広告:まりあ†ほりっく 第3巻 [DVD]
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■夏の日の想い出・修学旅行編(3)

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翌日もみんなが起き出す前、4時頃に起き出して、みんなが寝ているのを確認して素早く学生服に着替えた。
 
その日は午前中にグラバー園と出島を見てから、中華街でお昼となった。長崎名物の皿うどんを食べる。だいたい食べ終わったあたりで点心が配られたので、それを食べていた時、隣に座っていた垣山君が「あれ?」と言った。
「どうしたの?」
「唐本だけ食べてるものが違うなと思って」
「あ、ほんとだ」
 
垣山君も反対側の隣の佐野君も豚まんを食べている。でもボクは杏仁豆腐を食べている。すると少し離れた席にいた秋山さんが「男子は豚まんで、女子は杏仁豆腐みたい」と言った。
「なーんだ。じゃ、問題無しだね」とボク。
「うんうん、唐本君は女子でもいいよね」と秋山さんは笑いながら言っている。彼女とも最近けっこう話すので、ボクが「半分女の子?」なのは承知である。
 
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佐野君が「でも学生服着てるのに」と言ったが、
「たぶん雰囲気で性別判断してデザート渡したんだよ。店員さんも忙しいから細かいことまで考えなかったんじゃないかな」と秋山さんは言った。
垣山君は意味が分からないようで、首を傾げていた。
 
その日の午後は、長崎から島原までバスで走り、フェリーで熊本に渡って、熊本城を見学した。そして更にバスに揺られて菊池温泉の旅館に宿泊した。
 
今日は遅くなったので到着してすぐに食事となり、そのあとで各自自由にお風呂に入り、22時消灯ということになっていた。ボクは食事のあと部屋に戻って、佐野君にうまくガードしてもらって浴衣に着替えたあと、ロビーに行って、なんとなくソファーに座っていた。
 
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「ハーイ!」といって政子が来て、隣に座る。
「眠れた?」
「昨夜は結局0時過ぎから4時頃まで寝た」
「睡眠時間短いね」
「だってさ、男の子に寝顔見られたくないじゃん」
「なるほど。でも寝足りないでしょ?」
「今日はバスの中でもフェリーの座席でもひたすら寝てた」
「それだけ寝れたらいいか。でもぜんぜん景色とか楽しめなかったね」
「うん、それは仕方ない」
 
「今夜お風呂はどうするの?」と小声。
「パスしかない気がする」
「女湯に入っちゃう?」
「それはさすがにやばいよ。大量に顔見知りがいるのに」
「胸もお股もそのままなんでしょ?」
「うん。女の子仕様のまま」
「じゃ入れるじゃん」
 
「入りたいのはやまやまだけど、まずいよ」
「ま、逮捕されないようにね」
「それはマーサにも須藤さんにも迷惑掛けるから自粛する」
「よし。じゃ、私は女湯に入ってこよう」
「わざわざ女湯と言わなくたっていいじゃん」
「冬を羨ましたがらせたいだけ」
「もう・・・」
「悔しかったら、早く性転換手術しちゃおうね」
「そのうちね」
 
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政子はバイバイしてロビーを出て行った。それと入れ替わるように琴絵がロビーに入ってきて、ボクを見つけると手を振って、ボクの隣に座った。
 
「あ、お風呂入ってきたんだ」
「うん。気持ち良かったよ。冬も入れたらいいのにね」
「そのうち女湯にふつうに入れる身体になったら全国の温泉巡りしてもいいかな」
「ああ、それも楽しそう」
「でも琴絵、いい香りする」
「石けんの香りかな」
「・・・どうしたの?」
 
「冬って男の子の臭いがしない」
「そう?」
「だって今日は汗掻いたはずだよね。お風呂も入ってないのに」
「エステミックス飲んでるからかも」
「何?それ」
「プエラリア」
「あぁ・・・・・何か飲み始めてから変わった?」
「さすがにこの程度ではおっぱい大きくならないね」
「大きくなったら面白いのにね」
 
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「ところでね、ちょっと話があるのだけど」
「なに?」
などと言って琴絵が話しかけたところに片岡先生が通りかかった。
「こんばんは」と挨拶をする。
 
「あなたたち昨夜も裏口の近くでおしゃべりしてたわよね」
「はい」とボクたちは口を揃えて答える。
「あなたは7組の山城さんだけど。。。。あなた何組だったっけ?あのあとどうしても思い出せなくて気になって」
「同じ7組の唐本ですけど」とボクは女声のまま答える。
「え!?・・・あ!そうだったのか!でも、あなたそうしてると、まるで女の子みたい。それに声も女の子の声だし」
 
「私、親しい友だちと話す時はこの声使ってます。学校の授業中は男の子の声使ってるけど」
「冬は学生服脱いじゃえば、女の子で通りますよ」
「今日のお昼のデザートなんて学生服着てたのに女子用の杏仁豆腐もらったし」
「あ、それは初耳。でも冬は雰囲気が女の子だからね。特にこの修学旅行の間、女の子の雰囲気がいつもより強くなってる気がする」
 
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「もしかして、唐本さんって、性同一性障害?」
「うーん。障害とかのつもり全然無いです。自分では私、女だと思ってるから」
「そうだったんだ。あ、眉を細くしてるのもそのためね」
「はい。私、学校が終わったら毎日女の子の服に着替えてます」
「へー」
「冬ったら、この修学旅行にも女の子の下着しか持ってきてないんですよ。お風呂どうすんのよ?って言ったんだけど、お風呂はパスって」
「あら」
 
「どっちみち、私、とても男湯には入れませんから」
「冬は何度か女湯には入ったことあるそうです。でも修学旅行じゃ顔見知りがたくさんいるから、入ると騒ぎになるし、ということで自粛するって」
「ほんと?・・・でも汗を流せないのは辛いわね」
「2晩くらい大丈夫ですよ」
「あと、部屋も男の子と同室だから、ゆっくりできないらしいです。私だって、男の子に囲まれた中じゃ、安眠できないし、だれた格好とかもできないし」
「そうね・・・」
 
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「それでですね、先生」
「うん」
「実は私の同室の女子とも話して、いいよと言ってもらえて、今冬にもその話をしようと思っていたところで、本人がOKならこちらから先生の所にお願いしに行こうかと思っていたのですが、消灯時間まででもいいから、冬を私の部屋に連れて行って、今から2時間半くらいだけでも、仮眠させてあげようかと思って」
「ああ」
ボクはその話を今聞いたので少しびっくりした。
 
「女子の部屋に男子を入れるの厳禁ってことになってるけど、冬に関しては、目をつぶってもらえませんか?」
「分かった。消灯時間までと言わなくても、朝まででも良いわよ」
「ほんとですか!良かった。じゃ、冬、行こう」
 
「あ、待って」
「はい」
「お風呂だけど、女性教師が泊まっている部屋には小型のお風呂が付いてるのよ。良かったら、使わない?」
「あ、それは助かります」
 
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そういう訳でその晩は急展開となり、ボクは部屋に戻って、ちょうど在室していた佐野君に手短かに事情を話し、荷物を持って、琴絵たちの部屋に移動した。そして片岡先生と深山先生が泊まっている女教師の部屋に行き、そこのお風呂に入れさせてもらった。
 
「ありがとうございました。助かりました」
と言って、ボクは浴室から出てくると先生達に御礼を言った。
 
「唐本さんが眉を細くしてるのなってのは気付いたから、いつだったかは眉を指パッチンしたんだけど」と深山先生。
「女の子の格好するから、眉細くしてたのね」
「はい」
「でもあれ、上手に隠してるね。眉マスカラをごく自然な感じに入れてるから。男の先生は気付かないだろうと思ってた」
「はい、おかげで注意されたことは無いです」
 
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「でも、あなた何だかすごく色っぽい」
「そうですか?」
「女の色気を持ってる」
「ははは」
 
「それにさっきは浴衣をルーズに着てたから目立たなかったけど、そんな風にふつうの着方すると、胸がけっこう目立つね」
「はい。女の子の部屋に泊めてもらうなら、このほうがいいかなと思って」
「ね・・・山城さんの前では聞きにくかったんだけど」
「私の男性能力のことですよね」
「うん」
 
「訳あって頻繁に女装するようになったのが8月からなんですが、それ以降、オナニーは全くしてません。そのせいか、かなり男性機能は落ちている感じで9月頃は何度か夢精したことあったのですが、ここ1ヶ月ほどはそれもなくなりました。朝立ちも、もう2ヶ月ほどした記憶が無いです」
「なるほど」
「それと実はプエラリアを週3回ほど飲んでいるので、その影響もあるかも知れないです」
「植物性女性ホルモンか!」
 
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「それとこれは実物見てもらった方がいいと思うので、先生たちには私のヌードお見せします。琴絵たちの前では、裸にはなるつもりないですけど」
と言って、ボクは浴衣を脱いだ。
 
ブラとパンティが露出するが、ボクは更にブラを外し、パンティも脱いでしまった。
 
「これは・・・・・」
「性転換手術はしてないですよ」とボクは笑って言う。
 
「そのおっぱいは?」
「ブレストフォームです。シリコン製のおっぱいを肌に貼り付けてるだけです。しっかりしたテープで貼り付けているので、お風呂に入ったり、プールで泳いだりしても外れないの、確認済みです」
「お股は?」
「テープで隠してます。近づいて見ていいですよ」
 
先生たちふたりがボクに近づいてきて、お股のところをじっくり見る。
「もしかして、このテープで留めてる内側に・・・・」
「はい、全部隠しています。このテープは医療用の丈夫な防水テープなので、お風呂とかでも全然平気です。これ、土曜日の朝に貼って、そのあと今日もいれて5日間お風呂に入りましたが、びくともしてないです」
「おしっこする時はどうしてるの?」
 
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「これ、このままおしっこできるんですよ」とボクは笑いながら説明する。
「おちんちんの先が、トイレに座ると後ろの開口部の所に顔を出すので、それでおしっこできるんです。おしっこは後ろに飛びますし、もちろん立ったままではおしっこできませんけど」
「面白いわね」
「それでこうやって立ってると、テープが見えないから、ふつうに女の子のお股に見えちゃうんですよね」
 
「なるほど、これなら女の子たちと同じ部屋にずっといても大丈夫そうね」
先生達は納得していた。ボクは服を着た。
 
「唐本さんの学校生活について、ご両親も交えて、一度ちゃんと話合った方がいいのかしら」
「もしかしたら、そのうちお願いするかもです。でも私、まだ親にも自分の性別のこと、カムアウトしてないので」
「あら、そうなんだ」
「春頃までには一度ちゃんと親と話合おうかと思ってます」
「勇気のいることだろうけど、通っていかなければいけない道だもんね。頑張ってね」
「はい」
「髪も実は夏休み前から伸ばしてたのを、先月親にうるさく言われて少しだけ切ったんですけど、この後なし崩し的に伸ばしちゃおうか、なんて思ってて」
「ああ。。。その時は生活指導の先生にも少し言ってあげるね」
「ありがとうございます」
 
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先生たちとしばらく話してから、琴絵たちの部屋に行く。同室になっているのは秋山さん、田上さん、布川さんである。
 
「お邪魔しまーす」
「お帰り。お風呂入れて良かったね」
「ありがとう。おかげでさっぱり出来た。今夜は安眠できそうだし」
「ゆっくり寝てね」
「うん。週末の疲れも一気に回復できるかな」
 
「冬、ぐっすり眠れるようにいちばん奥の布団ね」
「ありがとう」
部屋には布団が5つ並べて敷かれている。
 
「その隣が私のだから」と琴絵。
「その隣が紀美香(秋山さん)、郁子(田上さん)、そしていちばん外側が窓歌(布川さん)ね」
 
「ボクがいちばん外側じゃなくていい?」
「私たちけっこう出入りすると思うから、騒がしくて眠れないでしょ。たぶんいちばん出入りしそうな窓歌がいちばん外側なの」
「なるほど」
「そういうことでゆっくり休んで」
 
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「ありがと。じゃ遠慮無く寝るね」
「はーい。お疲れ様」
 
ボクはいちばん奥の布団に入ったが、琴絵は「独り寝は寂しいでしょ」などと言って、他の子たちといっしょに、ボクの布団のそばに座り、おしゃべりを始めた。ボクも布団の中でおしゃべりに参加していた。
 
「だけど男子の方は名簿順に単純に部屋割りされてたのに、女子は名簿順じゃないのね」
「うんうん。仲良し度でまとめてある」
「そうなんだ」
「むしろ相性の悪い子が同室にならないためのシステムというか」
「ああ、女子はそれ大変そう」
「でもどちらかというと、私たちはあぶれ組〜」と田上さん。
「へー」
「私も窓歌も、あんまり友だちいなくて。そこに琴絵が声を掛けてくれたんだ」
「あ、それならボクも男子からのあぶれ組」と私。
「あ、そうだよね」
 
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なんか女の子だけの気安さで、ボクはとてもリラックスしておしゃべりに参加することができた。結局ボクは消灯時間近くまでおしゃべりをしていたが、いつの間にか眠ってしまったようだった。その晩はほんとにぐっすり眠ることができた。
 

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夏の日の想い出・修学旅行編(3)

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