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■男の娘とりかえばや物語・吉野の宮(2)

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宮がふたりの娘の行く末を心配していることについて涼道は言いました。
 
「私が生きている限りはご後見いたしましょう。そのことについては心配なさらないでください」
と明言しました。
 
結果的にこれで涼道はもう出家できなくなってしまったのですが、本人はそのことをあまり意識していません。
 
ふたりは中国・朝鮮の現況についても語り、また日本ではまだ知られていない本などを宮が見せてくれるのを読んで感嘆し、結局朝まで語り明かしたのでした。
 

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ふたりは夢中になって話をしていたので、あっという間に2〜3日が経過します。
 
「そういえば楽を習いたいとおっしゃっていましたね」
と言って、最近日本では弾く人がいなくなってしまった琴(きん*3)を取り出して弾いてくださいました。それはとても美しい調べでした。しかし宮は少しだけ弾いてやめて、涼道に
「弾いてみますか?」
 
と言って勧めます。すると涼道は琴に触るのは初めてであったにも関わらず、今、宮が弾いたのと同じように弾いてみせ、彼の音楽的な才能が高いことを宮も感心していました。
 
(*3)「琴(きん)」あるいは「琴の琴(きんのこと)」とは、7弦の弦楽器で、琴柱を使わず、フレットも無いが徽(き**1)という線が引かれていてそこを目安として指で弦を押さえて演奏する楽器である。弦は絹糸を使用する。左右の小指以外の4本ずつの指を使って演奏し、軽く押さえてフラジオレットを出したり、指を動かしてポルタメントをしたりもする。徽はピタゴラス音階が出るように引かれているが、徽と徽の間の中間を押さえて間音(四分音)を出す場合もある。演奏法が難しいことから演奏できる者はあまり多くなかったし、音量が小さいため雅楽ではあまり使用されなかった。正倉院と法隆寺に古い時代の“琴の琴”が伝わる。
 
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(**1)徽は「徽章(きしょう)」の徽で、印のこと。徽章(=バッヂ)は戦後は当用漢字を使って記章と書かれることが多い。
 

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「琴は娘たちにも教えております。色々な曲は耳が衰えた私が教えるより、音感の若い娘たちが伝えた方が間違いないでしょう」
と言って、宮は娘たちの部屋に涼道を案内します。
 
もちろん娘たちに対面させるのが目的です!
 
(この時点で宮は涼道の性別を認識しているにも関わらずまるで男を娘たちに引き合わせるかのような行動を取っている。その意図は不明)
 
それで涼道は宮に付いていくのですが、“娘たちの部屋”に行ってみて、涼道は困惑します。
 
娘2人と聞いていたのですが、そこには少年と少女の姿がありました。
 
「海、そなたまたそんな格好してるのか?」
と宮がしかめっ面で言います。
 
「女の服はかったるいしさあ」
などと“海”と言われた息子(?)は言っています。
 
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「お客様だぞ」
「ごめんごめん。着換える」
と言って、奥の部屋に入ると、一刻(15分)ほどで着換えて出てきました。彼女(?)の姿を見て、涼道はまた戸惑いました。
 
「東宮様にそっくり!」
「あ、それは言われたことあります」
と彼女(?)は女性的な話し方で言いました。
 
「春宮様のお父上と私が兄弟だから、海子と春宮様は従姉妹になるんですよ。それもあって似た顔立ちになったようですね」
と吉野宮はおっしゃいました。
 
しかしさっきまで男の服を着ていた海子に、涼道は親近感を感じました。
 

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吉野宮は涼道の性別を聞いていて、それ故の悩みの相談に乗っていたので、当然娘たちを涼道と結婚させることは考えていません。
 
しかし宮が娘たちを紹介する様は、まるで双方を見合いでもさせるかのような感じでした。涼道が男であれば「2人の内好きな方と寝て下さい」という感じです。実際、涼道と海子は、つい歌のやりとりまでしてしまいます。それで涼道も「まるで結婚するみたいだ」と苦笑し、こういう場面で宰相中将ならどんな風に反応するかな?などと考えると、少し楽しい気分になってきました。
 
宮が「後は若い人同士で」などと言って自分の部屋に戻ってしまったので、涼道は姉妹(兄妹?)に琴の琴を習いながら、色々おしゃべりもしました。やがて遅い時間になりますが、どこか他の部屋に案内される気配もありません。
 
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それで涼道は自分で退出して、少納言の君が休んでいる部屋を探していこうと思ったのですが、姉君(海子)は言いました。
 
「父は中納言様には、こちらでそのままお休み下さいということだったようですよ」
 
「そうですか?ではこのまま適当な隅で休ませて頂きましょう」
と言って、涼道は部屋の隅で寝ようとします。
 
ところが海子は
「あなたのような高貴なお方が、そんな所では寝るのも辛いでしょう。私の御簾の中においでになりませんか?」
と言いました。
 
「確かに私はあまり御帳の外で寝るのに慣れていないので。ではそちらに失礼してよろしいですか?」
「どうぞ」
 
それで涼道は御帳の中に入らせてもらいました。
 
姉君(海子)は堂々としていますが、妹君(浜子)はこんなに近くで男性と相対する経験が無いようで恥ずかしがって顔を隠しています。
 
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その妹君の様子に涼道は微笑んで
 
「心配なさらないで下さい。同性なのですから、変なこともしませんよ」
と言いました。
 
そして姫君たちが座っている茵(しとね*4)の傍の、畳の上に横にならせてもらいました。
 

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(*4)帳台の中には、まず土敷(つちしき)という繧繝縁(うんげんべり:高級畳)の畳を敷き、その上に敷物を敷いた上に、茵(しとね)という座布団のようなものを置きます。貴人はこの茵の上に座っているのですが、涼道はその横の畳(正確には畳の上に敷かれた敷物)の上に横になりました。
 

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さて、ここで実は姫君たちと涼道との間には微妙な認識の違いがありました。
 
涼道は姫君たちは自分が女だと宮から聞いていると思っています。それで、同性のよしみで一緒に帳台の中で休ませてもらったつもりです。
 
ところが、姫君たちはその話を聞いていません!
 
それで妹君などはこの男と“寝る”ことになるのか?この男と結婚しろという意味か?などと思って恥ずかしがっているのですが、姉君の場合は男が襲ってきても撃退できる自信(?)があったので、帳台の中に入れても構わないと判断し、父の言動から今夜は一緒に休めということのようだと考えて敢えて涼道に「帳台の中に入って下さい」と声を掛けたのでした。
 
涼道が先に眠ってしまったようなので、姉君は妹に
 
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「大丈夫だから、浜も寝なさい」
と言って、自分も横になり、お休みになりました。しかし半分眠りながらも月明かりで間近に涼道を見ると「いい男じゃん」と思えて、こういう人なら少し付き合ってみてもいいかなという気分になりました。
 
まあ私と寝ることができたらね!
 

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涼道は明け方、少納言の君に導かれて用意されていた部屋に戻りますが、海子に文(後朝の文?)を届けさせます。それを取り次いだ海子付きの女房・山背は
「お返事はどうしますか?」
と訊きました。
 
「昨夜は別に何も無かったから不要」
と海子が言うと
「何も無かったんですか!?」
と山背は驚きます。
 
山背は、涼道が帳台の中に入って寝たので、当然海子と結ばれたものと思い込んでいたのです。
 
「まあ同性同士で何か起きる訳無い」
と海子は笑って言いましたが、山背は意味が分からず困惑した顔をしました。
 

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翌日、涼道は日中はまた宮とたくさん漢籍のことや仏道のことなどで語らい合い、夕方また姫君たちの部屋に行きました。昨夜“成らなかった”ということは決裂したのだろうか?と思っていた多くの女房は涼道の来訪に困惑したのですが、海子は
 
「お疲れ様。いらっしゃい」
などと言ってにこやかに応対し、琴の琴の楽曲の伝授をしてあげました。妹君のほうもおそるおそるですが、ふたりの会話や演奏に加わりました。
 
そして夜が更けると、また海子の方から
 
「じゃこちらにいらして。一緒に休みましょう」
と誘い、涼道は海子たちのそばで寝るのです。今日は妹君も涼道と姉をはさんで反対側でスヤスヤと寝ました。
 
このようにして、涼道は海子に受け入れられ、ふたりの間には奇妙な関係が成立しました。それは性的なことをしないという点を除けば、涼道と萌子の新婚時期の関係にも似たものでした。
 
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さて、涼道が吉野に行ったまま、なかなか帰って来ないので、実は宮中では涼道がしていた仕事が滞り困っていました。
 
話を聞いた源大将(充子の夫)が、宣耀殿に花子を訪ね
「兄上はいつ頃、戻られますか?」
と尋ねます。
 
「あの子、どこに行ったの?」
「いや、それがよく分からなくて。妹(充子の妹・萌子)の話では夢見が悪いので山寺で数日潔斎してくるということだったのですが」
 
「ちょっと確認します。仕事を滞らせてごめんなさい」
 
それで花子は腹心の伊勢を実家と右大臣宅に行かせて状況を確認します。すると左大臣もそのことを知らなかったようですが、右大臣宅で涼道の側近の兼充から「あまり他人には言うなと言われているのですが」という前提で、涼道が吉野宮に行っていることを聞き出しました。
 
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「兼充様。これは放置しておいて帝の耳にでも入ったりお叱りを受けかねません。お手数ですが、殿様を呼びに行ってもらえませんか?」
と伊勢は言いました。
 
「分かりました。行ってきます」
と行って兼充は涼道を呼び戻すために吉野に向かったのです。
 

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