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■女の子たちの気合勝負(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-03-30
 
一段落した所で勉強会が始まるが、今回は女将さんが何度も「これ秘密の差し入れ」と言って、お菓子とか、魚の骨煎餅とか、刺身の切れ端とか、ジュースとかまで持って来てくれて、もらったおやつ代を使う以前に今回はおやつが豊富だった。
 
「こんなに差し入れしてもらったら、民宿の方が赤にならない?」
と佳美が心配するほどである。
 
「まあ来年もここで勉強合宿しよう」
「冬休みもやっていいよね」
 
「だけど去年の合宿の頃からすると、千里とるみちゃんの頑張りが凄いよね」
と恵香が言う。
「うん。私、千里に抜かれてしまいそう」
と美那。
「るみちゃんも今全体の真ん中付近まで上がってきたし」
 
「でも普段の授業の時の感じと、テストの点って、微妙に違うよね」
「うんうん。授業中はぼーっとしているのに点数が良い子がいる」
「それは、るみちゃんだ」
「逆に授業中はよく出来てるのにテストの成績が悪い子がいる」
「それは佐奈恵とかだな」
 
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「佐奈恵はテストではどうしても緊張して頭が働かないと言ってたよ」
「本番に強い子、本番に弱い子っているんだよねー」
「千里も本番に強いタイプだよね」
 
「試験は度胸だよ」
と千里が言う。
 
「試験は気合いだよ」
と留実子は言う。
 
「試験はまず分かる問題を全部解いて、残った分からない問題は適当に勘で書けばいいんだ」
と留実子。
 
「いちばん上手い方法だよ、それ。最初から順番にしか解いていけない子もいるんだよねー」
「それだと、どこかに難しい問題があって引っかかると、その先が全滅」
 
「尚ちゃんとかが、わりとそのタイプみたい」
「尚ちゃんの場合はそれでも何とかその難問を解いてしまうから、後も何とかなる。でもやはりこのタイプは試験では不利だよ」
 
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「試験もひとつのゲームだからね。実力を評価されるとは考えない方がいい。そのゲームで高得点を上げることを考えて行動すればいいんだよ」
と美那は言う。
 
「その発想ができるかが、受験に勝てるかどうかなんだよね」
 

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ところで夏休みに、妹の玲羅がハリーポッターの映画を見たいと言ったが、母が何だか渋っていた。
 
「お母ちゃん、もしかしてお金が足りない?」
と千里は玲羅が友だちの家に遊びに行っている時に訊いてみた。
 
「あんたたちに苦労は掛けたくないんだけどねぇ」
「最近、赤い色の督促状がよく郵便受けに入ってる」
「ごめんねー。私がもう少し良いお給料取れたらいいんだけど」
「やはり、私、バイト代少し家に入れるよ」
「いや。それはあんた自身が絶対必要になるから、ちゃんと貯金しておきなさい」
 
「だったら、玲羅の映画見に行く分のお金だけでも出そうか。私が出したってことは内緒で」
 
「そうだねぇ。じゃ今回はお前に甘えちゃおうかね」
 
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それで往復のガソリン代込みで、千里は母に4万円渡した。実費としてはこんなに掛からないが、せっかく旭川に出るなら向こうの安いガソリンスタンドで満タンにして、灯油も買いたい。食事代もある。
 
「あんたたちが映画見ている間に100円ショップとか見てていい?」
「うん。お母ちゃん、洋服とか買ってもいいよ。買える範囲で」
「そうだなあ。孝行娘に甘えちゃおうかな」
 
7月31日の土曜日、母の車で千里と玲羅は旭川に出た。父も誘ったのだが、疲れているから寝ているというので、結局母娘3人での行動である。千里は父と一緒にどこかに遊びに行った記憶が全く無い。そもそもあまりまともに会話した記憶自体が無い。平日はずっと船の上で働いているし、土日は寝てるか飲みに行っているかである。
 
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映画が始まるまで時間があったので、3人でマクドナルドに入り、軽く食事をした。玲羅はダブルチーズバーガーのLLセットを頼んでいたが、千里も母も「こんなに入らない」と言って、フィレオフィッシュのセットを2人でシェアした。
 

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映画館の方に行こうとしていた時、向こうの方から歩いてきたヤクザっぽい男が母と軽く接触した。
 
「こら、気をつけろ」
と男が言う。
 
母がわあ、どうしようという顔をしていた時、千里がキリっとした顔で男を見詰めて言った。
 
「そうですね。お互い気をつけましょう」
 
男は千里を見てビクっとした感じ。
 
「いや、済まんかった」と男。
「こちらも御免なさい」と千里。
 
「いや、それじゃまあ、そういうことで」
と男は何を言いたいのか良く分からない言葉を残して、こそこそと去っていってしまった。
 

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「お姉ちゃん、何か格好良い」
「ただお互いに謝っただけだよ」
 
「お前、今の剣道の気合い?」
と母が訊く。
 
「そうそう。私、剣道で気合いでは負けたことないよ」
 

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それで映画館の窓口で、千里と玲羅の分の切符を買い、2人で中に入る。母は買物に行く。映画を見に来た時のいつものパターンである。母はそもそもあまり映画が好きではないという問題もあるが、映画代節約の意味も大きい。
 
この年見たハリー・ポッターの映画は『アズカバンの囚人』。賢者の石・秘密の部屋に続く第3作である。
 
「ハリーって魔法使いなんだっけ?」
と唐突に玲羅が訊く。
 
「だと思うよ。wizardだよね」
 
「じゃ、ハーマイオニーは魔女?」
「違うと思う。女魔法使いでしょ。魔女はwitch。WizardとWitchは別物」
 
「じゃ男でも魔女がいる訳?」
「うん。WizardもWitchも性別と関係無い。男性のwitchもいるよ」
「うーん・・・」
「野球とソフトみたいなものだよ。女性で野球やる人もいるし、男性でソフトやる人もいる」
「ああ、なるほどー」
 
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このあたりの話は細川さんから教えられたことである。というより、細川さんの友人で実際に魔女をしている人が神社に来訪したことがあり、一緒にお茶を飲みながら話を聞いていた時、その話が出た。その人のワークグループに男性の参加者もいると聞いて、魔法使いさん?と千里が訊いたら、違うと言われ、魔法と魔女術の違いを30分ほど拝聴した。・・・が、実はよく分からなかった!ただ、魔法と魔女術が全く異なるものを基盤にしていること、wizard, witchは性別による言い分けではないことだけは記憶に残った。性別のことを説明するのに玲羅には野球とソフトに例えて説明したが、むしろフェンシングと剣道くらいに違う印象だった。
 
「ボクも魔女の素質あるって、魔女の人から言われたことある」
「お姉ちゃんなら、魔法のドレス着て、ピーリカピリララとか呪文を唱えても雰囲気出るかもねー」
 
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映画が終わってから、母と連絡を取ると、もう少し色々見ていたいというので千里たちは書店に行き、立ち読みをしたり、100円ショップを覗いたりしていた。
 
「ちょっとトイレ行ってくるねー」
と言って玲羅がお店を出て行く。千里はそのまま100円ショップの文房具の所を眺めていたのだが・・・・。
 
突然胸騒ぎがした。
 
何か物凄く悪い予感がする。玲羅? 千里は買物カゴをその場に置いて店を出た。玲羅はどちらに行ったのだろう? あたりを見回すと、右手にトイレの方角を表す矢印がある。千里は走ってそちらに向かった。
 
通路の奥に男女マークがある。ちょっとだけためらう。が、千里は気をしっかり持って、そちらに近づいて行く。その時、玲羅の悲鳴がした。千里は走ってトイレの前まで行き、迷わず女子トイレのドアを開けた。
 
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異様な光景だった。
 
玲羅が個室ドアの前で何かにおびえているようにして、トイレの中の1ヶ所を見詰めている。入口の近くに、小学2−3年生くらいの女の子が立っていて、何かを睨み付けている。玲羅が見詰めているポイントとその女の子が睨み付けているポイントは同じ場所だ。
 
千里には何も見えなかったが、そこに何か居ると確信した。
 
左側に掃除用のモップが立てかけてある。それをさっと手に持つと、その何か居ると思われたポイントめがけて、剣道の竹刀を扱う感じで思いっきり振り下ろした。
 

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