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■続・夏の日の想い出(3)

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「あの、すみません、こちらの方は?」
「ごめんね。紹介が後になっちゃって。こちらはね。都内で活動しているクォーツというバンドのリーダーで槇村博司さん」
「マキでいいわ。俺オカマは嫌いだけど、あんたは女の子にしか見えないから女の子だと思うことにする」
 
「それはどうも」と私は営業用スマイルで応じる。「あ。もしかして?」
「うん。この人たちのバンドと組んでもらえないかなと思ってね。取り敢えずリーダーに引き合わせたの。リーダーには気に入ってもらえたみたいだから、あとで他のメンバーとも合流して一度セッションしてみましょう」
 
「まあ、気に入ったとまでは言わないにしても、俺よりは歌うまいな」
「ありがとうございます」
あはは、この人個性強そう。変人っぽいな、と私はその時思った。
 
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私はその場であと何曲かカラオケで歌を歌ったあと、ルノアールで3人一緒にコーヒーと軽食を取り、夕方貸しスタジオに入った。
マキさんが待機していた2人の男性と「おっす」と言って挨拶を交わしている。ああ、こういう感じの男の子同士の付き合いって、私苦手だったなあ、などと思った。やはり私は女の子になっちゃって正解だったんだろうな。
 
「さて、と紹介」と須藤さん。
「こちらはローズ+リリーのリードボーカルのケイさん」
「よろしくお願いします。ケイです」
「こちらは、クォーツのメンバーで、リーダーでベースのマキさん」
マキさんは声は出さずに手だけ挙げる。
「ギターのタカさん」「よろしく〜実は俺ローズ+リリーのCD全部持ってる」
「わあ、ありがとうございます」
「そしてキーボードあるいはドラムスのサトさん」
「よろしく。写真とかで見たのより可愛いな」
「ありがとうございます」
 
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「じゃ、とりあえず合わせてみましょうか。昼間初見で歌ってもらった曲、Love faraway やってみよう」
「はい」
まず音合わせをし、マキさんの「ワン、ツー、スリー、フォー」という声から前奏が始まる。私は2度目なので、歌の表情などにも気を配りながら歌うことができた。3番まで歌って終了となった。須藤さんが拍手をする。クォーツのメンバーも、私も、お互いに拍手をする。マキさんも少し面倒くさそうにではあるが拍手をしていた。
 
「カズのボーカルで演奏したのとは別の歌みたいだ」
とサトさんが言った。
「うん。男性ボーカルと女性ボーカルで、歌詞の意味から変わるね、この曲」
と須藤さん。
「こっちのほうがこの曲に合ってるよ」
とタカさん。
「うん。俺もそれに同意だ。こんな良い雰囲気の曲になるとは思わなかった」
とマキさん。
 
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こういう感じで、「ローズクォーツ」の最初の演奏はとても和やかな雰囲気で行われたのであった。(この時点ではまだ新しいユニットの名前は決まっていなかった)
 

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週明けの月曜日、私は須藤さんと一緒に、前の事務所を訪れ、社長の津田さんに面会した。
 
「ごぶさたしておりました」
「うん。久しぶり。元気そうだね。でも大学に入ったらかなり色っぽくなった感じだね。以前は爽やかな女子高生という感じだったけど」
などと言われる。
 
「ありがとうございます。愛人契約なら月500万くらいで考えます」
「あはは。でもあの時、君には毎月そのくらい稼いでもらったからなあ。それに君たちのおかげで、うちに売り込んで来る人もたくさん出て、今メジャーで売っているのが3組。特にピューリーズは今好調でね」
 
「ええ。私もピューリーズの音源、毎回ダウンロードしてます。kazu-manaも、ヤヨイもよく聴いてますよ。あとまだインディーズだけど、市ノ瀬遥香さんにも注目しています」
「ありがとう。市ノ瀬君に目を付けるとはさすがだね。彼女は年末くらいにメジャーデビューさせようと思ってる」
「わあ、すごい」
「まだオフレコだよ。でまあ、そういうわけで、須藤君から君と契約したいと聞いてこちらは異存無いということで了承したから」
「ありがとうございます」
 
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「名称の使用について許可を取ろうとしたら、それはケイちゃんに聞けと言われた」
と須藤さん。
 
「えっと、それは先日も言ったと思うのですが」
とボクは困ったような顔で説明する。須藤さん、全然話を聞いてないじゃん!
 
「ローズ+リリー、ケイ、マリ、マリ&ケイ、に関する一切の権利は、現在、私と政子の会社、サマーガールズ出版に属しています」
 
そうなった経緯を説明しようとすると、かなりの時間が掛かるので私は結論だけを言った。
 
「なんか1年半仕事離れていた間に状況がいろいろ変わってるなあ」
などと須藤さんは言っている。
 
「あ、それでローズ+リリーがうちのアーティストとして活動していた時に歌っていた歌をそちらで歌うのも全然構わないから」
と津田さんは親切にも追加して言う。
 
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「ありがとうございます」
「社長、『あの街角で』のアレンジを下川先生にお願いしてスコア譜まで頂いていたのを、結局収録していないのですが、あの編曲の使用権は買い取らせてもらえますか?」
と須藤さん。
 
「あ。いいよ。じゃ3億円くらいで」
「了解です。明日にも振り込んでおきます」
なかなか景気の良い話である!
 
昔の八百屋さんで「はい、500万円」「じゃお釣り23万円」みたいなやりとりをしていたようなノリだ。ボクは時々津田さんの年齢疑惑を感じることがあった。50歳くらいの筈だが、70代の人みたいな発言がしばしばある。
 
「ところで、性転換手術はしたの?」
などと社長から聞かれる。
「いえ、まだです」
と私は焦りながら答える。
 
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「手術したくなって手術代なかったら出してあげるから。病院も紹介してあげるよ」
「あ、ありがとうございます」
私は困ったような顔で答える。
 
「でもフルタイムになりました」
「フルタイム?」
「1日24時間・週7日、女の子の格好で過ごしてます」
「なるほど、少なくとも『趣味の女装』ではなくなったわけだ」
「はい」
と私はにこやかに答えた。
 
「身体も少し改造しました」
「あ、その胸はやはりホンモノ?」
「はい。バスト92のDカップです」
「おお、写真集でも出したい感じだね」
「そのあたりは来年くらいにやりたいんですよ。写真自体は実力派の写真家に撮ってもらっておきます。でも当面は中身重視で売っていきたいなと思ってて。セールスとしては低くなっちゃうかも知れないけど」
「うん、そのあたりは須藤君に任せる」
 
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翌日はレコード会社も訪問して、ローズ+リリー担当の南さんや、その上司の加藤課長・町添部長にも挨拶をしてきた。ローズ+リリーと★★レコードの契約は一応昨年12月で切れていたのだが、新しいユニットの演奏や、ローズ+リリーの新音源などについてもそちらでまた扱ってもらえることになり、近いうちに契約書を交わそうということになる。
 
その翌日はローズ+リリーに楽曲を提供してくれていた作曲家の上島先生と、編曲をしてくれていた下川先生の所にも挨拶に行く予定だったのだが、なんとその前夜、上島先生から直接私の携帯に電話が掛かってきた。
 
「いやちょうど今日の夕方★★レコードに所用で寄ったら町添さんから君の再デビューの話を聞いてね。君の携帯の番号を教えてもらって電話した。再デビューおめでとう」
「ありがとうございます。先生にはたくさんお世話になったのに、後味の悪い辞め方をして申し訳なく思っておりました。明日ご挨拶にお伺いする予定だったのですが」
 
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「いや、それは全然構わない。ただ君にはもっともっと曲を提供したかったなと思ってたからそれが残念だったけどね。それでさ、君の再デビューの祝電代わりに1曲書いてみたから。良かったら使ってよ」
「わあ、ありがとうございます」
 
翌日お伺いした時にでもいいと言ったのだが、上島先生はすぐにも私にその曲を見せたいらしく、メールアドレスをお教えしたら、すぐにメールで楽譜のPDFとMIDIを送ってきてくださった。『萌える想い』というちょっとテクノ調の曲であった。とりあえずそのMIDIを再生しながら歌い、MP3にして送り返したら「うーん、やはり君の歌はいいね!」などというお返事を頂いた。
 
翌日実際に上島先生のお宅を訪問すると、先生はたくさん話したかったようで何時間もしゃべり続けた。そのあと下川先生のところに行く予定だったので須藤さんは冷や汗を掻いていたが、お話を停めるわけにも行かない。トイレに中座して下川先生のところに連絡を入れたら、向こうは笑って、じゃ僕がそちらに行く、といわれたということで、ほどなく下川先生が上島先生のところにやってきた。結局、その日は明け方まで、話が続いたのであった。「萌える想い」
の編曲はまた下川先生がしてくださることになった。
 
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週末は飛行機に乗って与論島に行き、水着写真も含めて大量の写真と動画を撮られた。水着姿はせっかく作ったバストを誰かに見せたい感じだったので少し照れながらも撮られるのが少し嬉しかった。
 
「ウェスト、かなりくびれているね」
「高3の時にダイエット頑張りましたから」
と私は答える。男子高校生として過ごしたあの期間、髪を伸ばすことと体型を女性的にしていくことで私は自分のアイデンティティを維持していた。
「この写真集は来年になってから発売するから。来年はまた来年で写真を撮るけど、18歳の写真は撮っておきたかったのよね」
と須藤さんは言っていた。
「でもここ、凄いきれいですね。最初見た時、もう天国かと思っちゃった」
「まだ天国に行っちゃうのは早いよ。でもきれいでしょう。みんなハワイとかグアムとか行くけど、ここは充分誇れる場所だよ」
 
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与論島から戻った翌日の昼休み、須藤さんから授業が終わるのは何時かと聞かれた。
「今日は4時限目が休講だから14:30で終わります」
「じゃ15:32東京発の新潟行き新幹線には乗れる?」
「乗れますが新潟行きなら東京じゃなくて大宮で乗った方がいいです」
「そうか。じゃ・・・大宮発だと15:58になるね」
「大丈夫だと思います」
「じゃ、それに乗って。入場券で入ってくれる?車内でチケット渡すから」
「はい」
「座席番号はあとでメールするね。あと毎日の授業終了時刻を後でいいから教えて」
 
授業が終わってから大宮駅まで行き、入場券で新幹線改札を通って15:58のとき331号に乗り込む。メールされていた座席まで行くと、須藤さんとマキさんがいた。
「こんにちは」
「やあ」
 
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「何かの打ち合わせですか?」
「ちょっとふたりに民謡教室に通ってもらおうかと思ってね」
「は?」
「新ユニットのデビューシングルに『佐渡おけさ』を入れたいのよ」
「えー!?」
「それで新潟なんだって」
とマキさんも苦笑している。
 
「これから毎日通ってもらうから。とりあえず1ヶ月間」
「東京近辺の民謡教室でってわけには?」
「民謡はそれぞれの地域のものだからね。東京ででも佐渡おけさは習えるけど本場で習うのとは別物だと思うのよ。だから新潟まで行ってもらおうと。土曜は向こうで泊まりね」
「はい」
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