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■女子バスケット選手の日々・2017オールジャパン編(10)

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「実際問題として、龍虎って、20歳くらいになったら、きっぱりとアイドルはやめるつもりでしょ?」
と千里は言う。
 
「その話も宏美さんとしました」
と龍虎は言う。
 
「ボク、基本的には俳優になりたいんです。でも音楽が好きだから、撮影にかかってない時期はロックバンドとかやりたいんですよね」
 
「龍ちゃん、ギターがうまいし、ピアノやヴァイオリンもうまいもんね」
「ギターはお父さんの担当楽器だから、これでは競争したくないんです。だから、ボクはボーカル兼ピアノ担当で、ギターとベースとドラムスの人をどこかでスカウトしたいんですよね」
 
「ああ、いいんじゃない?でも撮影をやっている最中のその人たちの収入は?」
「ボクが払いますよ」
「そういう形にすると、アクアとそのバックバンドという形にならない?」
「ボク専用のプロダクションを作って、そのプロダクションが雇う形にします。そのプロダクションは§§プロと委託契約で」
 
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「こんな巨額の利益を生むタレントさんを§§プロが簡単に独立させてくれるかな?」
 
「アクアプロジェクトの利益はその会社と§§プロとで半々ということで」
と龍虎。
 
「私はそれでいいと言った」
と宏美。
 
「比率は2:1で§§プロが2でもいいです」
と龍虎は言う。
 
「紅川さんは半々でいいと言うと思う」
と宏美。
 

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「だけど、ボクも夢があって」
と龍虎は言う。
 
「これも宏美さんと話していたんですが、自分の代表曲を作り出したいんですよ」
「ほほお」
 
「今までボクの出したCDって全部ミリオン行っているけど、じゃどれが代表曲か?と言われると、どれも微妙なんですよね」
 
「『エメラルドの太陽』じゃない?」
 
「話題にはなりましたけどね〜。それにそもそもボクの出す曲ってボクの人気で売れている面があって。むしろ楽曲と歌唱を評価されるようなスッキリしたヒット曲が欲しいんですよ」
 
「なるほど」
 
「それがボクにとっても代表曲になるんじゃないかと思います。例えば松田聖子なら『SWEET MEMORIES』、ビートルズなら『Yesterday』、ラッキーブロッサムなら『六合の飛行』、XANFUSなら『ダウンストーム』、ローズ+リリーなら『夏の日の想い出』とか、そのユニットの名前を聞いたら誰もが連想する曲。そういう曲がボクにはまだ無いんですよ、そういうヒット曲が欲しいんですよね。これ多分多くの歌手の夢だと思うんですけど」
 
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「それはファン以外にも物凄く支持される曲でないといけないだろうね」
 
「はい。たくさん曲を書いてくださっている千里さんの前で言うのは失礼になるのは承知なんですけど、こういうのって作曲家の先生が狙ってできるものでもないし、ボクが頑張ってできるものでもないし、偶然と幸運の作用がなければ生まれないものでしょうけどね」
 
「うん。狙ってグレイトヒットにできるなら、私ももっとミリオン出して、左団扇の生活したいよ。龍ちゃんが言うように、偶然と幸運が味方して生まれるものだろうね」
 
そんなことを言いながら千里は何か凄く大事なことを話しているような気がした。
 

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3人の話し合いは明け方近くまで続いた。途中和実は一時寝ていたようで、その間はマキコが対応してくれた。マキコの作るラテアートが和実のとはまた流儀が違うので、これも龍虎は写真に撮っていた。
 
5時頃に和実が起きてきてマキコと交代した。
 
その和実に尋ねた。
 
「ふと思ったけど、昨日はオールスタンディングのイベントやったんでしょ?今はテーブルと椅子が並んでいるね?」
 
「うん。ボニアート・アサドのライブは多人数必要だから、メイドさんをフル動員している。それで人手のある内にスタンディングライブ用の傾斜付きのフロアブロックを撤去してフラットに戻した上で、今日のイベント用にテーブルと椅子を入れたんだよ」
 
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「テーブルと椅子って、店内に倉庫とかあるんだっけ?」
「最初の設計では2階に倉庫を設定して、そこから運んで来るつもりだったんだけど、それは移動距離が長すぎて物凄く大変だということが分かって」
 
「ああ」
 
「それで今は家のほうの1階洋間に運び入れている。店舗と自宅玄関との間にベルトコンベヤを置いてそれで運んでいるんだよ」
 
「ベルトコンベヤ!?」
 
「でもそれも雪や雨の日は大変だという指摘があって何かうまい手がないかと思っているんだけどね」
と和実は言う。
 

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「だけど2階に運ぶのが大変だというのに、家の方まで運ぶのも大変なんじゃないの?」
 
「それはそうなんだけどね。裏ロビーに置こうかとも思ったけど入りきれないんだよね」
 
「裏ロビー?」
「いやあ、冬子のアドバイスで音響がいいように客室を改造したら微妙な空間が余ってしまって」
「どんな所?」
「こちらなんだけどね」
 
コスモスも興味を持ったようで3人でその「裏ロビー」を見に行く。
 
「ここにこういう空間があったのか」
 
「冬子に言われて、客室を末広がりの形に変更したから、結果的にこういう三角形の空間が余っちゃったんだよ。表側の三角形は物販とかにも使えると思うんだけど、ここは使い道が無くてどうしようと思っている」
 
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(↑図で客席の奥にある「積層倉庫」と書かれている部分)
 
「ここには入りきれない訳?」
 
「今なら計算上入るはずなんだけどね。追加で頼んでいる、というか元々そちらが先に発注していたんだけど、フランスで作ってもらっていたテーブルが来ると入りきれなくなるんだよ」
 
「重ねても入らない?」
「あんな重たいテーブルを重ねるという作業は、女ばかりのスタッフでは無理。椅子でもけっこう大変」
 
「うーん」
と言って、千里も悩む。
 

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その時、龍虎が言った。
 
「今度ボクが入る高校の図書館の書庫が積層型になっているんですよ。あんな感じで、上の方に新たな床を作って積み上げていくことはできませんかね?」
 
「ああ!」
「要するに中二階を作るわけか」
 
「ここは1〜2階が吹き抜けになっているから、中三階か、ひょっとすると中四階くらいまで作れるかも」
 
「でも中二階を作ってそことの出し入れはどうやる?」
「エレベータというかリフトを付ければいいと思う」
と千里。
 
「スロープでもいいかも知れないけど、スタッフが女子ばかりならスロープをたぶん登りきれませんよ。お金は掛かるけどエレベータにした方がいいです」
とコスモスが言う。
 
「それって幾らくらいするんだろう?」
 
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「このくらいの広さなら、たぶん1層につき100万円くらいだと思う。それと昇降機がたぶん150万くらい」
 
と千里。
 
「そのくらいで作れるなら検討してもいいかな」
と和実は言った。
 

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「もし3層にするなら最初から3層で作った方がいい。2層でいったん作って足りなくなって3層に改造しようとしたら大変なことになる。リフトも最初から3層用のものにする」
 
「うん。今の段階では2層で足りるけど、確かにどうせ積層床を作るのなら最初から3層にした方がいいかもね」
 
「ところでテーブルにはキャスター付けてるんだっけ?」
「付けてくれという要望があったから、来週までに取り付ける」
「ああ、大変だね、伊藤君が」
「うん。彼にかなり助けてもらってる」
 
「椅子も付けた方がいいかな?」
「椅子にはキャスターは付けずに、移動にはキャスター付き荷台を使えばいいと思う。あれあまり高いものではないよ」
「そうか。椅子の方はそれにしよう」
 
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「あれ?でも龍ちゃん、入る学校決まったの?」
と千里が訊いた。
 
「合格発表はまだなんですよ。でもほぼ確定です」
「ああ、内定状態か」
「ええ。東京北区のC学園なんですけどね」
 
「そこ女子校じゃなかったっけ?」
「この春から高等部の芸術科に限り、男子を最大3人入れることにしたそうです」
「へー!」
 
「でもだったら、それで勧誘されたの?」
「いやそれが」
と言って龍虎は頭を掻いている。
 
「別の学校の説明会に行くつもりが、間違ってそこに行っちゃって」
「ああ」
 
「それで『うちは女子校なんですけど、田代さんって性転換なさっているんでしたっけ?』と訊かれて『え?D高校って女子校なんですか?』とこちらも言って、それで間違いに気付いて」
 
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「なるほど〜」
「それで実はといって、その男子枠創設の話を聞いたんですよ」
 
「間違いが発端というのは面白いね」
と千里は言う。
 
「そもそもうちのオーディションも間違いで受けたようなものだし」
とコスモス。
 
「まああれは間違いというか騙されたというか」
と龍虎。
 
「ああ、それなら私も間違ってメイドになっちゃったんだけどね」
と和実。
 
「まあ間違いというのは便利な言葉だね」
と千里は笑って言っていた。
 

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その後テーブルに戻ってしばらく話していたが、6時近くになり、そろそろ眠くなってきたね、という話になった所で、解散することにする。
 
「これ朝御飯に」
 
と言って和実がオムライスを3つ作ってくれたので、ひとつずつもらう。お金を払ってお店を出てから、千里は宏美と龍虎を《こうちゃん》に乗せて、元居た栃木県のホテルに送り届けた。
 
龍虎はホテルに辿り着くとすぐにベッドに入って、すやすやと眠ってしまった。その様子を微笑んで見つめた宏美は、部屋を出てロビーに行き、そこからある人物に電話を掛けた。
 
「こんな時間に申し訳ありません。アクアの気持ちは確認できました。ドラマの展開についてはA案の方でお願いします。はい大丈夫です。万一のことがありましたら、私が腹を切りますから」
 
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プロデューサーとその後しばらく話した上で宏美は部屋に戻ると、自分もベッドに潜り込んで熟睡した。
 

一方、千里はいったんお店の中に戻り、オムライスをあと2つとカフェラテにミルクをひとつずつ作ってもらって2000円払った上で、2時間後くらいにまた来ていいか?と尋ね、OKをもらう。
 
「寝てると思うから起こして」
「うん。疲れている時にごめんね〜」
「それはお互い様」
 
千里はお店の外から《ちょっとした作業》をした上で、《くうちゃん》に大阪に転送してもらった。
 

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千里は大阪の貴司のマンションに来ると、わざわざ鍵を開けて中に入る。お茶を入れようと、ケトルでお湯を湧かしていたら、京平が起きてくる。
 
「お母ちゃん、おはよう」
「おはよう、京平」
と言ってキスをする。
 
「今日はおみやげ。オムライス買ってきたよ」
「わあ、なんか美味しそう」
「ミルクもあるよ」
 
「いただきまぁす」
と言って、美味しそうに食べ始める。
 
それで千里は今日の京平当番の《たいちゃん》も交えて3人で一緒にオムライスを食べながら、たくさん京平の報告を聞いた。
 
千里と京平は、京平が《くうちゃん》と共同で作り出す特殊な空間の中で会うことが多いのだが、たまにはこのマンションや、用賀のアパートで会うこともある。今日のように大阪のマンションで会う場合は《くうちゃん》に2人が会っている場をロックしてもらっているので、ここの音が貴司や阿倍子に聞こえることは無い。
 
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京平とのふれあいの時間が終わると、千里は持って来たプラスチック容器と紙袋をしっかり回収して、またドアから出て行く。そしていったん仙台に転送してもらう。和実を起こそうと思ったのだが、和実は千里が携帯で電話する前に店のドアを開けて中に入れてくれた。
 
千里がお店の前に来た《雰囲気》で起きたのだという。
 
「お店で寝てたの?」
「どっちみち、もうすぐライムちゃんが出てくるから、開けてあげないといけないし」
「たいへんだね!」
 
それでオムライス4つとカフェラテ3つにミルク1つを作ってもらい、料金を4000円払う。
 
「ありがとう。じゃ今日のイベント運営頑張ってね」
「こちらこそありがとう。そちらも試合頑張ってね」
と言って別れる。
 
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サンドベージュとの決戦は今夜17:00である。
 

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