広告:プリティフェイス 1 (ジャンプコミックス)
[携帯Top] [文字サイズ]

■女子中学生のビギニング(7)

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 
前頁次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

小春にお金を念のため20万円下ろしておいてくれるように頼んでいたので、それを玲羅がトイレに行っている間に受け取った。小春自身も髪留めに擬態して釧路まで同行する。
 
(小春の“本体”は千里Yの中に同居している。このように出歩いているのはあくまでエイリアスである。実は実体が無いので、多少できないこともある)
 
葬式は遺族・親戚などが9時頃から集まってきて、親族一同の記念撮影の後、10時から始まった、千里は祭文奏上や玉串奉奠の間、笛を吹いていた。
 
発柩祭が終わって出棺したのは11時過ぎだった。ここで会葬者たちも帰る。
 
「これで終わり?」
と玲羅が寄ってきて訊く。
 
「ううん。お骨が帰ってきてから、また一仕事あるんだよ。でもそれは衣裳が違うし、時間があるから、いったん着替える」
 
↓ ↑ Bottom Top

通夜・葬儀は鈍色の衣裳を着るが、帰家祭は白い衣裳になるのである。
 
それで千里は女性用のスタッフ控室に行き、いったんセーラー服に着替える。
 
「セーラー服なんだ?」
「お客様の所に出入りする時は、きちんとした服装でないといけないからね」
「私適当な服だけど」
「小学生はいいよ」
 
「でも神式のお葬式、初めて見たけど手を叩かないのね」
「そうさう。通常拍手をする時に手を打つけど、お葬式では音を立てないで打つ振りだけで停める“忍び手”をするんだよ」
「へー」
などと、玲羅は興味深そうに神式のお葬式のことを聞いていた。
 

↓ ↑ Bottom Top

玲羅と話しながら表の方に出て行くと千里を探していた風の細川さんが寄ってきた。
 
「これお弁当とお茶、ふたり分ね」
「ありがとうございます」
「ついでにこれ私からおやつ」
「ありがとうございます!」
と言って、キットカットの大袋を受け取る。
 
「でも忙しい所、悪かったね。じゃ道中気をつけて行ってきてね」
と細川さん。
 
「え、え〜っと、まだ午後の帰家祭が」
「それは私が笛を吹くと言ったじゃん。千里ちゃんはこれであがりでしょ」
「え〜?だったら釧路まで送っていただくという話は?」
「それは親戚のおばさんが送ってくれることになったんでしょ?昨夜私に電話してきて言ったじゃん。だから帰家祭は私がすることにしたじゃん」
 
↓ ↑ Bottom Top

「親戚のおばさん???」
と千里が訳が分からない思いでいたら、ちょうど入口から、きーちゃんが入ってきた。
 
「千里、お待たせ。こちらはいつでもいいよ」
と彼女は言う。
 
「え?きーちゃん!?」
 
「釧路まで往復。片道4時間くらいかな。今から出ると、午後4時頃には到着すると思う。寝てていいからね」
 
「きーちゃんが私たちを釧路まで連れてってくれるんだっけ?」
と千里。
 
「昨日電話して来て、私に頼んだじゃん」
「あ〜〜れ〜〜〜!?」
 
「千里ちゃんのおば様ですか?無理を言ってすみませんね。よろしくお願いします」
と細川さんが挨拶している。
 
「きーちゃん、お久〜」
と玲羅は笑顔である。
 
そういう訳で、千里(B)は、訳が分からないまま(髪留めに擬態している小春もどうなってんだ?と混乱している)、きーちゃんの車、マツダ・トリビュートに玲羅と一緒に乗り、釧路に向かったのであった。
 
↓ ↑ Bottom Top


ところで、きーちゃんは「片道4時間」と言ったが、実は留萌から釧路までは一部の区間で高速を使っても本当は6時間かかる。ところがこの日の朝、きーちゃんは釧路に住む佐藤小登愛(おとめ)から連絡を受けたのである。
 
「今日の夕方、ちょっと来てくれない?封印を掛けるのに人数が足りないのよ。作業は1時間くらいで終わると思うんだけど」
 
それで小登愛には
「別件でちょうどそちらに夕方くらい行くつもりだったから、その時間に合わせていい?」
 
と言って了承してもらった。一応18時までには行くと連絡したのだが、できるだけ早く行きたい。それで知り合いの“神様”に頼んで、ワープさせてもらうことにしたのである。
 

↓ ↑ Bottom Top

千里と玲羅は後部座席に並び、細川さんからもらったお弁当(お葬式のだが)を食べながら移動する。
 
沼田ICから深川留萌自動車道に乗ると
「すごーい。高速に乗るんだ?」
 
などと玲羅が言うので
「え?乗っちゃまずかったっけ?」
と、きーちゃんが焦っている。
 
「いや全然問題無い」
と千里は言ったものの、笑いをかみ殺すのに苦労した。母の車に乗っているとまず高速なんて使わないからなあと思う。むろん、きーちゃんの車にはETCが付いているが、玲羅はETCで無停車通過するのも面白そうに見ていた。
 
きーちゃんは玲羅が興味を持つかな?という感じで芸能界の話題を振るので3人は楽しく会話しながらドライブしていく。でもおやつ(細川さんからもらったキットカットの他に千里も小春に頼んで、明治チョコBOXとかコーラとかも買っておいた)なども食べてお腹が満ち足りてくると、玲羅があくびした。
 
↓ ↑ Bottom Top

「あ、寝ててね。まだ時間はたっぷりあるから」
と、きーちゃんが言う。
 
千里は彼女のことばに“寝てて欲しい”という意図を感じた。何かこちらが寝ていてくれたほうが助かることがあるのだろう。きっと私たちに見せたくないことをするんだ。それで千里は
「私も寝ちゃおう」
と言って目を閉じ、神経を99%ほど眠らせた(実は1%ほど起きてる)。
 
2人が“寝た”のを見て、きーちゃんは車を100kmほどワープさせた。そして何食わぬ顔で車を走らせ続けるが、一部の神経が起きている千里は
《すごーい。きーちゃん、色んな能力持ってる》
と思ったのであった。
 

↓ ↑ Bottom Top

釧路は、札幌・旭川・函館に次ぐ北海道第4の都市である。下記は住民台帳に基づく、2003年当時の北海道人口ランキング(5位以下は年により結構微妙に順序が入れ替わる)
 
1.札幌市 1,837,901
2.旭川市 360,995
3.函館市 283,373
4.釧路市 188,093
5.帯広市 172,703
6.苫小牧市 172,022
7.小樽市 147,196
8.江別市 122,828
9.北見市 110,715
10.室蘭市 101,138
 
source:北海道庁のサイト
https://bit.ly/3uLmGtK
 
釧路市は2005年に阿寒町・音別町と合併した。この時、実は旧釧路市と音別町(おんべつちょう)に挟まれた白糠町(しらぬかちょう)が合併協議から途中で離脱してしまったため、2022年現在、釧路市は西側の旧音別町の領域と、東側の旧釧路市・阿寒町の領域とが飛び地になってしまっている。
 
↓ ↑ Bottom Top

この物語はこの合併前の時期である。
 

きーちゃんの車は、その音別町(おんべつちょう)で、レストランのようなものがあったので、そこに車を停めた。
 
「車で移動する時は、目的地の少し前でいったん休憩するのが大事なのよ。事故って、あと少しで到着するという時に起きやすいから」
と、きーちゃんは言っていた。
 
それは肝に銘じるべきだなと千里は思った。
 
一息ついて、おやつを食べてから、玲羅にトイレで着替えてくるように言った。それで玲羅は黒のドレスに着替えた。千里は留萌を出た時のセーラー服のままである。
 

↓ ↑ Bottom Top

千里は、きーちゃんに食事代・往復のガソリン代・高速代込みで12万円渡そうとしたが、彼女は『高速代・ガソリン代だけでいいよ』と言って、2万円しか受け取らなかった。
 
それで千里は
「じゃせめてここの会計は私が出すよ」
と言って、千里がここの代金を払った。
 
「そう?中学生におごってもらうのは申し訳無いけど言葉に甘えておくね」
と、きーちゃんは言っていた。
 
それできーちゃんの運転する車は16時半頃に釧路市内の斎場、D会館前に到着した。
 
「ありがとう。じゃ帰りは明後日のお昼過ぎにここで」
「うん。お疲れ様」
 
きーちゃんは千里たちと別れると釧路市内、小登愛のマンションに向かった。
 

↓ ↑ Bottom Top

きーちゃんの車を見送って玲羅が訊いた。
「お父ちゃんが居たらセーラ服は、やばくない?」
「大丈夫。この付近にはお父ちゃんは居ない。お別れをしてから旅館に移動したのかも」
「へー。よく分かるね」
「だって、お父ちゃんの波動も、お母ちゃんの波動も無いもん」
「ふーん」
 
朝5時に家を出たら休憩しながら走っても14時には釧路に到着するはずだ。それで千里は、父たちはもう旅館に移動したのだろうと思ったのである。
 

↓ ↑ Bottom Top

斎場の中に入って行くと、ちょうどエントランスの近くに光江さん(父の弟・弾児の奧さん)が居る。
 
千里は光江さんの波動は認識していた。
 
「光江おばさん、こんにちは」
と千里が笑顔で挨拶する。
 
「あら、千里ちゃん、玲羅ちゃん、お疲れ様」
と光江さんが笑顔で千里たちを歓迎する。
 
「父たちはもう旅館に行きました?」
と訊いてみた。
 
「え?あなたたちお父さんたちと一緒じゃなかったの?」
「私、今日の午前中にどうしても外せない用事があって、父たちより遅く、10時頃に出たんですよ」
 
と千里が言うと、玲羅が「え?」という顔をしている。千里は、きーちゃんが“ワープ”したのを認識しているので、この到着時間が合理的に説明できるように、留萌を出た時刻を10時ということにしたのである。
 
↓ ↑ Bottom Top

「お父さんたちまだ来てないと思うよ」
「え〜!?朝5時に出たのに。なぜまだ着いてないんだろ?」
「どこかで事故ってたりしないよね?」
と光江さんは心配そうである。
 
「ガス欠だったりして」
と玲羅が言ったが、そのあたりかもと千里も思った。母はガソリンは大抵1000円ずつしか入れないので、給油所が無い所でやばい状況になったことが過去にもあった。
 

↓ ↑ Bottom Top

光江さんが母の携帯に電話してみた。しばらく鳴ってから母が出る。おそらく車を脇に停めるのに時間が掛かったのだろう。
 
「ツキちゃん今どこ?」
「ごめんねー。さっき帯広を出た所なのよ。あと2時間くらいで着くんじゃないかなあ」
「いや、千里ちゃんと玲羅ちゃんが先に着いてるから」
「ありゃぁ」
 
何でも玲羅の予想通り、ガス欠してJAFを呼び(多分その場で入会した)、油を(少量)補給してもらった。その後、近くのGSまで行って釧路までに必要なガソリンを給油し、走っていたらシャーベット状の道路でスリップして脇に突っ込み、ついでにタイヤがパンクして、またまたJAFを呼んだ。取り敢えず車載しているテンパータイヤに交換してもらい、引っ張って道路に戻してもらってから、走って来ているらしい。どうも2度もJAFを呼んだので合計3-4時間ロスしたようだ。結局こちらに到着するのは18時半くらいになりそうということである。
 
↓ ↑ Bottom Top

千里は父が無茶苦茶母に文句言ってるだろうなと思った。
 
しかし道路外に逸脱してからのパンクで良かったと思った。3年前の事故のことを考えても、母なら走行中にパンクしたら、脇に寄せることができず、道路の往来の邪魔になっていたかもしれない。
 
でも向こうの車に乗らなくて良かった!!
 
「じゃツキちゃん、安全運転でね」
と言って光江は電話を切った。
 

↓ ↑ Bottom Top

「おじさんにご挨拶しよう」
と言って、光江は千里たちを遺体安置室に案内してくれた。通夜は明日の夕方からだから、まだホールは使用していない。それで小さな部屋に十四八さんの棺は安置されていた。
 
「ここの宗派は?」
と千里は訊く。
「ここは真宗」
「だったら、南無阿弥陀仏でいいね」
「うん。宗派によって違うから面倒だよね」
 
それで、千里と玲羅は棺の顔の所を開けてお顔を見てから、手を合わせて「南無阿弥陀仏・南無阿弥陀仏」と唱えた。
 
北海道は浄土真宗と曹洞宗が二大宗派と言われ、両者でだいたい全体の3分の2を占めている。
 

↓ ↑ Bottom Top

故人にご挨拶した後は、光江さんと一緒に休憩室に行く。そこに40歳前後の女性が2人でお茶を飲みながら話していた。
 
「浩子さん、玉緒さん。こちら天子さんの長男で留萌に住んでいる武矢の娘2人で、千里と玲羅。お父さんたちより先に着いてしまったらしくて。こちらは十四八(としはち)さんの長男・海斗(かいと)さんの奧さんの浩子さんと、次男・大湖(だいご)さんの奧さんで玉緒さん」
と双方を紹介する。
 
「初めまして。この度はご愁傷様でした」
「いえいえ。遠い所からお疲れ様」
と双方挨拶した。
 
もっとも玉緒など東京から飛んできているから彼女の方がよほど遠くから来ている!
 
「でも天子さんの兄弟関係の親戚の集まりって私初めて」
と玲羅が言うと
「キクさんの葬式以来、7年ぶりだもんね。前来た時は覚えてないだろうね」
と浩子さんは言っている。
 
↓ ↑ Bottom Top

「キクさんって?」
と玲羅が聞くので
「天子おばあちゃんのお母さんだよ」
と千里が教えてあげた。
 

↓ ↑ Bottom Top

「キクさんは、十四春おじいさんのお母さん、ウメさんの妹でもある」
と千里が言うと
「あ、そうか。従兄妹どうしの結婚だったと言ってたね」
「私もその付近は系図が今一理解してない」
と浩子さんも言っている。
 
「キクさんの所はきょうだいが7人兄弟でしたっけ?」
「小さい内に死んだ子を除くとね。本当は10人か11人くらい、いたらしいよ」
「昔は子供は小さい内に死んじゃうことが多かったですからね」
 
「そうそう。だから戦前は子供が生まれて2〜3歳になってから、そろそろ出生届けを出すか、なんて言ってた時代」
 
「それで最初の男の子の出生届けを出す時に、一緒に婚姻届けも出す」
「そんな感じ」
 
「何かできちゃった婚より進んでない?」
と玲羅が言うと
 
↓ ↑ Bottom Top

「確かに昔は、みんなできちゃった婚だよね」
と浩子さんも笑っていた。
 

「むしろ、できたら婚かな。男の子が生まれないと帰されちゃってた」
と千里が言うと
 
「それは酷い気がする」
と玲羅は文句を言っている。
 
「いや“三年子無きは去れ”って戦前はマジで行われていたこと」
「正当な離婚理由とみなされたみたいね」
と浩子さんも不快そうな表情で言っていた。
 
「不妊は半分は男のせいなのに」
と玲羅はまだ文句を言っている。
 
「特に男の子が生まれるかどうかは夫の責任が大きいよね」
と玉緒さん。
 
(この場に男が居ないからここで不満をぶちあげている!玉緒さんの所は女の子ばかり3人なので、きっと男の子ができなかったことでネチネチ言われている)
 
↓ ↑ Bottom Top

「Y染色体持ってるのは男だけだもんね」
と玲羅は言ったが、千里も大人の女性3人も“別のこと”を考えていた。でも小学生の前で言うことでもないと思って何も言わなかった。
 
女性の膣は雑菌侵入防止のため、通常酸性に保たれている。Y精子は酸性に弱く、X精子は酸性にも強い。女性が“感じる”と膣内にアルカリ性の愛液が分泌され、膣内は一時的に中性になるので、愛液が充分出てから射精されるとY精子は生き残りやすい。つまり女性に感じさせることのできる“上手な男”からは男の子が生まれやすい。男の子が生まれるかどうかは、男のセックス技量に大きく影響される。
 
兄弟が多数いる家族で例えば、女2人の後で男2人などというケースは年々上手くなっていったことが想像される。逆に男2人の後で女2人などというケースは年々セックスがおざなりになっていったことを想像させる。
 
↓ ↑ Bottom Top

筆者の父のきょうだいは8人いるが、前半は男3女1で、後半は男1女3である。つまり後者のケースと思われる!
 

↓ ↑ Bottom Top

↓ ↑ Bottom Top

前頁次頁目次

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 
女子中学生のビギニング(7)

広告:チェンジH purple (TSコミックス)