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■女の子たちの球技生活(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-02-21

 
千里は憂鬱だった。
 
目前に中学校の入学式が控えている。中学の規則で髪を短く切らなければならないのである。
 
千里は小学校時代、胸くらいまでの長さの髪にしていた。しかし父からは「お前、中学では短くしないといけないぞ」と言われていた。
 
中学の頭髪規則を事前に行われた説明会で聞いたが、女子の場合は前髪が眉に掛からないように、後髪は肩に掛からないようにということ(特殊な事情がある場合は、結んでおけばOK)だったが、男子の場合は、前髪が眉に掛からないようにまでは良いが、後髪は襟に掛からないように、横髪は耳が全部露出するようにというものであった。
 
小学校のクラスメイトたちも「千里ちゃん、可哀想」などと言ってくれたが、入学式までに性転換でもしない限り、自分には男子の頭髪規則が適用されてしまう。
 
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そして・・・学生服などというものを着なければならないのも憂鬱だった。
 
同級生の女の子が中学の女子制服のセーラー服を試着しているのを見ても「いいなあ」と思っていた。
 
割と仲の良い佳美がそんな千里の視線に気付いて、
「千里、ちょっと着てみる?」
などと言ったので、着せてもらった。
 
「可愛い!」
「充分女子中学生で通る」
「千里、性転換しちゃいなよ」
 
などと言われ、カメラ付き携帯を持っている子が記念写真を撮ってくれた。
 

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そういう訳で、千里は髪を切りに行くのをギリギリまで延ばしていた。
 
父から随分うるさく言われたものの、千里は結局中学の入学式(午後1時から)の日の午前中に髪を切りに行くよと言っておいた。
 
ところが・・・千里は入学式の前日に風邪を引いてしまったのであった。
 
結局中学の入学式も欠席し、一週間休んでから中学に出て行った。
 
「済みません。まだ病み上がりなので、もう少し体調が回復してから髪は切りに行ってもいいですか?」
と言ったら、担任の先生は
「あ、いいよ、いいよ。無理しないでね」
と言ってくれた。
 
一応、髪は結んで服の内側に押し込んでおいたので、一応耳は露出しているし、先生達の中には千里の髪が長いことに気付かない先生もいたようである。(前髪は自分で切って眉を露出していた。ついでに眉も細くしていた)
 
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そして結局千里はそのまま髪は切りに行かずに、取り敢えずバッくれていた。
 

学校の中では、一応学生服を着ておくのが原則ではあるが、男女とも結構体操服を着ている子もいた。体操服のまま普通の授業を受けていても特に先生から注意されることはなかった。この学校は割とそのあたりが緩かったのである。なお、ここの中学は体操服は男女共通である。
 
それで千里は結構体操服姿になっていた(結んだ髪は体操服の中に入れていた)が、そうしていると女の子に見えてしまうこともあり、ある日は視聴覚教室のそばを歩いていたら
 
「あれ?君、新一年生?」
と女の人に訊かれ
「はい。そうです」
と答えたら
 
「早く中に入って。もう始めるよ」
と言われて視聴覚教室に入ると、女子新入生向けの性教育の授業が始まってしまった!なんてこともあった。
 
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(学年はシューズの色で区別できるので1年生と分かった)
 

《女子向け性教育》をしっかり受けた上で視聴覚室を出ようとしていたら、同じクラスの尚子から声を掛けられた。
 
「あれ?千里ちゃん、もしかして今の授業受けてたの?」
「うん。近くを通りかかったら、早く早くと言われて中に入っちゃった。始まったビデオ見てびっくり」
 
「あはは、まだ髪切ってないから充分女子に見えるよね。でももしかしたら、千里ちゃんには必要な内容だったかも。だって千里ちゃん、好きになる相手は男の子だよね?」
「うん。女の子を好きになったこと無い」
 
尚子はそばに寄って小さな声で訊いた。
「ね、結局青沼君とはどこまで行ったの?」
「あ・・・えっと、別れ際にキスした」
「へー!」
 
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ちなみに女子が性教育の授業を受けていた間、男子は校庭で持久走をやらされていたらしい。それを聞いて、千里はこっちに来て良かったぁーと思った。
 

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4月下旬。支庁内の中体連の大会があり、部活に入っていない人はどこか自分の好きな競技の応援に行きなさいということだった。
 
千里は会場が近いしと思い、スポーツセンターで行われるバスケットボールを応援に行った。
 
競技は9時から始まるようであったが、千里は8時半頃出て行った。あまり学生服を着たくない気分だったので体操服を着ていた。
 
千里の中学の名前が入ったユニフォームを着た女子が数人センターのロビーに円陣を組むかのように集まって何か話している。その時、ひとりの子が千里を見た。
 
「ね、ね、君、S中学の子?」
「はい、そうですけど」
 
「悪いけどちょっと顔貸してくれない?」
「は?」
 
「うちのバスケ部、部員が5人しかいなくてさ。ギリギリの人数で参加するつもりだったんだけど、1人急病で来られないらしいんだよ」
「あら」
「このままだと人数不足で棄権になっちゃうから。君、代わりに出てくれない?もうエントリーまで5分しか無くて困ってたんだ」
 
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「えー? 私、バスケとかルールも知りませんけど」
「ポートボールもしたことない?」
「小学校の体育の時間でやったけど、あまり良く分からなかったです」
 
「ボールを持ったまま3歩以上歩いてはいけないってのと、ダブルドリブルの禁止が分かってれば充分だけどな」
「ああ、そのくらいは分かります」
「じゃ、来て来て」
 
と言われて、千里はその女子に連れて行かれる。
 
「君、名前は?」
「村山千里です」
 
「・・・村山千里さん。OK。じゃ私エントリーシート出してきます」
と言ってひとりの子が走って行った。
 
その時、初めて千里はそのことに思い至った。
 
「あの、まさかこのチーム、女子では?」
「ん?私たち男子に見える?」
 
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「あのぉ、私、男子なんですけど」
「えーーーー!?」
 
「だって、その髪型」
「新学期早々風邪引いちゃったんで、まだ切ってなかったんです」
 
「どうする?」
と2人の女の子が顔を見合わせている。
 
「バッくれちゃおうか?」
「うん。咎められたらその時」
 
えー!?そんなんでいいの〜?
 
「バスケ未経験者なら男子でも大した動きにならないだろうから、バレないよ」
 
「ね、君、今日はトイレに行く時は女子トイレに入ってよね」
「あはは、いいのかな?」
 
「だって、千里ちゃんだっけ? 君そうしてると女の子に見えちゃうから、女子トイレに入っても、誰も変に思わない」
「うん。むしろ男子トイレに入ったら咎められる」
 
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うーん。。。いいんだろうか?
 

そういう訳で、千里は唐突に《女子バスケット部》の選手として出場することになってしまったのであった。ゼッケンはキャプテンの節子さんが持っていた予備を体操服に急いで縫い付けてくれた。背番号9だ。
 
9時早々に試合があるので出て行く。チーム識別のため赤い鉢巻きをした。
「よろしくお願いします!」
と挨拶してジャンプボールから試合開始!
 
こちらの房江さんが弾いたボールを久子さんが取り、ドリブルで敵陣に走り込んで行き、攻撃開始。一気に相手の制限区域近くまで運んでいったものの、ディフェンスに阻まれてシュートが打てない。
 
そこでこちらをちらっと見て千里にパスした。
 
千里はそのままシュートを撃つ。
 
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大きな弧を描いてボールはダイレクトにバスケットに吸い込まれた。
 
「やった!」
「凄いじゃん。スリーポイント」
などと言って手荒に頭を揉まれる。
 
「え?これ3点入るの」
「そうそう」
などと言いながら走ってディフェンスに戻る。
 
千里の前に相手のガードがボールをドリブルしながら攻めてくる。千里は両手を広げて前に立ち妨害する。それで相手ガードは千里の前で停まりドリブルしながら一瞬後ろに視線をやり、パスするかと思わせて、次の瞬間そのまま千里の腕の下をかいくぐって内側に入って来た。
 
このあたりは素人と経験者の差だ。
 
千里は急いでその後を追う。相手ガードはそのまま走り込んでレイアップシュートを撃つ。バックボードに当たり、跳ね返って、そのままネットには入らず落ちてきた!それを千里がジャンプして確保する。すぐさま視線が合った久子にパスする。久子が俊足のドリブルでボールをフロントコートに運ぶ。
 
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試合は千里たちのチームの有利な状態で進んだ。
 
ポイントガートの久子が速攻で攻め上がってそのまま得点を奪うパターン。パワーフォワードの房江が乱戦を制してリング近くからシュートするパターン、千里が遠くからスリーポイントを撃つパターンが、それぞれうまく機能した。
 
リバウンドも房江と節子が拾いまくったし、千里も165cmの長身を活かして結構拾っていた。
 
結局47対36で勝利。千里は思わず久子たちと抱き合って勝利を喜んだ。
 
「ありがとうございました!」
と挨拶し、握手をしてコートから下がった。
 

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2階席の荷物を置いている場所に行き、休憩する。
 
「そういえばこのチーム、監督とかは居ないんですか?」
「居ない、居ない」
「キャプテンの節子が選手兼監督」
「顧問の先生は?」
「男子バスケット部と兼任だから、今日はそちらに付いてる」
 
「うちの男子バスケット部は強いから。女子バスケットは弱小なんだよね」
「あぁ」
 
「普段の練習でも、なかなかコートを使わせてもらえない」
「あらら」
「男子がウォーミングアップとか基礎練習している間の30分間だけ使わせてもらえる」
「えー? でもそしたら、女子のウォーミングアップは?」
「5分で終わらせる」
「きゃー。それで怪我したりしません?」
「まあ、私たちはあまり荒っぽいプレーはしないからね」
 
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「そうだ。何か何秒ルールとか色々制限がありますよね。あのペイントエリアの中には確か3秒しか居られないというのは知ってたんですけど」
 
「そうそう。3秒ルールね」
「他に5秒ルールというのは、ボールを持ってから5秒以上そのままにしていてはいけない。パスしたりドリブルしたりシュートしたりしないといけない。特にスローインやフリースローは5秒以内」
「へー」
 
「8秒ルールというのは、ボールをバックコートで所持しているチームは8秒以内にフロントコートにボールを進めなければならない」
「なるほど」
 
「24秒ルールというのは、攻撃中のチームはボールを取ってから24秒以内にシュートしなければならない」
「ほんとに色々ありますね!」
 
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「まあ、要するにちんたらプレイしたら駄目ってことだよね」
「そそ。素早く攻めて素早く撃つ」
「ラン&ガンだよ」
「なんか格好良い!」
 
「フロントコートにいったん入れたボールをバックコートに戻すのも違反だからね」
「ああ」
 

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