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■白鳥の湖(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-01-13
 
■プロローグ
 
オデット(Odet *1)はその日、数人の家来を連れて森に遊びに来ていました。猟をして仕留めた鹿を焼いて食べ、楽しく家来たちと語りあっていました。
 
オデットが立ち上がるので、家来が訊きます。
 
「オデット様、どちらへ?」
「ちょっとお花摘みに」
「はい、行ってらっしゃいませ」
 
それでオデットは家来たちから少し離れると、近くにある湖の畔に出ました。
 
そしてあたりを見回して“お花を探して”いたら、そこに1羽のフクロウが飛んできました。フクロウは若い男性に姿を変えます。
 
「こんにちは、お嬢さん」
と男性は挨拶をします。
 
「え!?」
とオデットは戸惑うように声を挙げます。
 
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「私はロットバルト(*2)と申します」
「えっと、私はオデット(Odet)です」
「おお、オデット(Odette)とは、美しい名前だ。あなたにこれを」
 
と言って、どこからか花束を取り出して、オデットに渡します。
 
オデットは反射的に受け取ってしまい
「ありがとう」
と言いました。そういえば、ボク『お花摘み』に来たんだった、と目的を思い出しますが、この人が立ち去ってからにしようと思います。
 

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しかしロットバルトは
「まあ座りませんか」
と言って、オデットを座らせると、何やら色々話を始めてしまいました。
 
今年の夏は暑いですね、などといった世間話から始まって、外国の風物の話など始めて、どうも長話になりそうな雰囲気です。オデットはさすがに困ってしまい
 
「すみません。お話はまたの機会に」
と言って立ち上がります。どこか他の場所で“お花を摘もう”と思ったのですが、ロットバルトが行く手をふさぎます。
 
「待って下さい。でしたら、次会う約束を」
 
その強引な言い方にオデットを少し機嫌を悪くしました。
 
「私は行きます。どいてください」
「私はあなたともっと話がしたいのだ。私はあなたのことが好きになってしまった」
 
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ちょっと待て〜!?男に好きになられても困る、と思ったオデットは言います。
 
「申し訳ありませんが、私はあなたには興味が無いので」
 
するとロットバルトは
「でしたら、私に興味を持って頂けるまで、ここに居てもらいましょう」
と言い、オデットをマントで覆うようにしました。
 
するとなんとオデットは白鳥の姿に変わってしまったのです。
 

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うっそー!? なんでこういうことになる訳!??
 
とオデットは驚きます。
 
ちょうどその時、オデットが「お花摘み」から、なかなか戻ってこないので、探しに来た家来たちが、オデットが白鳥に変えられるのを見ました。
 
「貴様何者だ?」
「オデット様に何をした?」
 
と家来たちが詰め寄ります。するとロットバルトはその家来たちも白鳥に変えてしまいました。
 
「まあ時間はゆっくりある」
 
と言ってロットバルトは湖の畔にある岩穴の中に入りました。
 

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■第1幕 お城の中庭
 
その年の春、ジークフリート王は憂鬱でした。
 
お城の中庭では宴会が開かれていました。
 
今日はジークフリート王の21歳の誕生日なのです。これまでは父の先王亡き後、一応ジークフリートが新しい王になったものの、母(先王の后)が摂政として政治(まつりごと)を行ってきました。しかしとうとうジークトリートが成人になったので(*3)、母の摂政は終了し、これからはジークトリートが自分で国を治めていくことになります。
 
そして母はジークフリートに「一人前の国王になるのだから、早く妃(きさき)を決めて、世継を作るようにとも言っていました。そのことが王にとっては憂鬱だったのです。
 
宴の主役であるジークトリートの憂鬱とは裏腹に、宴は、やや乱痴気騒ぎ気味になっていきます。王の成人を祝いに訪れた民衆をどんどん中に入れて、酒をふるまい、飲めや歌えやで、かなり酷い状態になっていきます。中に入ってきた娘たちと貴族の男たちの間で、淫らな行為が行われています。
 
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最初は王の家庭教師・ヴォルフガングがそういう乱れている者たちを諫めていたのですが、その内若い家来たちが
 
「まあ、先生も硬いこと言わずに飲みましょう」
 
と言ってお酒を飲ませますと、完全に酔ってしまいます。そしてヴォルフガング自身が女の子たちを追いかけまわしはじめました。その内好みの女の子の傍によって熱心に口説き出します。女の子の方は本気で相手はしていないのですが、彼をじらすようにヴォルフガングの言葉先をかわしていきました。
 
そしてヴォルフガングはその子の肩に手を掛け、キスしようとします。
 
ところが女の子は、すんでで、ひょいと顔をずらし、そこに後ろにいた男が顔を出したので、ヴォルフガングはその男にキスをしてしまいました。
 
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「先生、男が好きなんですか?」
「いや、違う。私は間違って」
と弁解しますが、男も女もみんなヴォルフガングをからかいます。
 
そしてキスされた男は
「俺、男と結婚する趣味は無いから、俺と結婚したいなら、先生、女になってくださいよ」
と言いました。
 
するとみんなは
「よし、先生には女になっていただこう」
と言って、よってたかってヴォルフガングの服を脱がせてしまい、代わりに女の服を着せてしまいました。
 
「先生、けっこう女でも行けるじゃないですか?」
「そ、そうかな?」
 
とヴォルフガングは初めて女の服を着て、褒められた(?)のがまんざらでもない様子でした。
 

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ところがそのように乱れていた所にファンファーレが響きます。
 
侍女が数人現れて
「王太后陛下のおなりー」
と言いました。
 
「やばい。こんなに乱れている所を見られたらやばい」
と言って、乱痴気騒ぎをしていた連中はみんな逃げ出してしまいました。
 
ジークトリートの母は中庭にやってくると、散らかっている様をジロッと見ました。そして息子の後ろに控えている家庭教師が女装!?しているのを見ると、更に厳しい視線を送ります。
 
「ヴォルフガング、そなたいつから女になった?」
「いえ、すみません。出がけに男物の服が見当たらなかったもので」
「恥ずかしがらなくてよいぞ。そなた、女になりたいのであろう。今後女としてジークトリートに仕えるように」
 
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「そんなぁ」
「恩寵として女になることを認める。ありがたく思え」
「ははあ、ありがとうございます」
 
と言って、ヴォルフガングは平伏します。
 
それでヴォルフガングは明日から女家庭教師になることになってしまいました!
 

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ジークフリートも結構飲んでいるのですが、何とか体裁を保って母に言います。
 
「母上、誕生日の祝いをしている内に、少しハメを外した者もあったようです。私の不徳と致すところです」
 
「私は別にお前たちの馬鹿騒ぎを止めにきたのではない。これをそなたに授ける」
 
と言って、母君は王に立派な弓矢を授けました。
 
「そなたも王である前に立派な騎士として腕を磨かねばならん」
「はい。剣は師範のガイザー殿に習って日々鍛えておりますが、確かに戦いが起きたら弓矢の威力は大きいですね」
 
「うん。頑張って鍛錬されよ」
「ありがとうございます」
 
「それで、ジークフリートよ。明日、誕生祝いの舞踏会を開くことにした。そなたの花嫁候補も何人か呼んでおるから、その中から妃にする姫を選びなさい」
 
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と母は言いました。
 
「分かりました」
 
とジークフリートは答えますが、恋というものをしたことのない彼には結婚というものも、どうもイメージが湧かないものでした。
 

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王太后が帰った後は、逃げていた者たちが恐る恐る戻ってきて宴会の続きを始めました。
 
結局、ヴォルフガングは女の服装のままで
「家庭教師殿が女になられたお祝い」
などと称して、更にお酒を飲ませられ、結局ヴォルフガングは完全に伸びてしまいます。結局、王の命令で部屋に運ばれていきました。
 
「ついでにヴォルフガングの部屋の男物の服を全部回収して女物の服をたくさん置いておけ」
と王は侍従に命じました。
 
「マジで家庭教師殿は女になられるので?」
「摂政陛下の命令だから、当然そうなる」
「分かりました。侍女と一緒にやっておきます」
と言って、侍従は下がりました。
 

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宴会もやがて日が落ちる頃にはさすがにお開きになりました。
 
みんなが去り、静まりかえった庭でジークフリートがぼんやりと空を眺めていたら、夕暮れに向かって空を飛ぶ白鳥の群れがありました。
 
「ああ、もう白鳥が戻って来る時期か」
とジークトリート王は呟きました。
 
白鳥は冬の間は寒さを避けて南の国に飛んで行きますが、だいたい4月下旬から5月頭頃にヨーロッパに戻ってきます。
 
その白鳥の飛ぶ姿を見ていたら、王は突然あの白鳥を、今母からもらった弓矢で仕留めてみたい気になりました。
 
それで王は唐突に愛馬に乗ると、供も連れずに、ひとりで城から駆けだして行きました。
 

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(バレエでは宴会が終わり、ジークフリートが1人になった所から超有名な『情景(Scene, сцена)』の曲が流れる。この曲をもって第1幕が終わるが、第2幕も『情景』から始まる。第1幕最後はジークフリートがひとりで踊り、第2幕冒頭はロットバルトが1人で踊る)
 
https://youtu.be/ELtC3oWUE6o
 

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■第2幕 夜の湖
 
(幕構成について*4)
 
ジークフリート王が夕日を追うように馬を走らせていくと、やがてゴツゴツとした岩だらけの荒れ果てた窪地に着きました。そこに白鳥たちは降りて羽を休めていたのです。窪地の中央に小さな池があり、白鳥たちはそこで水を飲んでいるようです。近くには荒れ果てた聖堂の跡などもありました。
 
ジークフリートは木の陰から慎重に白鳥を狙います。目を細めて見ている内に、白鳥たちの中に1羽、頭に王冠を付けているものがいることに気付きました。なぜあんなものをつけているのだろう?と思ったものの、その白鳥が物凄く美しいことにも気付きました。
 
あの美しい白鳥を仕留めて、私の部屋に飾るのもいいなと王は思い、その白鳥に狙いを定めます。
 
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ところが矢を射る瞬間、物凄い風が吹いてきて、王の手元が狂います。それで矢もわずかに逸れて、その王冠を抱く白鳥の向こう側にあった灌木に刺さりました。白鳥たちは驚いてみんな一斉に飛び立ちました。
 
惜しかった!
 
と王は思いました。
 
しかし白鳥たちはまたすぐ戻ってくるかも知れないと思い、王は木の陰に身を隠して、しばらくその場で待ちました。
 

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ジークフリートが待っていた間に、夕日が西の空に沈み、代わって東の空から丸い月が昇ってきました。今夜は満月のようです。
 
そして月が昇ってきた途端。
 
何ということでしょう。
 
今まで岩がゴツゴツしていて、窪地の中央に小さな池があるだけだったのが、美しい花が咲き乱れる情景に変わり、池の水も増量して広がり、湖にと変わりました。
 
そして荒れ果てた聖堂と思っていたものも、不思議な光に覆われた美しい聖堂へと姿を変えたのです。
 
ジークフリートが驚いてその様子を見ていたら、やがて白く短いスカートを穿いた女性が、そこの聖堂に入っていきました。
 
その女性があまりにも美しかったため、ジークフリートは思わず木の陰から出て行きました。そして聖堂の入口の所まで寄ってみます。
 
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女性は王冠をつけていました。この王冠、どこかで見たことあるなと思ったのですが、王はこの時は思い出せませんでした。
 

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