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■女の子たちの外人対策(6)

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男子の決勝が始まる。
 
R工業の方は全員日本人に見えるが、対戦相手は長身の外人選手が2人入っている。1人は黒人なのでセネガルだろうか。もうひとりは日本人の風貌ではないがアジア系のよう。R工業の選手だってほとんどが180cm以上。190cm台という感じの人も4人ほどいる。それでも相手チームの外人選手2人は凄く高く見えるから軽く2mを越えているだろう。
 
挨拶してスターティングメンバーだけがコートに残りティップオフしようとするが。。。。
 
審判が何か言ってる。
 
「外人さんが2人コートに入ってますね」
「うん。1人しか同時には入れないはず」
 
と千里たちは言っていたのだが、監督さんも出て審判と話して、結局そのままティップオフとなる。
 
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「なんで〜!?」
「日本人扱いの外人選手なのかも」
「そんなのあるの?」
「日本で生まれ育って、日本の小学校・中学校を出ている選手は、日本国籍でなくても日本人扱い」
「う・・・・」
「確かにそれは認めていい気がする」
 

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長身選手が2人いるので、R工業はトライアングル2を使うかと思ったのだが、ボックス1で行く。
 
「なんで〜?」
とメグミが声をあげたが、暢子は
「見てれば分かる」
と言った。千里も多分そうだと思った。
 
4人でゾーンを作り、残りの1人がマーカーになるが、アジア系の子の方に付いている。つまりセネガルの子は無視だ。
 
向こうのガードが攻めあがってきて、その長身のセネガルの子にパスする。ところがその近くにいたディフェンダーが瞬発、飛び出してボールをカットする。そして続けて走り出した隣の味方にパス。その子が速攻で攻めあがる。
 
相手選手が自分たちのコートに戻る前にそのままゴール下まで走り込み、シュート。2点R工業の先制で始まった。
 
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その後もR工業はボールがセネガルの子に渡り掛けると、あるいは渡った後、たくみにボールを奪って反攻するのを繰り返す。一方でアジア系の子の方はマーカーがしっかり付いていて、そちらへもパスは通らない感じであった。第1ピリオド半分まで行った所で既に20対6と大差になる。
 
「ああ、完璧にあそこが穴になってる」
とメグミ。
 
「彼、準決勝ではむしろ大活躍だったよ。ひとりで18点取ってる」
とそちらの試合を見ていた宮越さんが言う。
 
「でもR工業の選手は役者が違うんだな」
「バスケの経験の差が響いてますね」
「経験というより技術の差だね」
 
たまらずベンチはその子を下げて他の子を入れる。それで最初の5分ほどのひどいことにはならなくなったが、両者の実力差は明かであった。そして点差は開くがR工業はゾーン・ディフェンスをやめない。アジア系の子をフリーにすれば痛い目に遭うと判断しているのだろう。
 
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「たぷん前の試合を偵察要員にチェックさせてマーカー付けるのはこちらの子だけで良いと判断していたんだよ」
「偵察か・・・」
 
「上位の試合は情報戦だよ。うちだって今年こそインターハイ行くという前提で全国各地でOGが有力校のデータを集めてくれている」
 
「私も秋田N高校女子のデータは集めてるよ。たくさん撮影しているよ」
と宮越さんが言う。
 
「ありがとうございます」
「お疲れ様です」
 
「でもそれ、うちもやられてますよね」
「うん。千里は徹底的にマークされるだろうね」
 
「千里は道大会までは全開にさせない方がいいですか?」
と穂礼が訊くが
 
「いえ。私は全力で行きたいです」
と千里は言う。
 
そして宇田先生は
「そう。それでいい。偵察されたくらいで封じられるのは本当の実力じゃないのさ。マイケル・ジョーダンやマジック・ジョンソンを研究しただけで封じることができると思う?」
と言う。
 
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久井奈も暢子も頷いていた。そして千里は思っていた。多分花園亜津子も沢山の学校の関係者に偵察されているだろう。しかし彼女はどんなに偵察されても全然平気だろうと。
 

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決勝はR工業の大勝であった。それを最後まで見てから千里たちは秋田市立体育館を後にした。15:28の奥羽本線普通列車に乗り、弘前から特急つがるに乗って青森まで行き、スーパー白鳥で海峡を渡る。
 
なぜわざわざ弘前−青森間という短い区間を特急に乗るかというと、こうすることで、スーパー白鳥の特急料金が半額になるからである! 乗り継ぎ割引は新幹線と在来線特急の乗り継ぎが有名だが、奥羽本線または函館本線の特急と津軽海峡線特急の乗り継ぎにも割引制度がある。この場合、秋田−函館間の料金が7980円から7640円に、340円も安くなる。
 
函館からはまた貸し切りバスで旭川に戻る。帰り着いたのは朝4時であった。
 
「今日は学校あるからな。遅刻すんなよ」
と言って解散した。
 
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帰宅したいという子たちは学校から宇田先生のポケットマネー(実際は教頭先生と折半と言っていた)でタクシーに乗せて自宅に送り届けた。特に中学生3人はそれぞれ、南野コーチ・白石コーチ・宇田先生本人が付き添って自宅まで送り届けたようである。
 
「このまま学校で寝てます」
などという子たちは学校の宿泊施設を開けてもらい、そこで寝る。千里もそこで寝せてもらうことにして、半分無意識状態で部屋に入り、ひたすら寝た。
 

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「おーい、起きて起きて」
という声で目を覚ます。枕元の携帯を見ると6時だ!
 
「もう少し寝せてください」
などという声もあがるが
 
「朝練するぞ」
という久井奈さんの声。
 
「ひぇー」
「2日間見てるだけで身体動かさなくて辛かったろ?」
 
部屋に入った時は何も考えていなかったが、よく見るとひとつの部屋に8人、毛布をかぶってごろ寝状態である。何か身体が重たいと思ったら、暢子が千里の上に乗っかかるようにして寝ている。寝相の悪い子だ!
 
結局軽く準備体操した上で4人対4人で試合形式の練習をした。暢子と千里は敵味方に分かれてマッチアップする。暢子が攻撃の時は千里がマーカーになり、千里が攻撃の時は暢子がマーカーになる。各々残りの3人でトライアングル型のゾーンを作って守る。
 
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ビデオをたくさん見た上で生の試合も見ているのでお互いどう動いて守備をすればいいのかは結構見当が付いた。ただ思った通りに身体が動くかというと必ずしもそうでない。千里はほんとに練習量が必要だと思った。動きを迷ったところはプレイを停めて全員で話し合って検討した。
 
千里・暢子が下がっている時のマーカーになるはずの、透子・寿絵にもマッチアップをやらせる。練習は30分ほどで終えたが、各自今回の遠征で見たことを実際に身体を動かして復習したような感じになった。
 

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宿泊施設のシャワールームで汗を流してから着替える。みんな着替えの予備はいつもの習慣で持って来ているものの、制服を持って来ていない子が多い。
「体操服のままでもいいよね?」
「問題無いはず」
 
千里もそのまま体操服で教室に入った。
 
疲れが残っているのでさすがに午前中の授業は辛かったが何とか持ちこたえた。4時間目が終わると
「私、寝る!」
と宣言してひたすら寝る。
 
「そろそろ昼休み終わるよ」
と鮎奈に揺り起こされて起きた。
 
それで誘われて一緒にトイレに行く。列に並ぶ。
 
「でも今日は千里普通に女の子だね」
「そうかな?」
「胸あるし」
「ああ。この週末は身体動かさないしと思って金曜日におっぱい貼り付けておいた」
「髪も長いし」
「え? あれ? あ、しまった。ウィッグ外すの忘れた」
「いや、その髪のままでよいはず」
 
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「その髪が校則通りでふだんの丸刈りが校則違反だよね」
とひとつ前に並んでいる梨乃も言う。
 
「おちんちんも無いんでしょ?」
「あ、金曜日に家に置いたまま出ちゃったかな」
「なるほどねー」
 
「でも千里って、髪の毛もおっぱいも、おちんちんも着脱可能なんだ?」
と後ろに並んだ花野子が言う。
 
「おちんちん無いのが校則通りで付いてるのは校則違反だよね」
と梨乃。
 
「それって校則なの!?」
「知らなかった?おちんちん検査して付いてたら先生に没収されるんだよ」
「何それ?」
 
「だって勉強に不要なもの持ってくるのは校則違反」
「確かにおちんちんは勉強には不要かも」
「授業中にこっそりいじってる男の子いるよね?」
「ああ、いるいる」
「こないだ**君、出していじってたよ」
「なんて大胆な」
 
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「あれは没収すべきだよね」
「ああ。そこまでしてるのは没取してもいい気がする」
「で、親が呼び出されて親に返却されるのね」
「で、成績あがるまで返してもらえなかったりして」
「その間は立っておしっこできないのね」
 
「でも立っておしっこするのって便利そうな気もするね」
「るみちゃんみたいなこと言ってる」
「千里、座ってするようになってから面倒くさいと思ったことない?」
「うーん。ボクは立ってしたことないから分からないや」
 
「なるほどねー」
 

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その日はみんなさすがに疲れているでしょうということで18時で部活は終了する。それで千里がほんとに疲れ果てて帰宅すると、叔母から
 
「荷物届いてるよ」
と言われる。見ると雨宮さんからである。
 
「もう届いたんだ!早い!!」
 
きっと誰かお弟子さんか助手さんかに電話してパソコンを調整させ、昨日の内に発送させたのだろう。
 
箱を開けてみる。
 
「わぁ、大きなキーボード!」
と叔母が声をあげる。
 
キーボード付きでと言われたのを千里はてっきりパソコンのキーボードのように思っていたのだが、そうか楽器のキーボードだったのか。しかし送られてきたのは88鍵の大型キーボードである。こちらの方がむしろパソコンより高額なのではないかという気がした。
 
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「あんたそれ机に置ける?」
「台が何か必要かも!」
 

 
翌週は新人戦北海道大会であった。会場は帯広市で金曜日からなのでバスケ部は男女とも公休にしてもらって早朝から学校のバス(運転手さん付き)で出かける。N高校の部活のルールで高体連の正規の大会だと学校のバスが無料で利用できるのである。
 
千里たちN高校女子は2位で旭川地区大会を通過している。それでいきなり強豪の釧路Z高校と当たった。昨年インターハイ予選では決勝リーグで大阪行きの切符を争った相手である。しかしこの日の千里たちは何か妙な心理的余裕があった。
 
ゾーンの練習をしてみようというのでダイヤモンド1を試してみる。1・3ピリオドでは暢子が、2・4ピリオドでは千里がマーカーになって相手の点取り屋さんのフォワードをマークし、残りの4人でゾーンを敷いた。
 
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一方攻撃ではこの試合で千里は敢えて1本もスリーを撃たなかった。全部近くまで寄ってから撃ったが、何度も敵ディフェンスに邪魔されてもそのブロックをかいくぐったりタイミングを外したりして撃って、高確率でゴールに放り込み、ひとりで40点(20ゴール)も取った。宇田先生が言っていた「リバウンドに強い選手が居ても高確率でゴールに放りこめば邪魔できない」というのを実践してみたのである。千里が苦手なペネトレイト(敵陣への侵入)の練習も兼ねていた。暢子も気合いが入っていてひとりで50点取った。この2人でほとんどの得点を稼いで120対38という大差で勝って2回戦に進出する。
 
「試合後Z高校の選手がみんな顔こわばってた」
「キャプテン以外、握手もしなかったね」
「あれは猛特訓やってインターハイ予選に出てくるな」
「きっと地獄の合宿が待ってる」
「怖い相手を覚醒させた?」
「それで結構。強い所とやった方がこちらも鍛えられる」
 
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「ゾーンの守りも結構うまく動いてたよ」
「マンツーマンへの切り替えでも混乱は無かったね」
 

翌日土曜日、最初は士別の高校と当たった。同じ上川支庁なのでこれまでも何度も対戦したことがあるが、予選では旭川地区は上川支庁と別に行われたのでここで当たることになった。
 
ここのチームは割と全員がオールラウンド・プレイヤーに近いスタイルである。卓越した選手が居ない代わりに、誰が起点になり誰がシュートするか読めないので、その分の怖さがある。そこでこの試合では5人が2−3型のゾーンを敷いてみた。前方に千里と久井奈、後方に左から暢子・留実子・穂礼である。近くまで攻め込んできてシュートするタイプのチームにはこの陣形が守りやすいのである。
 
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攻め込みにくいとみると後半は向こうはかなりスリーを撃ってきたが、そうそう入るものではない。そして外れた球を確実に留実子と暢子で確保して前方に居る千里・久井奈にパスして速攻を掛けるので、かえって点差が開く感じだった。
 
結局130対45の大差で勝ち午後の準々決勝に進出する。
 
「千里、ドリブルしながら走る時のスピードがかなり上がってるよね」
「練習中もちょっと時間空いたらドリブル練習してるから」
「やってる、やってる。でも単にドリブルしてるだけでしょ?走るのとはまた違う気がするのに」
 
「ドリブルだけの練習でも、それでドリブルで走るスピードが上がるのさ」
と久井奈がスポーツドリンクを飲みながら言った。
 
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なお、男子は昨日の1回戦は勝ったものの、この日午前中の2回戦で室蘭V高校に負け、2日目で旭川に帰ることとなった。V高校は昨年のインターハイ予選では1位で本戦に行ったもののウィンターカップ予選では千里を擁するN高校に敗れていた。今回向こうとしては雪辱を果たした形だが、こちらも北岡君が夏の雪辱を誓っていた。
 

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女の子たちの外人対策(6)

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