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■少女たちの星歌(8)

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6月14日(金)には、遠足があった。6年生は黒銅山である。
 
遠足の行き先は学年ごとに毎年決まっていて、1年は晴日公園、2年は黄金岬、3年は運動公園、4年は白銀丘、5年は神居公園で6年は黒銅山である。2年黄金岬、4年白銀丘、6年黒銅山は、まるでランクが下がっているようだが、距離は長くなっている。
 
6年生は標高783mの黒銅山(くろがねやま)に登る。3合目まではバスで行くのだが、登山道はそこから7kmあり、標高差500mは水平距離に換算すると5km分の負荷があるとされるので、実質片道12km 往復20kmほどの歩行に近い。
 
朝8時に出発し、お昼頃山頂近くの公園に到達できるかなという結構ハードな遠足である。12時の時点で到達できなかった子には、そのまま下山することが勧奨される!(毎年5-6名これが出る)山頂に到達したものの、帰りを歩く自信が無いという子は、先生が車に乗せて下山させる。また最初から不参加の子もいる(学校で自習している)。優美絵などは不参加組で、これには多くのクラスメイトが理解を示した。
 
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「ゆみちゃんは多分半分も歩けないと思う」
 
千里が優美絵と同じ組で100m走をしたことがあるが、通常“女子最遅”を誇っている?千里よりずっと遅かったのが優美絵であった。彼女は100m走るのに1分掛かった(蓮菜や美那が歩くのより遅い)。
 
「新田(しんでん)さんが半分の所まで到達する間に花和なら富士山に登るな」
と男子が言うと
「富士山登ってみたーい」
と留実子は言っていた。
 

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班単位での行動になっていて、各班にGPSが渡されており、班内で「機械の操作に強い人」が持つことになっている。全員機械音痴の場合は班を組み替える。以前は班長に渡されていたものの、班長が機械に弱くて迷子になったという前例(千里たちの班!)があったので、ルールが改訂されたのである。
 
千里は蓮菜、田代君、留実子、鞠古君、恵香、と男子3人女子3人(?)の班になった。
 
「この班の男女人数は難しい」
と恵香は言った。
 
「そうだっけ?」
 
「我妻先生の考えでは、男が鞠古君、田代君、るみちゃんで、女が私と蓮菜と千里」
 
「それ以外の数え方があるんだっけ?」
と鞠古君。
 
「戸籍上では、男が鞠古君、田代君、千里で、女が私と蓮菜、るみちゃん」
 
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「結局3人・3人なら全く問題無い」
と蓮菜は言った。
 
歩き方としては、GPSを持つ田代君と蓮菜が先頭、鞠古君と留実子をはさんで、最後尾を“道に迷いにくい”千里と恵香が務める(鞠古君も留実子も割と危ない)。傍目には、男女・男男・女女と並んでいるかのようである。しかし実際各班では同性が横に並ぶところが多く、男女ハンパになると、男女が前後になり、男女で横には並ばない子たちが多かった(男が前で女が後ろ:逆だと男が女子のお尻を見ることになる)。やはり6年生にもなると性別をかなり意識する。
 

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学校に7:30に集合し、バスで15分ほど掛けて三合目まで行く。昔は学校出発だったらしいが、リタイアが多すぎるので、数年前から三合目までバスで運ぶことになった。バスは1クラス1台だが、千里は蓮菜と並びの席に座った。基本的にバスでは隣は女同士・男同士になるように席を決めている。
 
しかし三合目までバスで行くようになってから、遠足は最初から山道になった!(以前なら最初平地や緩傾斜の道を歩くのがウォーミングアップにもなった)
 
千里は4月に根室に行く時に買ってもらった新しい靴を履いてきた。
 
「千里が珍しく黒い靴を履いてる」
「いや、前の赤い靴はさすがに傷みすぎてて、遠足に耐えられないと思って」
「男の子に“戻る”とかではないよね?」
「え?私が男の子に“なる”訳ない」
「ならいいけどね」
 
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「女子と一緒にいつも着替えていて、さんざん女子の下着姿も見ているのに、今更男になります、なんて言ったら八つ裂きの刑だな」
 
と蓮菜は言いながら、この子、下着姿どころか女子の裸も見てるけどねと思う。
 
「八つ裂きってどう8つに裂くんだっけ?」
と鞠古君が訊く。
 
「頭、右手、左手、右足、左足、胴体、ちんちん、はらわたで8つ」
と蓮菜が答える。
 
「じゃ私は七つ裂きだね」
などと言って千里は笑っている。
 
「ああ、八つに裂けるのは男子だけだな」
と恵香も言った。
 
「歴史上、八つ裂きの刑に処された女性は居ないらしいよ」
と蓮菜。
「それ物理的に不可能だからでは?」
と田代君。
 

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千里たちの班は元気に11時前には山頂公園に到着したものの、少し遅れて12時近くになった班も多かった。
 
到着後、蓮菜がみんなにチョコを配ってくれたので、それを食べながら休んでいたが、千里が全然疲れている風ではなかったので恵香が言う。
 
「千里、体育の時間のランニングとかでは遅いのに、わりと体力があるんだね」
 
蓮菜は“バラ”す。
 
「千里の体力には、建前と本音があるから」
 
「なるほどー!」
「か弱い女の子というのは世を忍ぶ仮の姿だよ」
「しかして実態は?」
「男の娘のふりをしている女の娘」
「女の娘って何?」
 

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この日は鞠古君が留実子の分までお弁当を作って来てくれていたので、留実子はそれをもらって食べていた。
 
「運動会とかだと親から何か言われそうだから控えたけど」
「もしかして鞠古君が自分で作ったの?」
「そうだけど」
「鞠古君、るみちゃんのいい奥さんになりそう」
「ああ、俺わりと料理は得意だから、調理担当でいいよ」
「ほほお」
 

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山頂公園では、「元気がある者限定」で宝探しゲームを実施。半分くらいの児童が参加した。千里たちの班は到着から1時間ほど休んでいたので充分体力が回復しており、6人とも参加した。この班は4年のキャンプの時同様、千里がとんどん見つけ、田代君・鞠古君・留実子の3人で取りにくい所にあるのも取るので、この班だけで7つゲット。「お前ら取りすぎ」と言われながらも、賞品をもらった。
 
旭山動物園のペア券は田代君、
プールのペア入場券は鞠古君、
シューズの購入券は留実子、
テレホンカードは蓮菜、
図書カードは千里、
映画チケットは恵香、
 
が各々もらい洋菓子の引換券は引き換えてから6人でシェアすることにした。
 

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充分休憩(?)したところで1時半に下山を始める。これも班単位の行動で各班の中で機械に詳しい子がGPSを持つ。
 
登る時は、どうしててもペースが遅くなるので、児童の列はあまり縦には伸びなかった。しかし下山は降りるだけなので、走って降りて行く子もある。先頭の先生を追い越して走って行く班には
 
「お前ら迷うなよ」
と声を掛ける。
 
「大丈夫です。GPSもありますから」
などと言っていたのだが・・・
 

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千里たちの班は迷ったのである!
 
「この道、絶対違うと思う」
と鞠古君が言う。
 
何より、登って来た時はひたすら登る道だったから、降りる時は下(くだ)るだけのはずなのに、彼らの前にある道は、上りになっているのである!
 
「GPSちゃんと見てたんじゃないの?」
と恵香が言うが
 
「ごめーん。話に夢中になってて」
などと田代君は言っている。
 
「この道はその川の先が登りになっているということはさ、いっそこの川沿いに降りて行ったらダメなの?」
などと蓮菜は言うが
 
「それは絶対危険」
と田代君も鞠古君も言う。
 
「人が通れる道が続くとは限らない」
「崖があって滝になっているかも知れないし」
「沼になっていて、周囲が通れない場合もある」
「そもそも地面と区別の付きにくい底無し沼とかがあるかも知れない」
 
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「黒銅山程度でそんな危険な場所がある?」
と蓮菜は言うが
「いや、山を甘く見てはいけない」
と田代・鞠古は言う。
 

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「GPSをちゃんと見ながら歩けば、下山道に戻れるよね?」
と恵香。
 
「それはできるはず」
と鞠古君。
 
「だったら迷ったことは忘れて、GPSをよく見ながら降りよう」
「それがいい気がする。GPSは大沢が持て」
と鞠古君。
 
(本当はむしろ引き返すべき)
 
「分かった。預かる」
と言って、恵香が田代君からGPSを受け取った。
 
(千里に持たせたらきっと静電気で壊れるとこのメンツは知っているので、千里には絶対触らせない)
 

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それで鞠古君と2人で見ながら、取り敢えず目の前の道は仕方無いので登った上で、その先にあった六叉路!をよくよく表示を確認した上で、右から2番目の道に進んだ。
 
「これGPS無かったら、絶対違う道に行ってる」
「文明の利器は素晴らしいね」
 
「この道を300mくらい進んでから、次の十字路を右に行けば、元の道に戻れるはず」
「良かった」
「だったら、本道からそんなに大きくは外れてなかったんだね」
「という気がするよ。どこかに紛らわしい道があったんだろうね」
 
「右に行って戻れるということは、私たちは本道の左側に居るんだ?」
「人間って分かれ道があると、左側に行きやすいからね」
 

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それで歩いていた時、千里が気付いた。
 
「あそこにキタキツネが居る」
「あ、可愛い!」
と恵香。
 
道の左手上り斜面に、キタキツネの姿が見えるのである。
 
「こんな近くで見るのは珍しい」
「まだ小さい子だね。去年くらいに生まれた子かなあ」
「でもなんで動かないの?」
 
通常なら人間を見たら逃げるか、逆に人間に慣れている個体なら(餌をもらおうと)寄ってくるものである。しかしそのキツネはその場所から動かない。
 
「何かに引っかかってるのかも」
と蓮菜が言った。
 
「ちょっと見てくる」
と言って、留実子がその斜面を5mほど登った。
 
「イノシシの罠に掛かっちゃったみたい」
と留実子。
「可哀想。助けてあげようよ」
と恵香が言う。
 
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「誰か手伝ってくれ。ひとりではこの罠を開けない」
「俺が行く」
と言って、田代君もそこまで登り、留実子とふたりで罠を開き、助けてあげた。
 
キタキツネは嬉しそうにして、こちらに御礼をするかのように何度も振り返りながら、森の中に入っていった。
 
「何とか動けるみたいね」
「良かった良かった」
 

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その後、6人は道を進んで、十字路の所まで来たのだが・・・・
 
「通行止め〜〜〜!?」
 
正しい道に戻れるはずの道の所に「崖崩れにより通行止め」という看板が立ち、ロープを渡して通れないようにしてあるのである。
 
「別の道を行くしかない」
「でもどの道を通ればいいんだっけ?」
とみんなでGPSの画面を見ながら検討していたら、声が掛かる。
 
「あのぉ、山を降りられるんですか?」
「はい?」
 
見ると16-17歳の少女である。高校生だろうか?
 
「私たち道に迷って」
「私も降りる所だったんです。一緒に来られませんか?」
「行きます」
 

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彼女は“小町”と名乗った。
 
それで千里たちは小町に付いていくことにしたのである。
 
「あなた、足が悪いんですか?」
と蓮菜が尋ねる。
 
「ちょっと怪我しちゃって。半月もすれば治ると思うんですけど」
「お大事にしてくださいね」
 
足を怪我しているというので、千里は唐突に思いついた。
 
「あなた、まさかさっき助けたキツネちゃんじゃないよね?」
 
「よく分かりますね!実は私はイノシシの罠に掛かっていた所をさっき皆さんに助けて頂いたキタキツネなんです。御礼に道案内だけでもしますよ」
 
みんな顔を見合わせている。
 
キツネの恩返し??
 
「だったらこれ怪我した所に貼っておくといいよ。薬草を調合してて怪我に効くから」
と言って、千里は彼女に膏薬を数枚渡した。
 
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「ありがとう!」
と言って小町は膏薬を受け取り、すぐ足に貼る。
 
「あ、消毒してあげるよ」
と言って、千里はオキシドールとコットンで怪我した所を拭いてあげた。その上に膏薬を1枚貼った。残りの膏薬は彼女がバッグに仕舞っていた。
 

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「怪我に効く膏薬とか、オキシドールとか、救急用に持ってたの?」
と鞠古君が訊く。
 
「いや、必要になる気がしたから持って来た」
 
「まあ千里はその日必要になるものが全部分かってるから」
と蓮菜が言う。
 
「でも道に迷うことは分からなかったんだ?」
と恵香。
 
「小町ちゃんを助けるためにこの道に迷い込んだんだったりしてね」
と恵香が言うと、蓮菜は優しく微笑んでいた。
 

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しかし小町の案内で千里たちは15分くらいで下山道の本道に辿り着くことができた。下山する児童の列の途中(割と先の方)に入ったので、千里たちが迷子になっていたことは先生たちも気付かなかった!どうも結果的にショートカットになったようである。蓮菜たちは話し合い、このことは黙っておくことにした!!
 
「小町ちゃんありがとう」
「いえ。私こそ助かりました」
「じゃ山を歩く時は気をつけてね」
「はい」
 
でも結局彼女とは3合目まで一緒に降りて、楽しくおしゃべりをしていた。彼女はキタキツネにしては?芸能ネタなども知っていて、モー娘。とかKAT-TUNとかのことで結構盛り上がった。3合目駐車場で本当に別れた。
 
それは少し不思議な体験だった。
 
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でもこのグループは、(千里のせいで?)割とこの手の体験はこれまでもしているので、あまり難しくは考えなかった!
 
 
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少女たちの星歌(8)

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