広告:ここはグリーン・ウッド (第3巻) (白泉社文庫)
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■男の娘とりかえばや物語・尚侍復帰(1)

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(これまでの話)
 
権中納言兼近衛大将の息子(桜君)と娘(橘姫)は、男女逆にしたいような性格だった。妹の橘姫は活発で体力もあっていつも部屋を飛び出し元気に遊んでいるが、兄の桜君はおとなしい性格でいつも部屋にて女房たちとだけ遊んでいた。
 
大将はふたりの男女を「とりかへばや」(取り替えたい)と悩んでいた。
 
橘姫と桜君は、お互いの顔がそっくりであるのをいいことに6歳頃からしばしば入れ替わるようになった。橘姫は桜君の振りをして弓の大会に出たり、貴族の男児の集まりに行ったりし、桜君は橘姫の振りをして、舞のお稽古をしたりしていた。橘姫は漢籍や笛などの男性的教養を身につけていき、桜君は橘姫の代理をして結果的に女性的教養を身につけていく。
 
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大将は、幼い頃は男勝りだった“橘姫”がおしとやかになり、幼い頃はおとなしい性格だった“桜君”が元気になって弓や馬術に漢籍仏典も身につけてきたので、ふたりを男女入れ替えたいなどと思っていたのは杞憂であったと安心していた。
 
しかしふたりの入れ替わりは父にバレてしまう。
 
大将はショックで一気に10歳くらい年を取ってしまった。
 

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大将の“息子”が優秀であると聞き、帝はぜひとも出仕させるように言う。それで結局、大将は、橘姫に男子として元服させ“涼道”の名前を与え、結果的に桜君には裳着をさせて女子として成人させ“花子”の名前を与えた。涼道は男子として元服させてもらい大喜びだが、花子は妹の身代わりで女子として成人するハメになり、憂鬱な気分だった。
 
「いくらボクだって裳(スカート)を穿くなんて・・・」
 
帝が譲位なさって、新天皇のもと、権中納言・大将は左大臣に、涼道は権中納言に任じられた(物語中では後に出てくる別の“権中納言”と区別するため、単に“中納言”と呼ばれる)
 
更に涼道は右大臣家の四の君・萌子と結婚してしまう。
 
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一方で花子は尚侍(ないしのかみ)の役職を与えられ、実際には女皇太子・雪子の遊び相手として宮中に仕えることになった。もっとも花子の性別はあっという間に雪子にはバレてしまうことになるが、雪子は花子の女装を面白がって、散々セクハラすることになる。
 

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帝の従弟に当たる仲昌王(物語の前半では宰相中将と呼ばれる)はプレイボーイとして名高かったが、これまで愛人にした女の中に、正式の妻にできるような女が居なかったので、そういう女を得られないものかと思っていた。それで彼がアタックしていたのが、左大臣家の“娘”花子と、右大臣家の四女・萌子だった。しかし萌子は涼道と結婚し、彼は失恋してしまう。しかしそれでも彼女への思いは忘れられずにいた。
 
涼道と花子が17歳の年、宰相中将は右大臣家に(萌子の夫である)涼道を訪ねていったが涼道は不在だった。それで帰ろうとしたのだが、美しい箏の調べに誘われて館の中に入って行き萌子を見てしまう。思いが抑えられなくなった彼はそのまま萌子をレイプしてしまった。
 
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結局、萌子は彼の子供(小夜)を産んでしまうが、表向きには(夫である)涼道の子供ということになっており、右大臣などは大喜びであった。左大臣も表向きは喜ぶ様子を装っているものの、女同士で子供ができる訳が無いので、間男されたのは間違い無いとして憂鬱な気分だった。
 
そして翌年8月、宰相中将は、左大臣家に涼道を訪ねてきた時、偶然にも彼が実は女であることに気付き、そのままレイプしてしまった。彼は“今までに会ったことのないタイプの女”である涼道に夢中になり、涼道が生理で休んでいる家にまで訪ねてきて口説く始末であった。そして9月、宰相中将は再び萌子をレイプする。
 
そして涼道と萌子はどちらも妊娠してしまった(夫婦揃って妊娠!)
 
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涼道と花子が19歳になった年の初め、帝は中納言・涼道を右大将に任じ、また宰相中将・仲昌王を権中納言に任じた。
 
お腹が大きくなってきた涼道はやむを得ず、宮中から姿を消し、仲昌王を頼り、女姿に変えて、彼の宇治の館に籠もって男児(萩の君)を産み落とす。
 
ところでこの時期、東宮も妊娠してしまっていた。父親はもちろん花子である!女皇太子の妊娠出産など、絶対に許されるものではないので、その対処の問題もあったのだが、花子は、失踪している兄(実は妹)涼道を探し出せるのは自分だけだと考え、東宮の承認の元、里下がりして、兄の失踪に心を痛めて伏せっていることにして男装して涼道を探しに行った。
 
男装の花子は最初に涼道が頻繁に訪れていた吉野宮(天皇の兄)の所に行ってみたのだが、涼道が7月頃に吉野宮に手紙を書くと約束していたことを知り、その手紙を待つことにした。
 
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出産した涼道は体調も回復してきた8月1日、吉野宮に手紙を書く。それで花子も妹の無事を知り安堵する。花子は涼道と連絡を取り合い、涼道は花子と一緒に宇治の館を出ることにした。産んだ男児はやむを得ないので乳母の備前に託したまま放置である!
 

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吉野宮に取り敢えず入った涼道は花子、そして吉野宮とも話し合い、ふたりは入れ替わって復帰することにした。
 
つまり、花子が男装して新・右大将として復帰し、涼道が女装して新・尚侍として復帰するのである。もっとも花子には漢字も書けなければ難しい文書も起こせないので、そういう仕事は実際は涼道がする。一方、女の教養が必要なものは実際には花子がする。つまり“二人二役”で乗り切ろうという作戦である。
 
そして2人は雪子の妊娠についても吉野宮にも相談の上、雪子と容貌が似ている吉野宮の一の君・海子女王を身代わりにして雪子を里に下げることにした。
 
雪子の妊娠は絶対に誰にも知られてはならないので、雪子の父(朱雀院)の所に下げる訳にもいかない。それで涼道と花子が雪子を連れて行ったのは、嵯峨野にある左大臣の別邸で、涼道と花子の2人も9月にはここに入って、復帰の準備と雪子の出産に備えたのであった。
 
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11月。花子は男装して“右大将”として宮中に復帰した。彼は突然の失踪と長期の不在を帝に詫びて辞表を提出したものの帝は却下。これまで同様、右大将・中納言として仕えてくれるよう言った。
 
“右大将”は右大臣宅にも堂々と“帰宅”し、萌子とちゃんと“夫の役目”を果たしておいた。右大臣も右大将の帰宅にホッとしていた。
 
一方、突然“右大将”が子供を置いたまま行方不明になり困惑していた権中納言は、右大将出現の話に驚愕する。てっきり涼道が再び男装して宮中に戻ったものと思い、子供を連れて宮中まで行き、直接は会えなかったものの、若君を掲げて右大将に見せる。右大将は一瞬顔色を変えたものの平然としていて権中納言を黙殺した。それで権中納言はもう自分のことは思い切ってしまったのかと失意に沈むのであった。
 
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↑以上ここまでの主な展開。

TimeLine(↓日付の年部分は兄妹の年齢:数え年)
 
01.春 桜の君(後の花子)生まれる
01.秋 橘の姫(後の涼道)生まれる
06.この頃から入れ替わりを始める
09.04 賀茂の祭。桜は橘の服を着て秋姫とお出かけ。さすがにバレる。
09.06.07 祗園祭りで橘は上半身裸で先走りを務める。
09.08.14 桜が四の君と松尾神社の秘祭に出る
10.春 橘が父と一緒に東山に出かけ、入れ替わりがバレる
10.04 賀茂の祭
10.08 桜、松尾神社の秘祭で要を舞い、これで卒業
12.04 賀茂の祭りで橘は射手を務める
12.08 桜、再度松尾神社の秘祭に出て要を舞う
13.01 橘が御冠着、桜が裳着
16 朱雀帝が譲位。橘は権中納言に任命される
16.08.01 涼道が萌子と結婚する
16.09.15 梅壺女御が帝のところに行くのを涼道が見る
16.11.10 花子が尚侍に就任して宣耀殿に入る。
16.11第2卯日 新嘗祭 三の君・尚侍が五節の舞 麗景殿女御の妹から涼道への手紙
16.12 三の君が源利仲大将と結婚
17.春 宰相中将、萌子と過ち
17.02-03.10 東宮の九州行啓。花子も随行 東宮と花子の最初の交わり
17.04 萌子妊娠発覚
17.09 涼道が吉野の宮に会いに行く
17.11 萌子が小夜を出産
18.06 物忌みの日に花子の所に宰相中将が忍び込む。筑紫の君解雇。
18.08.07 東宮が能登に行く
18.08.09 涼道の性別が宰相中将にバレ、そのままレイプされる
18.08.25 花子たち能登に到着
18.09.02 花子たち能登を出発
18.09.13 涼道、最終月経 六条辺りの家に籠もる
18.09.20 花子たち京に戻る
18.09.24 涼道と宰相中将のセックス
18.09.27 推定排卵日
18.10.12 涼道生理予定日(来ない)9/27受精 10/12 2月 11/10 3月 12/9 4月 1/7 5月 2/6 6月 3/4 7月 4/3 8月 5/1 9月 5/29 10月 6/28予定日
18.10.13 萌子受精 昼間宰相中将にレイプ・夜に中納言とセックス/尚侍の代理をしていた涼道を雪子がレイプ
18.10.27 萌子生理予定日(来ない)10/13受精 10/27 2月 11/25 3月 12/24 4月 1/22 5月 2/21 6月 3/19 7月 4/18 8月 5/16 9月 6/15 10月 7/13予定日
18.10.30 萌子の妊娠発覚
19.03.01 桜の宴。その後、中納言は右大将、宰相中将は権中納言に任じられる。
19.03.10 雪子が花子をレイプ(雪子の推定排卵日)
19.03.20 麗景殿の女と文を交わす
19.03.24 雪子の生理予定日(来ない)3/10受精 3/24 2月 4/23 3月 5/21 4月 6/20 5月 7/18 6月 8/17 7月 9/15 8月 10/14 9月 11/12 10月 12/11予定日
19.04 右大将失踪。
19,06 花子が涼道を探しに行く。吉野の宮で手がかりを掴みそこに滞在
19.07.01 涼道が男児(萩の君)を出産
19.08.01 涼道が吉野宮にお手紙
19.08.04 秋の夜の対面
19.08.07 萌子が男児を出産(須須)
19.08中旬 涼道と花子、嵯峨野の別邸に移動。海子を身代りにして東宮を連れ出す
19.09 二条堀川に邸宅の造営を始める
19.11 新右大将が左大臣宅に帰宅。宮中に出て帝に陳謝。右大臣宅にも帰宅。
19.12.11 雪子出産
20.01中旬 雪子が宮中に密かに復帰。新尚侍が公務復帰。
20.02 帝と新尚侍が結ばれる
20.03.12 二条殿が完成。海子を迎え入れる。
20.03-06 雪子と右大将が土佐に行く
20.06-07 右大将能登へ
20.08-09 右大将九州へ
20.10-11 右大将関東へ
 
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花久(花子)が“新右大将”として復帰した翌月12月の11日。
 
嵯峨野の左大臣別宅で雪子が男の子(大若君)を産み落としました。安産であったので、ずっと付いていた涼道もホッとしました。
 
出産の時に付いていたのは、涼道、涼道の乳母子・小竹、雪子の信頼も篤い尚侍の侍女・式部、ほか数名の絶対に信頼のおける侍女です。そして雪子の素性を知っていたのは、涼道・小竹・式部の3人のみで、他の侍女たちは、
 
「右大将が愛しておられる女性が密かに出産なさる」
という式部の説明を信じています。
 
生まれた若君は右大将によく似ていたので、侍女たちも何も不審に思いませんでした。若君は乳母に任命された女性が抱き、右大将の侍女である小竹が付き添って左大臣宅に運ばれました。
 
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そして「右大将が密かに通っていた女性の産んだ子」として公開されたのです。
 
今出産したということは、春に“仕込んだ”子供ということになるので、右大将の失踪直前頃のことなのだろうと多くの人は思いましたが、萌子や右大臣はやや不愉快に思いました。しかし母親を明かせないというのは多分身分の低い女が産んだ子だろうから、気にすることはないと思い直しました。
 

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(お断り)
 
原作では“新尚侍”は11月に宮中に復帰し、東宮は12月に宮中で出産したことになっているが、宮中で侍女たちにも知られないように出産するというのはいくらなんでも無理がありすぎる。そこでこの翻案では東宮は身代わりを置いて里下がりをして密かに出産したことにした。そのため新尚侍の復帰も年明けにすることにした。原作では新右大将の復帰ももっと早いのだが、それでは“準備期間”が短すぎてさすがに涼道の字を真似ることは困難である。それなら新尚侍が宮中に居ない(実は本物の東宮のそばに付いている)中で、新右大将がひとりで公務をするのは難しい。それで新右大将の復帰も原作より遅らせて11月ということにしている。
 
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また新右大将は職務執行のために頻繁に新尚侍と連絡を取る必要があるので、新尚侍は片道2日かかる吉野ではなく、内裏から遠くない、嵯峨野の別宅に籠もっていることにし、結局、雪子もそこで出産させるという展開にした。
 

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年が明けて、涼道(涼子)と花子(花久)は20歳になります。
 
お正月なので宮中では様々な行事が行われますが、管弦の催しなども行われます。
 
「右大将殿の笛が久しぶりに聴きたい」
という声が多数掛かります。
 
「病み上がりですので、あまりまともに吹けません」
と言って右大将は辞退しようとしたものの、帝からまで
 
「それでもよいので」
と言われます。
 
帝からまで言われては断れないので、右大将は愛用の笛を取りだしました。
 
そして右大将が笛を吹きますと、まるで龍が舞っているかのような美しさです。
 
「これは素晴らしい」
と、帝をはじめ多くの公卿・殿上人や女御・女官たちがその調べに聴き惚れていました。
 
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実を言うとここで笛を吹いたのは男装の涼道です。彼は実は失踪してから8ヶ月ぶりに出て来ているのですが、表向きには右大将は既に11月から復帰していたことになっています。涼道は久しぶりの宮中だったので、やや居心地は悪かったものの、男の格好でいるのは、やはり自分に合っているなあとあらためて思いましたし、大勢の前で笛を吹くのは快感だと思っていました。
 

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男の娘とりかえばや物語・尚侍復帰(1)

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