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■女たちの戦後処理(7)

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千里は翌日、安物のトレーナーとスカートを着て、早月・由美をアテンザの後部座席に2つ並べてセットしたチャイルドシート・ベビーシートに乗せ、新東名・東名・名神を走り、最後は阪神高速を通って神戸市まで来た。
 
スーパーの中庭駐車場に駐める。早月と由美にたっぷりとおっぱいをあげてから、タンデムのストローラーを組み立て、前後して座らせる。そしてまるで買物でもしに行くかのような顔でスーパーの建物の中に入っていった。自販機コーナーで★★レコードの氷川係長と落ち合う。
 
「普段の感じで、子連れで来てくださいと言うので、本当にバーゲンの服着て子連れで来ましたよ」
 
「ええ、とっても素敵です。私も結婚したらそんな感じで出歩こうかな」
などと言う氷川さんはカルダンのビジネススーツを着ている!
 
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氷川さんは千里たちを連れていったん外に出て裏側に回り、エレベータで4階に上がる。ここは1〜3階が店舗(本店)で4階が本部、5〜8階は駐車場になっている。
 
「こんにちは、★★レコード制作部の氷川と申します」
と言って名刺を出す。向こうは常務・営業部長の名刺を出すが千里を見て戸惑っているようである。
 
「こちらは作曲家の醍醐春海さんです。醍醐春海というより、むしろ鴨乃清見の名前の方が有名かな」
と氷川さんは言う。千里は一応《作曲家・醍醐春海》の名刺を出した。
 
「鴨乃清見! 大西典香の『Blue Island』とか津島瑤子の『See Again』を書いた作曲家さんですか?」
 
「そうです。そして彼女はご覧のように子育て中の主婦ですので、こちらさんのようなスーパーのための曲を書くには、いちばんふさわしいかと思ったんですよ。それで、子連れで普段通りの格好で来て下さいと頼んだんです」
 
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「でも、さすがにこの格好で子供連れて打ち合わせに出るのはちょっと恥ずかしいです」
と千里は言った。
 
実際にお店で買い物してもらった方がいいということになり、千里は早月と由美を連れて1階の食品売場に降り、今晩の晩御飯材料とおやつ、という感じの買物をすることにした。
 
ほんとに普段の買物感覚にしようということで、氷川さんと営業部長さんは遠くで見ている中で千里は買物かごを持ち、ベビーカーを押して売場を見て歩く。漠然と今夜は焼きそばにしようかなと思い、おつとめ品コーナーで半額シールの貼ってある焼きそば麺4人前、30%引シールの貼られたもやし、地産地消コーナーの30円の人参、50円のキャベツと190円の菌床シイタケ、それに見切品処分の豚こま、それと100円おやつコーナーで、桃香の好きな濡れおかきを買った。
 
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それでレジに行こうとしてたら、向こうから見知った顔の女性が4歳くらいの男の子を連れてこちらに来るのを見る。
 
「こんにちは〜」
「こんにちは〜」
とお互い、笑顔で挨拶する。
 
「お互い、あの頃はわだかまりがあったけど、今は敗戦の将同士ということでお友だちでいいよね?」
と阿倍子は言う。
 
「うん。握手しようよ」
と千里が言うので、ふたりは握手した。
 
「京平、元気?」
「うん、ぼくげんき」
「ママの手伝いしてるか?」
「せんたくものたたんでるよ。かいものぶくろも、もつよ」
「よしよし」
と言って、千里は京平の頭を撫でる。阿倍子は腕力が無いから(彼女は5kgの米を持てない)買い物袋は京平が持つのが良いだろう。
 
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「京平は最初から千里さんになついてたよね。なんか私、それも悔しかったけど、今はもう許容できるよ」
「お互い、少しおとなになったかもね」
「千里さんも結婚したんだったね?」
と言って、千里が押してるベビーカーを見る。
 
「結婚したよ。子供はこの通り2人。今日は仕事で来たんだけどね。小さな子供がいると放置できないから、チャイルドシートに乗せて連れてきた」
 
「なるほど。でもいいなあ。私も、もう1人か2人欲しかったけど」
「再婚して産めばいい」
「そっか、その手があるか」
と言ってから阿倍子は何か考えている。
 
「まだ若いんだし、行ける行ける」
「ちょっと頑張ってみようかな」
 
「そうだ。京平に、これあげるよ」
と言って、東京で買って来ていた羊羹の包みを紙袋ごと渡す。
 
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「わーい、ぼく、ようかんすき〜」
 
「誰かのお土産に買ってたんじゃないの?」
と阿倍子が訊く。
「ううん、阿倍子さんと京平に会いそうな気がしたから買っておいた」
 
「あんた、昔からそういうのあったよね! 用意が良すぎるんだ!」
「巫女だから」
と千里は微笑んで答えた。
 
しばらく話してから、ふと阿倍子が言う。
「だけど、貴司ったら、千里さんのこと、あの子は元男の子なんだよ、なんて言ってたけど、やはり嘘だったのね。自分の浮気を誤魔化すのに、そんな馬鹿なこと言ってたんだ。こうやって、赤ちゃんができてるんだもんね」
 
「そうね。男の子は赤ちゃん産めないかな」
と千里も微笑んで答える。
 
「でも信用してくれないかも知れないけど、私、阿倍子さんと貴司が婚約した後は1度も貴司とセックスしなかったよ」
 
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阿倍子は微笑んで
「うん。それはきっとそうだろうと思ってた」
と言ってくれたが、その時彼女がとても微妙な表情をしたのが気になった。
 
阿倍子と結局10分くらい立ち話してから「また機会があったら」などと言って別れ、レジに行った。実際にはレジの所には営業部長さんが来て、お金は向こうで払ってくれた。
 

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「済みません。古い知り合いに遭遇したもので、つい長話してしまいました」
「いえいえ、スーパーは主婦同士の交流の場でもあると、私は思っていますから」
「自販機の置いてある休憩コーナーのベンチもいいですね。主婦同士長話するのにもいいし、私みたいな子連れの主婦は助かります。子供連れて買物って実はすごく体力・精神力使うんですよ。飲み物あてがっていたら、その間は子供もおとなしいですから」
 
「そういう声は結構いただくんですよ」
 
「でも、ここお野菜が安かった」
 
「近隣の農家と契約して直接新鮮な野菜を仕入れているんです。毎日朝に収穫した野菜を店舗に並べています」
「偉いですね。主婦の側からは、新鮮な野菜が入手できるのは嬉しいです。野菜って、日数がたつととんどんビタミンとかも失われるから」
 
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曲は1ヶ月程度以内に書いてもらえばということであった。この仕事は買取りで、千里と歌詞担当蓮菜の取り分はふたりで96万円である(120万円を8:2で★★レコードと分ける)。
 
「これ、お金払ってもらったし、そちらにお渡ししますね」
と千里は言ったが
 
「いえいえ、お持ち帰りください」
と言い、若い人に店舗から氷を取ってこさせて、渡してくれた。
 
「保冷箱を差し上げましょうか?」
「いつも車に積んでますから大丈夫です」
 

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氷川さんと別れてから桃香に電話する。
 
「ちょっと高岡まで来てくれない?」
「はぁ!?」
「デート中申し訳ないけど」
「デートとかしてないよぉ」
と言いつつ桃香は慌てたような声である。
 
「大丈夫。季里子ちゃんには黙っててあげるから」
「ちょっとぉ!!」
 
それで千里は、また由美と早月に充分におっぱいをあげて、早月にはパンも食べさせた上で、車を高岡方面に向ける。北陸道をひたすら走り、富山駅まで行って、新幹線《かがやき》に飛び乗ってやってきた桃香をピックアップした。
 
「取り敢えず焼きそばをしよう」
などと言うので、ちょうどオーストラリアから戻り帰宅してきた青葉がホットプレートを出してきて、食卓でそれを囲む。
 
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朋子がありあわせのタマネギとピーマンを切り、魚肉ハンバーグやウィンナー、なども一緒に焼く。早月はウィンナーをメインに狙っている。
 
「でも今日はどうしたの? びっくりした」
「うん。神戸でちょっとお仕事があったから、そのついでに寄ったんだよ」
 
「千里の感覚では、高岡は神戸のついでに寄れる場所なんだ?」
と桃香が言う。
 
「うん。東京から大阪に行くのに関越から北陸道経由で行ってたりしてたよ」
 

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「でも、ちー姉、春休みに見た時と見違えた」
と青葉が言う。
 
「見失っていた鍵を再度見つけたんだよ」
と千里は言う。
 
「霊感を取り戻したね?」
 
「うん。ちょっと復帰することになった青山のお仕事(作曲のことだがこう言えば青葉には分かる)で必要だと思ったから。だから私はもう信次の妻ではなくなった。ただの早月と由美の母親だよ。実は信次と会った時以来自分に霊感があったこと自体を忘れてしまっていたんだけどね」
 
「でもそれ力を取り戻せる人ってレアなんじゃないの?」
と朋子が訊く。
「うん、そういう人は聞いたことがない」
と青葉。
 
『ちー姉が少しでも霊感を持ったまま信次さんと結婚してたら、信次さんは助かったんだろうか?』
 
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と青葉は自問したが
「寿命だったのか・・・」
 
と呟く。信次を助けられなかったことは青葉にも結構悔しい思いを残したのであろう。でも《姫様》の見解も、あの日が元々の寿命だったということか、と千里は考えた。
 
「あ、姫様にもお土産がありますよ」
と千里は唐突に言うと、御手洗団子(みたらしだんご)のパックを取り出し、掲げる。すると、団子のパックは消えた。
 
桃香が目をパチクリする。
 
「千里、今のって手品?」
「気にしない方がいいよ、唯物論者さんは」と千里。
「そうする。例外的なことがらは分析しようとすると多大な手間が掛かる」
と桃香。
 
朋子は笑っていた。青葉と一緒に暮らしていれば、この程度のことは日常茶飯事であろう。早月は《姫様》がどうも見えるようで、じゃれ付き、姫様も気をよくして、遊んであげている。私の遺伝子を持ってるから、この子、こういうの見えちゃうのかな、と千里は思った。
 
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早月と由美は遺伝子的に同母異父姉妹なのだが、早月は霊感があり、由美には霊感が無いことが、今の千里には分かっていた。
 

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由美が泣くので、千里は胸を出して授乳する。
 
何気ない風景なので、そのまま会話はふつうに続いていたのだが、ふと朋子が難しい顔をする。
 
「今、由美が千里のおっぱいに吸い付いてるけど、あんたお乳出るんだっけ?」
「出るけど」
と千里。
 
「なんで〜〜!?」
「ああ、それは青葉のしわざ」
 
「えへへ」
 
「出るようにできるんだ?」
「停めることもできるよ」
 
「ひとりで2人に授乳するのは、なんか身体をむさぼり食われているようで割と辛かったから、千里もお乳が出るようになって、私は助かっている」
などと桃香は言う。
 
「でも、早月は私のおっぱいより桃香のおっぱいが好きで、由美は桃香のおっぱいより私のおっぱいが好きみたい」
 
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「それぞれ味の好みがあるんだ!」
 
「私は肉をたくさん食べてるから味が濃いかも。千里はほとんど菜食に近いから薄味かも」
と桃香は言う。
 

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千里は自分の父と和解できたことを朋子に報告した(電話では既に伝えていたがあらためて話した)。この問題ではこれまでもたくさん朋子に心配を掛けていたし、何度か仲介してあげようか?と言われたこともあった。
 
「それでうちの父、12年掛けて、高校・大学・大学院を修了したんですよ」
「それはおめでたい」
「ストレートに行けば9年で修了できるんですけどね」
「それは他人の1.33倍、勉強したということだな」
と桃香。
 
「そうだ、卒業といえば、ちー姉にも心配掛けた、例の沖縄の麻美さんがとうとうこの春、大学を卒業したんだよ」
と青葉。
 
「例の難病の子か」
と桃香。
 
「高校に入ってすぐに発病して、病院の中で7年過ごしたからね。高校は特例で卒業証書もらったんだけど、退院する1年くらい前からかなり勉強して退院してから予備校に行って、それで大学受けてこちらは4年間で卒業。作業療法士の資格を取ったから、この後、その方面で頑張ると言っているらしい」
 
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「自分がさんざん病院にお世話になったから、その恩返しって感じかな」
「そうみたい」
 
「でもあの病気から回復して退院できたのは、麻美さんが現時点では世界で唯一の例らしい」
「物凄く運が良かったんだろうね」
 
と言ってから千里は信次のことを思い起こし胸が痛んだ。
 

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「千里、あんた苗字はどうするの?」
と朋子が訊いた。
 
「そのまま」
「じゃ、川島のままにしておくんだ?」
「うん。どっちみち、あと1年半しか使わないし」
「1年半?1年半後にあんた結婚でもするの?」
 
「ん?私、今1年半しか使わないって言ったね」と千里。
「言った」と桃香。
「なんでだろ?」と千里。
 
青葉が苦笑する。
「ちー姉、昔から、そういうチャネラー的な発言があった」
 
「なんか自分で言ってて『へー』とか思うことがあるんだよ」
 
「ただ、例の事故の後は、その手の発言が無くなってたんだよ。それからちー姉って、ものすごく用意周到なんだよね。何か必要になるものが全部予め分かってるの。でもそれも婚約した頃から、そういうのが無くなってた」
と青葉は言う。
 
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「まあよくその状態から回復したね」
と朋子が言った。
 
千里は返事をせずに微笑んでいる。
 

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女たちの戦後処理(7)

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