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■女子大生たちの秋祭典(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-10-19
 
それで取り敢えず、千里たちは客席に座って他のチームの練習を見ていた。多くのメンバーはあまり熱心に見ずにおしゃべりに興じていたのだが、麻依子と千里だけは、一方のコートで練習しているチームに目が吸い寄せられていた。
 
「ねえ、麻依子」
と千里は隣に座る麻依子に声を掛ける。
 
「何?」
「帰ろうか」
「私も今そう思った所」
 
それで千里と麻依子が席を立つので
「待ったぁ」
と言って浩子がふたりのジャージのズボンに手を掛けて停める。
 
「なんで?」
「だって、あれ見てみなよ。勝てる訳無い」
「同感。私たちとは格が違う」
 
「あれ、どこのチーム? 私も凄いと思った」
と千里たちと同様に今年入った菜香子が言う。
 
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「千女会。教員連盟の所属」
「学校の先生たちのチーム?」
「そうそう。有力大学のOGが大量に入っている」
「千葉の女先生たちの中でいちばん強い人たちを集めたチームだよ」
 
「大会によってはAチーム、Bチームと編成して参加していることもあるよね」
 
「あそことやったら、うちは100対0だよ」
「そこまではいかないと思う。昨年の千葉クラブ選手権覇者・サザン・ウェイブスが秋季選手権では60対20くらいだったから」
 
「それは多分かなり手加減してる」
「うん。マジにやったら、サザン・ウェイブスは120-130点取られてる」
 
「でも組合せではあそこと当たるのは決勝戦だからさ。それまで楽しもうよ」
「優勝しないとオールジャパンに行けないんでしょ?」
「来年に向けての手応えを探るということで」
 
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ところで千里はこの日生理が始まっていた。本当は明後日くらいに生理が来るはずだったのを、上位の試合にぶつからないように、《いんちゃん》が10月16日に強制排卵を起こしてくれたのである。
 
生理と試合がぶつかったのは、過去には、高2のウィンターカップ地区予選、高3春のインターハイ地区予選の2度があった。
 
特に高2のウィンターカップ地区予選は生理の2日目に2回戦がぶつかったのだが(1回戦はシードで不戦勝)、相手がそんなに強い所ではなかったので、千里は短時間しか出場しなかった。しかし試合後にトイレに行ってみると、羽根付きナプキンの羽が取れてずれてしまいショーツが真っ赤になっていた。「きゃ−!」と心の中で悲鳴をあげ、激しい試合でなくて良かったと思ったものであった。
 
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それでその後は、生理とぶつかった時は羽根付き・多い日・夜用を使って、生理用ショーツを二重に!穿いてしっかり押さえて何とか乗り切っていたのだが、今回、《いんちゃん》はタンポンを使いなよとアドバイスしてくれた。
 
それで、今朝は、朝起きて生理が来ているのを認識してから、生まれて初めてタンポンを挿入してみた。
 
ほんとにおそるおそるだったし、1度目は実はちゃんと押し切らないまま抜いてしまったのでうまく挿入できなかった。2度目再チャレンジして思いっきり透明な筒を押したら、やっと入れることができたものの、ちゃんと取れるかな?と少し不安になった。
 
それで試合前にトイレに行き、入れていたタンポンの紐を引いて抜く。かなりの血を吸って大きくなっていたが、何とかスムーズに抜くことができた。そして交換に新しいタンポンを入れたが、2回目なので朝やった時よりは簡単に挿入することができてホッとした。
 
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トイレから戻った後で、控室で念のため荷物の中からバッグに入れている生理用品入れに予備のタンポンを2本とナプキンも移していたら麻依子から声を掛けられる。
 
「千里ってタンポン使うんだ?」
「うん。ふだんはナプキンだけど、試合中はタンポンがいいかなと思って」
「降り物が多い日もあるの?」
「今朝生理が来たんだよ」
「ん?」
 
「高校時代、一度生理とまともにぶつかった時にナプキン付けただけで試合に出ていたら、試合後ナプキンがずれてショーツが真っ赤になってて、悲鳴あげたい気分だった」
 
「・・・・・」
「どうかした?」
「千里、生理あるんだっけ?」
「そりゃ、女の子だもん」
 
麻依子は腕を組んで悩んでいた。
 
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さて、今年の秋季選手権の参加チームは16チームで、初日には1回戦の8試合が行われた。1回戦は過去にも当たったことのあるクラブチーム、ブレッドマーガリンであったので、千里・麻依子はあまり出ずに他の6人を中心にしてプレイしてダブルスコアで勝った。バスケの経験があまり無いなどと言っていた玉緒もかなり楽しんでいたようであった。
 
2日目は2回戦の4試合が行われる。ローキューツの相手はD大学である。今回の選手権の参加チームはクラブ8、教員1、大学6、高校1だが、2回戦に進めたクラブチームは千里たちのローキューツとサザン・ウェイブス、フドウ・レディースの3つだけで、他は教員1、大学4となっている。
 
大学生というので心して掛かる。
 
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しかし相手チームのメンバーは少なくとも千里や麻依子の敵ではなかった。最初は千里・麻依子・浩子の中核3人が出たものの、前半だけで42対20とダブルスコアになったので、後はこの3人は下がって残りのメンバーで戦う。やや点差を詰められたものの、最終的に74対62で勝利した。
 

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1日置いて11月3日の文化の日は準決勝・決勝が行われる。
 
午前中は準決勝であるが、相手はK大学である。試合前にコートを半分ずつ使って事前練習をしていたら、茜がボーっとして向こうを見ている。
 
「どうしたの?」
「なんか無茶苦茶強くない?」
「強いだろうね。関女(関東大学女子バスケットボール連盟)の1部チームだもん」
と浩子が言う。
 
「関女って何校あるんだっけ?」
「1部が8校、2部が16校、3部が24校、4部が50校くらい。全部で100校くらいかな」
「じゃ100校の中の頂点の一角」
「かなわないんじゃない!?」
と夢香も言う。
 
「まあ、うちはあのチームの敵じゃ無いよね」
と浩子。
 
「あはは」
「今日の午後は久々にオフィシャルかなぁ」
 
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この手の大会では、だいたい負けたチームが次の試合の審判・オフィシャルズをするものが多い。しかしローキューツはこの所、決勝以外では負けていなかったので、しばらくオフィシャルをしていないのである。
 
千里は相手チームの中に、高校時代のバスケ部の同輩である川南が居るのを見る。目が合ったので、手を振って近寄っていく。
 
「やっほー。奇遇だね」
「千里、クラブチームに入ってたんだ!」
「大学ではバスケしないつもりだったんだけどねー。なんか凄い推薦状書いてくれた人がいて」
 
「そりゃ高校生スリーボイント女王には凄い推薦状書くでしょ。大学のバスケ部ではなかったのね」
「うん」
「千里、T女子大学だったっけ?」
「まさか。私まだ戸籍が男だから女子大は入れてくれないよ」
「あれ?戸籍直してなかったんだっけ?」
「20歳になるまで直せないんだよ」
「不便だね。じゃ、□□大学に入ったんだっけ?」
「ううん。C大学だよ」
 
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「うそ。□□と国立のどこだかと通ったと聞いたから、てっきり□□かと」
「お金無いから私立は無理」
「そういう冗談はよし子さん(死語)。高額納税者が何を言ってる?」
「それ内緒で。ところで川南はスターティング5?」
「まさか。そもそもベンチ枠に入っていなかったのが、突然1人病気でダウンしたんで今回はたまたま用事の無かった私を入れてもらった。普段はCチームのベンチ枠ぎりぎりなんだけど」
 
「なるほどー。そのくらい強いチームか」
と千里が言うと
「今の言い方、少しむかついた」
と川南はほんとに少し怒ったように言った。
 

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ふたりが少し話していたら、向こうのキャプテン三橋さんに、こちらの麻依子も近寄ってくる。
 
「わ、溝口さんまで居る!」
と川南が驚く。
「佐々木ちゃん、お久」
と麻依子。
 
「こんにちは。知り合い?」
と三橋さんはこちらに挨拶してから後半は川南に尋ねている。
 
「高校時代の同輩の村山さんと、ライバルチームの溝口さんです。村山さんは高校の時、うちのチームが全国に行った原動力で、スリーポイントがうまいんです」
 
「へー。さすがD大学を破って勝ち上がってきた訳だ」
と三橋さんは頷くように言った。
 

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「ところで、うちの監督、まだ来ないの?」
といったんフロアの外に出て休憩していたところで千里は浩子に訊く。
 
「そうなんだよね。遅いなあ。そろそろ選手名簿提出しないといけないのに」
と浩子。
 
「あと何分だっけ?」
「8:30までに出さないといけないんだよね。あと10分」
 
「浩子、名簿の用紙は持ってる?」
と麻依子が訊く。
 
「うん」
「念のため、書いておきなよ」
「スターティング5は、私/千里/夏美/夢香/麻依子でいいよね?」
「うん、うん」
 
そこで浩子が名簿を書き、ほんとに監督が来なければ先に提出しようと言っていた時、やっと監督が到着した。
 
「遅れてすまん。名簿出した?」
「まだです」
「よし、出してくる」
と監督が言ったが、監督が連れている2人を見て、千里が驚く。
 
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「森下さんに小杉さん!」
 
「ふたりの登録シールを今朝受け取ったんだよ」
「今朝??」
「取り敢えず提出してくる」
と言って、監督は駆け足で本部へ行き、今日の選手名簿を提出してきた。
 
「いや、面目無い」
と監督は言っている。
 
「昨日届いていたみたいなんだけど、不在だったもんで大家さんが代わりに受け取ってくれていたんだよ。それで昨夜は僕は仕事で遅くなったもんで、今朝、大家さんがうちに持って来てくれてね」
 
「監督、お仕事お忙しいんですね」
「うん。この所ずっと残業続きで。試合日程の時は何とか開けてもらってるけど。昨日は飛び石連休の中日で仕事が溜まっていて。まあそれで受け取ってから慌てて2人に連絡して、時間取れるということだったから車でピックアップして連れてきた」
 
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「お疲れ様でした!」
 
「まあ、そういう訳で今日はこの2人がやっと出られるんだよ」
 
「新人の小杉来夢(らいむ)です。よろしくお願いします。E女学院・M女子大学出身。ポジションはスモールフォワードです」
「同じく新人の森下誠美(まさみ)です。よろしくお願いします。東京T高校出身。ポジションは・・・」
 
「いや、言わなくても分かる」
「センターだよね?」
 
「高校のバスケ部に初めて顔出した時も、いきなりそう言われました」
と誠美は困ったような顔で言っている。
 
「身長いくらある?」
「184cmかな」
「すごーい」
「リバウンドよろしくね」
「私、それしか能が無いです」
 
「インターハイのリバウンド女王を2年連続で取っているから」
と千里が言うと
 
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「凄い!!」
とみんなが感嘆の声をあげた。
 
「でもこれで今日の試合、勝てる可能性出て来た」
と浩子が言った。
 
「初日に帰らなくて良かったね」
と千里と麻依子も笑顔で言った。
 

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K大学との試合時間となる。整列した時、向こうのキャプテン三橋さんから確認(?)が入る。
 
「済みません。大変失礼ですが、そちらの20番の選手、ほんとに女性ですか?」
 
誠美は背が高いし短髪なので、ふつうに充分男に見える。
 
審判が確認する。
「登録証をお持ちですか?」
「はい」
というので、誠美がバスケ協会の登録証を提示する。
 
「間違い無く女性ですね」
と審判。
 
「この子、インターハイに女子選手として出ていますから、女性であることは確かです」
と千里が言う。
「なるほど、インターハイくらい出るでしょうね!」
と三橋さんは言った。
 

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