが25歳になるまでは公表しないということで松田君とは合意したらしい。
 

8月21日(土).
 
原町カペラは自ら車(自己所有の赤いパッソ)を運転して、仕出し屋さんで予約していたお弁当3個を受け取ると、川井陽生のアパートまで行った。
 
「顔色いいじゃん」
「ごめんねー。色々迷惑掛けて」
「お互い様、お互い様。でもお母さんも大変でしたね」
「明日帰るつもりですけど、家の惨状が心配です」
「ああ、それはたぶん掃除が大変だ」
と言ってから、カペラは
 
「こちらも掃除しよう」
と言う。
 
「それしなきゃと思ってた。お母さんがだいぶ片付けてはくれたんだけど」
 
それで3人で手分けして、布団を干したり、掃除機を掛けたり、古い雑誌をまとめたり、窓をマイペットで拭いたりしたのである。
 
ガス台のマットも交換したが、換気扇は見なかったことにした!
 

しかしお昼くらいまで掛けて、かなりきれいになった。
 
「結構いい汗を掻いたね」
と言いながら休む。みんな汗を掻いた服を着替え、シャワーも浴びた。
 
そして3人でお弁当を食べた(お互いに充分距離を空け、“同じ方向”を向いて座る)。
 
「だけどホテル療養とか暇じゃなかった?」
「だいぶネット小説読んだ」
「ああ、そういうの進むよね」
「ヒナちゃんは自己隔離中、暇じゃなかった?」
「社長から、あんた暇でしょ?と言われてアルバム1枚作った。来週発売」
「それは凄い!」
「隔離されてる部屋の隣に簡易スタジオが作られて」
「へー!でもそれは§§ミュージックさんならではだよ!コスモス社長ってほんとに行動力あるもん」
「私もスタジオできちゃったのにはびっくりした」
 
カペラは彼女に発売予定のアルバムを謹呈したが、それを聴いた陽生は言った。
 
「これ絶対売れると思う」
「そうかな?」
 

『All of You』の制作は8月23日で終了したが、“アルバムの制作は”この後一週間ほどのお休みに入った。
 

8月25日(水).
 
原町カペラが自己隔離期間中に制作したアルバムが発売された。カペラとしては3枚目、そして約2年ぶりのアルバムである。カペラは先月21日にシングルを出しているのだが、その時、隔離されている部屋から発売に向けてのメッセージを発信している。その時に「隔離されていて他に仕事ができないのでアルバムを作っている」と発言していた。
 
今回は濃厚接触者として隔離されていたことに同情が集まったこと、シングルでの予告で予約がたくさん入っていたことから、初日に2万枚も売れて本人がびっくりした。過去にカペラのアルバムで1万枚以上売れたものは無かった。しかし予約の入り具合が凄いというので事前にたくさんプレスしておいたおかげで何とか在庫切れを起こさずに済んだ。
 
このアルバムは「カペラちゃん、上手くなってる」とも言われて(花咲ロンドがしっかり指導したおかげだと思う:過去の制作ではあまりまともに指導されていない)、FMなどでも掛けてもらい、1ヶ月後には8万枚に到達した。
 
「こんなに売れるなんて信じられない。ファンの皆様、本当にありがとうございます」
とカペラは感謝していた。ファンクラブの登録者もこれまでの倍になった。
 
今回は彼女の年齢(今年の春高校を卒業した)も考えて、これまでのようなアイドル歌謡のような曲は少なく、おとなのポップスがほとんどを占めていたので「路線変更の成功」と音楽雑誌には書かれた。
 
カペラの“4年目のブレイク”を見て、私は§§ミュージックはいよいよ群雄割拠になってきたなと思った。
 

和紗は和城理紗に送ってもらって帰宅した西湖に、もじもじしながら言った。
 
「おのね、あのね」
「どうしたの?」
 
なんか可愛いじゃんと思いながら西湖は尋ねた。
 
「私、できちゃったみたいなの」
「できたって何が?」
「赤ちゃん」
「へ?」
 
「6月にさ、せいちゃんのちんちんが奇跡的に立ったことが1度あったじゃん。それで生でしちゃったでしょ?」
 
「あ、うん」
「あれが当たっちゃったみたい」
「え〜〜〜!?」
「私も妊娠というの想定してなかったから、最近随分体調悪いなと思ってたんだけど、玉雪さんが『あんたもしかして妊娠してない?』というからさ。まさかと思って妊娠検査薬使ってみたら陽性で」
 
「うっ」
 
「玉雪さんに付いていってもらって病院行ったら、今12週くらいらしいから、あの時の子供だと思う」
 
「じゃボクの子供ができるの〜?」
「うん。順調に育ったらね」
 
「お仕事は予定日の3ヶ月前くらいまでは続けるけど、コスモス社長から早朝と夕方以降の作業を禁止されたから、夜間の送迎は志穂ちゃんか理紗ちゃんに頼むと玉雪さんが言ってた」
 
「うん」
と西湖は何とか答えたものの、自分が父親になるなどというのは、想像の範囲を越えていたので、頭の中が真っ白になった。
 

8月28日は品川ありさ、29日は高崎ひろかのネットライブを織姫で行った。これで今年夏の一連の(通常)ネットライブは終了した。高崎ひろかのライブでは幕間に松梨詩恩・高崎ビーナ姉妹(姉弟?)が登場して、詩恩の曲1曲とビーナが近い内にリリースする予定の曲2曲を歌った。
 
幕間が終わって、高崎ひろかが後半の衣装で登場した所で一時的に三姉妹が並ぶ。それを司会の鈴鹿あまめが撮影してこのライブのホームページにアップしたら、とても好評だった。
 
今回のイベントで高崎ひろかたち三姉妹を運ぶのに初めて Honda-HetSilverが使用された。(品川ありさは今回 Red を使用した)
 
これでSilverも処女飛行を終えて5機がいつでも使用できる状態になった。
 

今回のありさ・ひろかのライブでバックダンサーを務めたのは信濃町ミューズのメンバーである。具体的には下記のメンツ。
 
三田雪代(19) 太田芳絵(高3) 斎藤恵梨香(高2) 大仙イリヤ(高2) 夢島きらら(高2) 今川容子(高1) 坂田由里(高1) 青木由衣子(高1) 左蔵真未(高1) 山本コリン(高1) 直江ヒカル(高1)
 
高3以上の5人をHonda-JetYellow, 高1の6人をOrange で連れて行っている。つまり今回はHonda-Jetが4機使用された。
 
今回は東北の地方ガールズは集めていない。その代わり、経験の長い子たちが多いので、結構複雑なフォーメーションのダンスを披露してくれた。
 
運動神経の良い山本コリン・直江ヒカルがバク転を交えたパフォーマンスをして、ダンスへの歓声があがり、思わずありさ・ひろかが後を振り返るシーンもあった。
 

ありさ・ひろかのイベントで5機のHonda-Jetの内、Red, Silver, Yellow, Orange を使用したのだが、残るBlueを使って、実は青葉を東京に呼んだ。
 
ラピスラズリが夏休みの内に『作曲家アルバム』の取材をしておきたかったのである。年末が近づくと、ラピスラズリはかなり多忙になることが予想される。
 
そこで青葉は8月25日にHonda-JetBlueで能登空港から熊谷に連れて来て、下記の日程で取材をしてもらった。
 
取材日/放送予定日
8.26 11.08 神崎美恩・浜名麻梨奈
8.27 11.22 醍醐春海
8.28 12.06 ゴールデンシックス
8.29 12.20 ステラジオ
 
2008年組の私を先日取材したので、続けてXANFUSの神崎美恩・浜名麻梨奈の取材をする。続いてオリンピックで取材を延期していた2007年組の醍醐春海を取材してから、醍醐春海と関連の深いゴールデンシックスを取材する。ステラジオは“ポスト2008年組”の筆頭ということになる。
 

神崎美恩・浜名麻梨奈は、国分寺市の神崎美恩の御自宅を訪問した。
 
XANFUSは音羽・光帆は無茶苦茶だし、mikeは適当だし、noirはわりと何も考えてないし、yukiは訳が分からないし、kijiはなぜかいつも「お金が無ーい」と言っているが、作詞作曲を担当するこの2人はわりと堅実だし、常識人である。2人ともちゃんと貯金して、数年前に2人とも国分寺市内に1戸建てを建てているし、2人とも結婚して夫と一緒に暮らしている。
 
今回ラピスラズリはXANFUSの出世作『Down Storm』を歌ったが
「ロック魂が足りない」
と言われ、30分ほど指導が入った!結局この歌は朱美がメインボーカルを取った。
 
この歌が生まれた時の話も聞く。
 
・浜名麻梨奈が携帯をしながら自転車に乗ってて、道が無くなっているのに気付かず数メートル転落した。その時、物凄い“風”を感じた。
 
・病院に運び込まれ手術を受けたが、その手術の最中に唐突にメロディーが浮かび、結局手術を受けながら書いた。
 

「なんか凄い状況で書いてますね」
と東雲はるこが本当に驚いたように言う。
 
「ながら運転は絶対にしちゃいけないよ」
「あれひとつ間違えば死んでた」
と相棒の神崎美恩は言う。
 
「手術受けた時、母ちゃんには、命の保証はできないとお医者さんが言ったらしいし、腰の骨が折れてたから妊娠に困難が生じる可能性あると言われたけど、ちゃんと赤ちゃん産めたから」
 
「それもラッキーなだけだと思うよ」
と神崎美恩は言う。
 

2人はXANFUSの音楽のあり方について熱く語った。多人数で一緒に演奏しながら練っていくと、曲は“本来あるべき形”に落ち着いていく。それがその曲の完成形だと神崎美恩は言う。
 
ただコロナの情勢で今集まって練るということができないから、レコード会社の技術部の人に、各メンバーが“同じ時間差”で全員の演奏を聴ける環境を作ってもらい、リモートで楽曲を練っているという。
 
「やりにくいけど、コロナが落ち着くまでは仕方ない」
「音羽と光帆は外で飲めないからお金が無くならないと言ってた」
「ああ、それはいいことです」
 
この日はやはり常識人の2人だけあって、ラピスラズリも楽しく取材をすることができたようである。
 

8月27日は醍醐春海(千里)の取材に行く。これは浦和の千里家に行った。地下のラウンジの方が取材にはいいのだが、そこは非公開なのでカメラを入れることはできない。それで1階のLDKを使用した。
 
「ここは大宮万葉先生の御自宅でもあるんでしょう?」
「そうそう、そちらに万葉の部屋があるよ。東京方面に出て来た時はその部屋に泊まる」
と千里は指さす。
 
「ここは、私と青葉と私の“友人”の桃香と3家族が共同で暮らしているんだよ」
「大きい家だなと思いましたけど、家族も多いんですね」
「何人住んでるのかよく分からなくなることもある」
「人数多いとそうかも」
 
実際には建前上は↓の9人が住んでいる。
 
千里・青葉・彪志・桃香・貴司・早月・由美・京平・緩菜
 
しかし実際には↓の13人がここにいることがある。
 
千里1・千里2・千里3・青葉・彪志・桃香・貴司・早月・由美・京平・緩菜・龍虎M・龍虎F
 

「念のため確認しておきますけど、醍醐春海先生がお姉さんで、大宮万葉先生が妹さんですよね?」
と町田朱美は言った。
 
「それよく誤解されるんだよ。私は年甲斐もなく10代の子が着るような服が好みで、万葉は落ち着いた服が好みだからかもね」
と千里が言うので、そういうことにしておいたが、朱美は絶対服だけの問題じゃないと思った。
 
実際には現在、千里が30歳、青葉が24歳なのだが、だいたい青葉は28-29歳くらい、千里は25-26歳に見られることが多い。
 
「まあ万葉は今でも『北陸霊界探訪』で心霊相談やってるけど、小さい頃から霊相談してたから、当時は年齢が上に見られるのはクライアントに信頼感を与えていたんだよ」
 
「なるほどー」
 
「小学生に言われても今一信頼性が無いけど、高校生くらいかなと思われると信頼してもらえる」
 
「それあるでしょうね」
「だから本来の年齢より6-7歳上に見られるのを容認してたら、それが今でも続いてしまってるんじゃないかな」
 
「そういう訳で年齢を誤認されるんですね」
 

本格的なインタビューが始まる前に、立体駐車場や半地下のバスケット練習場なども撮影した。
 
「このバスケット練習場って、階段とかは無いんですか」
「無い。滑り台だけ」
「面白い仕様ですね!」
と滑り台を歓声をあげて滑り降りた東雲はるこが本当に面白がって言っていた。
 
「まあ上に昇る時は駐車場のエレベータを使う手もある」
「なるほどー」
「だから子供たちが、滑り台でここに降りて、駐車場まで走って行って、エレベータで地上に出て、駐車場の軒下、駐車場と母屋の間の通路と走って戻ってくるというので永遠にぐるぐる走っている」
 
「楽しそう!」
とまた東雲はるこが言った。この日は普段言葉の少ない東雲はるこが結構しゃべっていた。
 

創作に使う2階の部屋も見せる。
 
「ここは防音になっているから、夜中でも他の住人に迷惑掛けずに創作ができるんだよ」
 
「それもいいですね」
 
最後は1FのLDKで“お茶とかは飲まずに”話をした。
 
「そういえば、先生の“醍醐春海”というお名前の由来って何かあるんですか?醍醐天皇から来たのかな?とか“醍醐味”(だいごみ)から来たのかなとか、GODIEGO(ゴダイゴ:“ガンダーラ”などで知られるバンド。電子楽器を使用したバンドとしては先駆的なバンドのひとつ)から来たのかなとか、友だちと言ってたんですが」
 
「あれは雨宮先生の誤読から出発してるんだよ」
「誤読なんですか!?」
 
「私はラッキープロッサムの創設にちょっと関わりかあってね」
「はい」
「その縁で、ラッキープロッサムにも楽曲を提供していた。ラッキープロッサムの楽曲のクレジットって、神楽とか絵馬とか逆鉾とか福助とか、そういうノリでさ、それで私は“大裳”(たいも)というペンネームを使っていた(*1)」
 
と言って千里は手近なホワイトボードに“大裳”と書いてみせた。
 
「それで“たいも”と読むんですか」
「裳は衣裳の“裳”だから、音読みでは“しょう”と読むけど、訓読みは“も”。平安時代の貴族の女性が正装する時に着けていたスカートが“裳”(も)だよ。元々衣裳の“衣”は上着のことで、“裳”はスカートのことだから、男性が衣裳をつけるとスカートを穿くことになる」
 
「その手の元の意味が忘れられていることばって多いですよね。“元旦の朝”ってテレビのアナウンサーが言ってるの聞いたことあります」
「“元旦”自体が元日の朝だよね。まあそれで“大裳”は“たいじょう”と読む人もいるけど“たいも”という読み方もある。私は師匠から“たいも”と習ったからそれで読んでる(本当は“本人”がそう読んでと言った)」
 
「へー」
 
「ところがこの名前を雨宮先生が“だいご”と誤読しちゃって」
「あらら」
「そして自分がそう読んだんだからお前の名前は“だいご”にしろと言うからさ」
「雨宮先生らしい」
「じゃ漢字変えさせて下さいと言って“醍醐”にした」
「なるほどー」
 
「春海は、醍醐だけでは短いなと思って追加した」
 
「それで醍醐春海が生まれたんですか」
 

(*1)ラッキープロッサムの作曲名義
 
神楽:鮎川ゆま
福助:河合龍二
熊手:貝田茂
招猫:幣原咲子
絵馬:相馬晃
釜鳴:雨宮三森
大裳:醍醐春海
逆鉾:宝珠七星
螺旋:田船美玲
 

千里は(他の作曲家に比べたら)とっても常識人だし、気配りも凄いので、この日のラピスラズリはとても取材がしやすかったようである。
 
インタビューの中ではバスケット活動の話もてて、ふたりがあらためて
「メダルおめでとうございます」
と言うと
 
「ありがとう」
と言って、ラピスの2人に東京五輪の銀メダルを触らせてくれて、2人は感動していたようであった。
 
「万葉もメダル出しなよ」
と千里は言った。
「え〜?」
「持ってるでしょ?」
「持ってる。色々な人に見せないといけないこと多くて」
 
それで青葉が自分の取った、金メダル2個と銅メダルを出した。
 
「ほら金銀銅と3種類のメダルが揃ってる」
「これは凄いシーンだと思います」
と町田朱美がマジで興奮していた。
 
この部分は、放送された時、速攻でyoutubeに無断転載されていた。
 
しかし、この日は本当に平和な取材だった。
 

この日の取材が終わった所で、私は千里と青葉に頼んだ。
 
「その2人がメダルを掛けている所とかを撮影させてもらえない?作曲家アルバムの取材ではなくて」
 
「何に使うの?」
「ローズ+リリーのアルバムのMVに使いたい」
「へー。そういうことならいいよ。今回は楽曲で協力できなかったし。青葉もいいよね?」
「うん。ローズ+リリーで使うのなら全然問題無い」
 
それで、ラピスおよび作曲家アルバムのスタッフは帰して、私はサンシャイン映像のカメラマンを呼んだ。
 
それで2人が金メダルを掛けている所を撮影させてもらい、更にその後、深川アリーナに一緒に移動して、千里がスリーを入れるシーン、青葉がプールで泳いでいるシーンも撮影させてもらった。
 
「ありがとう。これでいいビデオが作れるよ」
「この程度はOK。でも何て曲なの?」
「金目鯛かな」
「は?」
 

8月28日はゴールデンシックスの取材であった。
 
私・青葉・ラピスラズリ、カメラマンさんと長江ディレクターの6人で文京区のカノン(花野子)の自宅マンションに伺う。ここに相棒のリノン(梨乃)も来ていた。
 
「元々は旭川で結成したバンドだったんですよね?」
と朱美が尋ねる。
 
「そうそう。醍醐春海とか、KARIONの美空とかも一緒にやってた。DRK, Dawn River Kittens 旭川の子猫ちゃんたちという名前でさ」
 
「なんか可愛い」
「進学校だから、メンバーは15人くらい居たけど、塾とか補習で出られないことも多い。それでこのバンドは全員が部品に徹した。誰かが出て来てないから演奏できないということはないように。ひとつのパートが演奏できる人も最低2〜3人作る」
 
「それが現在のゴールデンシックスのシステムに繋がるんですね」
「うん。私とリノンは固定だけど、残りの4人は演奏する度に違う」
 
「それが高校卒業でいくつかに分裂したんでしたっけ」
「うん。北海道に残った子たちは、Northern Fox, 東京近辺に出て来た子がGolden Six, 関西方面に行った子たちがViolet Max. でも他の2つは自然消滅して、ゴールデンシックスだけが残った」
 
「その他のバンドにいた人も“愉快な仲間たち”に入っている人多いんでしょ」
「そそ。あちこちでライブする時に近くに居る子を呼び出す」
 
「でもどうしても近くで調達できなくて、札幌から大阪に呼んだこともあった」
「ひゃー」
「あの時もらったギャラより、その子を呼んだ旅費のほうが高かった」
「あはは」
「でもステージをキャンセルすることはできないからさ」
「さすが。それがプロですよね」
と東雲はるこが感心している。
 
「受けた以上はちゃんとやるのがプロだよ」
と花野子。
 
「昔居た六文銭というバンドはさ」
「はい」
「事務所がうっかりダブルブッキングしてしまった時にメンバーを2分割して、両方に半分ずつ行かせてちゃんと両方演奏するということをしたことがある」
「それも凄い!」
「分身の術ですね」
「ケイ得意の奴だな」
と花野子が言ってる。
 
「あ、やはりケイさん分身してますよね?」
と町田朱美。
 
「うん。美空の話では違うケイを3人見たことがあるらしいけど、色々な人の話を聞くと、どう考えてもケイは5人はいる」
 
「やはり」
と朱美が楽しそうに頷いている。
 
青葉は笑っていたが、私はどう答えていいか悩んだ!
 

「そうだ。君たちにも“愉快な仲間達”のバッヂをあげよう」
と言って、花野子はラピスラズリの2人に“ゴールデンシックスと愉快な仲間たち”のバッヂを押しつけた。朱美が「え〜!?」と言っていたが、花野子は強引である。
 
「2人ともピアノが上手かったよな」
「朱美はヴァイオリンとギターも弾きます」
「はるこはフルートとクラリネットも吹きます」
 
「それは貴重な戦力だ」
などと花野子は言って、何かに登録している!。
 
「そのバッヂ何個くらい用意してるの?」
「最初に作った100個は全部誰かに渡した。それで追加で1000個作ったけど、その後まだ20個くらいしかはけてない」
 
「つまりこれまで120個配ったんだ!」
 

8月29日は今回の取材の最終日でステラジオを訪ねたが、私は遠慮することにした。私が体調不良ということにして、代わりに千里に付き添ってもらった。私は気にしてない(つもりだ)が、ステラジオはこちらを物凄く意識している。それで青葉が
 
「すみません。ケイがお腹を壊したらしくて、代わりに醍醐春海に一緒に来てもらいました」
と言った。
 
「マリちゃんがユニークな料理作ってケイに食べさせたんじゃない?」
などとホシが言っていた。
 
(放送時に「ありそうだ」と視聴者の声。もっともケイの欠席は大方の視聴者が予想していたようである)
 
「でもその節には、大宮さんにも、醍醐さんにも本当にお世話になって」
とホシは青葉たちにあらためてお礼を言っていた。
 
2016年の“悪魔の歌”事件で、ホシは青葉から、除霊をしてもらい、ずっと止まっていた生理が再開するとともに、酷いスランプから脱出することもできたのである。この事件では多数の死者(最初の死者がマラ)が出ているので、内容を明らかにすることはできない。
 
しかしその事件のあとホシは「せめてものお詫び」と言って、犠牲者の1人である幡山ジャネに活動資金を提供してきた。今回東京五輪を最後にジャネが引退したので、ジャネは今までの支援に感謝するとともに、もう支援は不要と伝えてきた。ホシ・ナミおよびΘΘプロの春吉社長はジャネのお母さんと話し合い、身体の不自由なスポーツ選手のための支援基金を作る方向で今具体的な運営方法を詰めている最中である。しかしこれも経緯を公にはできないことである。
 

ラピスラズリはステラジオが書いて事務所の後輩・三つ葉が歌った彼女らのデビュー曲『恋のハーモニー』を歌った。
 
「おお可愛い、可愛い」
とホシもナミも喜んでいた。
 
(放送された時「本家よりうまい」とかなり書かれた。まあ、やまとの歌と比べてはいけない!)
 
町田朱美はステラジオの“ぶっ飛んだ”歌が好きだと言い、最近のいくつかの歌の例をあげて「この発想は思いつかないと思った」と言う。朱美がほんとによくステラジオの曲を聴いているようなのでホシもご機嫌で、とうとう
 
「だったらこの曲あげるから歌いなさい」
 
と言って、『午後23時のマリオネット』という曲を渡した。
 
「きゃー。凄い!」
と朱美は面白がっているが、東雲はるこは悩んでいる。譜面を見た青葉も千里も「うっ」と思った。これコスモスが絶対嫌な顔をする。しかしステラジオからわざわさ頂いたのでは歌わない訳にはいかない!
 

2016年の事件に関しては、極端なスランプに陥ってしまい、田舎の温泉に行って療養していたら、そこで偶然“大宮万葉さんと妹の醍醐春海さん”(ホシの発言のまま:朱美が一瞬吹き出しそうになった)に出会い、ヒーリングしてもらったら、ずっと止まっていた生理が再開するとともに、スランプから脱出できた、とホシは説明した。
 
「生理が来ないのは、ホシが体質変化して男の子になったからではとか言ってたけど、ちゃんと女の子に戻ることができたね」
などとナミは言っていた。
 
「女性的な機能が滞っていたから、その滞りを解消しただけだよ。本当に閉経した人は、私もどうしようもないよ」
と青葉は一応釘を刺しておく。
 
でないと、生理が止まった人からのヒーリング依頼が殺到する!
 
(インタビューでは生理が止まっていた期間が6年にも及ぶことは言わなかった。通常それだけ長時間止まっていたら再開は事実上不可能である。視聴者は恐らく3〜4ヶ月かせいぜい半年程度止まっていたと思ったと思う)
 
「いや、あの時期はちんちん生えて来た夢を随分見た」
「ホシが男の子になっちゃったら、ツアーとかで2部屋取らないといけないからコストが掛かるね」
「ちんちん要らねーと思った。男の娘さんの気持ちが少し分かった気がした」
 

放送時にはこの部分
「ホシって本当に女だったの〜?」
「男の娘じゃなかったの〜?」
という声が随分あがっていた。
 

「でもあの後、ホシちゃんの作る曲は朱美ちゃんの言うところのぶっ飛んだものが多くなったね」
と千里が言う。
 
「なんかこんな曲を出したら精神異常を疑われるのでは?精神病院に強制入院になるのでは?と思って出せなかったものを出すようになったからね」
 
「薬やってないかって調べられたでしょ?」
と千里は言う。
 
「だいぶ検査受けさせられた。でもそんなのやらないし」
 
彼女が初期の頃 LSD をやっていたことを青葉も千里も知っているが、彼女はその後、きっぱりと薬をやめた。彼女の作る歌からもそれが明確に感じられると青葉は思っている。彼女はタガが外れているように見えて“一線”を越えていない。****さんの曲とは違うと思って、青葉はある人のことを心配した。
 

「でもあれからファン層が広がったね」
「なんか頭のおかしな女がいると思われたかも」
「まあノーマルだと芸術家とかできないと思うよ」
「そうですよね!」
 
「ホシちゃん、戸川純さんも好きと言ってたね」
と千里。
「はい。尊敬してます。昆虫軍とか大好き」
「あれも凄いよね」
「FLiPも好きと言ってたね」
「大好き。タランチュラとか、かごめかごめとか好き」
 
「私、かごめかごめ恐い」
と東雲はるこが言う。
 
「あれは人間の持つ恐怖心にわざとぶつけてるのがいいんだよ」
とホシは言う。
 
「私は『かごめかごめ』好きです。ステラジオさんの『鴉さんこんばんわ』も似た雰囲気がありますよね」
し朱美。
 
「うん。あれは悪夢を見たのをそのまま曲にした」
 

今回のステラジオの取材では話が盛り上がりすぎて、後でどうやって時間内に納めるか、ディレクターが悩むことになった。
 
しかしかなり楽しく、この日の取材を終えたのである。
 

8月30-31日(月火).
 
あけぼのテレビ・・ЮЮネット★★チャンネル(AYS連合)、ネットテレビ局大手のジェッターTV、アロロおよび友好社のホーライTV・ハイネットTV(AHH連合)、の3グループ共同で“ネットサマーフェスティバル2021”が行われた。
 
コロナの情勢下では、リアルで人を集めるサマフェスの開催は困難な情勢にあることから、ネットを通して、サマフェスを実施しようという趣旨である。
 
下記の9つのステージを“仮想会場”にしてフェスティバルを実施する。
 
桜ステージ・桃ステージ・椿ステージ・あじさいステージ・いちごステージ・ぶどうステージ・たんぽぽステージ・すずらんステージ・にんじんステージ
 
回線は3グループに能力に応じて比例配分して流すので、どこかのチャンネルが見られなかったら、他の所につないでもいい。但し“マナー”として、どこかにつながったら他の所は切って欲しいと呼びかけている。その人が切断することで、他の人が見られるようになる可能性があるからである。
 
ビッグアーティスト専用の“桜”ステージに登場するのは↓9組である。たぶん現在の日本のポピュラーミュージックのトップアーティストが揃ったと思う。
 
30日
10:00 アクア
13:00 ステラジオ
16:00 バインディング・スクリュー 19:00 ローズ+リリー
(21:00end)
 
31日
10:00 スカイロード 13:00 レインボウ・フルート・バンズ 16:00 富士琵琶湖
19:00 リダンダンシー・リダンジョッシー
22:00 ハイライトセブンスターズ(Headliner)
(24:00end)
 

“桜”はパラリンピックが行われている東京を避けて、愛知ドームから中継する。メイン担当はアロロである。
 
3万枚の書き割りを並べると言っていた。また一部の事務所が使用していた“自動サイリウム振り装置”を5000個、声援発生装置を1000個並べるらしい。
 
アロロの技術者さんが「あけぼのさん、よくフィードバックまでやりますね」と感心していた。あれはどうも則竹さんが書いた天才的なプログラムが可能にしているようである。特殊な方法で常識を越える高圧縮をしてトラフィックに負荷が掛からないようにしている。むろん元々あけぼのテレビがフィードバック用の帯域を確保しているという、設計上の背景もある。
 
“桜”の出演者は主宰者がチャーターした列車で運ぶ。1両に1ユニットのみ乗せる。移動中の他の車両への移動は禁止である(ドアをロックしておく)。
 
私たちは主宰者に申し出て、アクア班とローズ+リリー班は同じ車両でよいことにした。他にも相乗りを申し出た所(みんな同じ事務所系列)があり、結局↓のようになり車両は6両編成のもので済んだ。
 
1.ステラジオ
2.アクア、ローズ+リリー
3.ハイライトセブンスターズ、バインディング・スクリュー
4.スカイロード、富士琵琶湖
5.リダンダンシー・リダンジョッシー
6.レインボウ・フルート・バンズ
 
(3号車は∞∞系列、4号車は○○系列)
 
「1−2号車が女で、3−4号車が男で、5−6号車が混成か」
とスカイロードの小松君が言っていた。
 
つまり・・・アクアは女子扱いされてるが、気にしない!
 
それにスターキッズには男性が4人いるんだけどね。ステラジオのバックバンド(トリテリス)にも男性は居たはず。
 
また、バインディング・スクリューにはプロデューサーの田船美玲さんが付き添っているはずである。
 
 
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【夏の日の想い出・ラブコール】(4)